(その1からの続きです。)
「信じがたい話だとは思うんですけどね」
男は遠く海を眺めながら話を続けた。
「元々私は別にこの岬で死んだってわけじゃないんですけど、ちょっとした因縁があって、ここに縛り付けられてしまったんです」
男はことさら大きくフゥと息を吐いた。
「それでですね、その因縁を解くにはここで死のうとした人間を百人、助けなくちゃいけないことになってしまったんですよ。百人ですよ、百人!いくらこの不況のご時世とはいえ、そんなしょっちゅうここから飛び降りようとする人間なんていませんって!!」
男はもし目の前に机があったのなら、ドンッと拳を叩きつけたに違いない勢いで言った。
「それに助けるっていってもただ単に自殺を阻止するだけじゃダメっていうんです。飛び降りようとした人間が、これから先、本当に生きて行こうと思えるようにならなくちゃいけないって・・・。そんなことが出来るぐらいなら今ごろこんなところにいませんって。人生相談のカウンセラーになってますよ、私」
そうでしょう?と男が不意に同意を求めてきたので、私は慌てて、え、えぇ、と曖昧に返事をした。
「それにしても百人っていうのは多すぎです。あの時は私も考えなしに、ま、それぐらいの人数が妥当かなぁなんてつい思っちゃってオーケーしたんですけどね。あぁ、失敗したなぁ、せめて半分にしてもらえばよかった。五十人ならまだ何とか・・・。本当、百人なんて無茶苦茶ですよ」
そうですね、無茶苦茶ですね、と私が相槌を打つと、男は我が意を得たりとばかりに私の肩をガシッと掴んだ。
「あなたもやっぱりそう思いますか!?」
男の勢いにえぇ、えぇと何度も私は頷いた。
確かに男の話は無茶苦茶だった。でもはたして一体どこから無茶苦茶だったのだろう。
そう考えて、男が自らを幽霊だといったところからそうなのだということに思い至った。
つづく。
「信じがたい話だとは思うんですけどね」
男は遠く海を眺めながら話を続けた。
「元々私は別にこの岬で死んだってわけじゃないんですけど、ちょっとした因縁があって、ここに縛り付けられてしまったんです」
男はことさら大きくフゥと息を吐いた。
「それでですね、その因縁を解くにはここで死のうとした人間を百人、助けなくちゃいけないことになってしまったんですよ。百人ですよ、百人!いくらこの不況のご時世とはいえ、そんなしょっちゅうここから飛び降りようとする人間なんていませんって!!」
男はもし目の前に机があったのなら、ドンッと拳を叩きつけたに違いない勢いで言った。
「それに助けるっていってもただ単に自殺を阻止するだけじゃダメっていうんです。飛び降りようとした人間が、これから先、本当に生きて行こうと思えるようにならなくちゃいけないって・・・。そんなことが出来るぐらいなら今ごろこんなところにいませんって。人生相談のカウンセラーになってますよ、私」
そうでしょう?と男が不意に同意を求めてきたので、私は慌てて、え、えぇ、と曖昧に返事をした。
「それにしても百人っていうのは多すぎです。あの時は私も考えなしに、ま、それぐらいの人数が妥当かなぁなんてつい思っちゃってオーケーしたんですけどね。あぁ、失敗したなぁ、せめて半分にしてもらえばよかった。五十人ならまだ何とか・・・。本当、百人なんて無茶苦茶ですよ」
そうですね、無茶苦茶ですね、と私が相槌を打つと、男は我が意を得たりとばかりに私の肩をガシッと掴んだ。
「あなたもやっぱりそう思いますか!?」
男の勢いにえぇ、えぇと何度も私は頷いた。
確かに男の話は無茶苦茶だった。でもはたして一体どこから無茶苦茶だったのだろう。
そう考えて、男が自らを幽霊だといったところからそうなのだということに思い至った。
つづく。