この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

比類なきジーヴス。

2008-01-15 22:36:11 | 読書
 P.J.ウッドハウス著、『比類なきジーヴス』、読了。

 話に聞くところによると一時のメイドブームに続いて執事ブームなのだそうだ。メイドカフェならぬ執事カフェが出現し、執事が活躍する漫画がベストセラーに名を連ねたりする。
 その執事ブームのおそらくは源流の一つであるのがウッドハウスの手によるジーヴス・シリーズだろう。
 はっきりいってボンクラといってよい青年貴族バーティーと彼に使える恐ろしく頭の切れる執事ジーヴスの物語である。
 毎度毎度人のよいバーティーが巻き込まれるトラブルをジーヴスがちょちょいのちょいで解決してしまうというのが筋立てで、読んでいても肩の凝らない、気晴らし、暇つぶしにはちょうどよい読み物だ。
 ただ、読んでいて、自分がまずしっくりこなかったのは、前述の通りバーティーはボンクラで、ジーヴスは天才という設定なのであるが、その天才が何ゆえボンクラに使えているのかがよくわからないという点だ。
 仮にジーヴスが、ボンクラではあっても心底バーティーのことを敬愛しているというのであれば話はわかるが、そうではなく、どちらかというとジーヴスは自らが使えるご主人様のことを小馬鹿にしている、見下しているような感がある(そういった描写が一度や二度ではない。)。
 それならばいっそ“比類ない”才能とやらを行使して、金儲けにでも走ればよいものを、と思ってしまった。
 もう一つ、自分は本作を気晴らし、暇つぶしにちょうどよい読み物だ、と評した。そういった気軽にサクサクと読める小説の存在を自分は否定しない、むしろそういった小説こそ必要な時すらあると思っている。
 だが、本著の定価は何と¥2000もするのだ。内容的にサクサク読めるものであっても価格がおいそれと手の出せるものではなくしている。ハードカバーではなく、文庫で世に出すことは出来なかったのだろうか、と思わずにはいられない。
 無類の執事好きという方、英国ユーモア小説が好きという方は買いだと思うが、それ以外の方にはまぁ図書館で借りて読めば充分だろう。
コメント (2)
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