この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

2016年邦画No.1!『湯を沸かすほどの熱い愛』。

2016-10-29 23:17:57 | 新作映画
 中野量太監督・脚本、宮沢りえ主演、『湯を沸かすほどに熱い愛』、10/29、Tジョイ久留米にて鑑賞。2016年36本目。


 この映画をまだ観ていない人のほとんどは、『湯を沸かすほどの熱い愛』というタイトルを聞いて、こう思ったんじゃないでしょうか。
 うわ、だせータイトルだな!もしくは、長いタイトルだな!と。
 そんなふうに思った人ほど、是非この映画を観に行って、なぜこの映画がダサくて長いタイトルなのか、確認してきて欲しいですね。
 ラストシーンを見て、あぁ、このタイトルはこういう意味なのか、と納得すると思うので。

 愛についての映画です。それもどこまでも熱い愛についての。
 二時間程度の作品ですが、脚本が上手く描かれていて、いくつものテーマが内包されています。
 イジメもその一つです。

 昨今ではいじめられている側の人間に対して、「逃げてもいいんだよ」という風潮にあると思います。
 それが間違っているとは思いません。イジメに対して逃げることは確かに一つの対抗手段ではあるとは思います。
 ただ、「逃げてもいいんだよ」という場合、、最低限、いじめられている人間に最後まで付き添う覚悟があるか、もしくは逃げ場所をちゃんと提供できなければいけない、そう思うのです。

 本作の主人公である双葉はいじめられている一人娘の安澄に対してこう言うのです。
 イジメから逃げるな、立ち向かえ!と。
 無理を言うなよ、と思う人もいるでしょう。そんなことが出来るぐらいなら最初からいじめられたりはしないでしょうから。
 ただ、双葉がそういうのには理由があるのです。
 なぜなら彼女は余命二ヶ月と宣告されているから。 
 安澄がイジメから逃げたとしても、それに最後まで付き添うことは出来ないし、逃げ場所を提供することも出来ない。
 だから、立ち向かえ!というしかない。
 そして安澄は安澄で、双葉の言葉に見事に応えるんですよね。彼女にしか出来ないやり方で。
 こういう愛もあるのかと驚かされます。

 驚かされることはまだまだあって、それらを一つ一つ挙げていくことは出来ないのですが、何といってもラストシーンですよね。
 詳しいことは書きませんが、そんなこと、していいの?と思わずにはいられません。
 いや、実際やってはいけないことだろうし、登場人物の一人も「ダメですよね」と言ってるぐらいだから、ダメなんでしょうけれど、これが非常に印象に残る、いいラストシーンなんですよ。
 そしてタイトルがピタリと作品に符合することに気づかされる。
 やられたな、と思いました。

 今まで生きてきて、大事な人を喪ったことがあるという人に是非観に行って欲しいですね。
 もちろんそうでない人にもお薦めですが。

 
 お気に入り度は★★★★☆、お薦め度は★★★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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