佐世子は正志に何度か面会した。髪を短く刈り込み、少し痩せた正志は精悍な顔つきだった。佐世子は何故あのような行為に及んだのか直接聞きたかったが、それは理性で辛うじて抑えていた。短い面会時間が多くの沈黙で流されてしまうが、それでも姉や妹のことは気になるようで、今どういった状況なのかをぼそぼそと聞いてくる。
佐世子が「麻美は何とか教職を続けているみたい。彩乃は法律に興味を持ったようで、法学部を目指して勉強している。正志の裁判を彼女なりの視点で見て、何かを強く感じたんだと思う」と伝えると、正志は「へえ、アヤが法律ねえ」と静かに笑う。そうした以前の正志らしさが発見できるだけでも、佐世子は嬉しかった。麻美に関しては教職を辞めたという事実は伝えられなかった。
佐世子には本当はどうしても聞きたいことがあるのだが、何度来てもそれは聞けない。つまり「今でも林田理恵を憎んでいるのか」と。代わりに町田が薦めてくれた本を差し入れする。その前に佐世子自身が読んでみるのだが、大概「人を恨んでいては自身の心の平穏はない」とか「過去を反省することは大切だが、同時に自分の未来像を描くのも忘れてはならない」といった類の本。あとは正志が好みそうな本を佐世子が選んで付け足す。
佐世子は面会と同時に手紙でも正志とやり取りしていた。直接、顔を合わせるよりも、このほうが正志の本音が引き出せるのではないかと淡く期待していた。しかし内容は直接話している時とさほど変化はない。人ひとりの命を奪ったのだから、真摯に刑に服しながら心から反省するのが最も大切なことだ。そのためにも佐世子は正志の本音が知りたい。
佐世子が「麻美は何とか教職を続けているみたい。彩乃は法律に興味を持ったようで、法学部を目指して勉強している。正志の裁判を彼女なりの視点で見て、何かを強く感じたんだと思う」と伝えると、正志は「へえ、アヤが法律ねえ」と静かに笑う。そうした以前の正志らしさが発見できるだけでも、佐世子は嬉しかった。麻美に関しては教職を辞めたという事実は伝えられなかった。
佐世子には本当はどうしても聞きたいことがあるのだが、何度来てもそれは聞けない。つまり「今でも林田理恵を憎んでいるのか」と。代わりに町田が薦めてくれた本を差し入れする。その前に佐世子自身が読んでみるのだが、大概「人を恨んでいては自身の心の平穏はない」とか「過去を反省することは大切だが、同時に自分の未来像を描くのも忘れてはならない」といった類の本。あとは正志が好みそうな本を佐世子が選んで付け足す。
佐世子は面会と同時に手紙でも正志とやり取りしていた。直接、顔を合わせるよりも、このほうが正志の本音が引き出せるのではないかと淡く期待していた。しかし内容は直接話している時とさほど変化はない。人ひとりの命を奪ったのだから、真摯に刑に服しながら心から反省するのが最も大切なことだ。そのためにも佐世子は正志の本音が知りたい。