白雲去来

蜷川正大の日々是口実

ツツジはプロレタリアの血の色?

2012-05-08 08:34:39 | インポート

五月七日(月)晴れ。

 いい天気である。連休中に連載させて頂いている原稿を書こうと思っていたが、酒とババアではなかったバラの日々で、ついズボラしてしまった。従って、朝食後から、原稿に向かう。テーマは「旅を読む」。藤原ていさんの「たけき流れに」という本の中からご主人の新田次郎氏のエピソードを引用させて頂いた。それは、新田氏は、超のつく不器用で身の回りの事さへほとんどできなかったそうだ。それが、登山の荷造りに関しては、すべて自分で行ったという。ご夫人が手伝おうとすると、「触るな、神聖だ」と声を荒げた。面白いエピソードなので、ちょっと読んでみて下さい。

 「新田は、実に不器用な人であった。まともに靴の紐を結ぶことは出来ない。風呂敷包みをつくることも、ネクタイを結ぶことも、箸さえも上手には持てない。ましてや家の手伝いなど、全く出来ない。たとえ足許が燃え出しても、消すことも出来ないだろうと思われるほど手先の動かない人であった。その人が、登山に出発する前夜の整然たる準備。枕元にリュックにピッケルに、洋服に、帽子に、靴下にと、運動会の仕度競争のようにずらりと並べる。すべて自分の手で、私の手伝うことは一切拒否した」

 私は、新田氏ほど不器用ではないが、やはり普段、家の片づけなどはもっぱら愚妻や子供任せであるが、旅に出る時の荷造りは自分でやらなければ気が済まない。そんなことを書いているうちに、新田氏のエピソードを思い出して、引用させて頂いた。

 二時過ぎに脱稿して入稿。ホッとした。最近、歩いていないことを思い出したので、一時間半ほど歩いた。道には、ハナミズキやツツジが色鮮やかに咲いている。ハナミズキはアメリカ原産の花で、日本が桜を送ったお礼として、ハナミズキを送られたと何かで読んだことがある。色とりどりのツツジも美しい。FBにも書いたが、ツツジを見ると大逆事件にて獄死した金子文子の「ブルジョワの軒にツツジの咲いておりプロレタリアの血の色をして」という歌を思い出す。彼女は横浜で生まれた。黒色戦線社から出版された「何が私をかうさせたか」は好きな本だ。

 見沢知廉氏が千葉刑務所に在獄中の当時、ご母堂から連絡があって、金子文子の、その本を読みたいので貸してほしいとのこと。彼が読了した後に、「宅下げ」して本が戻ってきた。その昔、私が読了した日付と簡単なコメントを書いた横に、見沢氏の文字があった。もちろん見つかれば違反行為として懲罰の対象となるのだが、お互いの「獄」の記念として、彼も書いたのだろう。鉛筆で書いてある二人の文字が、年月が経って薄れてきている。近いうちにスキャナーで取り込んでおくか。

 夜は、軽く酔狂亭で月下独酌。また飲みながらウトウトしてしまった。日にちが変わらぬうちに布団に入った。

 


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