白雲去来

蜷川正大の日々是口実

断食二日目。

2012-05-29 15:21:45 | インポート

五月二十九日(火)晴れ。

昨日の伊豆は夕方から本格的な雨になった。六時の簡単な食事を終えると、あとは何もすることがない。当然、自室に戻って、原稿の校正や、それに飽きると本を読んだりで、結局寝たのは十二時を過ぎていた。

体のガソリンが切れているのか、今朝は五時半に目が覚めてしまった。遮光カーテンを開けると良い天気。鶯の鳴き声が聞こえてきた。朝の体操は七時半。それまで時間があるので、パソコンを開けて原稿に向かった。

そういえば、昨日から読み始めている「百代の過客」にとても面白いものがあった。日本人による外国への旅を詳細に記述した最初の日記は、幕末に締結された日米通商条約を批准するために、万延元年(一八六〇)、使節団の一員としてアメリカ合衆国に派遣された村上淡路守範正のものではなかったかと、ドナルド・キーンは書く。もちろん村上以前にも、海で嵐に遭遇して漂流し、ロシアやアメリカに渡った人たちもいるが、残念ながら、彼らのほとんどが武士階級ではなかったために、難しい文字を書けなかったのと、日記を書くような習慣がなかった。

キーンは、村上の日記を、「見聞した事柄を作者が詳細に叙述しているからだけではなく、その叙述がきわめて個性的であり、時として文学的価値さえ認められるからである。この日記はまた、毎日詠んだ歌を欠かさず挿入するという、古い日記の伝統も踏襲している。」と評している。キーンは、村上が、当時の日本人の誰もが感じていた外国人への偏見にも驚いている。

村上らの一行は、アメリカに着く前に、ハワイに立ち寄り、当時のカメハメハ四世国王に謁見した。その時の国王の印象を詠んだ歌に大笑いしてしまった。「御亭主はたすき掛けなりおくさんは大はだぬぎて珍客に逢ふ」。

断食から帰ったら、村上の日記を探して読んでみたいと思っている。まだ断食が二日目というのに、かなりふらふらしている。とりあえず、昼から一時間半ほど歩いて、風呂で汗を流した後に、これを書いている。そうか、午前中に、お世話になっている人、お二人に手紙を書いた。空腹と睡魔と闘いながら仕事にいそしむか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする