スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦&第三種の認識

2012-03-05 18:22:44 | 将棋
 漁港で有名な静岡県焼津市で指された昨日の第37期棋王戦五番勝負第三局。
 郷田真隆九段の先手で久保利明二冠のごきげん中飛車。③☗4八銀に。この手に対する後手の対応策が最近は二種類に限定されつつあり,ひとつは左銀を繰り出して4筋で銀が向い合う形で,もうひとつが玉の囲いを優先して☖4四歩と突く形。この将棋は後者となり,先手は左の銀の方も進出して5筋の歩を狙いにいきました。
                         
 このままですと歩を取られていけませんから☖5六歩。☗同歩☖同飛で銀取り。☗4八飛と受けました。☖5一飛では抑え込まれるとみた後手は☖6六角と切り,☗同歩に☖4五歩。これは取れませんから☗5七銀の一手で☖3六飛と転換。次に☖2六飛の狙いがあるので先手は☗2八飛と先回り。後手はいきなり☖3七銀と打ち込み,☗同桂☖同飛成と進めました。
                         
 第2図は角桂交換で先手の駒得。これに対して龍を作っているというのが後手の主張。ただ,実戦の展開はこの龍が働きに乏しく,むしろ狙われる駒となってしまい,最終的に飛車との交換となりました。つまり駒損の不利を挽回するだけの主張点ではなかったようで,後手の作戦が失敗しているようです。久保棋王は早々に悲観していたようで,はっきりとした終盤戦には至らぬ段階で投了となりました。
 郷田九段が先に2勝目をあげて棋王奪取に王手。金曜日の順位戦で敗れ,A級からの陥落が決まった久保棋王は,王将戦に続いてこちらもカド番に追い込まれました。しかしここからが棋士の本当の正念場で,力のみせどころではないかと思います。注目の第四局は17日です。

 続いては,現実的に存在する人間の精神mens humanaが,必然的にnecessario個物res singularisを概念するconcipere,概念と知覚とを厳密に分節した意味において概念するのかどうかを探求していきます。
 このことが,『エチカ』において示されているか否かと問われるならば,僕は示されていると答えるでしょう。ただしそれは,主に第三種の認識cognitio tertii generisとの関連で示唆されているというのが正確であると思います。第三種の認識についてスピノザは直観scientia intuitivaといっています。しかし,人間がある個物を直観的に認識するcognoscereというのでは,現在の課題を解消するのにはいささか無理があるようにも思います。というよりも,第二種の認識cognitio secundi generisが理性ratioといわれるのに対して,第三種の認識は直観といわれているのであって,直観に依拠して何らかの事柄を認識するというのは,それを理性的に認識するような仕方では説明が不可能であるということが含まれてしまっているともいえるでしょう。
 『エチカ』において,個物の概念conceptus,すなわち個物の十全な認識というのが,そのように直観に依拠するような仕方で説明されているのには,明確な理由があると僕は考えています。スピノザはさらに第一種の認識cognitio primi generisも含め,これら人間の精神の認識作用について,第二部定理四〇備考二でまとめて説明しています。このとき,理性といわれる第二種の認識は,共通概念notiones communesを基礎とした認識といわれているのに対して,第三種の認識というのは,神Deusの属性attributumの本性essentiaの十全な観念idea adaequataを基礎として,個物の本性の妥当な認識へと進むとされています。
 ここで重要なのは,共通概念の認識というのが,個物の認識とは異なるということです。このことは第二部定理三七から明白です。すなわち共通概念は十全な観念ではありますが,個物の本性というのを構成するというわけではありません。しかるに第二部定義二により,ある個物を十全に認識するということは,まずもってその個物の本性を十全に認識するということでなければなりません。よって,共通概念の認識というのは,それがどんな共通概念であったとしても,それが共通であるというまさにそのことによって,個物の十全な認識ではあり得ないのです。したがって,この場合の探求には,別のルートを探索しなくてはならないでしょう。

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