スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

いで湯賞&出来事の一回性

2007-12-16 19:07:13 | 競輪
 伊東競輪場は本当は伊東温泉競輪場といいます。そこで今日の2日目優秀(動画)もいで湯賞。温泉地らしいネーミングとはいえます。
 並びは昨日の僕の想定とは異なり,稲垣選手に志智選手がマークして近畿中部,藤原選手は北日本追走できれいな3分戦。地区的にはこの方が自然といえるかもしれません。
 前受けは岡部選手。後方となった稲垣選手は中団の石橋選手を牽制してから残り2周のバックで岡部選手を叩いて先行。遅れをとった石橋選手は追い上げて4番手の外を岡部選手と併走,ホームに入ってから巻き返しに出ました。当然ながら稲垣選手も応戦。両者のもがき合いはバックに入っても続きましたが,石橋選手の番手から新田選手がさらに外を行く構え。ここで稲垣選手の番手の志智選手が飯田選手をどかしてうまく新田選手の後ろにスイッチ。最終的には石橋選手が稲垣選手を叩く形になったものの,直線は新田選手が伸びて快勝。切り替えた志智選手が2着で志智選手マークの浜口選手が3着に流れ込んでいます。
 新田選手も自力選手ですので,石橋選手がここまで頑張ってくれればここは割合と楽に勝てたのではないかと思います。きれいな3分戦となり,岡部選手は先行もなければ斬り込みもほぼないタイプの選手ですから,展開的にも恵まれた感じです。

 一般性と個別性のほかにもうひとつ,これまでの考察と関連して第三部定理五六の内容と関係していると僕が考えているのは,これはスピノザの哲学の特徴とまではいえないのかもしれませんが,僕が人間の意志は自由なものではないということを説明するために利用した,出来事の一回性という考え方です。第一部公理三により,どんな結果もある原因によって必然的に与えられるので,ある人間がなす行為,あるいは抱く意志というものは,その場その場で必然的なものであって,そのほかの可能性というものはありません。少なくともこのことは,スピノザ自身も認めることであろうと僕は思います。
 ところで,第一部公理三というのは,自然のうちに実在するもの,あるいは実在し得るものにとって,すべてに妥当する絶対的な公理です。そして人間の感情というものもまた,実在する場合には自然のうちに実在するものなのであって,自然の外に実在するということはあり得ません。よって人間がある感情を抱くときには,実はある原因から必然的にそうした感情を抱いているということになります。そもそもスピノザが人間の感情を論理的に論じることができると考えていること自体がこのことに依拠しているのであって,それはスピノザが第三部の序言に著している通りです。
 そこで,もしも感情の対象が異なるならば,原因が異なるわけですからその必然性は異なるでしょう。したがって発生した感情もまた,その必然性を個別的にみるならば異なった必然性に依存する別の感情と考えられなければなりません。よって,やはりこの観点からも,定理五六の内容は保持されなければならないということがいえるのではないかと思います。
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小橋建太復帰戦&一般性と個別性

2007-12-15 19:00:23 | NOAH
 小橋建太選手の復帰戦は,予定通りに2日の日本武道館大会のメーンイベントとして行われました。秋山選手の挑発で先発出場し,最後,高山選手が場外に落とされている間に,秋山選手のエクスプロイダーから三沢選手のランニングエルボー,さらにエメラルドフロウジョン,そして秋山選手に抱えられ三沢選手の雪崩式エメラルドフロウジョンにスリーカウントを奪われる間での27分以上,しっかりとプロレスラーとして戦い抜いてくれました。マシンガンチョップやハーフネルソンスープレックス,ラリアットやムーンサルトプレスといった,絶対王者の時代によく出していた技も,問題なく繰り出していました。
 僕は格闘技はテレビで放映されていれば見ることもありますが,とくにどうと思うところはありません。自分自身で,心の渇いたすれっからしの人間であると自覚していますが,なぜかプロレスだけは心の琴線に触れることがあります。とくにNOAHの場合には。この試合は残念ながらテレビ観戦となりましたが,胸を打たれるものがありました。試合内容が素晴らしかったかどうかはまた別の話かもしれませんが,社会的影響もあり,プロレス大賞のベストバウトに選出されています。
 僕などからすればもう十分という気持ちもあるのですが,試合翌日の検査の結果が良好だったということもあり,小橋選手にとってはこれからが始まりなのでそうです。新年のシリーズでは,1月11日の高知大会と13日の博多大会にスポット参戦することが決定しています。

 明日は伊東記念の2日目優秀のいで湯賞があります。並びは僕の想定で,岡部ー斎藤の北日本,石橋ー新田ー飯田の南関東,志智ー浜口の岐阜で,稲垣が残るのでそこに藤原。あくまでも僕の想定なのでご注意ください。

 第三部定理五六に関係するようなスピノザの感情論の話はこれで終りにし,ここでこの定理そのものに話題を戻します。もちろんこれは定理ですので,本当は証明されるべき事柄なのですが,ここではそれについては割愛します。というのは,この定理は第二部定理一七を軸に証明されるのですが,その証明の手続きが少しばかり煩雑な上,その手続き自体の内容が,感情論そのものには直接的に関与していないと思われるからです。もしも証明そのものに関心があるという場合には,『エチカ』の該当部分をお読みになってください。
 しかしこの定理は,これ以前のテーマで扱ってきた主にふたつの事柄に大いに関係していると僕は考えています。そこでここでは,そうした事柄との関連を説明しておきます。
 まずひとつは,スピノザの哲学における事物の一般性と特殊性,あるいは一般性と個別性の考え方です。スピノザは,事物というのは一般的に概念されればされるほど,その内容はより多くの混乱した内容を含み,逆に個別的なものとして概念されるほど,その内容がより明瞭判然と認識されると考えています。したがって,たとえば愛一般という認識と,AさんのXに対する愛という認識では,前者の方がより混乱していて,後者の方がより確実な認識ということになります。したがって各々の愛は,愛一般という仕方でなく,この愛,あの愛というような仕方で,具体的に認識されるべきであるということが,ここから出てくると思います。そしてこのことは,愛に限らずすべての感情について同様に妥当するものと考えていいでしょう。よってこの考え方からしても,スピノザの哲学にあっては,この定理五六の内容は保持されるべきものといえるのではないかと思います。
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王将戦&希望と不安

2007-12-14 18:29:54 | 将棋
 月曜に指された王将戦の挑戦者決定リーグ最終局一斉対局のうち,佐藤康光二冠と谷川浩司九段の将棋は一手違いの攻め合いになる面白い将棋でしたので,ここで紹介しておきます。この日まで,佐藤二冠が33勝,谷川九段が28勝。
 これは谷川九段の先手で後手のごきげん中飛車。5手目▲4八銀でしたが角交換からの向飛車には変化せず,△5五歩~△5二飛。先手は急戦策で右銀を繰り出し,この銀が3六,2五,3四,4五と一回転して,31手目の▲5四銀から銀交換になりました。
 後手はこの銀を42手目に自陣に投入。先手が3筋の歩を取り込む間に自陣の桂馬を跳ね出し銀桂交換の駒得に。ただし村山四段は駒の働きの差で先手もちとの見解でした。後手は50手目から△6四銀~△6三銀。先手は53手目から▲6八金上~▲4七桂と渋めの展開に。
 この▲4七桂は後手の読みになかったのではないかと思います。長考して△8四角。部分的には一手損した勘定です。次の▲2四歩から65手目の▲2四飛までは先手が一方的に得をした感じではありますが,ここで後手も△5六歩と待望の反撃開始。ここから激しい攻め合いになり,お互いに飛車を成り込み,先手の駒損も解消されました。
 85手目,▲6九銀と下から打つ手も有力だったようですが,▲4八銀と強く龍に当てて受けました。ここで△3五龍とこちらに引き上げたのですが,どうもこの手が好判断だったように思えます。90手目に△6六歩と急所を突き,△8五龍とこの龍が銀を取る展開になりました。
 97手目の▲6三とに対して受けずに△7六龍と踏み込んだのが一手勝ちを読みきった勝着といえそうです。この時点で後手は残り2分に対し,先手は20分以上あったようですが,先手の勝ちはなかったようです。時間は少なかったものの,後手が手堅く寄せきって,佐藤二冠の勝ちとなっています。
 大抵の場合,将棋というのはどこかではっきりとしたミスがあり,最後にそのミスを犯した手が敗着となるものです。しかしこの将棋は先手に目立ったミスがあったというより,後手がうまく指しまわしたという感じがします。そういう意味では佐藤二冠にとっての名局のひとつなのではないかと思います。

 明日から伊東記念になります。ここは地元の新田選手と福島の岡部選手が中心になりそうです。

 第三部諸感情の定義一二と一三でそれぞれ定義されている希望という感情と不安(恐怖)という感情がもっている,ほかの感情とは別の大きな特徴は,諸感情の定義一三の直後にスピノザによって説明されています。これを簡単にいえば,不安のないような希望はあり得ないし,逆に希望がないような不安もまたあり得ないということです。もちろんこのとき注意しなければならないのは,ここで比較されている希望と不安は,たとえばXに対する希望とXに対する不安であり,あるいはYに対する不安とYに対する希望であるということです。
 このことは,希望と不安,各々の感情の定義から直接的に帰結します。たとえばある人間が,未来に関係するXの観念を有することによって喜びを感じたとします。しかしこの人間が同時にこのXについて自分自身が確実ではないということを認識する限り,この喜びもまた確実なものではありません。そしてこの場合,この人間は容易にXから悲しみを感じるでしょう。簡単にいうなら,自分がある事柄を成功させるということが確実でないと認識すれば,失敗するということも容易に表象します。よって成功した場合の喜びも感じますが,失敗した場合の悲しみも感じるでしょう。よって,僕たちがある事柄について希望を抱いているなら,それが不確実な事柄である以上は,同時にその事柄についての不安ももっているのであり,逆にある事柄に関して不安に感じることがあったとしても,実はそれは不確実な事柄なのですから,希望ももっているということの裏返しなのです。
 人間の精神はいうまでもなく有限ですので,僕たちには確実には知り得ないようなことが多くあります。僕が心情の動揺に関して希望と不安で説明したのは,こうした理由からなのです。
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竜王戦&第三部諸感情の定義一二・一三

2007-12-13 20:58:32 | 将棋
 竜王戦には中部での対局に勝った棋士がシリーズを制するというジンクスがあります。今期は第二局が伊勢神宮での対局で,これは佐藤康光二冠の大逆転勝ち。しかしこの第六局も伊豆での対局ですので,中部対局に違いはありません。また今日はLogical Spaceさんのライブ中継もありましたのでそちらもどうぞ。
 昨日は28手しか指されず,渡辺明竜王の29手目の封じ手は☗4九玉。ここから後手は3二の金を繰り出し金銀交換。やや損かもしれませんが,金が遊ぶよりはましとみてのものと思います(渡辺竜王はこの金を使わせない構想だったようですので,作戦としてはうまかったといえそうです)。互いにその金銀を自陣に打ち合う渋い展開になりました。
 50手目,後手は☖4五歩とここから仕掛けました。対して後手は55手目に☗9四歩と端から。62手目は☖6三銀引としておくのも有力だったようですが☖4五銀と攻め合いに。さらに76手目は☖2四角と引くのも有力だったよですが☖4八成桂。このあたりは佐藤二冠の棋風通りといった感じですが,直後の☖3六桂はまずかったようです。☗4六歩なら勝ちとみてのものだったのでしょうが,普通に☗同歩と取られてしまいました。ここで長考したようなので,見落としであったと思われます。☖3六桂では先に☖2八金だったのでしょうが,そもそも踏み込んだのがまずかった可能性もありそうです。
 次の☖2八角打からはおそらく修正手順。87手目に次の☗7五角の詰めろ飛車取りをみせられて☗9八飛と逃げられましたが,ここは☖5二飛と詰めろで逃げて凌ぎました。
 92手目の☖8八銀不成の局面から観戦。ここは後手は歩しかないので先手がいいのだろうと思ったのですが,この局面で先手は残していた34分(29分でした)の時間をすべて使って☗9八飛と逃げました。これだけ考え部分的には一手損する手を指したわけですから,ここは後手の方がよかったのかもしれません(ここでは香を取らずに☖5四飛と浮く方がよかったようです)。
 97手目に☗6一角と打って反撃に。後手は駒不足で凌ぐほかないので,ここは☖7四飛とする手だったかもしれません(BSの久保八段の解説では☖7一玉でした。ただこれも先手が勝つようです。また,所司七段は☖8五桂を有力手としてあげています)。実戦は☖7七馬から銀を一枚使わせて角を取り(佐藤二冠はここでは形勢を悲観していたようです),盤の後手からみて左に逃げ越そうとしましたが,と金を作られた上に金駒も剥がされながら攻められ,はっきりと苦しくした感じです(101手目の☗7五桂でもう先手が優勢とのことです)。115手目の☗5六桂に対して☖2二馬と逃げた局面では先手の勝勢と思われます。この後も将棋は続きましたが大勢には影響せず,後手の投了となりました。
 いきなり1分将棋になりどうなることかと思われましたが,渡辺竜王が何とか勝ちきり4勝2敗で竜王防衛。これで4連覇ですが,歴史が浅いとはいえ竜王の4連覇は史上初のこととなります。今シリーズは,内容では圧倒していた感がありますが,それでも2敗を喫し,この将棋も楽に勝ったという感じではありませんので,傍目よりも苦しかったかもしれません。手について何かあればいつものようにあとで()の中に。

 心情の動揺animi fluctuatioに関係する話は,一旦はこれで終りにします。ただ,相反する感情のうち,Xに対する希望spesとXに対する不安(恐怖)metusには,ほかの感情affectusにはないある特別な関係があるとされていますので,このことだけみておくことにします。そこでまず,これらふたつの感情のスピノザによる定義Definitioをみておきましょう。
 希望は第三部諸感情の定義一二です。
 「希望とは我々がその結果について幾分疑っている未来あるいは過去の物の観念から生ずる不確かな喜びである」。
 不安は次の第三部諸感情の定義一三。
 「恐怖とは我々がその結果について幾分疑っている未来あるいは過去の物の観念から生ずる不確かな悲しみである」。
 岩波文庫版の『エチカ』の恐怖については,ここでは不安ということばで代用するのはすでに説明した通りです。
 希望という感情と不安という感情が,反対感情であるということについては,これらの定義により一目瞭然であると思います。これらふたつの感情は,まったく同じものに関係する,喜びlaetitiaと悲しみtristitiaであるからです。また,僕たちは一般に,希望と不安を,未来に関連するような感情と考えているかもしれませんが,これらの感情はこの定義にもあるように,過去と関係する場合もあります。実際,過去のある経験に関連付けて,希望を感じたり不安を抱いたりすることは,あることではないかと思います。重要なのはそれが不確かであるということであって,このふたつの感情は,人間にとって確実であること,あるいは人間が確実であると思い込んでいることには関係しません。そしてこの特徴が,これらふたつの感情に,ある特別の関係をもたらしてくるのです。
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広島記念&心情の動揺との関係

2007-12-12 19:33:56 | 競輪
 広島記念はひろしまピースカップというタイトルの下での開催。広島らしいいい名称だと思います。今日,決勝(動画)が争われました。
 中国は石丸ー小林ー西田で折り合い,このラインの前受け。打鐘で平原選手が叩くと,城戸崎選手と村上選手も続いて石丸選手は7番手。ホームから村上選手がかまして出ようとしましたが,平原選手の番手の神山選手の牽制に遭い,3番手を外で併走する形に。バックから石丸選手も捲っていきましたが,これも車間を開けた神山選手がうまく牽制。開いた平原選手との間に手島選手が突っ込んでいきましたが,神山選手は余裕があったようで直線は外を伸びて抜き返し,優勝となりました。終始このライン追走の形になった城戸崎選手が平原選手と手島選手の中を割って2着に届き,手島選手は3着まで。
 優勝した栃木の神山雄一郎選手は昨年11月の松山記念以来の記念競輪優勝で,これが記念競輪93勝目。今日は平原選手の頑張りもありますが,きっちりと番手の仕事をこなしてのもので立派。難しいかもしれませんが,ぜひ記念競輪100勝を目指してほしいものです。

 竜王戦七番勝負第六局は後手の佐藤二冠が2手目△3二金。昨年の第六局第七局で指された手。渡辺竜王は敗れた第六局のように5筋位取り中飛車にいきました。直接的に咎めにいくならこれが最善の筈でその意気やよし。しかし後手も中飛車に回り,おおよそ前例のない,構想力が問われるような将棋に進展しています。

 まず,この両立し得ない感情と,心情の動揺との関係を少し考えてみたいと思います。
 今,ある人間Aがいて,この人間のうちで,カレーライスへの愛とラーメンへの愛が両立し得ない状況になっていると仮定してみます。いい換えれば,そうした相反する感情がAのうちに生じていると仮定するわけです。
 このふたつの感情はともに愛という感情です。したがって当然のことながら,それは反対感情ではありません。よって,ここでの考え方としては,この場合には心情の動揺は生じていないということになります。
 実をいいますと,正直なところ,僕にはここのところがよく分からないのです。というのは,こうした相反する感情が成立している場合には,必然的に心情の動揺が生じていると考えても構わないように思えるからです。実際,スピノザは心情の動揺に関して,相反する感情ということばを用いて説明していますので,そう考えてもいいとは思います。しかし,心情の動揺を説明する場合には,スピノザはことごとく反対感情によってこれを説明するのです。ここで心情の動揺を,相反する感情が生じ,かつそれらが反対感情であるという場合に限定したのはそうした理由に依拠しています。
 いずれにしても,この差異自体は,スピノザの感情論の解釈にとって,決定的な亀裂にはならないと思います。したがってここではあくまでも心情の動揺を上述の意味に理解しますが,相反する感情が生じるときには心情の動揺が生じているというように,心情の動揺をさらに広い意味で解釈することも一理あると僕は思いますので,そのように考えても構いません。
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香港国際レース&両立し得ない感情

2007-12-11 20:29:59 | 海外競馬
 9日に香港で行われた国際レースのうち,日本馬が参戦した2レースを,いつものように日本の馬を中心に回顧することにします。
 レース順にまず香港マイル。ここはコンゴウリキシオーが逃げました。追ってきたのはDown Townだけで,かなり楽なペースと思えます。直線までは先頭でしたが,そこから追われるとまったく伸びず,9着と惨敗でした。能力から考えればこんなに離されて負けるとは考えづらく,前走の毎日王冠も春のレース振りからすると負けすぎていましたので,体調面が整っていないのかもしれません。勝ったのは香港のグッドババでした。
 続いて香港カップ。ここはシャドウゲイトが好発。逃げられそうでしたがRoyal Princeを先に行かせて2番手から。3コーナーでこれを交わして先頭に立ちましたが,直線では外の2頭に抜け出され5着でした。ここは前走でイギリスのGⅠを勝っていたドバイのRamontiが優勝。能力的にはシャドウゲイトでは太刀打ちできない相手と思われますので,止むを得ない結果といえそうです。
 マイルではコンゴウリキシオーを追ってきたDown Townが最下位。カップは逃げたRoyal Princeが最下位。やはりペースがよほど緩くならない限り,香港の馬場は先行する馬にとっては厳しいようです。

 明日は広島記念の決勝です。並びは平原ー神山ー手島の関東,村上ー米沢で西日本,石丸ー小林ー西田で中国ですが,地元の小林と西田は競る可能性もあるそうです。城戸崎は単騎。これは関東勢が強力すぎます。

 また,明日から竜王戦七番勝負第六局が指されます。どうせなら第七局も見たいという思いも個人的には強いですが,渡辺竜王からしたらそんなことをいっている場合ではないかもしれません。

 相反する感情として両立し得ない感情,とくに愛という感情について,これをもう少し詳しく分析してみます。
 人間を対象にすると面倒なことになるので,ここではAのうちには,ラーメンに対する愛とカレーライスに対する愛のふたつがあると仮定します。正確にいうならばそれらを食することに対する愛であって,その表象がAに喜びをもたらすわけです。味覚ももちろん表象の一部です。
 これらふたつの愛というのは,大抵の場合にはAのうちで両立し得る愛です。したがってその限りでは相反する感情であるということはありません。しかし,どちらかを食べるとなった場合には別です。ラーメンに対する愛はラーメンを食べる方向へAを引きずるでしょうし,カレーライスに対する愛はAをカレーライスを食べる方向へとAを引きずることになるでしょう。一度に両方を食べれば解決ですが,それはないものとすれば,ラーメンを食べることはカレーライスを食べることを断念することを意味し,逆にカレーライスを食べることはラーメンを食べることを断念することを意味するわけです。したがってこの観点からみる限り,Aのうちでラーメンに対する愛とカレーライスに対する愛は,明らかに両立し得ない感情ということになります。よってこれは明らかに相反する感情であるということになります。
 つまり,Aのうちにあるふたつの感情が両立し得るか両立し得ないかということは,場合によって異なるということが理解できます。よってあるふたつの感情が相反する感情であるかそうでないかということは,絶対的な仕方によって決定することができず,諸個人によって異なることはもちろん,同一人物のうちでも,相反する感情であったりそうでなかったりするということになるといえると思います。
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王将戦&相反する感情

2007-12-10 20:56:21 | 将棋
 王将戦挑戦者決定リーグ戦最終局一斉対局。昨日の予告通り,ここでは深浦康市王位と久保利明八段の一戦を紹介することにします。ここまで深浦王位が12勝,久保八段が9勝。
 ここは久保八段の先手で中飛車。急戦と持久戦を巡っての駆け引きの末,36手目の☖1二香をみて先手が☗4五歩と開戦。後手は☖8六歩と応戦し,以下,継ぎ歩から46手目の☖8七歩成でと金を製造。これが間に合っているのかが一局の成否を握っているといえそうです。
 先手は盤の右側で総攻撃。先手玉が手付かずで後手陣はばらばらなので,先手が勝ちやすそうに思えますが,63手目☗4四歩の局面で佐藤紳哉六段と千葉五段の判断は後手よし。ただ66手目☖4二角の局面では阿久津六段が先手もちとの見解ですので,難しいのでしょう。
 観戦は67手目の☗5四歩の局面から。ここで☖5六歩。☗4五歩と攻め合うのはさすがに無理でしょうから☗4六角。72手目に☖8一飛と引いて,なるほど後手も指せるような気がしました。
 77手目の☗5三歩成は軽妙な感じ。☖同角に☗5二銀成ではなく☗5二金。82手目に☖2六角と逃げましたが,☖5四金のように受けると,角を取って☗5五角と打つのでしょうか。しかし実戦は銀が取れたので,87手目に☗6八飛と回って先手が指せるように思いました。しかし千葉五段の見解では後手が余せるのだそうです。
 ここで☖6六銀は質駒を打つようなもので恐い感じですが飛車を成らせるわけにもいきません。ただ90手目に☖7七ととしたために☗4五銀と打たれて後手玉はきわめて危険になりました。☖7六との方がよかったかもしれません。
 ここから☖4七歩成☗同金☖3七角成としましたが☗同金で先手の勝勢となったようです。同じことなら94手目にすぐに☗3七角成の方が,先手が☗2六歩と打つ一歩がない分よかったかもしれません。
 この後は先手がうまく寄せきって後手が投了。久保八段はリーグ成績を5勝1敗として羽生善治王将への挑戦を決めました。結果的に,順位上位の佐藤二冠と森内名人が勝ちましたので,負ければプレーオフにも進出できなかったところで大きな1勝。王座戦では3連敗しましたが,熱戦の連続でしたので,楽しみなシリーズになりそうです。
 手について何かあればまた()の中に追記します。

 それでは第四部定義五の,相反する感情について,もう少し詳しく考えてみることにします。相反する感情は,ある特定の人間のうちにある感情affectusを意味するので,このことは大前提になります。そこでこの特定の人間を,ここではAと仮定します。
 AのうちにXに対する愛amorとXに対する憎しみodiumがある場合。これは明らかにAを異なった方向に引きずるふたつの感情であるといえます。したがってこれらは必ず相反する感情ということになります。また,愛と憎しみは反対感情でもあるので,これは心情の動揺animi fluctuatioの条件も満たしているといえると思います。
 同様にAのうちにXに対する希望spesと不安(恐怖)metusの両感情がある場合も,やはり相反する感情なのであって,また反対感情ですから心情の動揺が生じているといえると思います。ただし,希望と不安の場合には,愛と憎しみの場合とは少し異なった意味があります。これについては後で考えることにします。
 問題なのは,AのうちにXに対する愛とYに対する愛の両方がある場合です。この場合は,これらふたつの愛というのは,Aを異なる方向に引きずる場合もあるでしょうし,引きずらない場合というのもあるでしょう。別のいい方をすれば,Aのうちで,Xに対する愛とYに対する愛は,両立し得る場合もありますし,両立し得ない場合もあります。そこで両立し得る場合にはこれは相反する感情ではありませんが,もしも両立し得ないような場合には,相反する感情であるということになります。
 このように,反対感情というのは,たとえばXとYは反対感情である,あるいは反対感情ではないと必ず断言できるのに対し,相反する感情の場合には,必ずしも断言できない場合というがあるということになります。
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朝日杯フューチュリティステークス&第四部定義五

2007-12-09 19:03:58 | 中央競馬
 2歳芝のチャンピオン決定戦,第59回朝日杯フューチュリティステークス
 好発だったのがゴスホークケン。すぐに1馬身以上のリードを取り,1番枠であったということもあり,この馬の先導となりました。前半の800メートルが46秒3。ミドルペースです。
 動画をご覧いただければ分かりますが,このレースはこの馬の独擅場となりました。3番手につけていたキャプテントゥーレが4コーナーでは並び掛けたのですが,直線に入って追い出されるとすっと突き放し,後は独走。結果的に2馬身半の差をつけての楽勝でした。キャプテントゥーレが少し外に出たために,4番手を追走していたレッツゴーキリシマが内を掬って2着。キャプテントゥーレが3着。結果的には前に位置した組での決着でした。
 優勝したゴスホークケンはこれで3戦2勝。大レースは初制覇。ゴスホークはオオタカの意味。管理する斎藤誠調教師もこれが大レース初制覇。主戦の田中勝春騎手が香港遠征のため乗り換わった勝浦正樹騎手は2002年のNHKマイルカップ以来の大レース優勝。枠に恵まれたことはありますが,1分33秒5というタイムでの快勝は,素質の高さ以外の何ものでもありません。血統的にいえば距離延長はかなり微妙ですが,あるいは能力の高さで克服という可能性もありそうです。近年のこのレースの勝ち馬の中ではかなりの大物という感があり,この後も無事にいってほしいと思います。

 明日は王将戦挑戦者決定リーグ戦の最終局が一斉に指されます。一局でも大変なのに三局は僕の手には負えません。久保利明八段が勝ちますとすんなり挑戦決定ですので,ここでは深浦康市王位と久保八段の一戦を紹介する予定です。

 僕がいう概念上の反対感情,あるいは本性の上での反対感情の意味はこれでお分かりいただけたのではないかと思います。そこで今度は相反する感情というのを説明します。これは第四部定義五です。
 「相反する感情ということを,私は以下において,人間を異なった方向へ引きずる感情のことと解するであろう。これは共に愛の種類である美味欲と貪欲のごとくたとえ同じ類に属するものであってもかまわない。この場合は本性上相反するのではなく偶然によって相反するのである」。
 この定義で僕が最も重要であると考えているのは,人間を異なった方向に引きずる,といわれるときの,人間というのをいかに理解するべきであるかという点であると思います。そして僕はこれを,同一の人間というように理解します。したがってこれは,ひとりの人間のうちにあって,その人間を異なった方向へ導くようなふたつの感情であるということになります。そして僕はこれを,ひとりの人間のうちにあって,両立し得ないようなふたつの感情という意味に理解します。ひとりの人間がふたつの異なった方向のどちらにも進むということは,それ自体で不可能であることが明らかであり,したがってこうした感情に引きずられる場合には,現実的にはどちらかを選択する形で引きずられ,一方は捨て去るという結果になるでしょう。よってこれらふたつの感情は,そのひとりの人間のうちにあって,結果的にみる限り,両立し得なかったということになるからです。
 つまり,反対感情とは,その感情の本性が相反するという意味で,それは必ずしもひとりの人間のうちにあるのではなくとも構いません。Aのうちの愛とBのうちの憎しみは,心情の動揺であるとはいわれませんが,反対感情ではあります。一方,相反する感情は,あくまでもひとりの人間のうちにあり,かつ両立することができないような,ふたつの感情であるということになります。
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初防衛戦&反対感情

2007-12-08 19:04:20 | NOAH
 RO&Dを一週間天下に終らせた丸藤・杉浦組。スミス選手の負傷によってGHCタッグ王者決定リーグ戦を離脱せざるを得なかったスミス・斎藤組との初防衛戦は,11月25日の札幌大会で予定通りに行われました。
 スミス選手は負傷は癒えたとはいっても,医師には3ヶ月は試合をしないようにいわれていたとのことで,無理をおしての復帰。丸藤選手と杉浦選手に対しては圧倒的な体格の差がありますので,序盤はアイアンクローからフロントスープレックスのように後ろに投げる技なども見せていましたが,場外へのダイブが自爆。本部席に突っ込んでしまい,ダウンを余儀なくされました。
 王者組にとってここはチャンスでしたが,このチャンスは生かせず。スミス選手のアイアンクロースラムから斎藤選手のスイクルデスという反撃を食らったもののここを凌ぎ,最後は斎藤選手を孤立させ,丸藤選手の雪崩式不知火,杉浦選手のオリンピック予選スラムが連続で炸裂。さらに丸藤選手が顔面にトラースキックを決めてからポールシフトで投げきり,初防衛を達成しています。
 スミス選手にとって札幌はGHCヘビーに挑戦したときも一敗地にまみれた場所。それに対して杉浦選手にとっては札幌は縁起のいい地で,この日もその通りの結果になりました。

 明日は朝日杯フューチュリティステークス。自信ないですが中心はスズジュピター◎。キャプテントゥーレ○とアポロドルチェ▲という順で,サブジェクト△とゴスホークケン△。

 香港では国際競争。マイルもカップも有力馬が揃いましたが,日本の2頭に頑張ってほしいところです。

 競輪は明日から広島記念。関東勢が少し手厚いかなという気がします。

 心情の動揺animi fluctuatioaに関しては,僕の方からひとつだけ注意しておいてほしいことがあります。
 これが説明されている第三部定理一七の備考Scholiumの冒頭部分で,スピノザはふたつの相反する感情から生ずる精神状態が心情の動揺と呼ばれるという主旨の説明をしています。しかし僕は相反する感情とはいわずに,概念上の反対感情といいました。概念上の反対感情というのは,本性essentiaの上での反対感情と考えてもらっても構いません。そして僕がこのようにいい換えたことにははっきりとした理由があるのです。それは,僕はここでの考察においては,相反する感情というのと,本性の上での反対感情というのを,厳密に別の意味で使っていきたいのです。このとき,心情の動揺に関係するふたつの感情に関しては,相反する感情でもいいと思うのですが,心情の動揺ということばをスピノザが『エチカ』で用いる例に照らし合わせるならば,むしろ反対感情ということになると思います。
 たとえば,十全な観念idea adaequataと混乱した観念idea inadaequataは,本性の上で反対の観念を意味します。もし感情Xと感情Yとの間に,これと同じ関係があるのであれば,これが本性の上での反対感情を意味します。これは簡単でしょう。基本感情affectus primariiでいえば,喜びlaetitiaと悲しみtristitiaが反対感情にあたりますし,あるいは愛amorと憎しみodiumとか,希望spesと不安metusというのがこの反対感情に該当します。
 心情の動揺をこの反対感情に関係させて説明する場合には,反対感情がある特定の人間のうちで,同一の対象objectumに対して感じられる場合に生じるということになります。したがって,たとえばXを愛してYを憎むのであれば心情の動揺とはいわれませんし,AがXを愛し,BがXを憎む場合にもこれだけでは心情の動揺ではありません。AがXを愛しかつ憎む場合に,Aのうちで心情の動揺が生じているということになります。
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ニューヨーク&心情の動揺

2007-12-07 19:08:21 | NOAH
 
 10月の日本武道館大会でサモア・ジョー選手を相手にGHCヘビー級のベルトを防衛した三沢光晴選手は予定通りに渡米。現地時間11月3日のROHニューヨーク大会でKENTA選手の挑戦を受けました。
 三沢選手は渡米自体が3年ぶり。ROHには初登場でしたが,アメリカでもプロレスファンの間では有名人。これはもうネット社会の賜物で,まだ渡米経験のなかった全日本プロレス時代にすでにその試合は注目されていました。ということで会場は満員。KENTA選手はたびたびROHに出場しているということで,ROH側の依頼によってのタイトル戦。三沢コールもKENTAコールも同じように起きていました。
 三沢選手はヘビー級のレスラーとして,その体格は恵まれているとはいえません。ただ,常々,自分より小さい選手と試合をするのは楽であるということを言っています。KENTA選手は丸藤選手よりさらに小柄の選手ですから,そういう意味では三沢選手にとっては楽な試合であったかもしれません。事実,ここは力で圧倒するようなプロレスを展開し,最後はブレーンバスター式のエメラルドフロウジョンを決めて7度目の防衛に成功。完勝といえるような内容であったと思います。

 第三部定理五六を理解するためには,基本感情affectus primariiのほかにもうひとつ,心情の動揺animi fluctuatioというのがどういうことであるのかということを理解しておかなくてはいけないでしょう。これは第三部定理一七備考で説明されています。ごく簡単にいうならば,ある人間のうちで,同一の対象に対して,概念notioの上での反対の感情をともに抱くとき,この人間の心情が動揺している,あるいは同じことですが,この人間には心情の動揺が生じているといわれます。
 当該部分において,スピノザは愛amorと憎しみodiumを例に説明していますが,僕たちが頻繁に経験する心情の動揺というのは,希望spesという感情affectusと,スピノザがmetusというラテン語で示している感情との間での心情の動揺ではないかと思います。metusは岩波文庫版の『エチカ』では恐怖と訳されていますが,これはその内容からして不安といった方がいいかと思いますので,僕は不安といいます。したがって僕が不安という感情は,岩波文庫版でいう恐怖という感情に該当しますので,この点はご注意ください。
 僕たちはある事柄,とくに未来に関係するある事柄を表象するimaginariことによって,希望という感情を抱くことがあります。ところがそれと同一の未来に関係するある事柄の表象によって,不安に苛まれるという場合もあるわけです。これは多くの人が経験していることではないかと思います。希望と不安は,少なくとも『エチカ』においては概念上の反対感情にあたります。したがってこういう場合,僕たちには心情の動揺が生じているということになるのです。
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倉敷藤花戦&基本感情

2007-12-06 18:52:34 | 将棋
 斎田晴子倉敷藤花,清水市代女流王将が1勝ずつをあげて迎えた第15期倉敷藤花戦三番勝負第三局は,11月23日に指されました。遅くなりましたがここで紹介します。
 振駒で先手は清水王将。後手のごきげん中飛車に対して☗7八金と上がり,先手が2筋,後手が5筋の歩を交換するのは第一局と同じ。25手目と27手目が入れ替わってはいますが,ここまで同一局面で進行しました。
 第一局は後手が勝ちましたが,途中は先手が優勢でしたので後手から変化するのは当然。玉の囲いを後回しに☖3三桂と跳ね,☖1三角と上がって別の将棋に。
 先手の作戦はとにかく中央からの抑え込み。後手が38手目に☖2一飛と回って☗2七歩と受けさせたのはポイントでしょうが,これ以上踏み込む順がなかったようです。
 そうこうしている間に先手は金銀を中央に集中。64手目の☖3五歩は待望の桂頭攻めですが,ここから☗5二歩☖同飛☗5三歩☖5一飛と抑えてから☗2五桂で桂交換。直後に☖7四桂と角銀両取りに打たれて駒損にはなりますが,すぐに☖5三飛と出ると☗2一飛成と成りこまれてしまうので一旦は☖2四歩と打たなければいけなかったのが後手の泣き所。これで角が使えなくなってしまいました。
 先手は81手目に☗8六桂と据え,87手目には☗7五桂と2枚目の桂馬を打ちました。さらに8九の桂馬までが101手目に☗6五桂と跳ね出せて必勝の構え。以下,いくばくもなく後手の投了となりました。☖9四王と逃げれば詰むわけではありませんが,☗6二成桂くらいでも先手の楽勝でしょうから止むを得ないでしょう。とにかく一局を通して先手のいいところばかりが出たという印象です。
 女流王位を失い,第一局も敗れ,トップを走っていた女流名人戦のA級リーグでもすでに降級の決まっていた相手に負けるなど,清水新倉敷藤花は不振を極めているという印象でしたが,ごく短期間の間に立ち直ったようでこれで再び二冠に復位。一方の斎田前倉敷藤花はこれで無冠に転落となってしまいました。

 第三部定理五六を確実に理解するためには,これはスピノザの感情論の基本中の基本といえるであろう,人間の基本感情affectus primariiという考え方を知っておかなければならないと思います。スピノザは,人間の感情というものは,その基本感情としての,欲望cupiditas,喜びlaetitia,悲しみtristitiaの3種類以外には存在せず,それ以外の名称で呼ばれるような感情についてはすべて,これら3種類の感情のどれかに含まれると考えているのです。この定理Propositioにおいて,あらゆる感情がこれらみっつの感情の合成されたものか,そうでなければこれらみっつの感情から導き出されたものであるかのどちらかであるといわれているのは,こうした理由によっています。
 たとえば第三部諸感情の定義一八における憐憫commiseratioですが,これはその定義Definitioに示されているように悲しみの一種であるということになります。また第三部諸感情の定義二四で示されている,憐憫の習性としてみられない限りでの同情misericordiaという感情は,ある種の愛amorという感情であるといわれていますが,愛という感情自体は第三部諸感情の定義六において喜びの一種であるとされていますから,この場合は同情という感情はある種の喜びであるとみなされていることになります。このように考えれば,憐憫と同情がまったく異なった種類の感情であるということは,さらに容易に理解できるでしょう。憐憫が基本感情のうちの悲しみとされるのに対し,同情はむしろ喜びとされているからです。
 このように,どんな複雑に思われるような感情もこれら基本感情のどれかなのです。そしてその感情がそのうちのどれであるのかということは,今回のテーマに大きく関係してくるといえるのです。
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クイーン賞&第三部定理五六

2007-12-05 19:09:17 | 地方競馬
 春にNHKマイルカップを勝ったピンクカメオが参戦。初めてのダートでどんなレースをするかがひとつの注目であった第53回クイーン賞
 ここ2戦,1200メートルに出走していたということもあったでしょうか,メイショウバトラーが少し掛かるような感じでの逃げとなりました。ホワイトメロディー,デアリングハートとJRA勢が前を占めました。メイショウバトラーの武豊騎手は必死に抑えて前半の800メートルは48秒0。ハイペースではあるでしょうが許容範囲とはいえるでしょう。
 後方の馬の目立った追い上げがないまま3コーナーを迎えると,ホワイトメロディーがメイショウバトラーに並び掛けていき,デアリングハートとの差が広がりました。4コーナーに入った時点ではどう見てもホワイトメロディーの方が手応えがよく,ここで勝負あり。直線は差を広げる一方で,4馬身の差をつけての快勝となりました。メイショウバトラーは完全に止まってしまい,デアリングハートに再び追い詰められましたが凌いで2着。デアリングハートが3着と,結局は前に行った3頭で決まっています。
 優勝したホワイトメロディーは6月の関東オークス以来の勝利で重賞2勝目。父はクロフネ。このレースはハンデ戦で,メイショウバトラーとは実に5.5キロもの斤量差がありましたが,それを補ってあまりある快勝といえ,牝馬のダート路線では一躍トップクラスに入ったといえそうです。今後はこの馬がこの路線の中心的存在となっていくかもしれません。
 デアリングハートと5着のピンクカメオは可もなく不可もなくといったレース振り。ただ,これまで戦ってきた相手関係からすれば,やはり芝の方がよいとはいえそうです。

 たとえば愛amorは,Xに対する愛とYに対する愛とを比べて,より大きな喜びlaetitiaを感じる方をより愛しているということで比較ができます。そしてこれは愛に限らず,定義された,あるいは『エチカ』には定義されていないような感情affectusの場合にも同様です。そして感情の比較というのはこの観点からのみ可能であって,したがってこの観点からは感情というものがある量的な概念notioであると考えられるのは,やはりスピノザの哲学における感情論のひとつの特徴であろうと僕は考えています。
 しかし,さらにスピノザの感情論を厳密に考えていくならば,確かにXに対する愛とYに対する愛は,同じ愛という感情として量的に比較することができるのですが,実際には,このXに対する愛と,Yに対する愛というのは,同じひとりの人間のうちで,別の感情であると考えられなければなりません。このことを示しているのが第三部定理五六です。
 「喜び,悲しみ,および欲望には,したがってまたそれらから合成されたすべての感情(例えば心情の動揺のごとき),あるいはそれらから導き出されたすべての感情(例えば愛,憎しみ,希望,恐怖など)には,我々を刺激する対象の種類だけ多くの種類がある」。
 この定理Propositioが,端的にいって,対象objectumが異なるだけ種類も異なる感情があるということを示していることは間違いないと思われます。ですから,Xに対する愛と,Yに対する愛は,対象が異なる分だけ異なった種類の感情であるということになります。もちろんこれは,愛だけに限らずすべての感情に妥当であるとされていますから,Xに対する憐憫commiseratioと,Yに対する憐憫もまた,異なった感情であると考えられなければなりません。
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全日本選抜競輪&感情の比較

2007-12-04 19:22:27 | 競輪
 今年のベストナイン,すなわち競輪グランプリの出場選手もこれによって確定する全日本選抜競輪決勝。各選手が持ち味を出し,素晴らしいレースとなりました。
 前受けは平原選手。新田選手が3番手に続き,5番手には小嶋選手。後方となった佐藤友和選手は,残り2周のバックまで小嶋選手に蓋をして,打鐘で平原選手を叩いて先行となりました。新田選手がうまく追い上げて4番手を確保。小嶋選手は一気に発進し,バックではこのライン2車が捲りきって前に。山崎選手はこのラインの3番手にスイッチし,捲ってきた新田選手を牽制。ここで内が開いたので佐藤慎太郎選手に突っ込まれましたが,直線に入ると外から踏み直して内の3車を抜き返して優勝。後方からの捲り追い込みになった平原選手が外を2着に届き,平原選手マークの神山選手が3着でした。
 優勝した福島の山崎芳仁選手は前回の花月園記念に続く連続優勝。ビッグは8月のふるさとダービー函館以来,GⅠは1月の競輪祭に続いて今年2勝目。現時点で最も強いと思われるふたりが連係し,番手を回ったわけですから,ある意味では当然の優勝ともいえますが,一旦は完全に捲りきられてしまったレース展開は楽とはいえず,熊本の滑走路といわれる長い直線を念頭に,余裕をもって落ち着いてレースができたということではないでしょうか。脚力だけでなくレース運びでもこれだけのうまさをみせられるなら,今後も競輪界の中心選手として活躍していきそうです。
 しかし佐藤選手を一旦は捲りきった小嶋選手もさすがの強さを見せたといえます。まだ怪我からの復帰2走目で,やはり北日本のふたりに力勝負で対抗できるのは,この人のほかにはいそうもありません。
 冒頭にも述べたように,非常に素晴らしい内容のレースで,それ以外の各選手にも拍手を送りたいです。

 明日は船橋でクイーン賞があります。ここはメイショウバトラー◎,パフィオペディラム○,ホワイトメロディー▲の3頭を上位視。あとオリビアフォンテン△とシーホアン△。軽視しますがピンクカメオとデアリングハートのレース振りには注目ですし,あっさり勝つこともあり得るでしょう。

 スピノザの哲学における感情の性質は,ある定義の範疇に収まるような同一の感情については,それを質的に区別することができない,したがって,この観点において感情は質的な概念であるとはいえないということを示唆しているように思えます。しかしこのことは,必ずしも,この観点から,感情を比較することができないということを意味するわけではないと,僕は考えています。なぜなら,確かに感情は質的に区別ができないとしても,量的には明らかに区別し,また比較し得ると思うからです。
 たとえば愛の定義である第三部諸感情の定義六をみてみましょう。ある人の精神のうちにXの観念が生じることによってこの人が喜ぶなら,この人はXを愛しています。またこの同じ人の精神のうちにYの観念が生じる場合にもこの人が喜びを感じるなら,この人はYを愛していることになるでしょう。ここには質的な差異はなく,この人はXもYも同様の意味で愛しているのです。しかし,Xの観念によって生じる喜びよりも,Yの観念によって生じる喜びの方が,より大きな喜びであるということはあり得るでしょう。そしてこの仮定の場合には,この人はXよりYを愛しているということになります。愛という感情の場合には,こうしたことが人間の精神のうちによく生じているということは,僕たち自身が経験的によく知っているところではないかと思います。
 僕はこうしたことが,愛に限らずすべての感情に妥当すると考えています。いい換えれば,この観点によって感情は互いに比較することが可能であると思います。したがってこれを一般的にいうならば,この観点から,スピノザのいう感情という概念は,質的な概念ではなく,むしろ量的な概念であるということになるだろうと思います。
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香港国際レース展望&感情の性質

2007-12-03 20:13:48 | 海外競馬
 12月恒例の香港における国際レース。今年は9日に行われる予定となっています。香港は近いということもあって,毎年日本からも多くの馬が参戦しているのですが,今年は日本で馬インフルエンザが発生した影響で,日本の馬に対する検疫が厳しくなったこともあり,2頭のみが参戦の予定。香港は北京オリンピックで乗馬競技が開催される予定ということで,検疫を強化せざるを得ない状況であったようです。
 香港はすべて芝のレース。2000メートルの香港カップに出走を予定しているのは5月にシンガポール航空国際カップを制したシャドウゲイト。この馬は2000メートル前後の距離を得意としていて,適鞍を求めての遠征といえそうです。また,日本の馬はレベルが高いですから,このクラスの能力の馬は,むしろ海外の方が大レースに手が届きやすいという面もあるかもしれません。それでも,シンガポールに比べれば香港はレベルが高いですから,勝つのは難しそうな気がします。
 1600メートルの香港マイルには,安田記念でダイワメジャーに僅差の2着と健闘したコンゴウリキシオーが出走の予定。ダイワメジャーは間違いなく世界クラスの馬で,それとあれだけの勝負をしていれば,力は通用すると考えられます。したがって勝機はこちらの方が高いのではないでしょうか。
 2頭ともに,あまりペースを緩めずに逃げ,ないし先行するレースを得意にしています。ただ,このようなレースをする馬は,香港では苦戦するという印象が僕にはありまして,この点は不安材料といえるかもしれません。2頭はすでに11月28日に現地入りして調整をしています。勝ち負けは別に,十分に力を発揮できる状態にもっていってほしいです。

 明日は全日本選抜競輪の決勝です。並びは佐藤友和-山崎-佐藤慎太郎の北日本,平原-神山の関東,新田-渡辺の静岡,残った小嶋に兵藤。あまり邪魔されることがなさそうなメンバー構成ですので北日本が中心でしょう。

 愛の性質からして,愛という感情は,その対象がどういったものであるのかということによっては質的な差異を求めることができません。しかしこのことは,実はただ愛という感情にだけ妥当するというわけではなくて,おおよそすべての感情にとって同じことです。なぜなら,ある感情がある仕方で定義されるならば,そう定義された内容を有するような感情は,対象の有無や如何に関わらず,すべて同様の性質を有するということになり,結果的に,質的な差異をそこに見出すことは不可能であるということになるからです。
 このことをたとえば第三部諸感情の定義一八で定義されている憐憫という感情でみてみます。すると,ある観念が精神のうちに浮かび,さらにその観念の対象の悲しみを思い浮かべることによって自身も悲しみを感じるなら,こうした感情はすべて憐憫といわれるわけです。したがってこのことは,最初に思い浮かべる観念の対象が何であるかということとは関係ありません。つまり,憐憫という感情は,その対象を問うものではないのです。
 ここでは愛と憐憫についてのみ具体的に調べてみましたが,別のどんな感情の場合を調べたとしても,これと同じことがいえるのではないかと思います。したがって一般に,スピノザの哲学においては,ある同一の感情の間では,質的な差異というものは一切ないということになると思います。すなわち,ある感情と別の感情とを比較する場合にはまた別のことがいい得る場合もあるかもしれませんが,少なくとも,一定の定義にあてはまるような同一の感情というのを考えてみた場合には,スピノザの哲学における感情という概念は,ある質的な概念ではないということになると僕は考えています。
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阪神ジュベナイルフィリーズ&愛の性質

2007-12-02 19:09:47 | 中央競馬
 芝の2歳牝馬ナンバーワン決定戦の阪神ジュベナイルフィリーズ
 ラルケットが出遅れ。レーヴダムールとトラストパープルはあまり出足がつきませんでした。まだ脚質の定まっていない2歳馬ですが,前走のファンタジーステークスで派手な逃げをうち,2着に粘っていたエイムアットビップが逃げるかどうかはひとつの注目点。今日は中団に控えました。先行争いはなかなか決着がつきませんでしたが,最終的にはエイシンパンサーが先導する形。前半の800メートルは46秒2.最近の競馬の傾向からすればハイペースに近いミドルペース,舞台となった阪神の1600メートルはスローペースのレースの方が多いくらいなので,それを考えればハイペースといっていいかもしれません。
 1番人気に推されたオディールは,好位から直線の入口で前を射程圏に入れました。これにカレイジャスミンが並びかけていったので追い出し,この馬は振り切ったのですが,外から3頭。控えたエイムアットビップが一旦は先頭に立ったものの,さらに後ろからトールポピーとレーヴダムール。クビ差凌いだトールポピーが優勝。レーヴダムールが2着,エイムアットビップが3着でした。
 優勝したトールポピーはこれで4戦2勝2着2回。当然ながら大レースは初制覇。オーストラリア英語でVIPを意味する馬名とのこと。池添謙一騎手は一昨年のエリザベス女王杯以来の大レース優勝で,栗東の角居勝彦調教師はダービー以来の大レース制覇。少しだけ展開に助けられた面はありますが,まずまずの勝ちタイムで,順調なら来年のクラシックでも有力候補でしょう。今日のレース振りからすると,距離はもう少しあってもいいように感じました。

 第三部諸感情の定義六により,『エチカ』あるいはスピノザの哲学における愛という感情の定義が分かりましたので,ここでスピノザの哲学における愛の性質というのを少し考えておくことにします。
 僕がこの定義の最大の特徴だと思うのは,人間が愛という感情を抱く対象が,自分自身以外であればどんなものであっても成立し得るという点です。つまり,十全であるか混乱しているかを問わず,ある観念が人間の精神のうちに生じるとき,その観念の発生によってその人間が喜びを感じる場合,その対象がどんなものであっても,その人間はそれを愛しているということになります。かくして,たとえば僕がスピノザの観念を有することによって喜びを感じるならば,僕はスピノザを愛しているということになるでしょう。もちろんこうした対象は人間に限定せずともよいわけで,たとえばムツゴロウさんがある動物の観念を有することによって喜びを感じるなら,彼はその動物を愛してるということになり,またギャル曽根さんが何らかの食べ物の観念を持つことによって喜びを感じるなら,彼女はその食べ物を愛しているということになります。あるいは,羽生二冠が将棋そのものの観念を有する場合に喜びを感じるということがあるなら,そのとき羽生二冠は将棋を愛しているということになるのです。
 このように,愛する対象が愛という感情にとってどんなものでもよいということであれば,各々の愛という感情の間には,何らの質的な差異がないということになると思います。いい換えれば,ある観念を有する場合に喜びを感じるか否かということのみが重要であって,喜びを感じるのであれば,それら個々の感情を,愛という感情の質という点から比較することはできないということになると思います。
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