[あらまし] 同居母86歳パーキンソン病要介護2認知症状少々。
週に2回デイサービスに通っている。
母のいない間にすごい勢いで掃除する。
着替えるときにリハビリパンツからナニらかの物が転がり出たり、
食事や飲み物などはこぼしたりしてしまうのは当たり前だ。
こぼさないようにするというよりは、こぼしたものが広がったり、
浸み込んで床板を傷めたりしないようにしておく。
キッチンの床には、透明のプラスチックシートを貼り付け、
その上に吸着マットを敷き詰めている。
マットは45㎝四方で、汚れた部分だけ剥がして洗えば良い。
床にはセスキを溶いた水をスプレーして、マイクロファイバークロスで拭く。
拭き掃除しても何かにおう。
嗅覚はすぐににおいに慣れやすいが、一方で、においを記憶したり、
気にし過ぎるとにおう気がしてしまうこともよく有る。
何かにおう気がするが、気のせいなのか、
それとも見えない所に何かが落ちているのか、木の部分ににおいが染み付いてしまっているのか、
分からない。
分からないから気になる。
嗅ぎ直してみる。分からない。
※
こぼしたり、拭き掃除したり、ということが多いと、
この時期なかなかすっきり乾かない。
カビが生えたらイヤだ。
カビに勝つには、他の善い菌を増やすことだ。
麹菌は線香を焚いている所が好きらしい。
留守の間だけでも、線香を焚く。
日本の宗教の習慣は、日本の気候や家屋に合ったものなのではないかと思える。
母はキリスト教なので、毎日線香を焚くという習慣は無い。
においが気になることも解消できる。
※
今はすっかり薬の効果で抑え込まれているが、
パーキンソン病の最初の数年間は、手の震えが一番の問題だった。
何もしようとしていない時に、右手が震え続ける。
丸薬を丸めるような動作をし続ける。
不随意運動とはいえ、動き続けることは疲れると言う。
この安静時の震えは、緊張すると強まった。
なじみの無い人ときちんと話そうとする時、
約束の時間が迫った時、難しい事柄を説明したり正確にものを言おうとした時。
気持ちの緊張感や不安感が、症状を強めた。
※
パーキンソン病の薬としては、ドーパミン剤を中心として、
その効果を持続させるために補助的な薬を併用する。
薬はいろいろな種類を試し、副作用が出にくいものを選んできた。
そして、ドーパミン剤の量はなるべく増やさないように、している。
パーキンソン病の特徴として、薬の効きが出ないウェアリング・オフという現象が有る。
ここ数ヶ月、これが起きるようになっているようだ。
これが、本人はとてもつらいと言う。
一日に一度、ある日は二度、無い日も有る。いつ来るか分からない。
※
デイサービスでは、調子が悪い時はすぐにわきの部屋でベッドに寝かせてもらえる。
広いフロアのわきの部屋で、しかし間口は広く、中の様子はフロアにいるスタッフからもよく見える。
良くできた構造だと思う。
でも、デイサービスでオフの状態になるのが怖い、と言う。
「今日だけでもサボらせて」と言う。
※
後で飼い犬ジーロくんの点滴を手伝いに来てくれた友人Mに話したら、
「なんかのしつけと同じだねっ。」と言う。
やっぱり、そうだよね。
「一回オッケーしたら前例ができちゃうね。"今日だけ"にはならないね。」
※
デイサービスに出かけている間は、私の好きなタイミングで好きな所を掃除して、
半日は掃除された状態が保てる。
これが週に2回の楽しみ、私の安心だ。
しかし、朝「休みたい」と言い出すのでは、安心は消し飛ぶ。
「今日だけサボらせて」という言葉を聞いて、私は座り込んで考え込んでしまった。
数日前に転倒しておでこにたんこぶこさえた時も、
うまいこと説得してデイサービスに送り出した。
落ち着いてよく考えて、説明して安心させれば、行く気になるだろう。
そうでないと、私の週2回の安寧は崩れてしまう。
立ち直ってみると、ベッドから声がした。
「行きます。」
さっきまで泣き言を言っていたのとは打って変わって力強い声だ。
ものの5分くらいしか経っていないが。
そ、そうですか。
よく気持ちを切り替えて決断しましたね、この短い間に。
と、ほめてみたが、何かまだゴニョニョ言うので、聞かないようにした。
※
大学病院で担当の医師に話した。
三十代半ばでひょろりと背の高い、謙虚な雰囲気で、
シャツにほつれなんかの有る先生だ。
心ひそかに「うちの息子」と呼んでいる。
「オフはどれくらい続くんですか?
ふーん、なるほど、一日の大半がオフで動けないという患者さんなら薬を増やしますけど、
一日に40分ということなら、取り立ててどうかするよりも、
今、副作用も出ないでうまく行っていますから、
しばらく休んでかわしてもらったほうがいいですね。」
と、うちの息子はのんびりした口調で言う。
私はこの先生のこういう雰囲気が好きだ。
内容と相まって、説得力を持っている、と感じた。
帰りの車で話したら、母は納得していなかった。
残念だなあ。
母は、困ると「先生の指示に従う。」と言うくせに、
困ると「納得できない。」と言う。
どっちじゃ。
素直であるように、とナホ子という名前を付けられたと言うが、
叶わなかったか。
※
「不安だと症状が出やすくって、症状が出るのが不安で、っていうんじゃ、
病気が先か気持ちが先か、タマゴが先かニワトリが先か、っていう感じだね。」
と友人Mが言う。
まさにその通りなのだ。
今は起きていないことにただ不安を感じて心身を緊張させてしまう、
そのこと自体が病気である、自分で病気を作っていると言える。
※
うちの息子は健康そうだなあ。
週に2回デイサービスに通っている。
母のいない間にすごい勢いで掃除する。
着替えるときにリハビリパンツからナニらかの物が転がり出たり、
食事や飲み物などはこぼしたりしてしまうのは当たり前だ。
こぼさないようにするというよりは、こぼしたものが広がったり、
浸み込んで床板を傷めたりしないようにしておく。
キッチンの床には、透明のプラスチックシートを貼り付け、
その上に吸着マットを敷き詰めている。
マットは45㎝四方で、汚れた部分だけ剥がして洗えば良い。
床にはセスキを溶いた水をスプレーして、マイクロファイバークロスで拭く。
拭き掃除しても何かにおう。
嗅覚はすぐににおいに慣れやすいが、一方で、においを記憶したり、
気にし過ぎるとにおう気がしてしまうこともよく有る。
何かにおう気がするが、気のせいなのか、
それとも見えない所に何かが落ちているのか、木の部分ににおいが染み付いてしまっているのか、
分からない。
分からないから気になる。
嗅ぎ直してみる。分からない。
※
こぼしたり、拭き掃除したり、ということが多いと、
この時期なかなかすっきり乾かない。
カビが生えたらイヤだ。
カビに勝つには、他の善い菌を増やすことだ。
麹菌は線香を焚いている所が好きらしい。
留守の間だけでも、線香を焚く。
日本の宗教の習慣は、日本の気候や家屋に合ったものなのではないかと思える。
母はキリスト教なので、毎日線香を焚くという習慣は無い。
においが気になることも解消できる。
※
今はすっかり薬の効果で抑え込まれているが、
パーキンソン病の最初の数年間は、手の震えが一番の問題だった。
何もしようとしていない時に、右手が震え続ける。
丸薬を丸めるような動作をし続ける。
不随意運動とはいえ、動き続けることは疲れると言う。
この安静時の震えは、緊張すると強まった。
なじみの無い人ときちんと話そうとする時、
約束の時間が迫った時、難しい事柄を説明したり正確にものを言おうとした時。
気持ちの緊張感や不安感が、症状を強めた。
※
パーキンソン病の薬としては、ドーパミン剤を中心として、
その効果を持続させるために補助的な薬を併用する。
薬はいろいろな種類を試し、副作用が出にくいものを選んできた。
そして、ドーパミン剤の量はなるべく増やさないように、している。
パーキンソン病の特徴として、薬の効きが出ないウェアリング・オフという現象が有る。
ここ数ヶ月、これが起きるようになっているようだ。
これが、本人はとてもつらいと言う。
一日に一度、ある日は二度、無い日も有る。いつ来るか分からない。
※
デイサービスでは、調子が悪い時はすぐにわきの部屋でベッドに寝かせてもらえる。
広いフロアのわきの部屋で、しかし間口は広く、中の様子はフロアにいるスタッフからもよく見える。
良くできた構造だと思う。
でも、デイサービスでオフの状態になるのが怖い、と言う。
「今日だけでもサボらせて」と言う。
※
後で飼い犬ジーロくんの点滴を手伝いに来てくれた友人Mに話したら、
「なんかのしつけと同じだねっ。」と言う。
やっぱり、そうだよね。
「一回オッケーしたら前例ができちゃうね。"今日だけ"にはならないね。」
※
デイサービスに出かけている間は、私の好きなタイミングで好きな所を掃除して、
半日は掃除された状態が保てる。
これが週に2回の楽しみ、私の安心だ。
しかし、朝「休みたい」と言い出すのでは、安心は消し飛ぶ。
「今日だけサボらせて」という言葉を聞いて、私は座り込んで考え込んでしまった。
数日前に転倒しておでこにたんこぶこさえた時も、
うまいこと説得してデイサービスに送り出した。
落ち着いてよく考えて、説明して安心させれば、行く気になるだろう。
そうでないと、私の週2回の安寧は崩れてしまう。
立ち直ってみると、ベッドから声がした。
「行きます。」
さっきまで泣き言を言っていたのとは打って変わって力強い声だ。
ものの5分くらいしか経っていないが。
そ、そうですか。
よく気持ちを切り替えて決断しましたね、この短い間に。
と、ほめてみたが、何かまだゴニョニョ言うので、聞かないようにした。
※
大学病院で担当の医師に話した。
三十代半ばでひょろりと背の高い、謙虚な雰囲気で、
シャツにほつれなんかの有る先生だ。
心ひそかに「うちの息子」と呼んでいる。
「オフはどれくらい続くんですか?
ふーん、なるほど、一日の大半がオフで動けないという患者さんなら薬を増やしますけど、
一日に40分ということなら、取り立ててどうかするよりも、
今、副作用も出ないでうまく行っていますから、
しばらく休んでかわしてもらったほうがいいですね。」
と、うちの息子はのんびりした口調で言う。
私はこの先生のこういう雰囲気が好きだ。
内容と相まって、説得力を持っている、と感じた。
帰りの車で話したら、母は納得していなかった。
残念だなあ。
母は、困ると「先生の指示に従う。」と言うくせに、
困ると「納得できない。」と言う。
どっちじゃ。
素直であるように、とナホ子という名前を付けられたと言うが、
叶わなかったか。
※
「不安だと症状が出やすくって、症状が出るのが不安で、っていうんじゃ、
病気が先か気持ちが先か、タマゴが先かニワトリが先か、っていう感じだね。」
と友人Mが言う。
まさにその通りなのだ。
今は起きていないことにただ不安を感じて心身を緊張させてしまう、
そのこと自体が病気である、自分で病気を作っていると言える。
※
うちの息子は健康そうだなあ。
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