犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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映画『私の男』から

2019年09月12日 | からだ
15年以上前に見たのに、忘れられない夢が有る。

何年か前に別れた恋人と、すれ違いの喧嘩をした。
些細なきっかけだったように思うが、
経緯を説明しても納得してもらえない。
本当に、ちょっとの行き違いに過ぎないのに。
後悔ばかりするが、後悔はしても何も解決されない。
そのまま関係は崩れていってしまう。

しかし、ある時、その行き違いの様子を見るのだ。
客観的な視点に立っている。
恋人はもちろん、自分の姿も見えている。
そして、その時の経緯を一部始終、私は見る。
まるで、巻き戻したビデオテープを再生するかのように。

ただ、見るだけ。
その時の自分の言動を変えることはできない。
過去の自分になり替わることはできない。
声をかけて教えてやることもできない。
何も手出しできず、
ただ、見るだけ。

目が覚めて、やりきれない気持ちで涙が出た。
「何年か前に別れた恋人と」のところから夢である。
だから、現実に何年か前に別れた恋人とのすれ違いを
見たわけではない。

しかし、過去というものはどうにも変えようが無い
ということを夢に思い知らされたように感じたのだ。



現在は、無いにも等しいくらいの一瞬で過ぎ去る。
瞬く間に過去となる。
同様に、私たちが未来と呼んでいるものも、
あっという間に目の前の現在となり、過去となる。

現在だけでなく、未来もはかない。
有るのは過去ばかり。



[いきさつ] 今春のテレビドラマで「ストロベリーナイトサーガ」を観た。
暴力団幹部と女性刑事が情を交わす。
抑制の利いた演出と、主演の二階堂ふみさんの演技に嘆息した。[イイ]

そんなら、と映画「私の男」(2014)を観た。
二階堂さんと共演するのは浅野忠信さんである。
雑に言うと、育ての父と娘が男女の関係になるお話だ。

主人公の女性は物語の最後には20代半ばくらいに成長する。
二階堂さんが演じるのは、中学時代からだ。
どちらにも見える。
そして「イケナイ関係」を演じるとなんてすばらしいのか。

浅野さんが獣風味な中に異様に優しげな目つきをするのも、
役柄にぴったりだ。



映画を観ていて、ちょこちょこと不満は有った。
では、原作ではどうなっているのか。
しゃあねえ、読むか。

調べると、家族を舞台にした連作のように見ている人もいる。
じゃあ前の作品から読む。いつもの遠回り癖が出る。



『赤朽葉家の伝説』(2007)はいくつかの賞を受けている。
直木賞に、また「センス・オブ・ジェンダー賞」というのにノミネートされたそうだ。

なんだその賞は。
調べると、ボーイズラブ漫画や異類婚姻ものの作品などが受賞している。
おや、2007年には私の大好きな『犬身』が大賞にノミネートされて、
松浦理英子さんは辞退している。あはは、やるう。

『赤朽葉家』の奥様の旧友の兄は、復員してきた後、女装して狂ったようになり自死する。
その他にも、ジェンダーに関わる表現が作中にところどころあらわれる。

つづく
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