カーリダーサって、高校世界史で出てきた気がする。
『シャクンタラー妃』とセットで憶えたのではなかったか。
ただ人名と作品名を頭に叩き込んだだけだった。
いや、なんとかいう王様のお抱えだったってなことで
その王の名や王朝の名前も暗記したのだったか。
※
強い王がいてしばらく戦が無いとか
戦をしては勝って他の国を制圧するから
金も入るし文化も入るとか
そんなこんなの理由で文化が栄える。
宮廷で楽しまれる文芸だったようだ。
王族だの貴族だののお楽しみだったのだろう。
※
自力でサンスクリットの文章を読もうとしても、なかなか難しい。
文法的な解釈ももちろん自分の力では不完全だ。
辞書はウェブ上の梵英辞典を使っている。英語を調べる二度手間もかかる。
作品なり文献を読むにも、インド的基礎知識が必要な場面が多い。
哲学的な文献なんか、とても独力では読めない。
読むものじゃない。
気楽な内容の文学作品でも読むかいな。
と考えて、ちょっとカーリダーサの『リトゥサンハーラ』を読もうとした。
英国領だった時代のインドで盛んに出版された頃のものが、
ウェブ上の図書館で見ることができる。
注釈の部分も読むけれど、どうも分からない。
※
[あらすじ] サンスクリットを独習し始めたのは5年くらい前だったか。
今は、東大仏教青年会によるZOOM講義を受講している。
先生がいると楽だなあ。
去年から「サンスクリット中級」コースが開講された。
ちょうどいい。ありがたい。
講師の先生は、毎回あちこちから文章を引っ張ってきて解説してくれる。
7月のある時、カーリダーサの『リトゥサンハーラ』からの一篇が選ばれた。
あらま。これよこれ。
夏の乾季の様子である。
どこもかしこも干上がっているので、わずかな水の所に
象も牛もライオンも集まって、争うことも無く一緒にいるという場面だ。
先生は、注釈の部分も解説してくれた。
注釈の書き方にもパターンが有る。それを知ると、格段に読みやすくなる。
ありがたい。
※
『リトゥサンハーラ』とは、『季節集』ってな意味だ。
私も日本人らしく、季節の話題が好きだ。
ただし、インドの季節は日本とずいぶん違う。
その違った様子を読めるのも楽しい。
四季ではなく、三つの季節だという。
暑い季節と、雨季と、寒季らしい。
作品は6つの章に分かれている。
夏から始まる。
しかし、読み始めてすぐにぶったまげた。
暑い夏の楽しみは、日が暮れた後、
夜に風通しの良い屋上で涼しい月の光を浴びて
白く映える女性の丸いお尻と乳房と香油の甘い香りが
どうちゃらこうちゃら
という詩が何句も何句も続く。
いやー、もういいだろ尻と胸は、
と私ですら思うくらいしつこく女性の肉体美を讃える詩が続く。
いい加減飽きた、と思った頃(第10篇)に、
描写は太陽と熱風の景色に移る。
以降、普段は食うか食われるかの関係のはずの動物たちが、
太陽の暑熱にやられて休戦状態だという描写が続く。
蛇が孔雀の羽の陰で休み、
象とライオンも戦わず、
蛙はコブラの襟を日除けにする。
そのうち、山火事が起こる。
サフランのように赤い、舌のような炎が風に煽られ一気に広がり
四方を焼き尽くす。
新約聖書の精霊降臨の箇所で、
弟子たちの頭上に降りる炎を「舌」と表現していて奇妙なこったと思っていたが、
そういうもんなのか。
日本でも炎を舌に喩えることって、有ったかいな。
そして、夏の部の最後は、また冒頭のような夜の情景に戻り、
読者のみなさまがこういうものに囲まれてステキな夏を過ごせますように
ってなことで締めくくられる。
※
というのを、8月一杯かけて読んだ。
次の章を読み始めている。
秋は、どうやら雨季のようで、雲や雷の表現が続く。
雲はインドでは吉兆として喜ばれるらしい。
雨をもたらして暑熱をやぶってくれるイイヤツなのだ。
そしてちょうど東京も暑さがおさまって、
ちょっと困るくらいに雨が多い。
※
やっぱり季節のものは共感しながら読むことができて、いい。
ゆっくり、一年かけて読めば良いと考えている。
飽きなければの話。
https://archive.org/details/rtusamhara/page/n1/mode/2up
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