[あらすじ] 新宿二丁目の女性専用バー、鉄板女酒場どろぶねが、
営業自粛期間を利用して大改装するにあたって、お手伝いすることになった。
https://blog.goo.ne.jp/su-san43/e/f533f4d96c1612a3f8459d1ec32567bb
LINEでの打ち合わせで挙がった改装ポイントはたくさん有った。
・壁掛けテレビを外したい。
・コード類を隠したい。
・収納が必要。
・衣装などをスッキリ片付けたい。
・ボトルの棚が使いづらい。
・スタッフの動線が悪い。
・レジの位置も要検討。
・トイレが漏電している。(業者に依頼する。)
・お客さんの荷物を入れるロッカーが欲しい。
・壁の色を変えたい。壁紙を貼るのか、塗るのか。
・カウンター上の棚をどうにかしたい。
・クールでお洒落というよりは、木のあたたかみを活かしたい。
・天井を塗るかどうか。
けっこう有る。
現場にとにかく行ってみることにした。
※
私はカウンターの上の棚を担当するように言われた。
一度お店に客として行ったことが有る。
カウンターの縁の幅がけっこう広くて、
しかも、天面との段差が数㎜有る。
肘をつこうとすると、ちょうど段差に乗るあたりになり、
どうも落ち着かない。
肘をつくならちょっと前のめりになる感じだった。
カウンターの上には、ワイン箱を並べて棚にしてある。
厨房側に向けてあったり、客側に向けてあったりする。
客側に向いている所には、本が並んでいる。
私は店で飲みながら本を読むのが、好きだ。
しかし、本を読む客を嫌う店も有ると聞く。
あまり飲まずに長っ尻(ながっちり)になるからだろうか。
客の目の前に本を置いているということは、
「どうぞお読みください」ということなのだろうと解釈し、
私は居心地良く感じた。
しかし、棚が有ることで、カウンターのテーブル面としての幅は
狭い。
広いっちゃ広いのだが、先に書いたように、肘を置くに置けない縁の幅が広いのだ。
※
ワイン箱の棚には、他にも機能が有った。
厨房の中は常に片付けられるとも限らない。
棚は適当な目隠しになっている。
また、不埒な酔っ払い客は、棚を乗り越えて手を伸ばしてくるという。
店員を守る防波堤にもなっているのだ。
それにしても、カウンター上の客のスペースが狭い。
棚のそそり立つ壁としての圧迫感も強い。
防波堤と、棚としての機能の折り合いの付く高さまで
下げることになった。
※
試しに、今置いている箱を少し低く切ってみる。
依頼者Sさんにカウンター内に入ってもらってみる。
客側としても圧迫感の無い高さ。
店員側としても安心感の有る高さ。
「向こうのテーブルの上が見えるようになった。
カウンターの上のお客さんのグラスも見えるわ。」
そうだ。
私が来店した時も、グラスが空いているのに
店員がおかわりを勧めてこないので、
軽く一杯飲んで帰ることにしてしまった。
店で飲んだら長っ尻になりがちな私を、たった一杯で帰すなんて。
高い棚のせいでこの店は商機を逸していたのではないか。したり。
棚を変えればサービス向上売上向上に繋がりそうだ。
※
この際、カウンターの天板も変えることをお勧めした。
肘のつき心地が悪いことを説明した。
「そうか、それでみんな前のめりでうつ向いてたんだ。」
居心地が良くなれば客脚も伸びたり客単価も上がるのではないか。
それに、今のカウンター天板は黒い。
ツヤは有るが、ひたすら黒くて、店の印象を黒くしている。
よく見ると、その黒い板の縁に釘の穴がたくさん空いている。
おそらく、この上にもう一枚、板を乗せて使っていたことが有ったのではないだろうか。
※
カウンターの縁の高さに合わせた板を乗せることで
平らにする、ということをまず考えた。
しかし、それだとどうしてもわずかな隙間ができて、
掃除がしにくいだろう。
いっそのこと、縁の出っ張っている部分を全部削って、
すっきりと一枚板を乗せて貼り、
縁と合わせて削って滑らかにし、
全体を塗装して仕上げる。
削りの作業量が多いが、ディスクグラインダーでやればいい。
※
写真は、カウンターの縁を削る作業を始めようという場面である。
作業地点を箱で囲んで、上からブルーシートを被って、
おがくずが他へ[なるべく]散らないようにする。
まるでピアノのような黒い塗装がしてあるが、
削ってみると、その下に乳白色の層、そのまた下にはまた黒い層が有った。
濃い色や厚い塗料で塗り重ねて、代々使われてきたようだ。
※
話が始まったのは、2月の上旬だった。
その時、緊急事態宣言は3月7日までだったか。
後になって、2週間延長されたりしたのだが、
とにかく最初は、3月7日までに完成するように予定を組んだ。
一回につき3時間程度の作業で、夕方の犬の散歩までには帰宅する。
カウンター天板はニスを2度塗りするとして、
毎回、乾燥させるために作業日は一日おきにする。
けっこうギリギリだ。
つづく
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