避暑館

夏場、暑いと図書館に行く。
クーラーが効いていて、集中力が取り戻せる。
あるいは、よく眠れる…。

地元の図書館は、分館でもかなりスペースが広い。
いくつか大きな机がある。
近所の図書館は、椅子が布張りで座り心地も良い。

猛烈に暑い日、自転車で図書館に向かっていると、
向こうから来たちょっとヨレッとした男性に道を聞かれた。
「この辺に図書館があるって聞いたんですけど」

私の説明がうまく伝わったかどうかな、と思ったが、
数分後、その人はちゃんと現れた。
そしてその後、図書館に行くと彼は必ずのようにいた。

小説を読み、時代ものを読み、片っ端から読んでいる。
そのうち漫画に移る。
ドラえもんを読み、あたしんちを読み、くすくす笑っている。

ある雨の日、近所の病院の名前の書いてあるビニール傘を持っていた。
入院しているけれど、毎日外出できる病状なようだ。
早く会えなくなりますように。

常連は数人いる。
それぞれに気に入りの席がある。

経済書ばかり読む爺、看護師の受験勉強をしている女性、
宅検の準備をする男性、分厚い古典を積んで何か調べている女性。

夏休みは子どもも多い。
声のトーンを落とさないでしゃべるグループ、
ひそひそ声が耳障りなグループ、
一人だけ声の大きい子のいるグループ、
すごく集中しているグループ。

夕方、閉館間際の時間にやってきて、
新聞の折込広告を出してもらって目を通す、
という人もいる。
何枚か、選んで抜いている。
なんだろう。

おおよそ子どもと年寄りが多いが、
平日昼間にもオトナはいる。
どういったご職業なのかしら、と
きっと私も思われてんだろう。

小学校の同級生が一人、毎日来ていたのだが、
この頃見ない。
生きているか。健勝でいるか。

冬は冬で、家が寒過ぎると図書館に行くが、
暖房が効いていると眠くなるので、
夏ほど集中できない。
やはり図書館は夏が良い。