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犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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気の合わない本

2016年01月11日 | よみものみもの
[あらすじ] 気の合う本は、最初の1,2ページでわかるものだ。
http://blog.goo.ne.jp/su-san43/e/ff39bd2d0840bef6fc48174eacc64264

逆もまたシンナリしちゃうのだが、
気の合わない本も、最初の1,2ページでわかる。
かと思うと、そうでない時もある。
いや、わかっているのかもしれないのだが、
まさかな、と思って確認のためにもう少し読み進める。
第一印象ですぐに捨てないのが私の癖なのだろう。

こりゃいかん、と不快になって、読むのをやめる。
言葉の選び方だったり、語調だったり、論理の進め方だったり、
主張の内容そのものだったり、理由はさまざまだ。
これは読みきれない、と気付いていても、何か拾うところ
得るものがあるかもしれない、となかなか本を閉じない。
苦手な感じがする人ともしばらく一対一で話してみる。



以前は読んだ本を手帳に書き込んでいた。
週間見開きの手帳の読了日のところに書くので、
全体を眺めにくく、やめてしまった。
この頃は、読了日や感想を記録できるサイトを見付けたので、
もっぱらそこに書いている。



先日、気の合わない本とぶち当たった。
タイトルだけで購入したのがいけなかった。
読み始めながら、なにかこの著者の本を読んだことがある、
と記憶がくすぐられた。
調べてみると、たしかに以前一冊読んでいた。
当時はそれを読みきったが、なんとも心に残らない、
説得力の無い、得るものの無い、役に立たない本だった。

書いちゃえ。
今回手に取ってシンナリしちゃったのは、
『「弱者」とはだれか』という本だ。
差別問題はセンシティブ過ぎてフツーの人は触れにくい、
被差別者はそれがゆえにまるで特権を持ったかのようになってしまっている、
など、「言いにくい」ことを書いている。

だれもが「弱者」であり得る、というのがこの本の主張のひとつのようだ。
だれもが出身だったり障害者だったりはしないものの、
子どもや老人に対する差別もある。ということのようだ。

それはいいだろう。
「今までにゲイの人が身近にいたことがない」なんて
私の目の前で言うような鈍感な人は、自分が差別される側になることもある
なんて想像もしない。
気付かないこと、無知であることが、差別の第一歩だ。
そんな人はちょいとどこかの国で生活してみるといい。



さて、よろしい主張をしているように見えるこの本だが。
例によって、まえがきを読む。
「プロローグ」を読み始めると、この本で扱うのは、
現在の日本の中での状況だ、ということわりがある。
それはいいだろう。
差別問題は、社会状況と密着している。
他国と比較する手法もあり得るが、国内を見つめ、
日本人の性質を基盤に考える必要もある。

4ページ目で、あれれ?と思う。
引用する。
ーーー
私自身は、個人的には劣等感をたくさん抱えた人間であるが、
同時に、少なくともこういう本を書けるぐらいの能力と、
ささやかな社会的発言力を持った人間であることも疑いない。
またこれまで、特定の差別を受けた経験もないし、
マイノリティとされる人々に対して明確な差別行為をするような
接触経験もなかった。
つまりこれから論じる対象となる「弱者」の枠組みの内部
およびその周辺には、さしあたり属さない立場の人間である。
ーーー

上に私が挙げたような人物のようである。

しかし目次を見ると、最終章のタイトルは
ボクもワタシも「弱者」
と言っている。

では、プロローグではこう述べたものの、
それは一冊の中で違った見方を得たり、ときほぐされていったりするのかと期待し、
ここで例によって、あとがきを読む。
ここは、「エピローグ」かと思いきや、「あとがき」となっている。
しかし、著者の論点はあくまで、「マイノリティ当事者でない自分」から見た
社会構造にあるようだ。
引用する。
ーーー
この本では、その問題を、被差別性や弱者性という、
倫理的優位が確保できることがわかりきっている立場の特権性を
解体させるにはどうすればよいかという点にしぼって追究した。
ーーー



シンナリ。
私自身は、特にあれこれ自分の中を探し回らなくても、
「トランスジェンダー」という特徴がある。
これによってどんな特権を得ているのか、説明してほしいよ…。
と言いたくなる。って、言ってるか。

プロローグとあとがきだけを読んで批判を書くのもどうかと思ったが、
どうにも居心地の悪いものを感じたので、書いてしまった。

他の人がこの本をどう読んでいるのか、気になった。
先ほど挙げた、読書の記録をできるサイトで、
感想をいろいろ読んでみた。
中には、自戒のために時々読む、という障害者の人もいた。
差別問題を今までにない切り口で扱った書、といった評価もある。

が、中にぽつぽつと批判もある。
「糞本」と切り捨てている人もいて、笑っちゃった。



著者が自分を「普通の人間」と言うように、
この本に書かれているような考えが「普通」なのかもしれない。
そういう覚悟を与えてくれるという意味では、
得るものは有ると言えるか。

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