5.ダウンタウンへ
前回のアメリカ旅行の時に残っていた小銭を使い、公衆電話から宿にこれから向かうと連絡する。日も暮れてきた。クタクタである。でもタクシーには乗らない。公共交通機関を最大限利用する。ガイドブックによると、空港から Metro Green Line の駅 (Aviation/I-105) まで連絡バス(無料)がある。これは簡単に乗れた。だだっ広い区画の中を走って駅に着いた。タダだからではないが、運転手にありがとうを言って降りる。アメリカ人はさかんに Thanks とか言っている気がする。これは郷に入りては郷に従えではなく、日本においても実行したいものである。
自動販売機で Metro の切符を買う。 Metropolitan Transportation Authority (MTA) が今から乗る列車のほか、バスも運行している。切符はひとつの列車に乗る場合と、他の列車・バスに乗り換える場合(TRANSFER)がある。今日は Metro Blue Line と Metro Red Line にも乗り換えて宿を目指すので TRANSFER ($1.60) を購入。Green Line の列車を待つが運転本数が少ないのか、なかなか来ない。ようやく来た列車は編成が短く小さな車両だった。しかし加速はよく、なかなかの走りっぷりである。日本車両のプレートがあった。太平洋を渡って活躍する日本の鉄道車両に感心する。 Imperial/Wilmington で乗り換えのために下車。
階段を降り、Blue Line のホームへ移動して列車を待つ。並行する線路を Long Beach 方から貨物列車がけたたましく警笛を鳴らしながら接近し通過していく。大きなディーゼル機関車が4重連で牽引し、貨車も大きなコンテナも2段重ねと馬鹿でかい。それが5分経っても通過し終わらない。なんともスケールが大きい。そして小さな Blue Line の列車が入線してきた。 これも Green Line 同様、快走する。今回乗車した3線のうちで乗車距離は最も長い。暗くて景色は見えない。直前に地下に入って終点の 7th St./Metro Center に到着。ここで Red Line に乗り換える。ここまでで一番立派な駅である。
次に乗る Red Line は完全に地下鉄である。映画「スピード Speed」(1994)で登場し、工事中の Hollywood でラストを迎えたが、今では開業区間も先に伸びている。今日は Hollywood へは行かず、途中の Wilshire Vermont で下車する。ここも立派な駅だが、改札はない。最初から最後まで、全く切符の検札は無かった。無賃乗車の対策はどうなっているのかと思うが、ガイドブックには抜き打ちで検札を行っており、無札が発見されると莫大なペナルティが課されるという。くれぐれも勝手が判らないからといって、車内や目的地でお金を払えばいいやと、切符を買わずに乗車なさらぬよう。
今日の宿は Best Western Mid-Wilshire Plaza Hotel である。Best Western はモーテルのチェーンである。Red Line の駅の近くである事でここを選んだ。ちなみにモーテルとは日本の連れこみ宿の事ではない。自動車旅行者の為に発展した宿泊施設である。ホテルと見まがうばかりの施設もあるという。ホテルよりは料金は安いようである。英語力が貧弱なので、予約はファクシミリを使っておこなった。話さなくて良いので楽だった。予約確認書もファクシミリで貰っている。
モーテルのロビーは小さかったが、さすがに駐車場は広く、建物の1階部分のほとんどが充てられている。フロントは韓国系の女性である。ちなみにこのモーテルは韓国系で、この付近は韓国系の商店が多い。10年位前のロス暴動の時は、ここも大変だったろう。黒人を銃で追い払う韓国人(韓国系米国人?)のニュース映像が鮮明によみがえる。1泊の予定だったが、手荷物紛失問題でLAを離れられない。フロントの女性に2泊にして欲しい旨を告げると、喜んでそうしてくれた。クレジットカードの控えを取られる。保証金の代わりである。アメリカではクレジットカードがないと万事不便である。旅券(Passport)は日本人としての身分を証明するが、金銭的にはクレジットカードがするのだろう。Room Charge は1泊 $69.00 で、税金が $9.66 もする。
部屋は広く、ダブルベッドがひとつあった。こんなに広い部屋に泊まるのは何年振りだろう。昭和62年(1987)に新高輪プリンスホテルのツインルームをシングルユースして以来である。プリンスホテルの方が値段も質も良いのだが、広くたって寝るだけである。レストランもなければ、庭もなく、プールもない小さなモーテルだが、手頃な料金で広くて快適な部屋が使えれば充分である。 (つづく)