図書館でお借りしたのは、ホームズ読書シリーズ第七弾、「シャーロック・ホームズ全集
7・恐怖の谷/アーサー・コナン・ドイル著」です。
恐怖の谷はホームズもの最後の長編となるようで、シリーズ第一作の「緋色の習作」
などと同じく二部構成、後半は舞台を開拓時代を彷彿させるような、当時イギリスと比べ
野蛮な国とみなしているアメリカへ移し、事件の遠因を描いている点で、似かよったつくり
となっています。二部構成スタイルを読むのはこれが三作目にあたり、さすがに当初ほどの
違和感はなくなりつつあるとはいえ、近年の推理小説でここまで極端なつくりの作品に
巡り合うことはまずないので、やっぱり戸惑いはあります。
書かれた順番はあとでも、ホームズの歴史としては年代を少し遡っていて、「最後の事件」
で(事件ファイル的には)すでに決着している終生のライバル・モリアーティ教授が今回の
事件の背景にいることをちらつかせ、悪の根源とされながらも、シリーズの中ではあまり
活躍する場を与えられておらず、唐突に登場しあっけなく散ったモリアーティを、再び
表舞台に引っ張り出すことで読者に印象を植え付けています。ただし後付であれこれ話を
盛ったため、つぎはぎからほころびが生じ、年代の錯誤など諸々矛盾は指摘されている
ようですが。
秋アニメで第二期が放映された「鴨乃橋ロンの禁断推理」の主人公ロンは、ホームズ家
とモリアーティ家の両方の血を引く人物として描かれ、抜群の推理力を持つ天才だが、
モリアーティ一族の陰謀により推理後、犯人を自殺に追い込んでしまう体質(欠陥)を
持ったため、謎解きすることを禁止されている…という筋書き。著作権が切れていて
自由に描けるのか、ホームズ、モリアーティ関連の派生作品が、マンガ、アニメなどで
数多く見受けられ、現在に至るまで我々を刺激し、楽しませてくれていますね。