
ここまで来たらすべて読み切ろうと、「春期限定いちごタルト事件&夏期限定
トロピカルパフェ事件/米澤穂信著」を借りました。これで、『小市民シリーズ』は
完読となります。と、思いきや、シリーズにはもう一冊「巴里マカロンの謎」なる
番外編的?なのがあるようで、まだもう少し楽しみを先延ばしできそうです。
春期~と夏期~は昨年アニメ化されたのを先行して視聴していたので、私としては
このたびの読書は「復習」となるでしょうか。なんだかもう、ずいぶん前に見た
アニメのような気がしているのに、実はつい昨年の出来事なんですよね。一部
ブルーレイに保存するなどして繰り返して視聴する作品のほかは、原則見終えると
どんどんハードディスクから消去していくので、ついでにその際、私の頭からも
大部分消え去るようです。各シーズン、凄まじい数のアニメが放映され、できる限り
視聴数を絞ってみても相当数の作品を浴びるように見ることになり、インパクトの
ない作品からみるみるうちに忘れ去らないと、容量の乏しい私の頭はすぐにでも
パンクしてしまうでしょう。
今回原作に触れてみて、忘れかけていたアニメの内容を思い出しました。細々した
ところは忘却の彼方で記憶は曖昧なのですが、テレビシリーズは基本原作に忠実に
ストーリー展開されていたようです。ただ、小鳩くんの実家が和菓子店となっている
(小説では家庭環境は述べられていないはず)など細かな点は設定が変わっているし、
原作では確か「細長い」と表現されている小佐内さんの目がアニメではくりっとして
いたり、身長も小学生と間違われるほど低くは描かれていなかったと思います。
この差異は、片山若子さんによる本のカバーイラストにも共通して言えることで、
幅広い層の支持拡大を狙ったビジュアル面での上方修正なのでしょう。
こうして読み直してみると、春期~はいくつかの関係ない事件が脈絡なく並べられ、
唐突にラストに流れ込むような印象を受けるのに対し、夏期~になると、途中挿入
される一見関係なさそうな事件がすべてラストの誘拐事件への布石になっていて、
完成度の高さ、読みごたえとしては夏期~に軍配が挙げられましょうか。
夏期~では、小市民を目指していたはずの小佐内さんが中学時代に逆戻りしたかの
ように「復讐」の鬼と化し、必要以上にやり過ぎて一線を越えてしまったことを
小鳩くんに看破され、これを機に二人の互恵関係は解消するのです。
*米澤穂信さんが直木賞選考委員に選ばれたことを今朝の新聞記事で知りました。
おめでとうございます。