今回図書館でお借りしたのが、「地雷グリコ/青崎有吾著」です。きっかけは
朝日新聞のミステリー小説ランキング記事で紹介されていたことで、2024年度の
主だったランキングで4冠達成、2位に大差をつけて1位を独占したという内容
でした。これは待たされるかなと覚悟して予約すると、意外にも皆さんノーマーク
だったのか、数人の順番待ちで回ってきたのはラッキーでした。
推理小説ではなく、センセーショナルな連続殺人事件が起こるわけでもない、
高校生がゲームでバトルを繰り返すというシチュエーションは、本来私の興味の
対象外、読む前は正直あまり気乗りしませんでした。しかし、『グリコ』や
『だるまさんがころんだ』『ジャンケン』、『神経衰弱』などの子供でも知って
いるような手軽なゲーム(お遊び)が、少しひねりを加えることで、こんなにも
論理的で緻密な頭脳戦、複雑な読み合いが要求される息詰まるバトル競技に
変わるとは及びもつかず、知らず知らずのうちに世界観に引き込まれていました。
主人公である女子高生・射守矢 真兎(いもりや まと)の描き方もうまく、登場時
はルーズそうなどこにでもいるただの平凡な女の子だと思わせておいて(それは
相手を油断させるための逆ブラフであるわけですが)、実のところ頭脳明晰、
機知に富んだ才女(勝負師)であることがやがてわかり、「赤いブラを制服から
透けて見せて」「端正な顔立ちで」「脚がきれい」等々、加えてルックスも
コケティッシュな魅力があることを親友・鉱田(こうだ)に物語が進むにつれ
きれぎれに語らせ、徐々につまびらかにしていく手法なども心憎いです。
最終局面では、真兎の中学時代の友人であり、過去に因縁ある少女が登場、彼女
との一騎打ちでバトルは最高潮に盛り上がり決着を迎えます。終わり方も心地
よいし、エピローグで後日談的に語られる締めくくりも小気味よく、最後の最後
まで余韻を楽しめます。私同様「ゲームで対戦のお話なんて…」と尻込みして
いるあなたも、手に取ってみてはいかがでしょうか?
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