旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

蒸留酒(その2)

2007-07-01 13:46:54 | 

 

 醸造酒の歴史は相当に古い。というより、いつ誕生したかは定かでないと言ったほうが良いだろう。糖分さえあれば、それに自然界に住む酵母が働きかけてアルコール発酵は起こるので、人の手が加わらなくても酒は出来たであろう。人の手によるワインやビール造りの跡も、数千年前の史実として多くの発掘調査が示している。紀元前2200年(今から4千年以上前)の中国で、当時の禹(う)王に儀狄(ぎてき)という男が酒(当然、醸造酒しか考えられない)を献じたという伝説があるので、醸造酒の歴史は古い。
 
それに反して蒸留酒の歴史は、せいぜい500600年とされている。それは、蒸留器の開発が13世紀から15世紀にかけての時期であるからだ。もちろん、蒸留知識については、人類は相当古くから持っていたようだ。モノの本によればアリストテレス(紀元前384322)は既にワインの蒸留に触れていたというので、少なくとも2千年以上前から蒸留の仕組みは分かっていたのであろう。そしてそれなりの蒸留の仕掛け(蒸留器)も持っていたに違いない。
 
しかし当時を含めそれ以降の蒸留技術は、専ら錬金術に向かったようだ。蒸留酒を生み出すには、前述したように13世紀以降の本格的蒸留器が生み出されるまで待たねばならなかった。それとて、最初は“薬としての酒(スピリッツ)”の製造が主目的であったのであるが。
 
そしてその蒸留器の発展に応じ、特に連続式蒸留器の開発により蒸留酒の質も変化していったのである。単式蒸留では、蒸発しない成分こそ除かれるが、様々な蒸発成分を通じて原材料の味や風味は残るが、連続蒸留を続けていけば純粋アルコールに近くなり、それは加水や味付けによってしか食品(酒?)にはならないからである。つまり原材料とは縁もゆかりもない酒になっていくと言えよう。
                            


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