私の甥っ子に囲碁のプロ棋士がいる。末弟の長男で首藤瞬という。中学生頃からプロを目指し、確か17,18歳のときに日本棋院東京本院に入段(初段)した。
日本棋院のプロ棋士には年に5人しかなれない。東京本院から3名、関西支部と中部総本部から1名、それに女流棋士1名の計5名である。わが瞬君は東京本院の3名の中に入ったが、それは過去一年、院生などの手合いで得た勝率の上位3名に入ったかどうかだけで決まった。その前年、4位であったので入段できず再び一年間苦闘した結果であった。そこには泣きも情実も入る余地はない。極めて厳しい世界である。
その後、二段、三段と順調に昇段、四段にもそこそこ上がったがしばらく足踏み、昨年高勝率をあげて今回めでたく五段に昇段した。以前この世界では、五段以上を「高段者」と称して特別扱いしていたと言う。いはばプロ中のプロと言うわけであろう。瞬君は25か26歳と思うが、その年でいっぱしのプロ棋士になったことを、私も身内として誇りに思う。
しかし、問題はこれからかもしれない。勝負の世界であるから技術力は欠かせないのであろうが、これから上の勝敗は、それに加えて何か「人間力」みたいなものにより決まるのではないか? 周囲はちやほやしてくるし、収入もよくなっていくだろう。そこに最大の敵、“高慢”や“慢心”が入り込むスキが生まれる。
日々精進を重ねて欲しい。そして何よりも“立派な人間”になって欲しい。…その立派な人間というのがどのような人間なのか、未だ私にもわからないのであるが。