旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

紹興酒について

2008-12-23 10:43:18 | 

 

 酒は原料となる穀物や果物とともに水である。前回書いたように紹興酒も水が命であり、その水は美しい紹興の街にふさわしい「鑒(かん)湖」という湖から採る。しかもその水以外で造った酒は紹興酒と呼べないとされている。
 この湖はダムによりできた長さ40里、幅300メートルの細長い湖で、増水した水が両方の山々に偶然にも含まれていた鉱物質(ミネラル)を溶かし、醸造に適した水質と硬度を生み出したと言う。その良水は岩石や土砂に濾過されて湖心に集まる。そこで酒造家は、その湖心の一番深いところの水を採って酒を造るのである。
 主原料は米である。といっても、日本酒はうるち米だが紹興酒はもち米である。これが日本酒と違って、ねっとりとした質量感のある紹興酒を生み出すのであろう。造りかたは日本酒とほとんど同じであるが紹興酒の方がやや手が込んでいると言える。
 先ず蒸米の冷やし方も、酒母つくりでは淋飯法(冷水をかけて冷やす)、本つくりでは攤飯(たんふぁん)法(空冷・・・昔は竹のむしろに拡げて空っ風で冷やした)と異なること、また仕込には、酒薬とか漿水とかが現れて中国らしい妖しさが漂ってくる。酒薬は糖化・醗酵菌剤で、日本の酵母菌に加えて根かびなどのかび菌類のほか当地特産のみず蓼など、漢方の薬剤が加えられており、糖化促進と雑菌制御などもろもろの役をするようだ。
 漿水はもち米を浸漬(16~20日間)したあとの水で、乳酸が多く含まれており酸度の調節と雑菌制御のためにあるので、日本酒における即醸もとの乳酸菌のようなものであろうか? 醗酵も主醗酵と後醗酵があり、主醗酵は約10日、後醗酵は「元江酒」で約二ヶ月、加飯酒」で約三ヶ月を要するのでかなり長い。

 私たちが訪ねた「紹興縣酒廠」は、鑒湖を舟で渡った広大な地域に醸造場があり、浸漬中の原料米タンクなどは六月の炎天下に並べて作業しており、かなり荒っぽい造りかたに見えたが、酒薬や漿水をはじめそれぞれ理に適った造りが進められているのであろう。加えて紹興酒の真髄は、別名「老酒(ラオチュウ)」と呼ばれるように、貯蔵--熟成にあるのであろう。
 そして何よりも、酒はその地の料理とともに飲んでいくらの話である。
 それは次回に
                             


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