琴欧洲の引退に思いを巡らせていたら、大関の中でも一番地味な存在であった鶴竜がするすると優勝して、横綱まで上り詰めるようだ。
白鵬の一人横綱でその下に6大関がひしめく時代があった。日馬富士、鶴竜、稀勢の里、琴奨菊、琴欧洲、把瑠都の6人である。私は、把瑠都、琴欧洲、稀勢の里あたりが横綱に上がるのだろうと何となく思っていたが、結果は全く違って、把瑠都、琴欧洲は既に引退、稀勢の里、琴奨菊に最早横綱昇進の覇気はない。
そして、むしろ目立たなかったが最も地道に精進をつづけた二人、日馬富士と鶴竜がその栄誉を勝ち取った。
中でも鶴竜は、大関になって10勝に届かない場所が多く、大関の地位も無理ではなかったかとも思わせたが、彼はその敗退の中で自己形成に努め、精進を続けて技量を高め、勝負の世界で最も重要だとされる平常心を心の奥底に育んできたのだろう。
「一生懸命頑張って自分の相撲を取り続けました」という優勝インタビューは、地味だが、今の境地と到達点を語りつくしていると思った。
大関は、申し訳ないがもう一つ冴えない二人だけになった。3人の横綱を追うには、かつてのように6人ぐらいがひしめき合うようでなければだめだ。
豪栄道や栃煌山に加え、遠藤をはじめとした気鋭の若手がその役を担わなければならない。モンゴル三横綱を追うのは、今度こそ日本の中堅、若手ではないか?
3月24日 芦花公園にて