26日、今田周三氏の主宰する山水舎の「日本酒飛躍の道標を考える」という新春セミナーに参加した。以下三講を内容とする、なかなか野心的なセミナーであった。
第一講「日本酒業界は一次産業の変革にどう向き合うか」
日本経済研究所執行役員 佐藤淳氏
第二講「日本酒のマーケット現場からの提言」
朝日屋酒店 小澤和幸氏
第三講「新しい時代の日本酒マーケティング」
明治大学大学院教授 上原征彦氏
先ず第一講。TPPがらみの変革に対処する様々な観点を提起してくれた興味ある講演であったが、その中の一つ。
佐藤氏は、日本酒は消費量ピーク時の1970年代初頭以来、一貫して消費量を減らしてきたが、これは原材料たるコメの対外価格比高騰に由来しているとする。日本酒の減少曲線と、コメの対外価格差高騰曲線が一致している。つまり、原料高騰で価格が高くなるほど消費量は減少する。
ところが、小売り自由化の2003年からは価格が下がったにもかかわらず消費量も減ったという。これは、販売チャンネルが酒販店から大型店に移り、大量販売を目指した“まがいもの酒”の出現で酒質を下げたからだという。
こうして酒離れがいっそう進んだが、2011年3月の大震災以降、被災地支援で東北の酒が飲まれるようになり、日本酒のおいしさに目が覚めた。特定名称酒などの存在が知られ、特に純米酒を中心に増え始めた。中でも獺祭などが、美味しい酒の典型として急増してきたという。
日本酒のおいしさが知れわたり、TPPで価格が下がれば日本酒の未来は明るいのではないか、との話に聞こえた。
なかなか面白い問題提起だと思った。