★調布飛行場、なぜパイパー機は墜落したのか。
客の男たち4人は、伊豆大島へ行って何をしようとしていたのか。
当初は友人であるパイロットの川村さんに直接頼んだそうだが、26日は都合が悪いと断られた。ところが諦めずに、エアロテックの社長から川村さんに言ってもらって、26日のフライトが実現できたそうな。
そこまでして大島へ行きたかった理由とは?
さて、その話をする前に、墜落した飛行機は米国のパイパー社製、単発プロペラ機「PA46−350P型」、いわゆるマリブ系だが、カタログを見ると最大離陸重量が1968Kgとなっている。
そして各重量をチェックすると、
① このパイパー機の自重は1416Kg
② 男の平均体重65Kg x 5=325Kg
③ 燃料満タンで300Kg
この時点で既に2041Kgとなり、理論的には離陸アウト。
まあ、実際にはトレランスがあるから離陸は可能ではあると思うが。
それに加えて各自の荷物を10Kg x 4=40Kgにすると(パイロットは手ぶらとする)、この荷物重量40Kgを上記の2041Kgに加算すると、合計は2081Kgになる。つまり113Kgのオーバーロード(過積載、率にして約6%オーバー)になり、まともなパイロットだったら、心配になって余分な燃料を抜くだろう。当然ながら、お客さんと荷物は降ろせないのだから。
そしてこれ以外に離陸にとってマイナス要因は、暑いからエアコンを効かせたことによる出力低下、なおマリブ系小型機には普通、エアコンはついていない。さらに35℃という炎天による揚力の低下も考えられる。
また、スタンバイで後続に控えて見ていた別機のパイロットは、この墜落した飛行機が離陸距離を長く取っていたこと、そしてようやくフラフラしながら離陸したと証言している。
★なぜ客が男4人だったのか。
客は36歳前後の男三人と51歳の男1人、特に36歳くらいでバリバリに仕事をやっている男というのは、怖いもの知らずで、智力、体力共に抜群で、そこに経験と実績が重なれば、鬼に金棒という男の黄金期を迎える。
そういう男たちが、単に遊覧飛行という子供のような遊びに興じるだろうか。
ちょっと足を伸ばせば大島がある。大島空港から6キロという近場に大島ゴルフクラブがあるのだ。上記に加えた一人当たりの荷物10Kgというのはゴルフバックやシューズなどを勘案している。
調布から大島まで距離にして100Km、午前11時に調布を飛び立てば、遅くても30分後の11時半には大島空港に着く、そこからゴルフ場までの直線道路をタクシーでビュッと飛ばして5分もかからない。東京と違って渋滞などないのだ。それからゴルフをやって東京へ戻る。ゴルフをやるには時間がないって? ところが大島ゴルフコースは9ホールしかないのだ。だから3時間もあれば充分に楽しめる。
それから大島空港へ戻りパイパー機に乗りこむ、ゴルフ談議をしながら、空港で買った大島土産のシーフードを食べながらドライビールを飲めば、この世の天国、午後4時過ぎには調布飛行場にランディングできるというスケジュールになる。
完璧なミッションだな。
この大島ゴルフコースというのは、海が見える風光明媚な絶景コースで、ゴルファーにとって一度は行ってみたいところなのだ。
しかもプレイ代は5千円でOKなのだから、タダみたいなものとゴルファーは思う。バリバリ仕事をやっていると、そういう遊びがしたくなる年齢なんだな。
しかし、人生のパラダイスが暗転し、地獄絵図に変わるとは、それも人生のアイロニーなのか。
(じゅうめい)