法テラスの情報提供業務における振り分け基準として「弁護士・司法書士FAQ」なる文書がまとめられているそうである。同FAQは、法テラスに寄せられた相談に対して、コール・センター・オペレーターや窓口対応専門職員が振り分けを行うための基準とされているようである。
同FAQにおいて、利用者が特に任意整理事件を希望する場合には、「債務総額(個別債務ではない)が140万円以下であれば、弁護士会及び司法書士会のいずれにも振り分けることが可能である。他方、債務総額が140万円を越える場合には、弁護士会に振り分けを行う。」ものとされているようである。
しかし、司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務における代理権の範囲は、任意整理の場合、債権者ごとの個別事件で判断されるべきものである。「紛争の目的の価額」は、債権者ごとに各別の和解契約をする場合は、債権者ごとに各別に算定する(小林昭彦・河合芳光著「注釈司法書士法」(テイハン)97頁)とされており、個別債務が140万円以下であれば、受任可能であるのであって、実務は同解釈に依拠して行われている。なお、「注釈司法書士法」は、法務省担当者による解説である。
したがって、上記FAQは、司法書士法の解釈を誤ったものである。万一同基準が巷間に流布し、誤った解釈が蔓延する事態が生じたときは、司法書士の実務に及ぼす影響は甚大である。早々に是正すべきである。
まさか、日弁連ともあろう団体が、法務省の解釈及び実務の取扱いを承知の上で、弁護士界に任意整理事件を呼び込もうとするために、そのような基準を設定したとは思いたくないが。