司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

配偶者居住権と遺産の範囲の関係

2020-03-09 16:15:01 | 民法改正
 建物の所有権についてのみ,遺贈又は特定財産承継遺言で帰属が定まっている場合に,遺産分割協議で配偶者に配偶者居住権を取得させることの可否につき,遺産分割の対象は「遺産分割時の相続財産」であるから不可であると考えていたところであった。

 この点については,片岡武・管野眞一著「改正相続法と家庭裁判所の実務」(日本加除出版)133頁に解説があり,

「配偶者が配偶者居住権を取得するためには,居住建物が遺産分割の対象となる財産であることが必要である。したがって,居住建物第三者に遺贈されている場合や,配偶者以外の相続人に生前贈与されたり,遺贈された場合は,居住建物は遺産分割の対象ではないから,配偶者が配偶者居住権を取得することはできない」(133頁)

ということで,納得である。

 東京家庭裁判所家事第5部編著「東京家庭裁判所家事第5部(遺産分割部)における相続法改正を踏まえた新たな実務運用」(日本加除出版)71頁にも同旨の解説がある。

 ところで,「合意による修正」というコラムで,

「生前贈与ないし遺贈を受けた他の相続人を含めた当事者全員が,当該建物を遺産とすることを合意した上で,配偶者が配偶者居住権を取得し,生前贈与ないし遺贈された他の相続人が負担付建物所有権を取得する内容の遺産分割を行うことは可能である」(同133頁)

 ん~。遺贈の場合は,受遺者が遺贈を放棄をすればよいので理解することができるが,生前贈与の場合に,果たしてこういうことが可能であろうか・・・。
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