司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合の取扱いについて」(法務省民事局商事課長通知)

2020-03-25 15:47:39 | 会社法(改正商法等)
「役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合の取扱いについて」(令和2年3月23日付け法務省民商第65号法務省民事局商事課長通知)が発出されている。

 これにより,「役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合の取扱いについて(通知)」(平成15年5月6日付法務省民商第1405号商事課長通知)及び「役員全員解任を内容とする登記申請があった場合の解釈について(通知)」(平成19年8月29日付け法務省民商第1753号商事課長通知)は,廃止された。


1 会社又は法人の役員(会計参与を除く。以下同じ。)全員の解任を内容とする変更の登記の申請があり,当該登記をした場合には,登記完了後速やかに,原則として,当該会社の本店又は法人の主たる事務所に宛ててその旨を記載した書面を普通郵便で発送して連絡するものとする(書面の様式は別紙を参考にすること。)。ただし,申請権限に疑義がある事案については,当該登記をする前に連絡することを妨げない。
※ 「申請後速やかに」→「登記完了後速やかに」連絡するものとされた。
※ 「適宜の方法」→「本店等に宛てて登記を完了した旨を記載した書面を普通郵便で発送」して連絡するものとされた。

2  登記完了前に,解任されたとされる役員のうちのいずれかが申請書又は添付書面の閲覧を求めた場合には,届出印又は運転免許証の提示等の適宜の方法により,登記簿上の役員本人又はその代理人であることを確認した上,閲覧に応じて差し支えない。仮処分申請のため必要である等の事情が認められる場合には,適宜,申請書等の写しを交付することも差し支えない。

3 登記完了前に,解任されたとされる代表者から,当該登記申請に係る申請人が代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分決定書その他の一定の公的文書が提出された場合には,当該公的文書を当該登記申請の審査の資料とすることができる。

4 登記完了前に,解任されたとされる代表者から,当該登記申請に係る申請人が代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分の申立てを行った旨の上申書(仮処分申立書の写し添付)が提出された場合には,一定の期間に限り,当該申立てに係る仮処分決定(即時抗告審の決定は含まない。)が行われるまでの間は,登記を留保して差し支えない。


 例えば,オーナー株主が,雇われ社長を解任する場合にも,取締役が1名の株式会社であれば,一律に通知の対象となる等,不実であることを疑うべき事情がない登記申請であるにもかかわらず,登記を留保する取扱いがされる事案が増加し,登記すべき事項の迅速な公示の妨げとなっていることが問題となっていることからの改正であるようだ。

 こういう問題があることについては,下記の記事で取り上げていた。

cf. 平成25年3月13日付け「唯一の取締役の解任」

 形式審査(書面審査)の限界であるともいえるが。



cf. 役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合の取扱いについて(平成15年5月6日付法務省民商第1405号商事課長通知)

1 会社又は法人の役員全員の解任を内容とする変更登記の申請があった場合には、速やかに、当該会社又は法人に適宜の方法で連絡するものとする(書面により連絡する場合には、別紙様式を参考にすること。)。
2 解任されたとされる役員のうちのいずれかが申請書又は添付書類の閲覧を求めた場合には、届出印又は運転免許証の提示等の適宜の方法により、登記簿上の役員本人又はその代理人であることを確認した上、閲覧に応じて差し支えない。仮処分申請のため必要である等の事情が認められる場合には、適宜、申請書等の写しを交付することも差し支えない。
3 登記完了前に、解任されたとされる代表者から、当該申請に係る申請人が代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分決定書等が提出された場合には、当該決定書等を本件登記申請の審査の資料とすることができる。
4 登記完了後に、解任されたとされる代表者から、申請書にその者が代表者の地位にあること及び登記に係る代表者は代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分決定書等を添付して(商業登記法(昭和38年法律第125号)第109条第2項、第107条第2項本文参照)、同法第109条第1項第2号の規定による当該登記の抹消の申請がされた場合には、他に却下事由がない限り、当該登記の抹消の登記をすることができる。
 なお、取締役等の職務執行停止及び代行者選任の仮処分命令があった場合には、その旨の登記は、裁判所の嘱託によってすることとなる(民事保全法第56条)。
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パスポート(2020年旅券)の住所記載欄の廃止

2020-03-25 13:01:40 | 不動産登記法その他
 令和2年4月1日施行の犯収法の改正の関係で,本人確認書類が変わるという告知の中に,次のような説明が散見されるようだ。

「パスポートは「2020年2月3日以前に申請した日本国発行のものに限る」という制限が加わった。様式変更により、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」をデザインに取り入れた2月4日以降に申請して交付されたパスポート(20年旅券)には、従来、住所などを記載していた所持人記入欄がなくなったためだ。」(後掲BCN+R記事)

cf. BCN+R
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200324_163405.html

「2020年2月4日以降に申請されたパスポート(新型の2020年旅券)は、住所記載欄(所持人記入欄)がないため、本人確認書類・補完書類の対象外となります。」(後掲おでかけネット)

cf. JR西日本おでかけネット
https://www.jr-odekake.net/j-west/news/pdf/oshirase_change.pdf


 ん~,ということは,不動産登記規則第72条第2項第1号の本人確認書類としても,不適格ということになりますね。

 これに対応する省令改正等は,未だありません。
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家屋の評価の誤りに基づきある年度の固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間(最高裁判決)

2020-03-25 12:19:52 | 税務関係
最高裁令和2年3月24日第3小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89345

【判示事項】
家屋の評価の誤りに基づきある年度の固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間は,当該年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ所有者に納税通知書が交付された時から進行する

「固定資産税等の賦課に関し,その税額が過大であることによる国家賠償責任が問われる場合において,これに係る違法行為及び損害は,所有者に具体的な納税義務を生じさせる賦課決定等を単位として,すなわち年度ごとにみるべきであり,家屋の評価に関する同一の誤りを原因として複数年度の固定資産税等が過大に課された場合であっても,これに係る損害賠償請求権は,年度ごとに発生するというべきである。そして,ある年度の固定資産税等の過納金に係る損害賠償請求権との関係では,被害者である所有者に対して当該年度の具体的な納税義務を生じさせる賦課決定の効力が及んだ時点,具体的には納税通知書の交付がされた時点をもって,除斥期間の起算点である「不法行為の時」とみることが相当である。以上のことは,所有者が,当該年度以前の基準年度等の価格決定やこれに基づいて課された固定資産税等に関し,評価の誤り等を理由に審査の申出及び取消訴訟又は国家賠償請求訴訟をもって争い得たとしても,左右されるものではない。」

【事案の概要】
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2020/jiangaiyou_30_388.pdf
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取引相場のない株式の譲渡価額の評価方法(最高裁判決)

2020-03-25 12:10:44 | 会社法(改正商法等)
最高裁令和2年3月24日第3小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89339

【判示事項】
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,配当還元価額によって評価した原審の判断に違法があるとされた事例

「本件のような株式の譲渡に係る譲渡所得に対する課税においては,当該譲渡における譲受人の会社への支配力の程度は,譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼすものではないのであって,前記の譲渡所得に対する課税の趣旨に照らせば,譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきものと解される。
 そうすると,譲渡所得に対する課税の場面においては,相続税や贈与税の課税の場面を前提とする評価通達の前記の定めをそのまま用いることはできず,所得税法の趣旨に則し,その差異に応じた取扱いがされるべきである。所得税基本通達59-6は,取引相場のない株式の評価につき,少数株主に該当するか否かの判断の前提となる「同族株主」に該当するかどうかは株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること等を条件に,評価通達の例により算定した価額とする旨を定めているところ,この定めは,上記のとおり,譲渡所得に対する課税と相続税等との性質の差異に応じた取扱いをすることとし,少数株主に該当するか否かについても当該株式を譲渡した株主について判断すべきことをいう趣旨のものということができる。
 ところが,原審は,本件株式の譲受人であるCが評価通達188の(3)の少数株主に該当することを理由として,本件株式につき配当還元方式により算定した額が本件株式譲渡の時における価額であるとしたものであり,この原審の判断には,所得税法59条1項の解釈適用を誤った違法がある。」

【事案の概要】
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2020/jiannogaiyou_30_422.pdf
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「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う法務省関係政令の整備に関する政令」が公布

2020-03-25 08:30:58 | 民法改正
官報
https://kanpou.npb.go.jp/20200325/20200325h00216/20200325h002160002f.html

「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う法務省関係政令の整備に関する政令」(令和2年政令第57号)が本日公布された。

 配偶者居住権の登記に関する不動産登記令の改正等である。

 令和2年4月1日から施行される。
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労働基準法の一部を改正する法律案,参議院厚生労働委員会を通過

2020-03-25 01:25:00 | 労働問題
令和2年2月22日付け「労働基準法の一部を改正する法律案」

 昨日(3月24日)の参議院厚生労働委員会を通過し,本日(?)の参議院本会議で可決,成立の見込みである。
※ 本日は,参議院本会議の定例日であるにもかかわらず,開催されないそうだ。

 債権法の改正(令和2年4月1日施行)に合わせて,賃金請求権の消滅時効期間を延長する等の改正であり,3月中の成立が目指されていた(「日切れ法案」というらしい。)もので,やれやれである。
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定時株主総会を延期する場合の基準日設定公告

2020-03-25 00:15:19 | 会社法(改正商法等)
日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57172670U0A320C2DTA000/

 こちらは,配当について。

日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57168270U0A320C2L91000/

 こちらは,議決権の行使について。

 いずれも,いわゆる定時株主総会を延期することで,その基準日(通常は,定款で定められている。)から3か月を経過する場合には,基準日を取締役会の決議等で定めて,同設定公告をする必要があるというものである(会社法第124条)。
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民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う法務省関係政令の整備に関する政令案の概要に関する意見募集の結果について

2020-03-25 00:06:57 | 民法改正
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う法務省関係政令の整備に関する政令案の概要に関する意見募集の結果について by 法務省
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080209&Mode=2

 寄せられた意見は,わずか1件。

 上記政令は,本日公布される予定である。
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