会社法では、公開会社(第2条第5号)であるか否かは、機関設計等において、極めて重要である。取締役の任期伸長(最長10年)も、「公開会社でない株式会社」において認められる特例である。
株式会社の大多数は、定款に株式譲渡制限規定(商法第204条第1項但書)を設けており、会社法移行時には「公開会社でない株式会社」に該当する。しかし、株式譲渡制限規定が法定されたのは、昭和41年改正によるものであり、それ以前に設立された株式会社では、定款に株式譲渡制限規定を設けていないままであることも多い。そのような会社が「公開会社でない株式会社」の機関設計、特例等を選択したければ、定款変更により、株式譲渡制限規定を設ける必要がある。
①会社法施行前の定款変更
会社法施行前、現行商法の下で譲渡制限規定を設けるには、株主総会の特殊決議(商法第348条第1項)の後、株券提出公告・通知(同第350条第1項)を行なう必要がある。公告かつ通知が必要である。
この場合、株券廃止会社あるいは準株券廃止会社(定款に株券不発行の定めはないが、現実に株券を発行していない会社)においては、公告または通知で足りる特例がある(同第227条第2項、第228条、第350条ノ2、第228条ノ2)。
②会社法施行後の定款変更
会社法において、全部の種類の株式につき譲渡制限規定を設けるには、株主総会の特殊決議(会社法第309条第3項第1号)の後、株券発行会社は、株券提出公告・通知(同第219条第1項)を行なう必要がある。公告かつ通知が必要である。
ここで、会社法第219条第1項は、「株券発行会社は」と定めており、また、同項但書により、準株券廃止会社は、「この限りでない」とされている。したがって、株券廃止会社及び準株券廃止会社は、株券提出公告&通知のいずれも行う必要はないことになる。
すると、株券廃止会社及び準株券廃止会社においては、定款変更決議時に即定款変更の効力が生じることになりそうである。
しかし、反対株主の株式買取請求権を定めた会社法第116条第3項、第4項によれば、効力発生日の20日前までに反対株主に対する通知または公告が必要とされるので、株主総会決議においては、20日以上の期間をおいて効力発生日を定めるべきであろう。
とはいえ、100%オーナー会社等、少数株主の反対がまったく予想されない会社においては、即定款変更の効力が生じるものとすることも認められると解される。
※(追記)期間短縮の同意が可能であるように思われる(私見)。招集通知と同時に116条3項通知を発する等によれば、同時に効力を発生させることも可能である。
なお、特殊決議の頭数要件についても、「総株主の過半数」(第348条第1項)から「議決権を行使することができる株主の半数以上」(会社法第309条第3項第1号)と微妙に変わっている点も注意が必要である。
このような株券不発行制度の実務に関しては、共著「最新 会社公告の手続と文例-電子公告・株券不発行制度に対応-」(新日本法規)に拙稿で詳説している。
http://www.sn-hoki.co.jp/kobetsu.cgi?product=50544