全日空(ANA)が英インターコンチネンタル・ホテルズ・グループとの合弁企業として合同会社を活用すると発表している。
http://www.ana.co.jp/ir/tekiji/pdf/06_10_23.pdf
cf.
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200610230080.html
非常に興味深いスキームである。おそらく会計上の狙いもあるのであろうが、司法書士の視点から推測されるものは次のとおり。
① 合同会社には法定の機関は存しない。業務の決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数で行う(会社法第590条第2項)。合弁企業である合同会社において、各々が業務執行社員となる場合、各々がその職務執行者を選任して(同第598条第1項)、業務を執行することとなる。
本スキームでは、AHRホールディングス株式会社が単独で業務執行社員となっており、同社の取締役会を合同会社の事実上の業務決定機関と位置づけているものと考えられる。
② 職務執行者の選任に関しては、法人社員が株式会社である場合、会社法第362条第4項第3号の「支配人その他の重要な使用人」に該当するとして、登記実務上取締役会決議が必要と解されている(商業登記通達81頁)。
しかし、ANAやインターコンチネンタルのような大企業が一合弁企業の職務執行者の交代の都度、取締役会に付議することを余儀なくされるのは好ましくない。
したがって、共同出資の「株式会社」をクッションとして挟むことによって、その難点をクリアしようとしたものと考えられる。大企業の取締役会への付議基準において、子会社に関する事項について資本金の額等の基準が設けられていても、合弁企業に関しては規模の大小を問わず、取締役会への付議を必要としている例が多いようである。しかし、合同会社の職務執行者については、外したくても外せないのが現行登記実務の取扱いであるからである。