最高裁平成30年4月18日第2小法廷決定
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87689
【判示事項】
株券が発行されていない株式(振替株式を除く。)に対する強制執行の手続において配当表記載の債権者の配当額に相当する金銭が供託され,その供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けた場合には,当該強制執行の手続につき,破産法42条2項本文の適用がある
「株券が発行されていない株式に対する強制執行の手続においては,執行裁判所は,当該株式につき売却命令による売却がされた場合,配当等を実施しなければならないとされている(民事執行法167条1項,166条1項2号)。そして,配当表記載の債権者の配当額について配当異議の訴えが提起されたために上記配当額に相当する金銭の供託がされた場合において,その供託の事由が消滅したときは,裁判所書記官が供託金について配当等の実施としての支払委託を行うことが予定されているのであって(民事執行法167条1項,166条2項,91条1項7号,92条1項,民事執行規則145条,61条,供託規則30条1項),上記供託金は,上記支払委託がされるまでは,配当等を受けるべき債権者に帰属していないということができる。そうすると,この場合における上記強制執行の手続は,売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時にはもとより,その後も上記支払委託がされるまでは終了しておらず,それまでの間に債務者が破産手続開始の決定を受けたときは,破産法42条2項本文の適用があるものと解することができる。」
破産法
(他の手続の失効等)
第42条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
2 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。
3 前項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行の手続については、民事執行法第六十三条及び第百二十九条(これらの規定を同法その他強制執行の手続に関する法令において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
4 第二項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行の手続に関する破産者に対する費用請求権は、財団債権とする。
5 第二項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行に対する第三者異議の訴えについては、破産管財人を被告とする。
6 破産手続開始の決定があったときは、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続(民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続をいう。以下この項並びに第二百四十九条第一項及び第二項において同じ。)の申立てはすることができず、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続はその効力を失う。