能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

日本の雇用と中高年 会社というメンバーシップ社会・・・あなたは何が出来ますか?部長ができます!

2014年05月25日 | 本と雑誌

サラリーパースンが9割を占める日本社会は、まさに会社を中心としたムラ社会

そのムラに入るということは、「就職」ではなく「就社」であり、

仕事そのものではなく「人」を基準にして評価されるというメンバーシップ・・・。

ムラの掟を守り定年まで勤め上げるということでもあります。


今週は、ニッポンの雇用に関連する書籍を3冊読破。


そのなかでも、日本における中高年雇用の歴史的事実を分かりやすくまとめたのが本書です。

学部のリポート的な感じの流れで構成でまとめられており、気軽に読み進めることが出来ます。


「日本の雇用と中高年」 

濱口桂一郎著

ちくま新書 780円+税


著者の濱口さんは、労働省等を経て現在労働政策研究・研修機構の研究員。

欧州の雇用事情にも強く、同書の中でも一部その比較が試みられています。

雇用に関して、欧米では若者、日本では中高年にスポットが当てられていることを分かりやすく解説しています。

これをベースに、著者はジョブ型社員を強く主張。

職務を明確化することにより、若年層の雇用、中高年~高年齢者の雇用がスムーズにいくという論陣をはられています。


目次

序章 若者と中高年、どっちが損か?

1.中高年問題の文脈

2.日本型雇用と高齢者政策

3.年齢差別禁止政策

4.管理職、成果主義、残業代

5.ジョブ型労働社会へ


この中で興味深かったのが、日本の管理職は、「機能」ではなく「身分」であるということ。

組織を離れたとたんに、その効力はなくなるという点。

これは、ニッポンの会社というムラ社会に入り、そこそこ順調に昇進昇格すればたどり着ける一つの「身分」であるというのです。

職能集団というよりもメンバーシップ社会に近い日本の会社の特徴であるとします。


再就職の就職面接で、

「あなたは何が出来ますか?」

「部長ができます。」

というジョークがなくなる日が、近い将来実現するのではないでしょうか?


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雇用改革の真実 「労働者のため」は私たちを幸せにするか?大内伸哉神戸大学教授の提言

2014年05月25日 | 本と雑誌

雇用をめぐる安倍政権の打ち出し、企業経営を巡る環境変化で大きな岐路に立っているニッポンの雇用。

9割がリーマンになっているわが国、少子高齢社会に突入した今、様々な課題が浮き彫りになっています。


「雇用改革の真実」 

大内伸哉著 

日経プレミアシリーズ 日本経済新聞出版社 850円+税


著者は、神戸大学大学院法学研究科教授。

労働法の切り口から雇用について解説していきます。

全体的にかなり辛口でストレート。

そこまで言っちゃっていいの?という快刀ぶりです。


整理解雇の4要件、労働契約法などでガンジガラメになっている解雇法制ですが、日本のルールは欧州のそれに近いこと、解雇しないかわりに人事権が広いこと、金銭解決の方向性もあることを主張します。

第1章では、正論を述べて暗殺されたイタリアの労働法学者のことも書かれており、なかなか読みごたえありの一冊です。


さらに有期雇用を規制しても正社員が増えないことにも言及。

有期労働者を守るはずのルールが雇用を不安定にしていること、無期転換ルールがかえって契約打ち切りを招いていることとします。

これは、民主党政権時の社会実験でも「失敗」という実験結果が出ており、正社員の数はドンドン減少している状況にあります。

産業を支える労働のベースをきっちり作り込むことが、

ニッポンが国際社会を生き抜いていくために必要不可欠なことのように思えます。


目次

1.解雇しやすくなれば働くチャンスが広がる

2.限定正社員が働き方を変える

3.有期雇用を規制しても正社員は増えない

4.派遣はむしろもっと活用すべき

5.政府が賃上げさせても労働者は豊かにならない

6.ホワイトカラーエグゼンプションは悪法ではない!

7.育児休業の充実は女性にとって朗報か

8.定年延長で若者が犠牲になる


最終章では、定年延長問題と若年層の雇用の問題について取り上げています。

米国のように成果を出し続けている限り定年のない社会・・・実力主義社会について解説。

高年齢者にプロ野球選手のような働き方を取り入れれば、若年層との共存も可能であることを解説。

また、若年層に対する支援を強化すること、若年層と同じように猛烈に働けない高年齢者に配慮した弾力的な勤務形態の導入といった解決策について提言しています。


9割がリーマンのニッポンは、組織雇用の社会。

個人的には、会社人間だけを育成するサラリーパースン養成教育システムの中に、

すこしでもいいから自営業、起業を志向する人たちを育成する教育システムがあっていいような気がします。


事務をキチンとこなす役人はたくさん輩出できても、

アップルやフェイスブックのようなイノベーションがなかなか出てこないニッポン社会。

廃業率が開業率を上回り続けている日本産業界。そこからの脱却という視点が大切なようにも思います。


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