20世紀の初頭、日本の産業界の黎明期、「能率技師」と呼ばれるマネジメントのプロフェッショナルが活躍し始めました。今でいう、経営コンサルタントです。そうです、当時の経営コンサルタントは、エンジニアという位置づけだったのです。
18世紀末、米国で重厚長大産業が強拡大し、技術面や人的資源面で様々な課題に直面することになります。その時に出てきたフレデリック・テーラー・・・。「科学的管理法」を編み出した人物。このサイエンティフィック・マネジメントは、まさに管理技術のベースであるIE(インダストリアル・エンジニアリング)の出発点。要は、工場、生産現場のヒト・モノ・カネを可視化(「見える化」)することにより、改善していこうという方法論。労働者や組合から大きな反発はあったものの米国の製造業は大きく飛躍を遂げました。のちにドラッカーもテーラーを称賛しています。
この科学的管理法を日本に導入したのは、能率技師たち。
心理学者の上野陽一、官僚の山下興家、海軍軍人の伍堂卓雄、そしてアメリカ仕込みで徹底した現場主義の荒木東一郎。個人的には、「能率の父」と呼ばれている上野陽一、米国アクロン大学でマスターを取得し日本の生産現場に張り付いてコンサルティングを死ぬまで続けたイケメンコンサルタント荒木東一郎が好きです。
能率技師たちは、さまざまな分野で、その専門性を駆使し、現場の改善に突き進んでいきます。
「能率」とは、「目的と手段のバランスが取れた状態」「モチマエが活かされた状態」と定義できます。
目的>手段でムリ、目的<手段でムダ、このムリとムダを合わせてムラ。ムリ・ムダ・ムラを逓減させていくことこそが能率の基本コンセプトということになります。
このコンセプトをさらにブレークダウンしたものが、「安・正・早・楽/アン・セイ・ソウ・ラク」です。
◆安・・・その仕事をより安くできないか?(コストダウン)
◆正・・・より正確に出来ないか(ミス撲滅)
◆早・・・より早く出来ないか(スピードアップ)
◆楽・・・より楽に出来ないか(不要な労力カット)
この原則は、定量化できない分野の目標を設定したり、目標の難易度を高める場合に広く活用できます。
たとえば、経理部門の目標設定は、数字で測れる営業部門とは異なるため、より安く、より正確に、より早くといった改善目標を設定することが出来るはずです。IT化を進めたり、人員を減らしたり、やり方を変えたり・・・方法論は様々です。
目標には、大きくスケジュール目標と状態目標があるため、これらとの組み合わせにより、さらなる目標のクオリティアップが可能になります。
この能率の原理原則「安・正・早・楽」を今風に言うと、次のようになると思います。
新・「安・正・早・楽」
◆安・・・より安全に出来ないか(安全管理) より安心を得られないか(リスクマネジメント・情報セキュリティ) ◆正・・・より正しく出来ないか(コンプライアンス・環境経営・CSR) ◆早・・・より早く帰れないか(ワークライフバランス) ◆楽・・・より楽しく出来ないか(仕事の道楽化、風通しのいい楽しい職場づくり)