個人的に好きな田坂さんが出した新刊。
独特の文体で語るように進む文脈は、当初もっと詰めれば本の厚さが半分になるのにと思っていたのですが、今では余韻を残し考えながら読み進められるという計算づくの文体であると感じている次第です。
「知性を磨く スーパージェネラリストの時代」
田坂広志著
光文社新書 760円+税
同書では、知性と知能そして智恵、割り切りと腹決めというタームを対比しながら進んでいきます。
「知能」・・・答えのある問いに対して、早く正しい答えを見出す能力。
「知性」・・・答えのない問いに対して、その問いを問い続ける能力。
田坂さんは、今、知性の求められる時代であり、知識、科学が専門的に分化し、部分最適に陥っている・・・。
それを統合し「答えのない問い」を総合的に問い続ける必要があると説きます。
同書で出てくる「スーパージェネラリスト」という言葉は、複雑系で有名なサンタフェ研究所で使われている用語らしく、垂直統合の知性をもった人材のことのようてす。
垂直統合の知性は、次の7レベルで整理されています。
1.明確なビジョン
2.基本的な戦略
3.具体的な戦術
4.個別の技術
5.優れた人間力
6.素晴らしい志
7.深い思想
そして、最も重要なのは「変革の知性」・・・行動する力であるとします。
まさに、王陽明が打ち出した知行合一、陽明学の世界です。
本を読んで何となく分かったような気になる・・・知識に触れることにより解を得たような気になる・・・。
それだけでは何も変わらない・・・。
そのことを強く思うことができる一冊でした。