職場、チーム、組織、グループ・・・。
人間は、一人では成し遂げられないことを集団を作って活動します。
これは、紀元前、ピラミッドやパルテノン神殿、万里の長城を造る時から続けられています。
ただ、集団、組織を作る人間は面白いもので、1+1が3にも10にもなったり、1+1が0.5やマイナスになったりする場合もあります。
これをプラスに転じるために、心理学や社会学、経営学などの研究が進められてきました。
経営学の世界では、フレドリック・テーラーの科学的管理法、レスリスバーガーの人間関係論、ダグラス・マクレガーのX理論・Y理論などの基礎研究があります。
組織論でいえば、チャンドラー。
チャンドラーは、組織を「共通の目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」という要素が具備されたものと定義し、機能する組織のために基礎づけられる条件を探究しています。
今回とりあげる一冊は、企業勤務経験のある経営学者が書かれた一冊。
学術的な作法というより、現場志向の切り口により読みやすくなっています。
「組織学習の理論と実践 個人の力が仕事で活きるチームをつくれ!」
辻本篤著 生産性出版 2200円+税
著者の辻本さんは、北海道大学准教授。
組織学習、リスクコミュニケーション論を専門とされている方。
今回の著書には、著者の体験談が随所に散りばめられており、親近感を感じます。
苦手だった英語への取り組み、健康論、職場での体験談などが出てきます。
目次
第1章 組織学習論はどのように生まれてきたのか 大きな利益を手にするチャンスとなる学習組織
第2章 組織人としてイメージをどう共有するのか 最高の組織を実現するのに重要なシステム思考
第3章 組織学習がしやすい環境をととのえる 組織メンバーの質改善をするために
第4章 個人から組織学習への移行を推進する
第5章 組織学習の新展開
同書では、ピーター・センゲの「5つの法則」のフレームワークを中心に展開されます。
これは、組織学習に先鞭をつけたセンゲ教授「最強組織の法則」、1990年に発刊されたものです。
1.自己マスタリー
2.メンタルモデルの克服
3.共有ビジョンの構築
4.チーム学習
5.システム思考
著者は、1.自己マスタリーと、5.システム思考の重要性を強調します。
特に自己マスタリーでは、自分自身の英語学習をいかに進めたかという体験談も織り込み、「自身の思考と行動を洗練させる」ための日常の努力の必要性を説きます。
マネジメントを学習している人には、ぜひ一読していただきたい一冊です。
同書には、最近キーワードとしてよく使われている重要語が出てきます。
このあたりをフォローすると組織学習論の扉を開くことが出来ると思います。
・意味づけされた情報
・有機的組織 バーンズ&ストーカー
・ダブルループ学習 アージリス
・U理論 オットー・シャーマー
・AI
・クリエイティブテンション
・快情動
・組織感情
・感情労働論
・社会構成主義
組織開発、組織理論・・・今のところ正解のない、怪しい世界です・・・笑。