春の夜、ふと思いつき、一冊の古典を書棚から取り出しました。
先般、NHK-BSで放映された日本陸軍の無謀ともいえるインパール作戦の特集を見たことが、きっかけでした。
同書は、日本のマネジメント、組織論を語る上で必要不可欠な一冊です。
同書は、日本のマネジメント、組織論を語る上で必要不可欠な一冊です。
失敗の本質 日本軍の組織的研究
戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎著
ダイヤモンド社 2800円+税
同書の奥付は、昭和59年(1984年)の刊行。
アジア・太平洋戦争の戦局を左右した6つの局地戦を取り上げ、どのような意図、目的で戦略、戦術を立て、実行したか・・・そして、どのように失敗の途を辿ったかを分析していきます。
防衛大学校の教授を中心とした、まさに実戦ケースをロジカルに詳説、分析していきます。
若き日の野中郁次郎先生も執筆に参加されています。
目次
序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
1章 失敗の事例研究
1.ノモンハン事件 失敗の序章
2.ミッドウェー作戦 海戦のターニングポイント
3.ガダルカナル作戦 陸戦のターニングポイント
4.インパール作戦 賭の失敗
5.レイテ海戦 自己認識の失敗
6.沖縄戦 終局段階での失敗
2章 失敗の本質 戦略・組織における日本軍の失敗の分析
3章 失敗の教訓 日本軍の失敗の本質と今日的課題
序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
1章 失敗の事例研究
1.ノモンハン事件 失敗の序章
2.ミッドウェー作戦 海戦のターニングポイント
3.ガダルカナル作戦 陸戦のターニングポイント
4.インパール作戦 賭の失敗
5.レイテ海戦 自己認識の失敗
6.沖縄戦 終局段階での失敗
2章 失敗の本質 戦略・組織における日本軍の失敗の分析
3章 失敗の教訓 日本軍の失敗の本質と今日的課題
事例研究では、軍事の専門家、経営・マネジメントの専門家、戦略やマーケティングの専門家が、各事例ごとに事実に基づいたアナリシスを加えていきます。
昨年、忖度という言葉が流行しましたが、日本の組織には、空気を読む、上に従う、なんとなく意思決定、無責任体制、現場を知らない裸の王様、思いつきのリーダーシップ・・・など基本は当時と変わらないように思います。
同書の239ページでは、日本軍と米軍の組織特性比較を、戦略と組織に分けて分析しています。
戦略
1.目的・・・日本軍「不明確」・・・米軍「明確」
2.戦略志向・・・日本軍「短期決戦」・・・米軍「長期決戦」
3.戦略策定・・・日本軍「帰納的(インクリメンタル)」・・・米軍「演繹的(グランドデザイン)」
4.戦略オプション・・・日本軍「狭い(統合戦略の欠如)」・・・米軍「広い」
5.技術体系・・・日本軍「1点豪華主義」・・・米軍「標準化」
組織
6.構造・・・日本軍「集団主義(人的プロセスネットワーク)」・・・米軍「構造主義(システム)」
7.統合・・・日本軍「属人的結合(人間関係)」・・・米軍「システムによる統合(タスクフォース)」
8.学習・・・日本軍「シングルループ」・・・米軍「ダブルループ」
9.評価・・・日本軍「動機・プロセス」・・・米軍「結果」
この日米両軍の比較は、現代の日米の経営システムの違いにも、そのまま結びつくようにも思います。
IFASやコングロマリットなどとも繋がると思うのですが、
IFASやコングロマリットなどとも繋がると思うのですが、
グローバルスタンダード(ほぼアメリカンスタンダード)に、なかなか乗れない日本企業の課題というところにも結びついてきます。
さらには、人基準の人事制度が中心となる日本の人事制度、仕事基準の人事制度が中心となる米国の人事制度といったところにも展開されていくと思います。
世界の動きとしては、保護主義、保守主義、ポピュリズムがメインストリームになりつつあるので、日本らしさを追求していくことも、アリだとは思います。
が、また数十年経つと、ふたたびグローバリズムの動きの中に巻き込まれていくように思います。
同書で、気になったフレーズを引用させていただきます。
教育そのものを重視したという点では、日本軍は決して外国軍隊と比べて決して劣っていなかった。233ページ
学習する主体としての自己自体を作り変えていくという自己革新的ないし自己超越的な行動を含んだ「ダブル・ループ学習」が不可欠である。234ページ
日本軍は結果よりもプロセスを評価した。個々の戦闘においても、戦闘結果よりはリーダーの意図とか、やる気が評価された。236ページ
個人責任の不明確さは、評価をあいまいにし、評価のあいまいさは、組織学習を阻害し、論理よりも声の大きな者の突出を許容した。このような志向が、作戦結果の客観的評価・蓄積を許容し、官僚制組織における下克上を許容していったのである。237ページ
官僚制とは、あらゆる異端・偶然の要素を徹底的に排除した組織構造である。273ページ
評価においても一種の情緒主義が色濃く反映され、信賞必罰のうち、むしろ賞のみに汲々とし必罰を怠る傾向をもたらしたのである。238ページ
学習(ラーニング)に対して、学習棄却(アンラーニング)という。このようなプロセスが組織学習なのである。245ページ
ひとつの組織が、環境に継続的に適応していくためには、組織は環境の変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変革することが出来なければならない。こうした能力を持つ組織を「自己革新組織」という。246ページ
適応は適応能力を締め出す 246ページ
「分化」と「統合」という相反する関係にある状態を同時に極大化している組織が、環境適応にすぐれているということである。253ページ
リーダーシップの積み上げによって、戦略・戦術のパラダイムは、組織の成員に共有された行動規範すなわち組織文化にまで高められる。組織の文化は、とり立てて目を引くでもない、ささいな、日常の人々の相互作用の積み重ねによって形成されることが多いのである。259ページ
異質かつ多様な作戦を同時に展開するには、組織の構成要素の主体的かつ自律的な適応を許すことが必須であるために、程度の差はあれ柔構造の原則をビルトインしていなければならない。269ページ
進化する組織は、学習する組織でなければならないのである。組織は環境との相互作用を通じて、生存に必要な知識を選択淘汰し、それらを蓄積する。274ページ
日本企業の戦略は、論理的・演繹的な米国企業の戦略策定に対して、帰納的戦略を得意とするオペレーション志向である。その長所は、継続的な変化への適応能力をもつことである。変化に対して、帰納的かつインクリメンタルに適応する戦略は、環境変化が突発的な大変動ではなく継続的に発生している状況では強みを発揮する。281ページ
成長期には、組織的欠陥はすべてカバーされるが、衰退期にはそれが一挙に噴出してくる。278ページ
以上