2019.11.25 NHK
この情報は2013年12月に公表されました
首都直下地震とは
「首都直下地震」は、政府の地震調査委員会が今後30年以内に70パーセントの確率で起きると予測している、マグニチュード7程度の大地震です。
江戸時代から大正の関東大震災に至るまで、過去の地震の歴史記録などをもとに、将来発生すると予想されている地震です。
異なる震源の複数の地震が想定され、このうち首都中枢機能への影響が最も大きいと考えられるのが、都心南部の直下で起きるマグニチュード7.3の大地震です。
▽東京の江戸川区と江東区では震度7、
▽東京、千葉、埼玉、神奈川の4つの都県では、震度6強の激しい揺れが想定されています。
死者2万3,000人 経済被害95兆円
冬の夕方、風が強い最悪の場合は、全壊または焼失する建物は61万棟に上り、このうち火災で焼失するのはおよそ41万2,000棟とされています。
死者はおよそ2万3,000人にのぼり、その7割にあたるおよそ1万6,000人は火災が原因で死亡するとされています。
けが人は12万3,000人、救助が必要な人は5万8,000人、避難者数は720万人に達すると想定されています。
電気や上下水道などのライフラインや交通への影響が長期化し、都心の一般道は激しい交通渋滞が数週間継続するほか、鉄道も1週間から1か月程度運転ができない状態が続くおそれがあるとしています。
経済被害は、建物が壊れるなど直接的な被害は42兆円余り、企業の生産活動やサービスが低下する間接的な被害は48兆円近くで、そのほかも合わせて95兆円と国の年間予算に匹敵するとされています。
世界にも影響を及ぼす経済の混乱が、数年数十年と長期化すると、さらに経済被害は増加していくことになります。
対策で死者は10分の1に
一方で、想定では、建物を耐震化して、火災対策を徹底すれば死者は10分の1の2,300人に減らせると対策の効果も示されています。
首都の中枢機能については、政府機関を中心に耐震化や非常用電源などハード面の対策はとられているとしたものの、夜間や休日に地震が発生すると激しい交通渋滞などで通勤が困難になるため、要員を確保するなどの対策が必要だとしています。
今後30年以内に70%の確率で起きるとされている首都直下地震。約2万3,000人と想定される死者のうち、7割にあたる1万6,000人が火災によるものです。
なぜ火災のリスクが高いのだろうか
さらに、高温の炎や煙が竜巻のように渦を巻く「火災旋風」が発生し、被害を拡大させるおそれも指摘されています。
“無理な帰宅”さらなるリスクに
死者1万6,000人。この想定の中には含まれていないリスクもあります。地震後の「人間の行動」が招く被害です。
上の火災の想定図をみると何かに気づかないでしょうか? ドーナツ状に火災が起きています。都心の中心部ではコンクリートで作られたビルなど燃えにくい建物が多く、火災が少ないことがわかります。
一方で、ここにはオフィスや仕事場が多く、日中は多くの人が滞在しています。この時に地震が発生した場合、道路は「帰宅困難者」であふれます。こうした人たちが四方八方に帰宅を始めた場合、「自ら火災に巻き込まれてしまう」リスクがあるのです。
国は都心などで頑丈な建物にいる場合「無理な帰宅はせずとどまる」ことをすすめています。
地震数日後“通電火災も”
さらに、地震からしばらくたっても注意が必要な火災があります。停電が回復した際に発生する、「通電火災」です。地震の揺れによってダメージを受けた配線や転倒した電気ストーブなどで二次的な火災が発生し、さらに被害を広げるのです。
対策で被害は10分の1に
同時にこの被害想定では、対策を徹底すれば被害を10分の1に減らせるという推計もしています。
そもそも建物が壊れず、燃えにくいものであれば火災のリスクは減ります。各地の自治体は、建物の耐震化や不燃化、木造住宅密集地域の解消といった取り組みを進めていますが、これには時間がかかります。
そこで重要となるのが、大規模な火災になる前に火を消し止める「初期消火」です。
初期消火の徹底
地震直後の出火の主な原因はガスコンロや電気器具など家庭で日常的に扱うものです。この火が燃え移った場合は炎が大きくなる前に消火するのが最も大切です。
地域の自主防災組織などによる初期消火も重要です。訓練を行うだけでなく、消火器や可搬ポンプなど装備の充実のほか、断水時にも利用できる防火水槽の確保なども進める必要があります。
一方で、初期消火に時間をかけ過ぎると逃げ遅れて火災に巻き込まれる危険性もあります。炎の高さが背の高さを超えるまでは、個人での初期消火が可能とする指摘もありますが、炎が大きくなりすぎる場合は避難を優先する必要があります。
ガスについては震度5以上の揺れで自動的にガスを止めたり警告を表示したりするマイコンメーターの設置が進められています。また、大規模な地震時には、自動的に電気のブレーカーを落とす「感震ブレーカー」などもあります。
できるところからの火災対策を
家庭に消火器など、初期消火をするための道具はあるでしょうか?
自宅だけでなく地域の火災のリスクを減らすために、自分たちで出来る大切な備えです。