東野 真 (著)
内容紹介
「緒方貞子」はどう生きてきたか!?63歳で国連難民高等弁務官に就任!その人柄と献身的・精力的な仕事ぶり。
冷戦後の一〇年間、国連人道機関の一つであるUNHCRのトップとして世界の難民支援を指揮し、国際的に高い評価を得ている緒方貞子・前国連難民高等弁務官。頻発する危機や武力紛争の中で、彼女はどのように考え、決断し、行動したのか。同時多発テロ事件のあと世界はどこに向かおうとしているのか。「人間の安全保障」という考え方にはどんな可能性があるのか。─長時間のインタビューに関係者の証言をまじえて、その人と思想を生き生きと描き出す。自らの生い立ちを日米関係史に重ね、人道主義を力強く提唱した、アメリカでの講演『日本、アメリカと私─世界の課題と責任』を巻末に収録。
[著者情報]
取材・構成 東野 真(ひがしの まこと)
一九六五年生まれ。八七年、東京大学文学部卒業後、NHK入局。広島放送局、教養番組ディレクター等を経て、社会情報番組チーフ・プロデューサー。二〇〇一年制作のNHKスペシャル「難民と歩んだ10年?緒方貞子・国連難民高等弁務官」などで、NHKは国連報道賞最優秀賞を、また「テロはなぜ生まれるのか?緒方貞子 ニューヨークで語る」でギャラクシー奨励賞を受賞。著書に『昭和天皇 二つの「独白録」』(NHK出版)がある。
内容(「BOOK」データベースより)
冷戦後の一〇年間、国連人道機関の一つであるUNHCRのトップとして世界の難民支援を指揮し、国際的に高い評価を得ている緒方貞子・前国連難民高等弁務官。頻発する危機や武力紛争の中で、彼女はどのように考え、決断し、行動したのか。同時多発テロ事件のあと世界はどこに向かおうとしているのか。「人間の安全保障」という考え方にはどんな可能性があるのか。―長時間のインタビューに関係者の証言をまじえて、その人と思想を生き生きと描き出す。自らの生い立ちを日米関係史に重ね、人道主義を力強く提唱した、アメリカでの講演『日本、アメリカと私―世界の課題と責任』を巻末に収録。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
東野/真
1965年生まれ。87年、東京大学文学部卒業後、NHK入局。広島放送局、教養番組ディレクター等を経て、社会情報番組チーフ・プロデューサー。2001年制作のNHKスペシャル「難民と歩んだ10年~緒方貞子・国連難民高等弁務官」などで、NHKは国連報道賞最優秀賞を、また「テロはなぜ生まれるのか~緒方貞子ニューヨークで語る」でギャラクシー奨励賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
海外の難民支援の第一人者として知られる緒方貞子氏の活躍をご本人のインタビュー等を交えて紹介する。
暗殺された元首相の犬養毅を曾祖父に持つ緒方さんの家庭環境は常に世界を見据えていた。
難民というと「局地的な紛争」との切っても切れない関係を無視できない。
国内に少数民族と多数派民族が混在しての政治的・経済的な対立を背景とするケースが多く、政治的な解決は困難である。
緒方さんはあくまでも「難民支援」を実行する立場として、国連などに働きかけは行うものの、現実的な壁に阻まれることは多々ある。
世界中の難民支援の最前線に立つ緒方さんは「率先垂範」を基本とし、それはご本人も含む団体の職員の身を危険に晒すこともあった。
国を破壊した政治家や軍人や独裁者は結局のところ、乱が落ち着いても再生までは請け負ってはくれないのだ。
再生するのは国民ひとりひとりであるのだろうが、自力では困難な場合が多く、緒方さんたちの活動がそのための道筋を付ける。
「破壊」は1日で可能だが、再生・復興は10年も20年も掛かることがザラであるということ。
物資やお金の支援だけでは「乞食」に等しく、それは真の自立ではない。
誰かに頼らずとも「自給自足」出来る環境を難民だった人たちが築き上げられるようにすること。
緒方さんの戦いは未だ続いているのだ。
難民の生命を守ることを第一に考え、常に難民のそばを離れず、紛争地の現場から判断する。緒方さんがトップを務めた10年間、UNHCRの難民支援活動はこの基本原則から導き出されたといいます。臨機応変、まさにいまこのとき、命を守る現場主義の精神です。
ボスニア、コソボ、クルド、ルワンダ、東チモール…。冷戦終結とともに地域紛争が頻発した時代でした。人道援助の要請は急増し、緒方さんはUNHCRの組織や人員を拡大しつつ、多国籍軍などと連携して紛争地に入り、難民を保護するスタイルを確立します。戦闘状態の中で行われる援助活動は危険を極めます。難民キャンプを武装勢力に支配されたり、現地職員が惨殺されたこともありましたが、緒方さんは基本原則を貫き通します。
人道援助はしかしながら、国際社会が紛争を政治的に解決できない代わりの「言い訳」として利用されているという現実があります。ボスニアやルワンダのケースなど、大国の利害が対立して紛争処理が進まない状況下で難民保護を求められた緒方さんは「難民問題は政治が解決しない限り解決しない、政治対立が軍事対立になっていくという状況が止まらない限り難民はなくならない」と実感を込めて説きます。いつでも難民支援の最前線から紛争処理と平和構築の重要性を訴え続けようとした姿勢に拍手を送りたいと思います。
緒方貞子さんに インタビューして書かれているこの本は
聴き手が存在することによって 緒方さんの姿が ぐるっと全体に伝わってきてとても興味深かった。
行動のもとになっているエネルギーは何ですかという問いに
「怒り」かもしれない と彼女は答えている。
これは承知できませんという気持ち
がっかりするよりも 何とかしたい
こんなことは受け入れられない。
怒りの中には深い想いがある。
この世界の人たちのこと、この世界でおこっていることが
他人事でないことを最もわかっていて、そのために自ら行動をおこせる類まれな存在なんだと思う。
この人の存在を誇りに思うと同時に
創造と変革をおこせるリーダーであり そして ただついていきたいというだけでなく
その人をみて自分の成長も信じられるような
そんなリーダーが この国に果たして何人いるだろうと ふと思ってしまった。
思ってしまった瞬間 それも 他人事の観点だったなと・・・
どこにいても自分にできることが何か そこをいつも忘れないでいたいと思う。
自分がこの国のこの土地に足をつけていられることにも感謝しよう。
国連を一時去るときに残したメッセージがとても印象に残っている。
あらゆる苦難を経験されて立ち向かってきたこの人がいう「リスペクト」は とても重い。
そして愛にあふれている♪
いくつか前にある、他の方のレビューにも似たような感想がございますが、個人の感情という部分はあまり語られていない(あるいは語られているにしても淡々としている)内容で、思ったよりも、ただ事実だけが述べられている書籍という印象を受けた。読んで良かったとは思う。ただ、この本でしか得られない価値というものが、想像していたよりかは少なく感じた(これは期待値の問題ではありますが)。
緒方さん自身は、UNHCRの高等弁務官になるまで、そこまで難民に関わる仕事をなされてなかったというのは驚きでした。
常に難民のそばにいる、という考えを持ち、ぶれない軸を持って自分で行動を起こし、
信念を持って発言されていることを読み解くと、その評価の高さの理由が分かります。
紛争では、一刻の猶予なく決断すべき瞬間(空輸による支援物資の停止)もあれば、
難民支援のみが延々と続き、政治的な解決が行われない状況を打開すべく国連へ働きかける姿が印象的です。
また、難民を救うだけでなく、冷戦後の世界で、紛争解決後の民族感の共生や自立のグラウンドデザインを描きます。
その考えをしっかり世界に伝えている姿を拝見すると「日本人にもこのような方がいるのか。」と驚きます。
もっと、広く日本人に知って頂きたい方です。