9/11(金) 21:01配信
現代ビジネス
1968年5月、イギリス。とある空き家で1人の子供が遺体で発見された。遺体は現場近くに住んでいた4歳の男児、マーティン・ブラウン。
11歳の少女が犯した、異常すぎる連続殺人…可愛くも恐ろしい「素顔」
特に争った形跡も外傷もなく、遺体の近くには空になった薬の瓶が転がっていたことから、警察はマーティンが誤って大量の薬を誤飲し、事故死したと断定。そのまま処理されることとなった。
だが、その事件は紛れもなく殺人事件だったことが後に明らかになる。それも、まだ幼い1人の少女、「メアリー・ベル」による犯行だったのだ――。
荒んだ幼少期…賢くも粗暴な性格に
メアリー・ベル(Photo by GettyImages)
メアリー・フローラ・ベルは、1957年5月26日、イギリス・ニューキャッスルで生まれる。彼女の母親は未婚の17歳。そのせいか、荒んだ幼少期を過ごしたという。
母親はたびたびメアリーを親戚に預け、自分はろくに世話をすることもなかった。また、メアリーが生まれて間もなく結婚するが、その父親もほとんど働かず、家を空けることが多かったため、家は常に散らかっていたそうだ。
育児放棄という悲惨な環境で育ったメアリーの“狂気”は、小学生に上がった頃にはすでに見え隠れしていた。
非常に賢く学業の成績も良かったメアリーだが、その反面、異常なほどにプライドが高く、常習的に嘘をつく性格だったという。また、友達や下級生に大怪我をさせるなど、素行も極めて悪かったようだ。
そしてメアリーが11歳の誕生日を迎える前日、1968年5月25日――。ついにその狂気は現実のものになり、彼女は初めての殺人に手を染めることとなる。
第一の殺人、警察を挑発する行動も
メアリー・ベル(Photo by GettyImages)
第一の事件の被害者、マーティンは、メアリーによって絞殺された。しかし、冒頭で触れた通り、同事件は事故死と処理された。これはメアリーの首を絞める力が弱く、証拠となる絞殺跡が付かなかったからとされる。
殺人の時点ですでに異常ではあるものの、もしこれが普通の心理を持つ犯人であれば、結果的に証拠が残らなかったことを良しとしただろう。だが、“快楽殺人者”メアリーは違った。
犯行の翌26日、メアリーはあろうことか、殺害に及んだマーティンの保育所を荒らし、さらに自分を犯人と突き詰めることができなかった無能な警察に対し、挑発的なメモを残したという。
そのメモには、「私が殺した。だからまた来る」、「マーティン・ブラウンを殺した。くそったれ。ゲスやろう」といった文面が書き殴られていた。だが、これも警察には悪質なイタズラとして処理されるだけだった。
メアリーの狂気に満ちた行動は続く。さらに4日後、マーティンの自宅を訪れ、彼の母親に対して「マーティンがいなくなって寂しい?」「私、棺に入ったマーティンを見たいの」と嘲笑うなど、残忍かつまるで自分が犯人であると主張するような行動をとったのである。
だが、これほどまで大胆な行動をとっても、メアリーが疑われなかったのは、前述の通り普段から彼女に異常なまでの虚言癖があり、また、その当時、11歳という年齢で殺人を犯した前例がなかったためだ。結局、事件当時、周囲に疑う人間は現れることはなかった。
「殺人はそれほど悪いことじゃないわ」
メアリー・ベル(Photo by GettyImages)
犯行から2ヵ月以上経った7月31日。痺れを切らしたメアリーは、3歳の男児、ブライアン・ハウの絞殺に及ぶ。さらにその際、遺体の腹部にはわざわざメアリーの頭文字である「M」の字を刻んだ。
2回目の犯行が前回と違ったのは、わずかながらメアリーによる絞殺の跡が残っていたことにある。ここで初めて警察は、当時11歳のメアリーと13歳のノーマ・ベル、2人の少女への事情聴取が行われた(2人は親族関係ではなく、友達同士)。
この事情聴取の中で、犯人しか知り得ない情報をメアリーが話したことが決め手となり、また殺害時刻に2人が一緒にいたことから、共に殺人容疑で逮捕されることとなった。
法廷では、事故死と認定されていた1回目の事件の殺人容疑も浮かび上がったものの、裁判になると、メアリー、ノーマの両者が責任をなすりつけ合い、お互いに無罪を主張する様相を呈した。この時、メアリーを見ていた精神科医は彼女を「11歳とは思えないほど、利口で危険」と評している。
裁判の結果は、ノーマは保護観察処分で無罪に、一方のメアリーは2件の殺人事件について有罪になる。収容施設で精神治療を受けたのちに釈放、という形での懲役刑が科され、1980年、22歳の時にメアリーは釈放。その後、幸せな結婚生活を送ったという。
11歳にして“快楽殺人者”となったメアリーは、以下のような発言を残している。
「大きくなった看護婦になりたい。人に針が刺せるから」
「殺人はそれほど悪いことじゃないわ。人は誰でもいつか死ぬんだもの」
我々の想像を遥かに超えた狂気は、これからも語り継がれるであろう。
マネー現代編集部