
「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる
メアリアン・ウルフ (著), 大田直子 (翻訳)
◎かけがえのない「読書脳」が失われる前に、
新たな「バイリテラシー脳」をいかに育てるかーー
「読む脳」科学の世界的リーダーによる画期的な提唱! ◎
・文字を読むとき、脳はどれほど複雑な仕事をしているか
・紙の本が、創造力や共感力、記憶力、分析力を高めるわけ
・脳がデジタル・モードになると、読み方はどう変わる?
・熟達した「深い読み」ができる脳のしくみとは?
・脳の発達段階に応じた「読み書き力」「デジタル力」の育て方
・読書脳が失われていくと、文化や社会はどうなるか
・ゆっくり急ぐ「喜びの時間」とは?
デジタルによって人類が大きな転換点を迎えているいま、
紙とデジタルの読む脳の違いを知り、
ともに強いバイリテラシー脳を育てることが、次代を生きる糧となる。
手紙形式で、あなた(読者)に語りかけ、静かに深く問いかける
珠玉の読書脳体験がここに。
★立花隆・養老孟司・松岡正剛・竹内薫・山形浩生・池谷裕二・瀬名秀明・佐倉統・山本貴光 氏ら絶賛の
名著『プルーストとイカ: 読書は脳をどのように変えるのか』、待望の続編!
★本書の推薦書評★
これからの時代は、この方向(バイリテラシー脳)で進む以外にないのだ
ーー立花隆『週刊文春〜私の読書日記』
紙とデジタルどう違っているかに注意を払うことが重要だと教えてくれる
ーー山本貴光x吉川浩満『YouTubeチャンネル:人文的、あまりに人文的 #001』
小さな子を持つ親は大いに参考になるだろう
ーー『日本経済新聞』
本書は関係者必読である
ーー永江朗『週刊朝日』
人類の脳が変化していく過渡期に
ーー藤田直哉『建築討論』
読字脳を重視するとともに新しいテクノロジーを教育や社会に生かす方法を考える
ーー『日経サイエンス』
デジタルネイティブ世代に深い読書の知恵を伝授する、著者の英知が光る。
ーー『日刊ゲンダイ』
情報社会の現代では、意識して両者(デジタルと紙)の読みのバランスをとるべきだろう。
ーー『産経新聞〜【ビジネスパーソンの必読書】』
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::目次::
第一の手紙・・・デジタル文化は「読む脳」をどう変える?
第二の手紙・・・文字を読む脳の驚くべき光景
第三の手紙・・・「深い読み」は、絶滅寸前?
第四の手紙・・・これまでの読み手はどうなるか
第五の手紙・・・デジタル時代の子育て
第六の手紙・・・紙とデジタルをどう両立させるか
第七の手紙・・・読み方を教える
第八の手紙・・・バイリテラシーの脳を育てる
第九の手紙・・・読み手よ、わが家に帰りましょう
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::著者:: メアリアン・ウルフ
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) 教育・情報学大学院の「ディスレクシア・多様な学習者・社会的公正センター」所長。
専門は認知神経科学、発達心理学、ディスレクシア(読字障害)研究。その優れた業績により、多数の賞を受賞。
著作は『プルーストとイカ: 読書は脳をどのように変えるのか』?など。
::訳者:: 大田直子
翻訳家。訳書は、エリエザー・スタンバーグ『〈わたし〉は脳に操られているのか』、
デイヴィッド・イーグルマン『あなたの脳のはなし』、オリヴァー・サックス『意識の川をゆく』など、多数。
出版社からのコメント
◎かけがえのない「読書脳」が失われる前に、
新たな「バイリテラシー脳」をいかに育てるかーー
「読む脳」科学の世界的リーダーによる画期的な提唱!◎
・文字を読むとき、脳はどれほど複雑な仕事をしているか?
・紙の本が、創造力や共感力、記憶力、分析力を高めるわけ
・脳がデジタル・モードになると、読み方はどう変わる?
・熟達した「深い読み」ができる脳のしくみとは?
・脳の発達段階に応じた「読み書き力」「デジタル力」の育て方
・読書脳が失われていくと、文化や社会はどうなるか
・ゆっくり急ぐ「喜びの時間」とは?
デジタルによって人類が大きな転換点を迎えているいま、
紙とデジタルの読む脳の違いを知り、
ともに強いバイリテラシー脳を育てることが、次代を生きる糧となる。
手紙形式で、読み手に語りかけ、静かに深く問いかける
珠玉の読書脳体験がここに。
★続々、絶賛書評!
・立花隆『週刊文春〜私の読書日記』
・山本貴光x吉川浩満『YouTubeチャンネル:人文的、あまりに人文的』
・永江朗『週刊朝日』
・藤田直哉『建築討論』
・・『日本経済新聞』『日経サイエンス』『聖教新聞』『夕刊フジ』『日刊ゲンダイ』ほか
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::著者:: メアリアン・ウルフ
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院・教育情報学部の「ディスレクシア・多様な学習者・社会的公正センター」所長。
専門は認知神経科学、発達心理学、ディスレクシア(読字障害)研究。その優れた業績により、多数の賞を受賞。
著作は『プルーストとイカ: 読書は脳をどのように変えるのか?』など。
脳科学的見地から、「紙の本」と「デジタル」とでの読字のプロセスの違いやメリット・デメリット、更には両者のいい所をとった次世代の読字脳についての可能性の示唆を述べた本。
自分は紙の本で読む派だ、という読書家は多いと思う。僕も熟読するのなら紙の本の方が圧倒的に読みやすい。
この本では、なんで紙の本の方が深い読みをしやすいのか?なんでデジタルじゃイマイチなのかについて説得力のある説明をしている。
その上で、著者は、紙でもデジタルでも媒体を問わず上手に読めることができる脳(バイリテラシー脳)を育てることを理想をしている。ただしその具体的な方法はまだ途中のようで、この本では示唆にとどまっている。
また、この本は、読書好きなら共感できる、読書の喜びについての著者の思いも溢れたものとなっている。
・人類は誕生時から字が読めた訳ではない
「読字能力」は、人間に生得的に備わった機能ではない。
すなわち、人間は、言葉を発する能力のための脳回路は先天的に備わっているが、読字能力のための脳回路(読字脳)を最初から備えてはいない。
幼い脳は読字のための回路をもたないので、人間は幼少期においては絵本の読み聞かせで読字を学び、しだいに紙の本で読書をすることで読字能力を磨いていく。そして注意深い読書により知見を得る「深い読み」が可能となる(だから絵本の読み聞かせはとても重要なのだ)。
・「読字脳」が人類を変えた
読字が脳の回路自体を作り変えることは、読字が思考の本質をも変えることを意味する。
読字はわずか6000年の間で人類の文化の知的発展の触媒となった。
(より詳しくは、この著者の前作『プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?』)
・「読字脳」のパラダイムシフト
僕たちは「読字脳」の歴史的な大転換期に生きている。
デジタルデバイスの出現だ。これは口承文化から書記文化への移行に匹敵する転換だと著者は言う。
しかし、印刷でなくデジタル画面で本を読んだ場合、読み飛ばしや斜め読みで読まれやすく、紙の本で読んだ場合と比べて細部の理解度が低下する傾向があるという研究結果がある。
一般的に「深い読み」は紙の本が適しているためだ。
・なんで「深い読み」には紙の本がいいのか?
その大きな理由は「物性」である。
紙の本は、ページに印刷されたモノであるため、読者は本の内容を時間的・空間的に位置づけて認識しやすい。
つまり、実際のページの進み具合や、何がどこに書いてあり、それらがどう関連するかを物理的な次元で実感できるし、時には戻ったり、パラパラページをめくりふと止めて熟読したり…そういうことをしやすい。それが細部を大きな全体像に位置づけることを助け、ひいては理解を助けるのだ。
・デジタルで読むことのデメリット
一方、デジタルで読む場合では、時間的・空間的な位置付けは全て概念的なものとなる。だから、細部を大きな全体像に位置づけにくい。
また、デジタル画面を通して得る情報はデータ量が多くなりがちである。そんな膨大なデータの全ては処理しきれないため、現代人は、結果的に情報を読み飛ばす癖がついてしまっている。これが「デジタル読みモード」だ。
著者の実験によれば、デジタルで読むことに慣れた場合、紙の本を読む場合でも「デジタル読みモード」で読んでしまいがちになり、かつてのような「深い読み」を行いにくくなってしまうという。
また、幼少期に過剰にデジタルに触れることは、子供の注意力の低下を促すことがわかっている。
・デジタル時代の子育て(紙とデジタルの両立)
しかし現代においてデジタルによる情報収集は不可欠だ。
この本でも別にデジタルで読むことを否定しているわけではない。これからの子育てにおいて、紙とデジタルの両立を図ることを推奨している。
0~2歳 まずは紙の絵本で読み聞かせをし、「読字脳」の下地をつくる。
2~5歳 紙の絵本で読み聞かせを継続し、「デジタル読みモード」に設定される前に本を通して物語から得られる知見を伝える。デジタルは程々(2時間以内)
5~10歳 この頃子供達は自分で読むことを覚え始める。ただし、これにはばらつきがあるので焦らずに。
・バイリテラシー脳を育てる
著者は、媒体を問わず上手に読めることができる脳を育てることを理想をしている。
結局、「デジタルで読むことのデメリット」は、「デジタル読みモード」の特性を何にでも当てはめる癖がついて、紙の本で読むときにも「デジタル読みモード」がにじみ出てしまうことがが問題なのだ。
従って、「デジタルに適した脳回路」と、「紙の本で深く読むことに適した脳回路」と、を上手に切り替えるような脳回路(バイリテラシー脳)が形成されることが望ましい。
イメージは、それぞれ異なる言語で話す両親に育てられ、2つの言語モードを瞬時に切り替えることのできるバイリンガルの子供である。
・その他 感想
著者は、適切な時期に適切な教育(従来の読み書きに加えてプログラミングスキルなど)を実施することで、紙とデジタルの両方の脳回路を発達させて、バイリテラシー脳を形成する学習プロジェクトを推進している。
つまり途中なのだ。だから、この本では、読者が気になるところであるバイリテラシー脳を育てる具体的な方法については示唆にとどまっている。
一応、開発中のデジタルデバイスの教材の一例として、子供が画面の単語をタッチするとデバイスがそれを読み上げたり視覚イメージが浮かんだりするような、文字とインタラクティブに遊べるものが紹介されている。でも、こんなのって特に目新しいものでもないような気がする(こどもチャレンジとかでもありそう)。
あと気になった点として、著者は最後のあたりで、バイリテラシー脳を持つ次世代に期待される特性について、”たとえば電子メールのためにはより速い「軽い読み」モードを使い、もっと深刻な素材のためには、おそらくたいていは文章をプリントアウトすることによって、深い読みモードを使うでしょう。”と言う。
…えーなんか普通だな、これくらいみんなやってることでは?著者が期待するバイリテラシー脳の特性ってこんなもの?と思ってしまった。
しかしそれでも、この本が読書や読字脳の新たな知見と、そのための説得力のある裏付けに満ちた本であることに変わりはなく、読書家に、親に、教育者におすすめの一冊だと思う。
この本を手にとった理由は、同じ文章を紙で読むのとモニター(Kindle含む)で読むことの違いが科学的な検証のもので語られてるのかと期待しました。
大学生の私の娘たちは手書きのノートをPDF化してipadで読みながら勉強してます。これってどうなのだろうか、ってなことが分かればと思った次第。
が、教育者の観点で本(主に印刷された)とデジタルで表現されているSNS等のいわゆるデジタルメディアとの比較と、それにさらされている現代において子供たちをどう育てていくかの考察と提言、いう印象です。
原題がReader, come home. The reading brain in a digital worldで邦題とはかなりニュアンス含め違います。
ちょっと期待はずれでした。ただ心理学的、脳科学的な読書の効能などについては改めて勉強になる下りもあり、読んだことが無駄ではありませんでした。(その読書をKindleでやったらどうなのか、が知りたかったわけですが)
日経の書評で見て大いに関心を持ち、購入しました。心理学関係の大学院を修了した研究者です。まず、段落ごとに何度読んでも頭に入らない。ついに認知症が来たかと思い、何も言わずに同業の妻に読ませてみました。彼女は「訳がひどい」と言いました。先入見を与えずに読んでもらったのですが、実は私も同感でした。学術用語の和訳も、適切になされているかどうか疑わしいです。きちんと理解するには、プレビューで確認して原書を購入するしかないと思いました。
著者は最初にデジタルで読むことのデメリットをあげています。例えば同じ物語でもkindleで読む場合と紙の本で読む場合とでは後者のほうが理解力が勝っていらしいです。電子機器は読んでいる最中も他のアプリやSNSによって注意力散漫になること、紙の本のほうがわからなかったページ、思い出せないページに戻ることが容易であること(本のなかでは回帰と表現されています)など言及されています。要はマルチタスクがダメで今現在世の中は電子機器によって情報過多になっているので、深く物事を考える時間が少なくなっていますよね、というのがこの本の結論に近いです。本書はどちらかというと教育論に多くのページがさかれており、子どもが小さいときはなるべく紙のほうがいいこと、しかし無理のない分量にすることを言われています。最終的に著者はデジタルは良くないという結論にするわけではなく、デジタルも紙も両方使いこなせるバイリテラシーを推奨しています。子どもの教育に電子機器を使うか迷っている親などにおすすめできる本です。
本書の中で何回も引用されている前著「プルーストとイカ ~読書は脳をどのように変えるのか?」(インターシフト、2008。原著2007)では、文字の発達と脳の変化の歴史、子供の脳内に読字回路ができあがっていくプロセス、ディスレクシア(読字障害)について記述。当時、著者は「紙の本とデジタルは、頭の切り替えで乗り越えられるのではないか」と考えているようであった。
その後10年経って、本書(原著2018)では、「適切な教育的指導がなければ、デジタル情報には弊害がある(=深く考えることができなくなる)」との考え。ただし、デジタルの有用性は認めており、「(紙の本とデジタルを双方活用できる」バイリテラシー脳を育成すべき」と述べている。
もともと人間には「読む」遺伝子はなく、脳は後天的に読字能力を獲得する。特に、物語・小説を読んで登場人物(自分とは違う他者)を経験する、そうした「深い読み」をすることで、他人の気持ちが分かる人間に育つし、深く読むための背景知識が頭の中に形成される。
野放しのデジタル情報が子育てにおいて懸念されるのは、「到底覚えきれない」ため作業記憶(短期メモリ)を有効に使いきれなくなるのではないか、また、脳内に体系的な背景知識(長期メモリ)を形成せず、ネット上の外部知識に依存するようになるのではないか、の2点である。特に後者の「(自分で考えなくても)ググれば何でも答えが見つかる」のようにしていると、記事や文献を批判的に読めなくなり、フェイク情報に騙されやすい人間にもなる。
したがって、デジタル機器に子守りを任せないで、親自身が読み聞かせることが重要で、子どもが自分の背景知識を読むものと結びつけるように、また、道徳や他者の視点、共感を学ぶように質問するのがいいのだという。
近年の暴力や対立、フェイクニュースの氾濫、ネット炎上の増加。何が正しいか自分で考える能力、他者への共感力が喪失しつつあるように思える。著者がいうように、これらが読字能力の低下に関係している可能性はある。アメリカの各州は、刑務所の定員数を小学3・4年生の読解力の統計から推計できているという。小学生時代の読字レベルが人生の分かれ道なのだ。
大人の脳でさえデジタル情報の流入で変わりうる。読者も、ネットのおかげで情報量は増えたが、味わいのある文章や、難解な文章を根気よく読めなくなってきた。ゆっくりと深く読む生活を取り戻さないといかんな、と痛感した次第。
1.内容
著者は、プロフィールによると「ディスレクシア研究」が専門だが、その知見を活かして、昨今のデジタル機器で読むときのような早いが浅い読みのみならず、「熟考」(p258)に至る深い読みを身に着け、目的に応じて(レビュアーの例にするが、本で読んだ現実の記述をインターネットのニュース動画で確かめる)早いが浅い読みと「熟考」に至る深い読みを使い分けるべきである。そのためには、幼少期において完全にデジタル機器を断つのではなく、読み聞かせとともに保護者が適切に介入してデジタル機器をも使わせるべきである。
2.評価
レビュアーは子育ての経験がなく、従って読み聞かせや幼少期のデジタル機器の利用について評価できないので、その点で星1つ減らして星4つとするが、人類が今後より良く生きるうえで、物理的な本とデジタル機器をどう両立させるかについて考えさせられる本だった。本書の主旨とはズレるが(本書は子育ての話だから)、『僕らが毎日やっている最強の読み方』(池上彰/佐藤優、東洋経済新報社、2016)p254「電子書籍は2冊目として活用する」というのは間違っていないと思った。
翻訳された原書のテーマは時流にかなうものであり、
この翻訳出版を刊行しようとする意気込みはとても素晴らしいと思う。
だだ、翻訳の質にもっとこだわって欲しかった。
これは労をとって原書を翻訳してくださった翻訳者の方の問題というよりも、
訳出されたテキストを出版社がきちんとチェックしていないように思われる。
翻訳の過程で手抜きしたところが見えてしまい、玉に瑕な感じがハンパない。
本の読みについての本との事で読んでみた。
ちょっと読みづらかったのが難点。
内容自体は良かったんだが。
とっつきにくいところがいくつか見られた。