時効の壁、泣き寝入りも…無保険車と事故 被害者の苦悩

2020年10月07日 12時33分40秒 | 事件・事故

10/7(水) 9:53配信

西日本新聞

交通事故の相手が任意保険未加入で、治療費や車の修理費の補償を十分受けられないことがある。九州は佐賀を除く6県が、任意保険と共済の普及率が全国平均より低く、全国ワースト10に3県が入る。さらに、法律で加入が義務付けられる自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)にさえ入っていないドライバーも一部に見られ、補償金を得られないまま後遺症や心理的負担に苦しみ続ける事故被害者もいる。

【画像】任意自動車保険・共済(対人賠償)普及率

 9月4日、福岡地裁久留米支部は、福岡県大刀洗町に住んでいた元代行運転手の男(36)に、自動車運転処罰法違反(過失運転傷害)などの罪で懲役2年6月、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 判決によると、男は昨年8月29日夕、左右をよく確認せずに同県小郡市の交差点に進入し、60代女性の乗用車に衝突した。同乗していた女性の30代の娘は、低酸素脳症などで、今も意識が戻らず入院している。男は自賠責保険、任意保険に入らず、無車検の乗用車を運転していた。

 事故後、男は知人から軽乗用車を購入、車中泊を始めた。車検や自賠責保険が切れ、免許停止処分を受けた後も乗り続けた。男は所在不明となり、公判は滞った。今年6月22日、小郡市で男は道交法違反(無免許)の疑いで現行犯逮捕され、同法違反などの罪も合わせて今回の判決が出た。

 無保険車と事故に遭った被害者の裁判を年間10件前後担当し、交通事故裁判に詳しい山口真彦弁護士(福岡県弁護士会)は、被害者に重い後遺症があった今回のような事案では「相手の職業や対応によっては1億円程度の賠償金を請求してもおかしくない」とみる。

 だが被害者家族は、総額1千万円の賠償金を月4万円ずつ男が支払う条件で示談した。厳罰は求めず「早く社会復帰して可能な範囲で払ってほしい」との思いが家族にはあったという。

 背景には、加害者が判明して5年たつと賠償金請求の時効を迎えることもありそうだ。無保険のドライバーは支払い能力が低いことが多く、行方をくらまし時効が来ることも。このため今回の示談も、男が支払い可能な内容になったようだ。

 判決は「実刑に処することも十分に考えられる」としつつ、元雇い主が男を再雇用し更生を支えると約束した点も考慮。「損害賠償責任を果たさせるのが相当」と執行猶予を付けた。

自衛策は?
 損害保険料率算出機構によると昨年3月末時点の全国の任意保険・共済普及率(対人賠償)は88・2%。九州7県では佐賀の89・9%以外は全国を下回り、鹿児島はワースト2位、宮崎も同4位で大分は同8位。

 山口弁護士によると、賠償金を十分得られないため、自賠責保険未加入者を相手取る依頼を弁護士が断ることもある。被害者の任意保険に弁護士費用補償の特約がない案件では顕著という。「逃げ得」を許さない内容の示談書を作るにも、弁護士なしでは困難で泣き寝入りする被害者も多い。

 自衛策はあるのか。山口弁護士は「いつどんな相手と事故になるか分からない」と、人身傷害保険や無保険車傷害保険加入などの備えを呼び掛けている。

(玉置采也加)

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ジャパンライフ、地域の資産家が勧誘 14人を再逮捕へ

2020年10月07日 12時28分40秒 | 事件・事故

10/7(水) 5:00配信

朝日新聞デジタル

家庭用磁気商品のオーナー(販売預託)商法を展開したジャパンライフをめぐる詐欺事件で、同社が地域の資産家などに住民の勧誘を手伝わせていたことが6日、捜査関係者への取材でわかった。客から選抜して、報酬も払っていたという。同社は地域の人間関係を利用して客を増やしたとされ、警視庁や愛知県警などの合同捜査本部は、被害が大きくなった原因の一つとみている。

捜査関係者によると、警視庁などは、詐欺容疑で逮捕した同社元会長の山口隆祥(たかよし)容疑者(78)ら14人を、勾留期限の8日にも別の客への詐欺容疑で再逮捕する方針を固めた。勧誘方法や被害の実態、指示系統について解明を進める。

 同社が客の勧誘を手伝わせたのは地域の資産家だった。捜査関係者や元社員らによると、億単位の投資をしている客の中で顔が広そうな高齢者を選んでいたという。「健康の輪を広げてほしい。知り合いの人にも勧めていただけませんか」などと頼み、社員の戸別訪問に同行させて、同社が催すイベントや食事会への勧誘をさせた。「活動者」と呼び、1時間当たり約1千円の報酬のほか、新規契約額の1~3割ほどの紹介料を払ったという。

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野村謙二郎氏 内野安打に見た阪神・小幡の非凡なセンス 長距離砲の前で動けば効果倍増

2020年10月07日 12時22分47秒 | 事件・事故

10/7(水) 5:30配信

スポニチアネックス

<広・神(18)>6回無死、小幡は遊撃内野安打を放つ(撮影・北條 貴史)

 ◇セ・リーグ 阪神4-4広島(2020年10月6日 マツダ)

 【野村謙二郎 視点】阪神では、1番でプロ初先発した小幡が攻守でキラリと光った。6回の第3打席に打者としての特徴が見えた。先頭打者で4球ファウルで粘り、9球目に遊撃内野安打を放って同点劇をお膳立て。2死三塁など走者を置く場面では、ちょこんと当てて左前に運ぶ、あるいはなかなか三振しない打者は相手にとって嫌なもの。非凡なセンスを感じさせた。

 スピードがあって走れるタイプ。大山、サンズ、ボーアなど長打力のある打者の前に動ける選手がいると、相手のプレッシャーは倍加する。走る意欲がチーム全体の数字として表れ始めた阪神だが、小幡もまた十分に期待感を抱かせる。

 何より、高卒2年目でショートを任せられる選手はなかなかいない。守備への評価がしっかりしているからこそだろう。まずは守備を確実にこなし、自分の特徴を活かす打撃を磨けばいいと思う。

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【内田雅也の追球】絶望することはない 優勝は絶望的の阪神に見た希望

2020年10月07日 12時16分06秒 | 野球

10/7(水) 8:00配信

スポニチアネックス

<広・神(18)>9回1死一、二塁、近本は二ゴロ併殺に倒れる (撮影・奥 調)

 ◇セ・リーグ 阪神4-4広島(2020年10月6日 マツダ)

 今年夏公開の映画『劇場』(原作・又吉直樹、監督・行定勲)で、売れない劇作家、永田(山崎賢人)が恋人の沙希(松岡茉優)に「演劇ができることって何だろうって、最近ずっと考えていた」と語り掛ける。

 「そしたら全部だったよ。演劇でできることは現実でもできる。だから演劇がある限り絶望することはないんだって」

 夢がある限り、希望はある。いまの阪神はこの「演劇」を「野球」に置き換えて考えたい。

 前日5日までの首位巨人との4連戦(甲子園)を終え、何か空気が変わったようだ。マツダスタジアムには秋風が吹いていた。

 もう優勝はほぼ絶望的である。だが絶望する必要などない。野球に夢を描き、夢を追うのならば希望はある。

 クライマックスシリーズ(CS)が創設された2007年以降、阪神はほぼ毎年、シーズン最終盤まで日本シリーズ進出の可能性があった。CSがない今季――どう書けばいいだろうか――久しぶりに、来年をにらんだ戦いの日々が訪れていた。

 この夜組んだ新オーダーにそれは現れていた。2年目20歳の小幡竜平を初めて1番で、同じく2年目の近本光司を昨年9月以来の3番で使った。

 その小幡は2安打を放った。1―1同点の7回表、2死三塁の勝ち越し機では右翼線、左翼線へのファウルに希望が見える。広角に打ち分けたライナーは、あとわずかで殊勲打だった。

 近本は5打数無安打だった。3割が見えてきていたが、打率を下げた。

 3―3同点の9回表、1死一、二塁の勝ち越し機。3ボール―1ストライクから二ゴロ併殺に倒れた。俊足近本の併殺打は今季3個目。セ・リーグ30傑で四球は最少の21個。3―1からの選球はテーマだが、好球必打で打って出る果敢さは持ち味である。一塁を駆け抜けた後、悔しさに顔がゆがんでいた。

 野球を愛する作家・重松清は<「必死」と「悔しい」は、根っこのところでつながっている>と『ウイニングボール』(文春文庫)で書いていた。先に、来年をにらんだ戦いと書いたが、それは「悔しさ」を糧とする日々かもしれない。

 試合は相手のミスに何度も助けられ、野手全員を使う総力戦の末、延長10回、結局引き分けた。もちろん、勝ちたかったし、勝てる試合でもあったが、今からは勝敗同様に、希望を探す戦いが続いていく。

 監督・矢野燿大は開幕前から「予祝」として、何度も優勝や日本一を宣言していた。その姿勢をとやかく言う者がいるかもしれないが、夢は描かぬ限り届かない。今も絶望する必要はないのである。=敬称略=(編集委員)

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非正規雇用者がコロナ禍で「116万人減」…失業者は一体どこに消えた?〈AERA〉

2020年10月07日 11時53分23秒 | 社会・文化・政治・経済

10/7(水) 8:00配信

AERA dot.

新型コロナの感染拡大が非正規雇用の人たちを直撃している。仕事や住まいの提供など、これまで以上の公的支援が必要だ/東京都新宿区 (c)朝日新聞社

 コロナ禍の中、非正規雇用者は2月からの5カ月間で116万人も減少した。だが統計上、失業者は38万人増。職を失った人々はどこに「消えた」のか。AERA 2020年10月12日号が迫った。

【写真】コロナバッシングで追い込まれて「パパ活」に挑戦した41歳パチンコ店員の女性はこちら

*  *  *
「10月で契約が切れますが、コロナで継続はできません」

 関東地方のホテルに契約社員として勤める男性(57)は9月23日、支配人に呼ばれてこうはっきりと告げられた。

 男性はパン職人として長年、全国を転々としながら働いた。このホテルで働き始めたのは昨年11月。新型コロナの影響で専門外の仕事に回されることもあり、雇い止めを知ったその日は朝からレストランでフレンチトーストを焼いていた。

 当初、給料は手取りで22万円あったが、勤務が減り6月は15万円に。過去の借金の返済もあり9月に食費とガソリン代以外に使えたお金は3万円だった。6本600円強の「第3のビール」は飲むが、たばこはやめた。

 男性にはあらためて総務部門の担当者から説明があった。離職の理由は「特定理由離職者」とする旨を告げられた。やむを得ない事情による自己都合退社──。契約の延長を希望していたにもかかわらずだ。

「コロナが理由の雇い止めにしたくなかったんでしょうね」

 契約終了後、1週間程度でホテルの寮を出て行くように言われている。複数の公的な貸付制度で35万円借り、さらに30万円追加する予定だ。

「稼ごうと思ってこのホテルに来たのに、まさか借金を作って辞めることになるとは……」

 厚生労働省によると、新型コロナが原因で解雇や雇い止めにあった人は、見込みも含めて9月25日現在で6万923人。各地のハローワークなどの情報を端緒に厚労省でまとめており、数字は氷山の一角だろう。

■増え続けた非正規雇用

 労働市場への甚大な影響は、他の公表データからも推察される。非正規雇用者は第2次安倍政権下で増え続け、総務省の労働力調査によれば昨年9月には2200万人超。今年は2月の2159万人をピークに5カ月の間に減っており、7月は2043万人だ。116万人が減少した計算になる。

この116万人はどこに消えたのか。非正規雇用者だった人の行き先は、(1)正規雇用(2)役員(3)完全失業者・非労働力人口、のいずれかとなる。

 同様に2月と7月で比較すると、完全失業者は38万人増え、その結果完全失業率は2.3%から2.9%へ上がった。一方、役員を含む正規雇用者は32万人増えた。とはいえ、コロナ禍の中で多数の非正規雇用者が正規雇用や役員になったとは考えにくいだろう。また主婦やリタイアしたお年寄りなど、失業率に関与しない非労働力人口は1万人減っていた。

 調査では「休業者」の人数も公表している。仕事はあるが1週間の調査期間中に限り仕事をしなかった人たちで、失業者とは違う。2月の196万人から4月には597万人にまで増え、7月は2月より24万人多い220万人だ。

 こうした数字を踏まえ、116万人の非正規雇用者はどの層へと移ったと考えられるのか。

 東京大学の川田恵介准教授(労働経済学)は「これまでの不況と比べても立場の弱い人が大きな影響を受けている今回のようなコロナ禍では、そのように細かく分析する価値は大きいのですが、公表されているデータのみでは正確に特定することはできません」と言う。

■「非労働力化」の可能性

 そんな中、あくまで推測ではあるが、大蔵(現・財務)省で官僚も務めた一橋大学の野口悠紀雄名誉教授は非労働力人口の動きに注目する。

 今年の2月と7月で、非労働力人口は前述の通り1万人減とほぼ横ばいだった。ただ、非労働力人口はここ数年、年初が多くその後徐々に減る傾向がある。そのため、2月と7月では7月の方が少なくなるのが通常だ。その差は2019年は67万人、18年は85万人、17年は134万人、16年は111万人と7月の方が圧倒的に少ない。

 非正規雇用者数が実数で公表されているため、ここまでは非労働力人口も実数で比較してきたが、こちらは季節的な要因を排除した「季節調整値」も公表されている。季節調整値で見ても近年は7月の方が少なくなっているにもかかわらず、今年は7月のほうが49万人多いという異例の状態となっている。

「これが意味するところは、実数でみると変わらないように見える今年の非労働力人口が、実は例年に比べて大きく増えているということです。116万人の非正規の人たちの多くが、統計上は『非労働力化』したことが考えられます」(野口教授)

 野口教授がさらに関心を寄せるのは、7月現在で220万人いる休業者の層だ。別の統計だが、財務省の法人企業統計調査(4~6月期)の結果でも企業の人員数が昨年同期比で234万人減っており、野口教授はその多くが休業者になっているとみる。

「この人たちの多くは今、雇用調整助成金を原資とした給料が支払われているはずです。この助成金は永久には続きません。リーマン・ショック後も長く助成を続けたことで労働力の温存が不適切に行われました。医療など労働力が不足している部門への配置転換計画が同時に行われなければなりませんが、今はほとんど議論されていません」

 助成が切れたときにこの層がどうなるかも、注視しておかなければならないだろう。(編集部・小田健司)

※AERA 2020年10月12日号より抜粋

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無知に浅知恵、はてはデマまで。日本学術会議会員任命拒否問題が露呈させた与党自民党政治家の低劣ぶり

2020年10月07日 11時44分29秒 | 社会・文化・政治・経済

10/7(水) 8:34配信

HARBOR BUSINESS Online

国会どころか自民党内議論も軽視する安倍~菅政権

日本学術会議の推薦した次期会員のうち6名の任命を菅義偉総理大臣が特段の理由も示さずに拒否したことは、まずもって根拠法たる日本学術会議法ならびに当該法に関する過去の政府の国会答弁と法解釈に反したものである可能性が高く、行政の一貫性や法の支配の観点からもきわめて重大な問題をはらんでいることは、すでに複数の法律家や識者が指摘している通りです。

 こうした手続き上のずさんさや遵法意識の低さ、また政府が負うべき説明責任の軽視は、先の安倍政権以来のもので、菅政権もそれを正しく継承しているのでしょうが、どう考えても国家社会に混乱をもたらす単なる迷惑行為でしかありません。国民に対するハラスメントは即刻やめていただきたいものです。

 そもそも政府が日本学術会議の人事に介入したいのであれば、事前にそれを可能とする法改正を行っておけば(少なくとも手続き上は)問題なかったわけで、衆参両院で与党が安定多数以上を占めている現状なら恐らくそれは造作もないことだったはずなのですが、これも安倍政権以来の伝統で、菅政権もまた国会のみならず党内議論すらも軽視しているのでしょう。自民党議員の皆さまにおかれましては、今後も単なる採決要員としてのお仕事に邁進されることと存じ、衷心よりご同情申し上げます。

 とはいえその自民党所属議員が今般の学術会議会員任命拒否問題をめぐって、ただの採決要員であることに飽き足らなかったのか、途轍もない無知と低レベルぶりを晒しているのもまた事実です。

低レベルの浅知恵をここぞとばかりに披露する自民党議員たち
 たとえば、自民党の長尾たかし衆院議員は10月3日に更新したブログにおいて、3年前に学術会議が出した「軍事的安全保障研究に関する声明」を取り上げながら、「日本学術会議は中国人民解放軍傘下の大学留学生受け入れをどう認識しているのか」、「機微技術は海外にダダ漏れ」であり「矛盾していませんか?」などと述べています。

 まず大前提として、日本学術会議はあくまで日本の科学アカデミーのひとつとして政府への諮問に応じたり、提言や声明を出したりするだけの特段の権限を持たない組織に過ぎず、当然ながら留学生の受け入れに直接関与することはありません。過去に外国人留学生に関連する提言や報告等を出している程度です。もし仮に長尾議員の言うように日本の「機微技術」を中国からの留学生が「ダダ漏れ」させているという確かな証拠を掴んでいるのであれば、権限のない学術会議にではなく、大学の所管官庁である文部科学省及び菅政権の責任をまず問うべきでしょうし、技術の輸出入を規制する外為法違反の可能性もありますので、早急に告訴されることをお薦めします。なお、文部科学省の現行ルールにおいて、「現役軍人又は軍属の資格の者」は国費留学生の受け入れ対象外となっているなど、他国の軍事研究との直接の関わりを防止する一定の仕組みはすでに存在しています。とりあえずよく調べもせず学術会議の話に一丁噛みしてやろうという浅知恵が透けて見える、低レベルの印象操作と言わざるをえません。

 また、こちらは今回の問題が起きる前に書かれたものですが、甘利明衆院議員はHP上のコラムの中で、以下のように述べています。

“日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の「外国人研究者ヘッドハンティングプラン」である「千人計画」には積極的に協力しています。他国の研究者を高額な年俸(報道によれば生活費と併せ年収8,000万円!)で招聘し、研究者の経験知識を含めた研究成果を全て吐き出させるプランでその外国人研究者の本国のラボまでそっくり再現させているようです。そして研究者には千人計画への参加を厳秘にする事を条件付けています。中国はかつての、研究の「軍民共同」から現在の「軍民融合」へと関係を深化させています。つまり民間学者の研究は人民解放軍の軍事研究と一体であると云う宣言です。軍事研究には与しないという学術会議の方針は一国二制度なんでしょうか。”〈出典:甘利明officialWeb「国会レポート410号」〉

 どこから突っ込んでいいやら途方に暮れてしまいますが、まず中国の「千人計画」なるものは、基本的には海外で活躍する学術及びビジネスの領域における高度人材の中国への呼び戻し政策で、対象はあくまで自国民です(参考:中津純子『中国の高度人材呼び戻し政策』)。
 日本人を含めた外国人研究者を招聘する場合にもこの制度が使われるようですが、「参加を厳秘にする」といった性格のものではないことは、この千人計画の制度を通じて中国の大学に移籍した理工系研究者の複数が同計画での招聘であることを公言していることからも明らかですし、専門知を有する人材を国外から集め、自国の研究力を高めるというのはどこの国でもやっていることです。
 第一、この千人計画が軍事研究と関連していたとして、それがただの会議体でしかない日本学術会議といったい何の関係があるというのでしょう。あたかも何か裏ではおそろしい陰謀が巡らされているかのような、それでいて一切が曖昧模糊として具体性のない甘利議員の語り口はなかなか堂に入ったものかと思いますので、国会議員などよりも怪談の語り部に転職いただいた方が、世のため人のためになるのではないでしょうか。

陰謀論まがいの脅威論を流布する議員こそ安全保障上の問題
 長尾議員も甘利議員もいわゆる中国脅威論を述べておられるのでしょうし、筆者もまた中国政府に対しては充分警戒すべきであるとは思いますが、現役の与党議員が外交問題ともなりかねないこうした不正確で粗雑な言説を振りまくことこそ、むしろ安全保障上の障害ではないでしょうか。

 また両議員による日本学術会議の「軍事的安全保障研究に関する声明」に対する理解もいささか短絡的なものと言わざるをえません。
 この声明は軍事研究を一律で禁止するような性格のものではなく、「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設け」、また「学協会等において、それぞれの学術分野の性格に応じて、ガイドライン等を設定」した上で行うよう求めていることからもわかるように、しかるべき手続きを踏んだ上でならば軍事研究を行うことを明白に許容しています。
 現在、ネット上では日本学術会議といえば軍事研究禁止をうたう団体といった評価が先行しているようですが、当該声明自体はかなり玉虫色のものであって「軍事研究禁止」という単純な主張のみをここから読み取るのは困難でしょう。

 しかし、今回の問題に関して最大級の低劣さを晒したのは長島昭久衆院議員に他なりません。

最大級の低劣さを晒した長島昭久衆院議員
“日本学術会議問題は、政府から明快な説明責任が果たされるべきであることは勿論、首相直轄の内閣府組織として年間10億円の税金が投じられる日本学術会議の実態や、そのOBが所属する日本学士院へ年間6億円も支出されその2/3を財源に終身年金が給付されていること等も国民が知る良い機会にして貰いたい。”〈出典:長島昭久衆院議員のTwitter〉

 長島議員は日本学術会議OBがそのまま日本学士院の会員へスライドし、終身年金を受給できるかのように語っていますが、事実無根です。日本学術会議と日本学士院とは目的も機能も、また会員となる要件も全く異なります。前者は政府の所管する諮問機関で会員は任期制であり、後者は「学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関」(日本学士院法第1条)、つまり功労の多大な科学者の栄典・顕彰を目的とした機関です(会員は終身制)。人間国宝や文化功労者、あるいは叙勲・褒章などと同趣のものと考えてよいでしょうが、ただ学士院の場合、会員が寄稿する紀要の発行や資料の収蔵管理などを行う学術研究機関としての機能も持っています。
 日本学士院の公式ウェブサイトを見れば即座にわかるのですが、現在の150名の定員はノーベル賞受賞者をはじめ各分野の権威中の権威といえる科学者で占められていて、法令に基づいて会員1人あたり250万円の年金が支給されています。この数字をどう見るかは人によってさまざまでしょうが、日本の学術への長年にわたる、そして圧倒的なまでの功績に報いるべく支払われる額としては、実にささやかなものだと筆者は思わざるを得ません。科学者として、その人生の大部分を費やして人類の知の領土を大きく拡げてくれた方々を皆で支え、その功績を讃えることを躊躇うほど、人間として落ちぶれたくはないものです。
 この長島議員のツイートを受けてなのか、「この人たち(日本学術会議会員のこと)6年働いたら、そのあと学士院という所に行って年間250万円年金貰えるんですよ、死ぬまで。皆さんの税金から。そういうルールになってる」と発言したテレビ解説者がいたそうですが、上記の通り金額以外は徹頭徹尾デマです。後日別の番組内で訂正したそうですが……。

さらに低劣発言を重ねる長島議員
 長島昭久議員は更に次のようなツイートをしています。

“日本学術会議問題は、今週にも行われる衆院内閣委員会での政府説明で決着がつくと思うが、結局、官邸としては、過去の慣例を踏襲せず、政府の一機関に属する公務員として相応しいか否かで任命の判断をした迄で、政府に認められないと学問の自由が侵害されるとの批判は、自由とは真逆の発想ではないか。”〈出典:長島昭久衆院議員のTwitter〉

 看過しがたいのは、「政府に認められないと学問の自由が侵害されるとの批判は、自由とは真逆の発想ではないか」という発言です。どうやら長島議員は日本国憲法第23条「学問の自由は、これを保障する。」の「保障」は、政府ではなく国民が自助でやるべきことと認識されているようです。
 言うまでもないことですが、第99条に規定されている通り、日本国憲法の名宛人は日本政府にほかなりません。したがって学問の自由を保障する義務を負うのは国民ではなく日本政府です。こんな中等教育レベルのことも理解していない人間が与党議員として議員歳費を貰い続けていることと、人類の歴史に偉大な足跡を残した150名の日本の科学者に終身年金を支給することのどちらが国家国民のためになるのかは明白ではないでしょうか。

杉田水脈の科研費騒動レベルのことをする政権中枢
 かつて自民党の杉田水脈衆院議員が科研費をめぐって起こした騒動と同様の事態が、今度は末端の議員ではなく、あろうことか政権中枢によって惹き起こされたのが、今回の日本学術会議会員任命拒否問題だったと言えるかも知れません。
 その際にも述べたことですが、国民の税金が投入されているからこそ学問の自由が政府によって充分に保障される必要があります。たとえば、タバコ会社の資金提供でタバコの人体への害に関する研究が自由にできるでしょうか。あるいはゲイツ財団から研究助成を受けてビル・ゲイツの絶対に知られたくない過去(仮にそんなものがあるとして)を赤裸々に暴き出すような伝記研究ができるでしょうか。
 「税金が投入されているのだから、時の政権の意向に従え」という発想は学問の自由を根本から毀損し、ひいては亡国への道であることを先の敗戦から学び、その反省のもとに設立されたのがまさに日本学術会議でした。同会議が発足した昭和24年1月22日付の声明「日本学術会議の発足にあたって科学者としての決意表明」は以下のように始まります。

”われわれは、ここに人文科学および自然科学のあらゆる分野にわたる全国の科学者のうちから選ばれた会員をもって組織する日本学術会議の成立を公表することができるのをよろこぶ。そしてこの機会に、われわれは、これまでわが国の科学者がとりきたった態度について強く反省し、今後は、科学が文化国家ないし平和国家の基礎であるという確信の下に、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せんことを誓うものである。”

 このとき科学者たちの胸中にあった「反省」と「確信」を、カビ臭い理想主義だと一笑に付すか、あるいは自分たちの歴史の一部として改めて引き受けていくか、いまその岐路に立たされているように思えてなりません。

〈文・GEISTE)Twitter ID:@j_geiste

【GEISTE】
Twitter ID:@j_geiste

ハーバー・ビジネス・オンライン

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類( 鷗外の子)

2020年10月07日 10時50分52秒 | 社会・文化・政治・経済

朝井 まかて (著)

明治44年、文豪・森鷗外の末子として誕生した類。優しい父と美しい母志げ、姉の茉莉、杏奴と千駄木の大きな屋敷で何不自由なく暮らしていた。大正11年に父が亡くなり、生活は一変。大きな喪失を抱えながら、自らの道を模索する類は、杏奴とともに画業を志しパリへ遊学。帰国後に母を看取り、やがて、画家・安宅安五郎の娘と結婚。明るい未来が開けるはずが、戦争によって財産が失われ困窮していく――。
昭和26年、心機一転を図り東京・千駄木で書店を開業。忙しない日々のなか、身を削り挑んだ文筆の道で才能を認められていくが……。
明治、大正、昭和、平成。時代の荒波に大きく揺さぶられながら、自らの生と格闘し続けた生涯が鮮やかによみがえる圧巻の長編小説。

【著者略歴】
朝井まかて
1959年大阪府生まれ。2008年小説現代長編新人賞奨励賞を受賞して作家デビュー。2013年に発表した『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞を、2014年に直木賞を受賞。

ほか、同年『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞、2015年『すかたん』で大阪ほんま本大賞、2016年『眩』で中山義秀文学賞、2017年『福袋』で舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、2019年に大阪文化賞を受賞。近著に『落花狼藉』『グッドバイ』『輪舞曲』などがある。

 

文豪の子としての葛藤を描いた一代記

恵まれない故の苦悩もれば、恵まれた故の辛苦もある。
人の世の禍福は、あざなえる縄のごとし。

物語は類(るい)の視点から、主に鷗外亡き後の家族の姿が描かれている。
学業の成績も悪く、旧制中学を中退した類は「鷗外の息子」という名札に悩まされた。
<衆に優れた何者かにならねばならぬ>
―それは、後半生にも及ぶ脅迫観念だった。
母は、学業がだめなら絵はどうか、と庭に画室を建て、著名な画家の指導を受けさせる。これは類も受け入れ、杏奴と共にパリへ遊学。
彼はこの時期、世間の目を気にせず、一番幸せだったのではないか。
帰国すると、まず杏奴(あんぬ二女)が、次いで 茉莉(まり長女)が、文筆で頭角を現す。
第二次世界大戦によって亡父の遺産はほぼ失われ、家庭を持っていた類は勤め人になる。
しかし彼には社会で必要な実務能力が皆無で、すぐ解雇される。
妻の実家の助けもあり、書店を営むことになった。
何とか生計を立てるまでになるが、森家のことを文章にし、その書きぶりに、杏奴から絶縁された。
筆禍を起こした文章は後に推敲し出版され、話題を呼んだ。
類は、ようやく何者かになりおおせたのだ。
類は生涯、「鷗外の息子」の名札を外せなかった。
彼は、その幸福と不幸の両方を受け入れた。
そんな等身大の葛藤が描かれた一代記。

 

 

類自身が書いた「鷗外の子供たち」の行間を作者の想像の景色で長々と埋めた?先に「鷗外の子供たち」を読んだ者にとっては苦行のような読了でした。これは、作品と呼べるものでしょうか?「鷗外の子供たち」を是非読んで下さい。ずっと、安価に手に入ります。忌憚のない感想です。

 

 


鴎外の子供たち―あとに残されたものの記録

2020年10月07日 09時46分59秒 | 社会・文化・政治・経済

鴎外の子供たち―あとに残されたものの記録 (ちくま文庫)

森 類

内容(「BOOK」データベースより)

鴎外の子供たち―於莵、茉莉、杏奴、類。みなそれぞれ、強い個性を持ち、父親を愛し愛されていた。しかし兄姉間の仲は、そううまくはいかなかった。妻志け、子供たちを取り巻く不協和音。明治の文豪のプライヴェートな部分を末子の目が捉えた貴重な書。
 
 
森茉莉さんが好きで何冊か読んだけど類さんは
末っ子ならではの単刀直入な語りが面白い
茉莉さんの現実を見ないお嬢様っぷりは
つまらない見栄や価値観を超えた本物なんだと
再確認させて貰いました
身内なら困った人だろうけど稀有な才能のある人は
人を幸福な気持ちにさせる非凡な人でもある
 
 
森茉莉が好きで、森まゆみの鴎外の坂を読んだら他の子どもたちの描く文章も読みたくなりました。森茉莉ともまた違う鴎外の姿がわかり面白く読みました。現代でも通用するほどのイケメンぶりも驚きでした
 
 
鴎外の子供たちはそれぞれ優れた「父の肖像」を残し、4人4様に文体が異なるのはよく指摘されることだが、類の文章をこの本で初めて読み、長姉の茉莉によく似ていると思った。「不肖の子」と自らを規定し、いわゆる生活苦を描いても淡々として、惨めさのカケラもない。思わず笑ってしまうような簡潔で的確な表現、周囲を見る目に曇りの無いのは茉莉と同じく「正義感の強い江戸っ子」の母親譲りなのだろう。爽やかな読後感だった。
 
 
父親があまりにも偉大すぎるのである。鴎外の次男、末っ子として生まれた著者は勉強が出来ず学業をあきらめ画家を目指すも生計を立てるには及ばず書店を開業する。裕福な幼年時代からは想像もつかない日々だったであろうが、つらいこともユーモアを交えて語られているのは彼のスタイル・生き方なのだと感じる。文章が平易で読みやすく、森家のエピソードも興味深く一気に読んだ。
 
 
まず鴎外漁史森林太郎だが彼は母親のイエス・マンだった。舞姫騒動の直後に母親が強く求めて結婚させた相手は「肩書」で選んだ。その結果森於菟が生まれたが誕生直後に生母を追い出した。子供は近所の知り合いに数年預けたまま放置。その後手元に引き取った。そして13年後に後妻を娶らせた。今度は肩書ではなく「顔」で選んだ。美人だがエキセントリックな嫁で姑と同居すると途端にメンヘラが顕在化し前妻の子供である森於菟を「生涯の敵」と言い「無視」した。鴎外の母親が於菟をかばって育て上げた。後妻から生まれた茉莉、杏奴、そして類は皆何処かが性格的に妙な姉弟である。長姉の茉莉は二度結婚し二度とも夫側から離縁された。外出すれば何時戻るか誰にも解らず家事が不得手。飼っていた鳥を可愛がるが餌をやらない、産んだ子供を寒いのに放置し外出する等一般的な常識が怪しい。次姉の杏奴は一番マトモで画家と結婚し添い遂げたが類とは著書が切っ掛けで絶縁し生涯そのままだった(類の葬儀には来た)。そして末子の類が書いたのがこの本である。これによると於菟は全く自分達とは無縁の存在で将来的にも交わらない、と言いつつ借金だけはしている。現在の学歴で言えば中卒というか高校中退で、生母があまりに成績が悪い為悩んだ挙句「画家」にしようとした。次姉の杏奴と精神的に一体化していた為杏奴まで画家を目指す事になった。フランス留学も母親と親戚がお膳立てして渡仏させた筈だが、類の著書からはフランス時代の事がごっそり抜け落ちている。帰国後今度は「物書き」になるべく画家を諦め有名小説家に親父のコネで入門したが師匠をフラフラ勝手に彷徨う為に どの師匠とも上手くいかなくなる。母親が見立てた娘と結婚すると今度は二次大戦。東京から疎開するのに荷物をまとめる事が出来ない、ヒモが結べない。信じられないが親父の印税で食っている為「生きる」事以外は全て他人がやっていたのだ。おかげで鴎外の遺品が幾つも消失してしまった。食器を地中に埋めて遺品を建物内に置いたままだった。判断基準が大多数の一般市民と違う。戦後「とにかく稼ぐ」しか無くなって貧乏のどん底から借金して書店を開業する。父親の印税が入らなくなったのである。10年働いた頃、鴎外記念館を親父殿伝来の土地に建設する為に土地を売る羽目になった。保証人は「交わらない流れ」の筈の於菟である。まあ1933年に於菟が鴎外の私生活を暴露する事でメンヘラ嫁の評価が定着し、後妻一家は世間から冷たい目で見られる様になった。於菟への反論は森鴎外の実妹小金井喜美子から上がった。しかし鴎外魚史を神の如く祭り上げ、母親の峰子のイエス・マンである事の傍証になった節がある。また後妻についても否定的な内容だった。そして類の「鴎外の子どもたち」で森家の内情が内側から暴露された。しかし「暴露」したという意識が類には欠けていた。書いて良い事と悪い事の区別が他人とは違うのである。お陰で姉茉莉と杏奴とに絶縁される羽目になった。その暴露部分が未だに未発表のままだ。この部分は最近の直木賞作家「車谷長吉」氏のエッセイを彷彿とする。彼もまた他人と違う物差しで生きているからだろう。未発表という削られた部分で岩波書店@小林勇専務が類に対して吐いた言葉が如何にも権威主義ゴリゴリの岩波であったが多分小林専務の言いたい事は類には理解出来なかったろう。その後茉莉とは何となく関係が改善し元に戻ったが杏奴とは生涯絶縁したままである。思春期までの類を見ていると学習障害か?と疑う部分やMASTURBATIONについて母親に相談する等どうにも解らぬ部分が有る。姉の杏奴に対しては従者のように仕えていた旨茉莉から書かれている。彼の生涯は最初から最後まで偉大な父親鴎外に振り回された。血筋の違う於菟が一番格調の高い文章を書いている。類の場合、内容は面白いが、家族や知り合いに居て欲しくないタイプである。あまりに偉い父親を持ってしまった事が彼の人生を歪めてしまったように思えて仕方がない。
 
 
森茉莉ファンとしては読み物としてとても面白かった。でもつくづく森鴎外としげは、子どもの人間性を育てるやり方を間違えたと感じてしまう。茉莉も、茉莉の手紙から読み取れる杏奴の性格も、類も、他人の痛みのわかる温かい心を持っている普通の人のようにみえない。みな自分勝手で、他人への感謝がなく、、特にこの類という人の書く家族の描写には、嫌な、病的なまでの意地悪さ、血の通っていない者のような、気味の悪さを感じてしまった。ユーモア?爽やか?そんなふうにはどうしても思えない。なんだろう、この類という人物に感じる不安は、、。コメント欄の他の方たちの感じ方と真逆なので、自分の感じ方が変なのか?と思いもするけれど、ほんとに類という人の文章には良い気持ちがしない。他者を描写する文章皮肉っぽさ、嫌らしさに苛立ってしまいます。

「森家の人びと」の中に「鴎外の子どもたち」があり、これは「森家の、、」を読んだ感想です。
 
 
森家の子供達は皆大変個性的である。“世間一般”という意味を理解しながらも、それにあわせて生きようという気があまりない人達である。時折そのギャップに苦しみながらも、発するルサンチマンには何か妙なユーモアがあり、不思議な魅力がある。茉莉、杏奴、類、三人に共通するもの、それは父・鴎外との濃密な愛情で彩られた子供時代である。(長男・於菟の場合は少し異る。そこにはまた違うドラマがある。)                    
 夜中に子供の便所に付き添い、その後始末をしてくれる父。仕事中でも来客中でも、そばに行けば膝に抱いてくれる父。大好きなその父を十一歳で失う。
残されたのは悪妻として世に知られる母・志け。家族は世間から孤立する。
 偉大な知性と愛情と!で知られる夫を持った母親への同情が美しく、胸を打つ。べたべたと情愛を表現する事のなかった母が死ぬ間際、不自由な身体で精一杯息子を抱こうとする姿は、志けの人生そのものを暗示する。
 類は家族間の揉め事を書く。その結果の姉弟喧嘩まで書く。自分の気持ちを丹念に拾いながら、決して悪びれず、飄々と、書きたいことを書く。不肖の子と自らを位置付ける者の密やかな強さが滲む。
 
 
 人には誰でも秘密がある。森家にも鴎外にも、そして鴎外の子供たちにも。

 明治6(1873)年のキリスト教禁制解除前後の出来事として、以下の悲劇が進んでいた。それがキリシタン「浦上四番崩」れだ。四番崩れは浦上村の隠れキリシタン約3,400人を総流罪とするという空前絶後のもので、その主だった信者153人は津和野藩に配流された。そこでは転宗を強いる拷問や虐待が待っていた。
 藩の典医である森家も何らかの関わりがあり、父と1872年(鴎外11歳)に上京前の鴎外も口外を堅く禁じられた。森家の秘密だ。
 その後外国からの抗議でキリスト教徒への弾圧が終わり、亡くなった91名を除いて津和野から長崎に返された。また全体から見ても浦上に帰ったのは約半数の1,930人のみであった。鴎外も津和野の恥部については生涯一言一句触れることはなかった。
 また鴎外は晩年決して医者に診せようとはしなかった。最後に親友賀古鶴所の忠告を受け、身内同様の医者に見せはしたが、死因『萎縮腎』を装った。肺結核であったことが公表されたのは没後32年を経てからだった。それは肺病の親を持つことは子の行く末に差し障りがあるためだ。
 本書で末っ子「類」も書いている、「晩年鴎外は子供を近くに寄せ付けなかったこと、もちろん、臨終の席にも」。
 そしてさらに本書で、鴎外の子供たちの小っちゃな秘密へと続くのである。
 著者「類」の幼年時代、少年時代の懐古場面では、昔の懐かしい自然の中での生活、遊び、それから調度品の全てが、私の幼少年時代の季節の色、香り、風の感触、道端の草花、路地の水溜りなどを想起させた。さすがに俥屋、足袋屋はなかったが。
 とにかく一気に読ませてもらった。

 

森鷗外には四人の子供がある。その末子・類が,物心がついた頃から,両親に死なれ,敗戦後の苦難の生活までを率直な筆で綴る。兄・於菟,長姉・茉莉,次姉・杏奴も父鷗外の思い出を書いている。

二人の姉と自分自身の結婚事情を含め「きょうだい」と母に焦点を当てたところが本書のユニークなところだ。於菟以外の四人の子供たちに対する鷗外の溺愛はほとんど信じがたいほどだが,五人の子供たちはそれぞれ個性豊かに育った。類について佐藤春夫はこう書く。彼は世にも純真な人で,その魂は世俗の洗礼を受けていない…

 

父が”あの森鴎外”とくれば姉は”あの森茉莉”それで当然のごとくな”この文才”。家族じゃなきゃ書けないことだよね、大変興味深く読了。 

計算がおぼつかず勉強ができないと言われて育つが、生活の一部始終を詳細まで書ける記憶力の良さはすごいと思う。にしてもなんでん書いちゃう天真爛漫さは家族や周りには厄介かも。。。

現在の日本は”発達障害大国”なのだそうだよ、病気ではないから治すものではないというし、グレーゾーンにいる人には”〇大出て官〇庁にお勤めな人”も多いという。この類氏しかり茉莉氏しかり、、、母親もどうやら、、、

 

佐藤春夫は、三男坊・類が、時として人迷惑なまでに筆を走らせてしまうのを承知で、それも〝才能〟と買い、本書の刊行時に、カバーに言葉を寄せている。『一切合財をぶちまけて真実を云いたいこの人の非常識なほど逞しい詩魂は定めし周囲には迷惑であろうとは思うが、その志は奪うべくもない。こういう珍重に人困らせな人の生まれ出た由来とその天下無類の幸福と不幸とを率直に打ち出した天真の高貴に巧まない奇書として予はこの書を喝采し礼賛する者である。』⇒

 

 

⇔浅草の仲見世、市村座、千疋屋、コロンバンなどのほか、他の世界はまったく知らなかった。新橋演舞場なぞは我が家の中を歩きまわる心持でいた。そんな時、廊下で取り出す母の財布を覗くと、小さく畳んだ四角い懐紙に茉莉の金、杏奴の金、類の金と墨で描いたものがちらりと見えた。十円くらいずつは入っていたようだ。十円は歌舞伎座の一等の切符を一枚買って、西洋料理を食べてもいくらか残る金であったから相当の大金である。その金は各自の名義の通帳から引き出されてくるものであった。⇒

 

⇔兄妹四人だけでなく、妹で翻訳家の小金井きみ子も鴎外伝を書いている。夫々の視点からの鴎外を読むことは興味深い読書になる筈で非常にそそられます。

 

森茉莉も小堀杏奴も上手いが、これまた上等だな、びっくり。

 

再読。以前読んだときはとにかく面白かった。今回も印象は変わらず。けれどそのぶん、感じたままを素直に書きすぎな感も。他人の立場になりかわって勝手に思惑を忖度した書き方も混在しているし。これじゃ茉莉さんも杏奴さんも怒るよなあ。もしかしたら思ったままをずけずけ言いすぎて他人から批判されまくったお母さん(志けさん)にいちばん似ていたひとなのかもしれませんね…

 

森家読書年間③ なるほど、今で言うなら暴露本。この本をきっかけに茉莉、杏奴に絶縁されている(のちに茉莉とは和解)。あの姉とこの弟にはさまれた杏奴はしっかり者にならざるを得なかったのだろうと想像できる。天真爛漫な心で書きたい放題の印象だ。読んでいる方は面白いけれど、内輪の人々はたまらないだろうな。茉莉や杏奴がオブラートに包み文学的に処理している出来事や内情を赤裸々に告白。解説に「鷗外の子供たちの中では、類の文章が一番鷗外に似ている」(佐藤春夫談)とある。鷗外も読まねば(恥ずかしながら未読)。次は於兎にいく。

 

筆者は鴎外の末っ子で小学生で父に死別した。副題が意味深。長女森茉莉、次女小堀杏奴の回想記は有名だが、「鴎外の三男坊」「森鴎外の母の日記」(山崎国紀)「父親としての森鴎外」(森於菟)「鴎外の思い出」「森鴎外の系族」(小金井きみ子)もお勧め。 志げ夫人や母の峰子、妹の小金井きみ子も含め、全員が鴎外から一番愛されているのは自分だと主張しているような家族である。筆者は社会的には一番無名だったが、「世間知らず」ゆえのストレートな視線が面白い。「闘う家長」だった鴎外の生きられなかった人生を生きた人だったかも。

 

タイトル通り、鴎外ではなくその子どもの話がほとんど。父親を亡くしたのは著者が十一歳のときであるから仕方ないか。それでも十分な愛情を感じていたことを覚えていることが、鴎外の偉大を物語る。「人間は、なんでもない景色を見て楽しむことを知らなければならない」という鴎外の言葉は、彼の子どもたちと同じように僕の彼から学んだところ。

 

母志けと鴎外の子どもたち。生活そのものが非凡というよりも、彼らの心のありようが非凡であったのだろう。エッセイというより、大河小説を読んでいるような充実感を感じた。濃い家族です。それぞれがなんと愛おしい人たちなのだろう。

 

'95年6月(底本'56年12月)刊。○鴎外の次男が一族の思い出を綴った随筆。兄弟の書き残した中で鴎外の文体に最も近いと言われるが、私の印象では長男・於菟の方が一番似ていると思う。勉強ができず、社会に出ることもなく母と姉2人でずっと観潮楼に引きこもって暮らすという、浮世離れした人生から滲み出てくる独特の文体。世間知らずから味わった苦労も多かったのに根がボンボンだから全体を通じてどこかユーモラスな雰囲気が漂う。彼の文章に魅了される人も多いようだが、風貌や文章のスタイルがどことなく中勘助に似ている感じがした。

 

森鴎外の末っ子類が描いた父、兄姉、母の事 姉茉莉を卒倒させたという岩波書店の専務まで乗り出し削除させたという文章がどんなものだったのか。子供たちを愛しこまめに世話して元祖イクメンであり元祖きらきらネーム命名の文豪森鴎外、そして後妻であり子供たちには嫌われ鴎外の取り巻きからは悪妻といわれた志けの素顔とは 仲が悪かった兄姉との事などをユーモア含んではっきりと書いているのに好感が持てる

 

美しいものもそうではないことも子どものままの心で見つめると、こういう文になるのだろうか。家族にしてみればたまったもんではないだろうが、偉大な親を持った子どもの背負う荷物なのかもしれない。

 

父親が偉大すぎると、大変なんだなあ。と。戦争がなければ金銭的な苦労はせずにすんだかもしれないけれど。

 

森茉莉と小堀杏奴、姉2人と絶縁状態になるきっかけとなった本。たしかに暴露しすぎだろうと思う…。しかし、森鴎外の家庭のことがこんなにも詳しく書いてある。読む側にしてみたら、こんなにありがたいことはないのではないだろうか。大らかな性格を匂わせる文章。とても読みやすい。

 

あまり勉強ができなかった不肖の息子ということで、それほど期待せずに読み始めたら、面白くて一日で読んでしまった。赤裸々なのに、どこかからりとしていて、上品でさえある。書いた内容のために二人の姉と義絶したが、後に茉莉とは和解したという。茉莉派の私としては、どことなく頷ける話である。

 

森鴎外の末子、類の描いた父鴎外、母志け、異母兄於菟、姉茉莉、杏奴について書いた本。この本を書いた事により二人の姉から嫌われたとの記述があるが、これは女の人ならこういう内輪暴露みたいな事を書かれたら嫌だとワタシですら感じてしまうのだから2人の気持ちは如何ばかりだったろう。けれど、著者はおそらく鷹揚な性格が読み取れるので悪気は全くなかったのだと思う。それにしても、森鴎外の子供達(於菟を除く)に対する愛情の深さには感激する。

 

天下の森鴎外の子供の中で暗算すらできなかった特殊な著者。先生から「頭に病気を持っている子供は2人おりますが病気のない子供では類さんがいちばんできません」と言い放たれた母親がストレスのあまり「死なないかなあ、苦しまずに死なないかなあ」と言うシーンがリアルだった。その著者にこんなに描写力のある文章が書けるのが面白い。兄弟間にかなり大きな悶着を起こした問題作。森鴎外の優しさも素晴らしい。読んでいるこちらまでとろけるような安心感を覚える。森茉莉の離婚の経緯も詳細に描かれ、彼女のファンには必読。

 

 

 


手の治癒力

2020年10月07日 09時46分59秒 | 社会・文化・政治・経済

 

文庫 手の治癒力 (草思社文庫)

 

山口 創 (著)

孤独を回避するのは、たまに会う遠くの友よりも「身近な人に目を向け交流することが必要」
「色々なことを気兼ねなく話し、大変なときはすぐに支え合うことができるような密な関係が求められる」

私たちは、自分自身の身体に手を当て、撫でさすり、皮膚を手で刺激することで感覚を覚醒させ、「体」を「心」へとつなげ、さらには「頭」と「心」をつなげようと無意識のうちにしているのである。

「手当て」の原点は、人間が自然にしている、手を使って全体のつながりを回復させようとする行為にある。(本文より)自分の体にふれ、他人とふれあうことが、心と体のバランスを取り戻し、心身を健康にするために最も有効である。

痛み、疲労、不安、抑うつ、PTSD、高血圧、孤独感……現代人の心身の不調は「手」で癒せる!

<目次より>
1章 手の治す力、癒す力
2章 手は第二の脳
3章 手を当てるとなぜ心身が癒えるのか
4章 「ふれあい」が深い絆をつくる
エピローグ 手の力で人はよみがえる

内容(「BOOK」データベースより)

ふれる、なでる、さする。手の力で人はよみがえる。テレビ出演でも話題の身体心理学者が医療の原点「手当て」の驚くべき有効性を最新の科学的知見をもとに明らかにする。

著者について

山口 創(やまぐち・はじめ)
桜美林大学教授。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。専攻は、健康心理学、身体心理学。聖徳大学人文学部講師を経て、現職。臨床発達心理士。主な著書に『人は皮膚から癒される』(草思社)、『愛撫・人の心に触れる力』(NHKブックス)、『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)、『皮膚は「心」を持っていた!』(青春出版社)、『【図解】脳からストレスが消える「肌セラピー」』(青春出版社)など多数。
 
 
人との結び付きが人生を豊かににし、自他共の幸福を開く力となる。
 
 
手仕事をしており、著者様の事を他の記事で拝見し本を購入。優しい語りと臨床統計した内容も書かれており、人間形成の中で手仕事の大切さふれあう事の重要さが改めて確信できる一冊です。これかも度々読み返します。
 
 
まだ、読み終えていませんが、奥深く、興味深い事が書かれていて、なるほどなぁと思いながら自分でもやってみたいと思うところがあります。
 
 
 
手が持つ力を改めて知りました。さする速さによって、色々と効果あるとは、驚きでした。参考にします。
 
 
人に触れる大切さが納得の内容で、自分の幼少期の事を振り返る事が出来ました。
 
 
人間って触れ合う事で、心と身体の病気が改善される可能性のすごさに驚いた!
 
 
 
本の内容はいわゆるハウツーものではありません。人の本来持っている力を見直して、感じることが大事だなと思わせる本です。
 
 
英国の神経心理学者グレグ・エシックらは、3種類の材質(メッシュ、綿、ベルベット)を機械に装着し、対象者の顔と前腕を3つの異なる速さ(1秒間に①50cm、②5cm、③0.5cm)で撫でたとき、どの程度「気持ちいい」と感じるかを評価してもらう実験を行った。その結果、

 
顔と前腕を比べると顔の方が気持ちよく感じることと、一番気持ちよく感じる速度は②であることが分かった。この速度で触れるとき「C触覚線維」が敏感に反応し、これが脳幹や扁桃体、自意識とも深く関わっている島皮質などの脳の部位を広範囲に刺激して「ホメオスタシス」(体温や免疫力、血糖などすべてを一定の範囲に保つ機能)や「アロスタシス」(ストレスを受けたときに感じる体の変化を元に戻す機能)のバランスを整えるという。

 
秒速5センチメートル。そう、大ヒットアニメ『君の名は。』を手掛けた新海誠が、2007年に作ったアニメーション映画のタイトルである。それは、桜の花びらが枝から離れて、雪のように舞い散る速度だと言われているが、私たちはそのようにおだやかで美しい速度で触れられるとき、心地よさを感じて癒されるのだ。ロマンチックなメタファーで、私はとても気に入っている。

 
乳児院で暮らす子ども達を抱きしめる『ぐるーん』(https://www.gruun.org/)という団体の存在を知ったのも本書のおかげ。「ああ、読んだ良かった」としみじみ感じている。
 
 
 

《日本学術会議 任命拒否》なぜ菅首相は「イエスマン人事強行」をくり返すのか? 検察、宮内庁……

2020年10月07日 09時41分16秒 | 社会・文化・政治・経済

10/7(水) 6:01配信

日本学術会議への批判も噴出した 

菅義偉首相が、日本学術会議の会員候補として同会議が推薦した105人のうち、6人の任命を拒否した問題が波紋を広げている。

黒川氏定年延長にも反対を表明していた加藤氏

 政府関係者が語る。

「日本学術会議法では、同会議は『独立』した存在と規定し、会員は『内閣総理大臣が任命する』としていますが、政府は1983年に『実質的に首相が任命を左右することは考えていない』とした国会答弁を基に、あくまでも形式的な任命制であって総理に任命の拒否権はないという解釈を維持してきました。しかし、2018年ごろに解釈を変更し、拒否権があるとの解釈に改めたというのです。

黒川氏の「定年延長ゴリ押し」と全く同じ
 これは、今年の1月31日に黒川弘務元東京高検検事長の定年延長を閣議決定した際に、政府が1981年に国家公務員法改正案の審議の中で同法の定年延長制度は『検察官に適用されない』としていた解釈を変更し、『適用できる』として、黒川氏の定年延長をゴリ押ししたケースと全く同じです。安倍政権の番頭格である官房長官を務めた菅首相の本質は、強権人事で高級官僚だけでなく、捜査官である検察官や学者までをもグリップしてコントロールしようとする“強権政治家”なのです」

 任命を拒否された6人は、いずれも安倍政権が成立を強引に推し進めた安全保障関連法やテロ等準備罪に反対した学者たちだ。東京大学大学院の加藤陽子教授に至っては、黒川氏の定年延長にも反対を表明していた。

 法曹関係者が言葉を継ぐ。

特捜検察をグリップする「マウンティング人事」も
「菅首相が上川陽子氏を法相に戻した理由は、菅氏の『側近』と呼ばれた河井克行氏ら自民党に所属していた国会議員3人をこの1年間に次々と逮捕した特捜検察の動向をグリップするためだと、法務・検察内部ではささやかれています。

 菅首相は、上川氏に法相として林眞琴検事総長に対してにらみを利かさせることで、特捜検察をグリップしようとしているのです。法相には検事総長に対する指揮権がありますが、そんな『伝家の宝刀』に頼らずとも、林氏は上川氏に頭が上がらないからです」

林氏の「事務次官拒否」で検事総長コースから外した
「2018年1月に国際仲裁センターの日本誘致の方針をめぐる意見対立から、法相だった上川氏は林氏の法務事務次官昇進を拒否し、強権人事を発動して検事総長コースから外れる名古屋高検検事長に“左遷”した経緯があり、上川氏は菅首相好みの強権政治家なのです。本質的に似たもの同士ということで、菅首相は上川氏を法相に起用したわけです。検察制度は三権分立の原則に基づき、独立性が担保されるべきものです。それを踏みにじってもいいという考え方は、日本学術会議法で規定された独立性を無視した姿勢と全く同じと言えるでしょう」(同前)

 安倍政権下で7年8カ月にわたって官房長官として強権人事を断行してきた菅氏は、自身の政権下でも強権人事を早速断行したというのが、日本学術会議の会員人事ということになる。果たして今後も、菅政権では強権人事が繰り返されるのだろうか。

生前退位をめぐって宮内庁長官も“事実上更迭”
「菅氏は上皇さまの生前退位の意向をリークしたとされる宮内庁で、長官を務めた風岡典之氏を、定年のめどとされる70歳の誕生日を迎えた2016年9月になるとすぐに退任させています。事実上の更迭で、典型的な報復人事だったとの見方が有力です。日本学術会議のケースを見ても分かるように、今後はむしろ強権人事の対象や範囲が広がっていくとの懸念すらあります」(前出・政府関係者)

「地盤、看板、鞄をもたないたたき上げの苦労人」「農家出身の庶民派」「酒は一滴も飲めないが、実は甘党」――。菅首相誕生直後にマスコミが菅氏を褒め称えた表現がこれだ。

 だが、実際は人事を握って役人ばかりでなく、捜査官や学者までをも牛耳ろうとする強権政治家という“素顔”が、ここにきてはっきりと見えてきたことは間違いないだろう。

コロナ専門家会議も、あっという間に廃止に
「学者の先生方の中には自民党政権に批判的な意見を持った人たちも決して少なくありません。ただ、反対意見にも耳を傾けるというのが、タカ派とハト派が共存してきた自民党政治の許容範囲の広さであり、懐の深さだったはずです。しかし、『安倍一強』の時代を通じて行われてきた政治は、こうした古き良き時代の自民党政治とは一線を画した独善的なものでした。その典型が安保法制であり、テロ等準備罪であり、検事長の定年延長だったわけです。

 それを継承する菅政権は、政府が科学技術の振興について諮問するための組織である日本学術会議までも、イエスマンで固めようとしているわけです。批判的な意見を持つ学者を初めから排除することで、諮問に対して耳に心地良い答申しかできない組織にしようとしているのです。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の下に設置されていた専門家会議が6月に突如、廃止された問題では、経済回復を重視する政府の方針に医学者の立場から異議を唱える専門家会議を嫌って廃止が決定したと言われています。日本学術会議が、この専門家会議のようにならないよう、菅首相は6人の任命を拒否したのです」(同前)

 政権発足から1カ月も経たないうちに見えてきた菅首相の強権的な政治手法は、果たして国民の支持を得ることができるのか。その審判は次の衆院選で下されることになろう。

多々木 純一郎/Webオリジナル(特集班)

 


3億円豪邸に2億円の京町家…菅首相が信奉する“教祖”は現代貴族

2020年10月07日 09時27分19秒 | 社会・文化・政治・経済

10/7(水) 6:32配信

SmartFLASH

2019年、山梨県で観光戦略について講演するアトキンソン氏

「菅首相は、アトキンソン信者だ」(自民党関係者)という声が聞こえてくるほど、菅義偉首相(71)に影響を与えている人物がいる。小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長(55)だ。

【写真あり】アトキンソン氏が住む東京・南青山の豪邸評価額は……3億超え!

「菅政権が掲げる目玉政策のひとつが、『中小企業の再編』。これも、アトキンソン氏に “吹き込まれた” 結果だ」(同前)という。日本経済停滞の原因を、生産性の低い中小企業が多すぎることに求め、「中小企業の数を半分程度に減らすべき」というのが同氏の主張だ。

「菅首相は、官房長官時代からアトキンソン氏と頻繁に会って、教えを乞うています。菅首相が安倍政権で旗を振っていた、外国人旅行客(インバウンド)拡大策の “火付け役” も、アトキンソン氏でした」(『インサイドライン』編集長・歳川隆雄氏)

 まさに、“教祖と信者” のような関係だが、この “教祖” は、どんな人物なのか。

 アトキンソン氏はイギリス生まれ。名門オックスフォード大学で日本学を修め、金融業界に進む。1992年から、世界有数の投資銀行グループ、ゴールドマン・サックスに入り、「伝説のアナリスト」として名を馳せ、その共同出資者にまで上り詰めた。2007年に退社し、現在は日本の国宝・重要文化財などの補修を手がける小西美術工藝社の社長を務めている。

 そんなアトキンソン氏の自宅は、東京・南青山にある。都内屈指の高級住宅街でも、イギリス風のレンガ造りの邸宅は、ひときわ目を引く。土地・建物合わせて、評価額3億2000万円と推定される豪邸だ。

 しかし、「たまに挨拶を交わす程度で、近所づき合いは、あまりありませんね」(近所の住民)という具合に、近隣は “教祖” の人となりについて、深くは知らないようだった。

 アトキンソン氏は、京都市中京区にも貴重な町家を改修した別宅を所有している。こちらは推定2億円だ。青山と違い、近隣からの評判はいい。

「本当に庶民的な方ですよ。格好も、いつもポロシャツにデニムなど、カジュアルな感じです。2~3カ月に一度、こちらにひとりで来ます。最近来たのは、8月でした」(近隣住民) 

「日本人よりも日本人らしい人で、書道をされたら、きれいな字を書かれますわ。家の前だけでなく、周辺の掃除もされてます。祇園祭には、必ず浴衣を自分で着付けて出かけてはりました。日本人でも、なかなか、あんなに美しく着られまへんで」(別の近隣住民)

 一方で、その住民は、こんなことも明かした。 

「町家の2階の一室が洋間になっていて、部屋の壁紙は、エリザベス女王からいただいたものだと聞きました。イギリスでは、貴族のような身分のお方なんでしょう」(同前)

 お金に困らぬ優雅な暮らしぶりは、まさに現代の貴族だ。こんな人物に「中小企業を半分に!」と言われても、そう簡単に頷けるものではない。 

「国内企業の99.7%、雇用の7割を占める中小企業を半分にすれば、失業率が3%を超えるとの予測もあります」(歳川氏)

“教祖と信者” に、庶民の現実は見えているのか――。


(週刊FLASH 2020年10月20日号)

 

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平沢勝栄復興相が出席していた被害者続出の「仮想通貨パーティ」

2020年10月07日 09時18分44秒 | 事件・事故

10/7(水) 9:02配信

FRIDAY

パーティでスピーチする平沢議員。隣にいるX氏と面識はなく、何の会かもわからないまま挨拶をしたのだという

「会が始まってしばらくした後、司会の生島ヒロシさんから『先生がお着きになりました!』とアナウンスがありました。『政治家も来るんだ』とびっくりですよ。先生はひな壇で10分ほどスピーチ。会の主催者を『信用できる人』などと持ち上げていました」(パーティの参加者)

【画像】「仮想通貨パーティ」に出席、メッセージを出していたあの大物政治家

9月16日に発足した菅内閣の新大臣に、さっそく〝ヤバい過去〟が発覚した。

参加者が「スピーチした先生」として記憶しているのは、当選8期にして初入閣を果たした平沢勝栄衆議院議員(75)。平沢復興相は昨年4月8日、東京・代官山の高級レストランで開かれたとあるパーティに出席していたが、実はこれが、いわくつきの会だったのである。

「実業家を名乗るXという人物が、自身がオーナーを自称する『JOBコイン』という仮想通貨の宣伝のために開いたパーティでした。『T‐BOLAN』の森友嵐士(あらし)や元プロ野球選手の松井稼頭央、プロレスラーの神取忍など、多数の有名人が出席。政治家で来ていたのは、平沢先生とIR汚職事件で逮捕された秋元司衆議院議員の二人でした」(同前)

このパーティについては、本誌’19年8月23・30日号で詳報。X氏は自身の事業や「JOBコイン」を盛んに宣伝して出資者を募り、億を超えるカネを集めたとされる。だが、X氏の会社に事業の実体はほとんどなく、「JOBコイン」も暴落状態。「騙された」と憤る被害者は多数いるが、X氏本人は知らぬ存ぜぬという態度を続けているという。

パーティに出席した有名人には、5万~30万円の「お車代」が支払われたとの証言もある。本誌は昨年このパーティについて報じた際に、平沢議員に質問書を送った。平沢議員は自ら記者に電話をかけてきて、こう申し開きをしたのだった。

「知り合いに『ちょっと顔を出してもらえないか』と頼まれて、そのパーティに行ったのは間違いありません。(X氏のことは)全然知らない。何の会だかもわからず2~3分挨拶して、途中で帰っちゃいました。おカネをもらったなんてことは300%ないです」

謝礼は受け取っていなくても、怪しい仮想通貨の宣伝に一役買ったのは事実。平沢復興相の行動は軽率と言わざるを得ない。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が言う。

「自民党のベテラン議員が挨拶したことによって安心してしまった人もいたはずです。脇が甘いで済む問題なのか。菅首相は派閥のバランスを取って今回の組閣をしましたが、きちんと〝身体検査〟ができているのか疑問が残ります」

新大臣に次々スキャンダルが噴出、なんてことにならなければいいが。

『FRIDAY』2020年10月9日号より

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最終更新:
FRIDAY

ポンペイオ長官 “連携して中国に対抗を” NHKインタビュー

2020年10月07日 09時17分28秒 | 社会・文化・政治・経済

2020年10月6日 20時08分米中対立

来日しているアメリカのポンペイオ国務長官がNHKの単独インタビューに応じ「世界は、あまりにも長く中国による脅威にさらされてきた」と述べて、中国が軍事面などで威圧的な行動をとっていると非難し、日本をはじめとしたインド太平洋地域の国々が連携して対抗していく必要性を訴えました。

アメリカのポンペイオ長官は、日本とアメリカ、オーストラリア、インドの4か国の外相会合などに参加するため来日していて、6日午後、都内でNHKの単独インタビューに応じました。

ポンペイオ長官は新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領について「きのう、彼がまだ入院中に90分間にわたって話したが元気そうだった。すべてうまくいっている」と述べました。

そして、大統領が新型ウイルスに感染し、政権の運営に影響が出ているさなかでも来日した理由について「インド太平洋が自由で開かれ、法により支配されていること、そして中国共産党による脅威にわれわれは反対しているということを確認するためだ」と説明しました。

そして、ポンペイオ長官は、中国が南シナ海や東シナ海などで軍事力を誇示し、威圧的な行動をとり続けていると非難し「これは緊急の課題だ。世界はあまりにも長い期間、中国による脅威にさらされてきた。いまこそ、この問題に真剣に対応しなければならない」と訴えました。

また、中国が海洋進出を加速させていることを念頭に「弱さを見せればつけこまれる。譲歩することは、威圧的で軍事的な手段を用いて問題を解決しようとする国を利することになる」と述べて、4か国だけではなく、ASEAN=東南アジア諸国連合など、価値観を共有する地域全体で中国に対抗していくべきだと呼びかけました。

さらに香港や台湾をめぐり、米中の対立が深まっていることについて、ポンペイオ長官は「これはアメリカ対中国という問題ではない。これは自由と専制政治のどちらを選ぶかの問題だ。軍や威圧的な力を使って弱い者をいじめる国に世界を支配させてよいのか」と主張し、米中2か国の問題ではなく、国際社会の問題だと強調しました。

また、新型ウイルスの感染拡大などの影響で延期された中国の習近平国家主席の日本訪問について、ポンペイオ長官は「日本が決めることだ」と述べる一方で「日米のあいだでは、とても多くの分野で連携しているし、中国共産党の行動が、さまざまな国どうしの協力関係をより強固なものにしている」として、中国に対抗していくうえで日米の足並みに乱れはないという認識を示しました。

ポンペイオ長官 訪問のねらいは
ポンペイオ国務長官が今回、トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染する非常事態の中でも訪日し、4か国の外相会合を実現させる背景には、中国が周辺国への威圧的な行動をエスカレートさせることに対する包囲網の構築を急ぐねらいがあるとみられます。

アメリカ政府は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の混乱に乗じて、中国が東シナ海や南シナ海への海洋進出や、インドと国境地帯で衝突するなど、周辺国に対する領土的な野心を強めていると警戒しています。

ポンペイオ長官はこうした中国の行動を「共産主義による世界的な覇権の確立に向けた野望」と位置づけていて、中国に対抗するための民主主義国家による新たな同盟の構築を目指しています。

なかでも、最も重視しているのが日本、アメリカ、オーストラリア、そしてインドの4か国の枠組みです。

アメリカのビーガン国務副長官は、ことし8月に行われた米印関係のイベントの中で、4か国の枠組みの強化について問われ、「インド太平洋地域ではNATO=北大西洋条約機構のような強固な多国間の枠組みが存在しないのが現状だ。NATOは戦後のヨーロッパで少数の加盟国から始まったことを思い出してほしい」と述べ、4か国の枠組みが将来、NATOのような多国間の同盟に発展しうるとの考えを示しています。

これまで、4か国の枠組みをめぐっては、中国の海洋進出の脅威に直面する日本やアメリカと、中国との経済関係を重視するオーストラリアやインドとの間で温度差がありました。

しかし、ことし4月、オーストラリアのモリソン首相が新型コロナウイルスの発生源などについて独立した調査を呼びかけて以来、中国とオーストラリアの関係は冷え込んだ状態が続いています。

また、中国とインドの国境地域にある係争地帯では、ことし6月、双方の軍が衝突してインド側の20人が死亡したことを受け、アメリカの専門家からは、インドも4か国での安全保障面の連携強化に前向きになりつつあるとの見方が出ています。

さらに、来月にはアメリカ大統領選挙が控えています。ポンペイオ長官としては、この時期に4か国の枠組みの強化に向けた下地を作っておくことで、たとえ選挙の結果、政権交代が起きたとしても、対中包囲網の構築に向けた4か国の連携を継続させるねらいもあると見られます。


強制わいせつ容疑で逮捕 国民民主党元職員を不起訴 東京地検

2020年10月07日 09時12分26秒 | 事件・事故

地下鉄の車内で女性の体を触ったなどとして、強制わいせつの疑いで逮捕された国民民主党の元職員について検察は30日、不起訴にしました。

国民民主党の51歳の元職員は今月9日の朝、東京メトロ千代田線の車内で20代の女性の体を触ったなどとして、強制わいせつの疑いで逮捕されました。

警視庁によりますと、調べに対して容疑を認めていたということで、党からは懲戒解雇の処分を受けています。

東京地方検察庁は、元職員を30日不起訴にしました。

理由については明らかにしていません。


少女にわいせつな行為をした疑いで逮捕の男性不起訴

2020年10月07日 09時09分15秒 | 事件・事故

[2020/10/05 20:27] news.tv-asahi

東京・新宿区のインターネットカフェで当時10代の少女に対してわいせつな行為をしたとして逮捕された男性について、東京地検は不起訴処分としました。

 33歳の男性は7月、新宿区のインターネットカフェで当時10代の少女の体を触るなどのわいせつな行為をした疑いで8月に警視庁に逮捕されました。東京地検はこの男性について、今月5日付で不起訴処分としました。不起訴の理由は明らかにしていません。男性は警視庁の取り調べに対して「少女は嫌がったりしていない」などと容疑を一部、否認していました。


10代少女にわいせつか IT企業勤務の男逮捕
[2020/09/30 23:31]

東京・豊島区のJR池袋駅近くで帰宅途中の女子学生にわいせつな行為をしたとしてIT関連企業に勤める29歳の男が逮捕されました。

 IT関連企業の従業員・酒井響介容疑者は6月、JR池袋駅東口近くの路上で帰宅途中の10代の少女に対し、自分の身体を触らせるなどわいせつな行為をした疑いが持たれています。警視庁によりますと、酒井容疑者は少女に「学校帰りなの?」と声を掛け、無理やり手を引っ張って自分の体に押し付けたということです。当時は人通りの多い時間帯でしたが、少女は助けを呼ぶことができず、周りの人は酒井容疑者の行為に気が付きませんでした。近くの防犯カメラには約1時間にわたって周囲を物色する酒井容疑者の姿が映っていました。酒井容疑者は容疑を認めていて、警視庁は余罪についても捜査しています。

わいせつ容疑の国民民主党元職員を不起訴処分に
[2020/10/01 10:02]

女性に自分の体を触らせるなどわいせつな行為をしたとして逮捕された国民民主党の元職員の男性について、東京地検は不起訴処分としました。

 国民民主党の元職員の51歳の男性は先月、東京メトロ千代田線の車内で20代の会社員の女性に自分の体を触らせるなどのわいせつな行為をしたとして警視庁に逮捕されました。東京地検はこの男性について先月30日付で不起訴処分としました。東京地検は不起訴の理由を明らかにしていません。男性は警視庁の取り調べに対して容疑を認めていました。


「ハグしていいですか?」引っ越し依頼の女性客を…
[2020/09/30 12:12]

東京・文京区で引っ越し業者のアルバイトの男が引っ越しを依頼してきた女性にわいせつな行為をしたとして逮捕されました。

 引っ越し業者のアルバイト・畑中克之容疑者(27)は23日午後、文京区のマンションで引っ越し作業を依頼してきた女性(20代)にキスをするなどわいせつな行為をした疑いが持たれています。警視庁によりますと、畑中容疑者は当時、同僚と2人で引っ越し作業をしていて、作業を終えたことを女性に伝えに行った際に「ハグしていいですか?」と言って抱き付いたということです。女性は母親に相談し、母親から警察署に被害届が出されていました。取り調べに対し、畑中容疑者は容疑を認めています。

「雑誌の取材です」女子高校生に声…みだらな行為か
[2020/09/29 12:20]

東京・町田市の路上で「ファッション雑誌の取材です」などと17歳の女子高校生に声を掛けてみだらな行為をしたとして、ハイヤー運転手の男が逮捕されました。

 羽原肇容疑者(51)は27日、町田市で18歳未満であることを知りながら女子高校生にみだらな行為をした疑いが持たれています。警視庁によりますと、羽原容疑者は路上で女子高校生に「ファッション雑誌の取材をしています」などと声を掛けました。そのうえで「動画や写真を撮らせてくれればオークションに出して10万円から20万円をあげるよ」などと言ってホテルに誘っていました。2人がホテルから出てきたのを不審に思った警察官が事情を聴き、犯行が発覚しました。取り調べに対し、「若い女の子が好きだった」と容疑を認めているということです。

わいせつ教師の教免再交付に反対 5万4000人署名
[2020/09/28 23:56]

過去に児童生徒に対しわいせつな行為をした教師について、教員免許の再交付などに反対する署名が5万4000人分集まったということです。

 全国学校ハラスメント被害者連絡会・郡司真子共同代表:「わいせつ犯罪歴があったり、子どもに対して性的欲求を持ってしまう人が教壇に立つということは非常に危ういし、今現在、学校で苦しんでいる子どもたちを救う力になるかもしれないと思って声を上げました」
 学校でのハラスメント問題に取り組む団体が28日、文部科学省に対して児童生徒にわいせつな行為をした教師の教員免許更新や再交付をできないようにしてほしいという約5万4000人分の署名を提出しました。合わせて性暴力で不登校になった子どもたちの支援や校内での防犯カメラの設置を求める要望書も出したということです。共同代表の郡司真子さんは「わいせつな行為をした教師は二度と教壇に立たないという仕組みを作ってほしい」と訴えました。

“わいせつ教師”の処分歴閲覧 40年に大幅延長
[2020/09/15 15:34]

わいせつ行為などで懲戒免職になった教師の処分歴を見られる期間が3年から、40年に大幅に延長されることになりました。

 文部科学省は15日、児童や生徒へのわいせつ行為などで懲戒免職になった教師の処分歴を教育委員会などが閲覧できる期間を3年から、40年にすると発表しました。懲戒免職で免許が失効した教師は現在の法律では3年後に再び取得できます。これまではその3年分に限り、教師の懲戒免職の処分歴を検索することができました。しかし、教師によるわいせつ事件が相次いでいることから、刑期の上限30年と執行後に刑が消滅するまでの10年を合わせた40年分を検索できるようにするということです。わいせつ教師を巡っては、免許の再取得に関する法律の改正も検討されています。