12/11(金) 11:09配信
日刊スポーツ
霊能力者やタレントとして、90年代に多数のテレビ番組などで活躍した織田無道さんが、今月9日に亡くなっていたことが11日、分かった。68歳だった。ここ数年はがんで闘病中だった。13日に近親者のみで通夜を行う。
織田さんが住職を務めていた神奈川・円光寺は、日刊スポーツの取材に「既に一般人なので、コメントは差し控えさせていただきます」とした上で、織田さんが9日に亡くなったことを認め、「通夜は近親者のみで行います。コロナなので、(報道関係などの)皆さまにはご遠慮いただいております」と説明した。
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ガンで余命1年宣告…織田無道「地獄の苦しみを超えて見えたもの」
2020年05月27日
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全身25ヵ所にガンが転移しているという織田氏。現在は日に何度か外出できるほどに回復している
「今年の1月~4月は地獄でした。激しい目まいと強烈な吐き気で、起き上がることもできない。ずっと寝たきりです。2月には心臓が止まったこともあります。意識がフワッ~とし、気づいたら病院で人工呼吸器をつけていた。幸い一命をとりとめましたが、死を明確に意識しました」
こう語るのは、90年代に毎日のようにバラエティ番組に出演していた僧侶の織田無道氏(67)だ。
織田氏は現在、末期ガンと闘っている。大腸、直腸、肝臓、肺、胃など全身25ヵ所に転移。激しい痛みに悩まされることもあると言うが、往年の張りのある声と鋭い眼光は失っていない。怪僧・織田氏がガンとの壮絶な闘病を明かすーー。
「最初に異変に気づいたのは、2年前の3月です。右ヒザが痛むので、かかりつけの病院に行きました。血液まで取り診断しましたが『何ともない』とのこと。ただ、しばらくしても痛みは治りません。そこで6月に大学病院でレントゲンを撮りセカンドオピニオンを受けたら、医者が神妙な顔でこう話すんです。
『ガンが全身に広がっています。余命1年です』と。
ステージはⅣ……。頭が真っ白になりました。私は肉も女性も酒も好む坊主として、精力的に生きてきました。まさか自分がと……」
織田氏は、別のいくつかの病院でも診察を受ける。だが、結果は同じだった。
「どこの医者からも、言われることは一緒でした。『ストレートに言います。手術や抗ガン剤治療をしても手遅れです。持って1年半でしょう』と。レントゲン写真を見ると、肺などガン細胞で真っ白。医者もお手上げ状態だったんです」
医学による治癒を諦めた織田氏は、一時期、民間療法に頼った。漢方薬の調剤師、知人の僧侶、超能力者……。様々な“専門家”から意見を聞き、サプリメントやワクチンなど、あらゆる療法を試した。
「全部で3000万円ぐらいつぎ込んだかな。1本2万円の謎のドリンクを、毎日飲んだこともあります。服用した直後はなんとなく体調が良くなった気になりますが、大半はハッキリとした効用なんてありません。ほとんどが詐欺のようなものだった…と私は思っています。藁にもすがる思いのガン患者を、カネ儲けの手段にしている悪い人たちもいるんです。
私自身もいけなかった。いろいろな人のアドバイスを聞いて、自分を見失ってしまったんです。ある専門家は『肉を食ったほうがいい』と話し、別の人間は『肉などもっての他』と言う。周囲の意見に振り回されていました」
夢に親が現れ死を実感
夫人や子どもたちのサポートも織田氏にとっては心の支え。インタビュー中もガンを意識したびたびファイティングポーズをとった
ガン告知前は100kgほどあった体重は、70kg以下にまで落ちてしまう。体調は一進一退だったが、「ガンに負けてたまるか」という気力は徐々に失せていった。
「ある人の勧めで、身体にイイからと蕎麦ばかり食べていたんですが、するとどんどん体重が落ちてしまってね。そこで好物のメンチカツを食べたら、下痢になってしまった。専門家からは『ガンのせいだ』と言われましたが、冷静に考えると当然のことです。久しぶりに脂分の多いモノを食べ、身体がビックリしただけのことでしょう」
しだいに寝たきり生活となる。病床でも奇妙な夢を見るようになった。
「亡くなったオヤジやオフクロが、夢に出てくるようになったんです。死を実感するようになりました。『親が招いている。あぁ、オレもいよいよかな』と。同時にこうも思った。『このままガンに負けてしまうのか。悔しいなぁ。最後は僧侶として自分の生き様が正しかったのか、試してから死にたい』、と」
民間療法に効果ナシと悟った織田氏は、原点に帰る。漢方やサプリなど、周囲に勧められた療法を止めたのだ。治療法がないのであれば、後は生きるも死ぬも気持ち次第。とにかく前向きに物事をとらえようと、考え方を変えたという。
「不思議なモノですね。それまで『ガンにはかなわない』と後ろ向きだった気持ちが、自分の意志で戦おうと思うと、『絶対に勝ってやる』と積極的になっていったんです。私は格闘技をやっていた経験から感じるのですが、いくら技術や腕力があっても思考がマイナスだと絶対に勝てない。
以前実践していた滝行で精神を統一し、身体に良いと信じた温泉浴を再開すると、徐々に気力がみなぎってきました。これらの方法を人に勧めるつもりは毛頭ありません。ただ、とにかく過去に修行で続けてきたことが、私の気持ちを落ち着けるには一番いいんです。
気持ちを保つために、その人にとって一番いいことがあるはずで、それをやるのは、気持ちを前向きにするにはとても大事なことでしょう。『病は気から』とは、よく言ったモノです。気持ちが前向きになると、体調も少しずつ回復していきました」
織田氏は、新型コロナウイルスの影響で外出自粛傾向にある現状にも警鐘を鳴らす。
「私の気力が戻った要因の一つが外出です。毎日太陽の陽を浴び散歩をしています。寝たきりで家に引きこもっていた時期は、『ツラいツラい』と消極的なことしか考えられなかった。ずっと屋内にいると、気持ちがマイナスになりがちです。まだコロナへの警戒を解いてはいけませんが、少なくとも日に一度は外に出て新鮮な空気を吸うことは、生きるモチベーションを保つために大切だと思います」
「地獄から生還し、いまは恐いモノがない」と笑う織田氏。気力が戻り、目標が二つできたと話す。来年行われるフルマラソン大会に、10年ぶりに参加すること。そして大好きな焼肉を、腹一杯食うことだ。