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「無理して学校なんか行かなくていい」…不登校になった我が子と、一緒に歩むことを決めた母親の覚悟

2020年12月20日 22時18分57秒 | 社会・文化・政治・経済

12/20(日) 16:15配信

まいどなニュース

不登校は誰にでも起こりうることです(dzono/stock.adobe.com)

近年不登校の問題が深刻化してきています。少子化が進む中で不登校生は毎年のように増えています。2020年10月に文部科学省が公表した調査によると、2019年度に不登校が理由で小・中学校を30日以上欠席した児童生徒は18万1272人。過去最多を更新したそうです。

【写真】フリースクールの認知度が広まってきている

■青天の霹靂!学校に行きたくない

先日、私も友人から子どもの不登校について話を聞く機会がありました。友人の子どもは小学1年生の女の子です。活発でとても明るい女の子、不登校とは無縁のような女の子でした。

まさか、友人の子どもが不登校になるなんて思いもしませんでした。

しかし不登校は誰にでも起こりうることだったのです。

明るくて誰とでも仲良くなれる友人の子どもが、学校に行けなくなった理由は担任が原因でした。

友人は「担任が子どもをお前やあんたって呼ぶのよ。イライラすると大きな声で子どもを怒鳴りつけるし、娘はどつかれるし、怖くて学校にいけなくなったのよ」と嘆いていました。

最初の頃は、学校から帰って来ると暗い表情をして笑わなくなっていったそうです。普段は公園で遊ぶことが大好きな子が部屋で横になってばかりいたそうです。

友人が我が子の異変に気がついて話を聞いたところ「もう学校には行きたくない、担任が怖いから学校やめたい!!」と泣いて訴えてきたそうです。

いままでに見たこともない子どもの様子に友人は戸惑いました。しかし、まだ学校は始まったばかり。なんとか頑張って学校に行ってほしい、と子どもの背中を押したそうですが、心身ともにどんどん壊れていく子どもの様子を目の当たりにして、友人は泣きながら「もう無理して学校なんか行かなくていい!!」「お母さんが悪かった、お母さんが無理やり学校に行かせて悪かった」そういって何度も何度も子どもを抱きしめて謝ったそうです。

学校に行かなくていいと決断するのは勇気がいることです。しかし友人は覚悟を決めたそうです。

■フリースクールとの出会い

子どもが学校に行けないなら学校以外のところに居場所を作ってあげたい。子どもが子どもらしく安心して過ごせる場所を探してあげたい。

我が子を思う一心から、ネットでいろいろ調べていくうちにフリースクールと出会ったそうです。

フリースクールの認知度は最近少しずつ広まってきています。なんらかの理由で学校に行くことができない、行きたくても行けないという子どもたちが、学校の代わりに過ごす場所です。フリースクールは、その地域の小・中学校と連携していることも多く、フリースクールへの登校が学校の出席扱いになる場合もあります。

友人はフリースクールの体験入学を通して、子どもの楽しそうに過ごす様子や全力で子どもたちと接してくれる先生方、クラスの雰囲気、教育理念などトータルして信頼ができるスクールだったので入学を決めたそうです。

まだまだ学校に行くのが当たり前という価値観がある中で「学校だけが全てじゃない」「学校に行かない」という選択肢があることを彼女は私に教えてくれたのでした。

(まいどなニュース特約・長岡 杏果)

まいどなニュース

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傷癒えず26歳で自死 娘失った父親、後悔の日々

2020年12月20日 22時15分35秒 | 事件・事故

12/18(金) 13:36配信

岐阜新聞Web

取材に「いじめが起きてすぐに動くべきだった」と後悔の念を語る男性。長女を自死で亡くした=岐阜市内

 いじめは被害に遭った本人だけでなく、家族のその後も大きく変える。

 岐阜市の無職男性(68)は10年前、長女を自死で亡くした。転勤で他県から移住し、当時中学2年生だった長女は春、市内の公立学校に転校して間もなく、同級生からのいじめに遭った。配布されるはずの教科書が渡されず、隣の席の男子生徒に見せてもらおうとしたことを同級生たちに冷やかされ、やがて「なれなれしい」などと言いがかりをつけられるようになったという。

 長女は夏休み明けから学校に通えなくなり、そのまま全く登校できずに卒業。通信制学校に通うが、卒業から半年後、近所のアパートの屋上から飛び降りた。辛うじて一命を取り留めたが、精神状態が安定しなかった。26歳の頃、再び身を投げ、亡くなった。

 長女がつづった日記や、いじめの加害者から送られた中傷の手紙。男性は何もかも捨て、全てを忘れようと努めた。だが、全てを思い出させたのが、昨年7月に市立中学3年の男子生徒が亡くなった、あの事件だった。「あれからずっと、私は当時のことを日々思い出さざるを得ない状態だ」

 長女がいじめを受けた当時の名簿などから、加害者たちの保護者や当時関わった教諭を捜し出した。自宅や学校、市教育委員会へ直接出向いたこともある。「当時のことを認めてほしい。そして謝ってほしい」との一心だった。だが、いじめが直接、自殺の要因になったと示せるものを持ち合わせてはいなかった。学校教育法が定める生徒指導に関する記録の保存期間は5年。市教委によると、学校にも当時の生徒たちの状況を示せる資料は残っていなかったという。

 長女の手記を処分する前に、男性はパソコンで内容を転記している。手記にはこうあった。

 「お父さんやお母さんは自分の子が登校拒否だなんて思うだけでつらいだろうな。なのに、その事で怒ったりしないで静かに応援してくれてるから安心しているよ。全然進歩しなくてごめんね」

 「無理して学校行くのは強いことじゃないと思う。堂々と、自分の好きなようにやればいいと思う。そう信じる」

 亡くなるまでの間に、長女は乗用車を運転できるようになるなど、社会とのつながりを模索してもいた。「あの頃は、娘を立ち直らせることで手いっぱいだった。でも、本当はいじめが起きてすぐ、その場で解決に動くべきだった。今で言うモンスターペアレントと言われてでも、娘を守らなければいけなかった」。自分を責め続けている。

 1994年にいじめを苦にした自殺で息子を亡くした大河内祥晴さん(74)=愛知県西尾市=は「親が心の整理をするためにも、そのとき子どもに何が起きていたか、その真実に近づくことは大事。でも、近づくほどに父親自身が心に負った傷の回復から遠ざかってしまうというジレンマもある」と思慮する。「同じ、子どもを亡くした経験を持つ親と思いを共有することも一つ。子どもがいじめを受けたことで傷を負った親は、きっと少なくないはずだ」と語った。

       ◆

 多感な中学生の仲間関係といじめ。文部科学省が10月に公表した2019年度の児童生徒の問題行動・不登校調査で、県内の小中高校と特別支援学校でのいじめ認知件数は1万962件(前年度比2568件増)。認知の基準を厳しくした13年度以降で初めて、1万件を超えた。企画「いじめと向き合う」第3部では、いじめを経験した当事者やその親への取材で見えた、中学生の心理や対人関係づくり、子どもの本音に向き合う。

岐阜新聞社

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若い女性の自殺が急増、自傷行為を繰り返す“3人の彼女たち”に聞いたSOS

2020年12月20日 22時09分32秒 | 社会・文化・政治・経済

12/18(金) 8:01配信

週刊女性PRIME

加奈さんは相次いで受けた性暴力が死にたい気持ちにつながっている

 長引くコロナ禍の下、自殺に追い込まれる人たちがあとを絶たない。なかでも「異常事態」と呼べるほど急増しているのが、10代~20代の若い女性。彼女たちに今、何が起きているのか、もうひとつの「命の危機」に迫る!

【写真】自殺未遂をした彼女たち、インタビューで心の内を話してくれた

家にいることが多くなり息苦しさが増した
〈死ぬことに決めた。踏切に行く〉

 フリーターの加奈さん(仮名=20)は今年8月の中旬、そうツイッターに投稿した。手首を切り、血を流しながら私鉄の踏切に入った。昼間のためか運転手が気づいて、電車は間一髪で停止。救急車で運ばれた加奈さんは手首を50針縫い、そのまま措置入院となった。

 自殺未遂は初めてではなかった。一緒に暮らす家族の中では「居場所がない」「人生うまくいかない」と、日ごろから感じていた。

 8月初旬の夜8時ごろ、公園で薬と酒を飲み、加奈さんは首を吊ろうとした。しかしロープがはずれ、気づけば地面に横たわっていた。そこへ見知らぬ男が通りがかり、性被害に遭ってしまう。

「被害に気がついていたんですが、薬が効いていたので身体に力が入らず、抵抗できませんでした。だんだん意識が途絶え、目が覚めたら朝でした」

 加奈さんが「死にたい」と思い始めたのは、これより以前に性被害に遭ってからのことだ。家では親から暴力を受けケンカも絶えなかった。そんな中で高校を中退し、進路に迷っていた17歳のころ、インターネットで知り合った男性に相談した。

「最初は話を聞いてくれました。でも、しばらくすると“進路に関する資料があるから部屋においで”と言いだして、ついていくと態度が変わったんです。抵抗したんですが、相手はやめませんでした」(加奈さん)

 同じころ、自宅にいづらくて夜、近所を散歩していると性被害にあったこともある。次第に、「死にたい」と思う感情が芽生えていった。

 自殺未遂を繰り返したのは、新型コロナウイルスの感染拡大によるステイホームや自粛ムードが影響していた、と加奈さんは言う。

「好きなときに家の外に出られず、行動が制限されて息苦しかったです。6月ごろ、熱が出てPCR検査を受けました。結果は陰性でしたが、さらに行動制限がされ、家にいることが多くなり息苦しさが増したんです。死ぬことしか考えられなくなり、7月には首吊りを何度も試しました」

 冒頭の自殺未遂後の入院では、精神的に不安定なときがあり、暴れて、身体を拘束された。次第に落ち着いたものの、退院後は再び、自殺ばかりを考え続けている。

もう心が疲れちゃったから
 高校生の亜実さん(仮名=16)の家族は、ちょっとしたことでケンカが起きる。先日も洗濯物を片づけるのが遅れたとき、母親が「そこに座れ」と言い、叱責し、ドライヤーを投げつけた。母親の怒りがおさまらないところへ父親も加わり、殴られることもある。

 ただ、両親はともに医療や介護の仕事をしているので、緊急事態宣言中は家族がそろうことも少なかった。そのため、亜実さんの精神状態は落ち着いていた。

 しかし、10月になって学校がテスト期間に入ると部活もなく、家にいることが増えた。兄は大学受験で落ち着かない。そのうえ、医療・介護従事者である両親はコロナ感染拡大でストレスがたまったのか、ケンカが増え、家じゅうが殺伐としていた。最近も兄と姉が殴り合っていたのに、母親は止めない。

 そんな家族内のストレスが増えたとき、亜実さんは、スマホのメモに心情を綴ることがある。

〈もう耐えられないから もう心が疲れちゃったから もう生きている気力がないから もう死のう……〉

 別の日、その言葉のあとに〈今は安定期、だからまだ頑張れる。けど、悪い波が来たら? またリスカするの? それでまたまた後悔するの? そんなんだったら死のうよ。もう頑張らなくていいんじゃない?〉と、自問自答のようにつけ足した。

 自室で、手首をカッターで傷つけることもあるが、両親に見つかったことはない。

「部屋のドアを開かないようにしてリストカットします。親にバレたら、殺されそうです。でも、血のついたティッシュを母親が見つけたことがあります。そのときは、転んで鼻血が出た、と言ってごまかしました」(亜美さん)

 メモに綴ることとリスカ以外のストレス解消は、公園にいること、少し遠い駅まで数時間、何も考えずに歩いて往復すること。

「死にたい気持ち」を友達に相談したことはない。

「“死にたい人”と思われるのがイヤです。学校では“何も考えていない元気なキャラ”として通っていますし、かまってちゃんと思われたくないですね。友達には迷惑をかけたくないですから」

ステイホームで逃げ場がなくなった
 警察庁によると、今年10月の自殺者数は2158人。これは新型コロナの年間死者数2382人(12月8日時点)に、ほぼ匹敵する。

 とりわけ、女性の自殺者が急増している。8月には669人、前年同月に比べて1・7倍に増えたが、さらに10月には851人に膨れ上がり、前年同月比で1・8倍の増となった。

 なかでも目立つのが、10代~20代の女性による自殺だ。特に8月は、前年同月比で女子中学生は4倍増、女子高生は7倍増、9月は女子大生が1・5倍増。コロナ禍の今、なぜ若い女性の自殺が増えているのだろうか?

 若者や女性の自殺リスクについて分析する『中曽根平和研究所』の高橋義明・主任研究員は「自殺未遂や“死にたい”と言っている人を分析すると、コロナ禍以前から自殺のリスクが高まっていました」と話す。

 高橋研究員がリーダーとして参加した日本財団の2016年調査では、20歳以上の男女の4人に1人が「死にたい」と考え、若年層ほど女性の比率が高かった。1年以内の自殺未遂経験者の推計は53万5000人。このうち女性の49%、男性の37%は、自殺未遂をした回数を「4回以上」と回答している。

「日本の年間自殺者のピークは'03年で約3万2000人。そこから減少傾向にありますが、男性が減ったのに対し、女性は横ばい状態でした。女性の自殺は数としては目立っていなかったものの、もとからリスクがあり、それがコロナ禍で表面に現れるようになったのです」(高橋研究員)

 若年層の自殺の理由として、著名人の自殺報道が続いたことも指摘される。ただ、'16年調査では、自殺未遂の原因で多いのは家庭問題や健康問題。'19年調査では、自殺念慮(死にたい気持ち)の原因として4人に1人が「いじめ」と回答している。

「著名人が自殺をすると若年層ほど影響があると言われていますが、そのベースには自殺念慮があります。特に、いじめ被害の経験や家族内の虐待がリスクになります。調査では、家族問題を理由に未遂をしている人が多かったのですが、コロナ禍を考えると、ステイホームによって家族と一緒にいる時間が増え、逃げ場がなくなった可能性があります」

 10代、20代の女性を対象にSNS相談を行っているNPO法人『BONDプロジェクト』の代表・橘ジュンさんは、「相談には“死にたい”“消えたい”という内容が以前から多い。ただ、相談をしてきた女の子たちが自殺したという情報にはなかなか接しません。仮に女の子が亡くなったとすれば(自分たちに)何ができたのか? という気持ちになります」と話す。

 同団体では6月、コロナ禍の影響について、会員登録している9500人を対象にアンケートを行っている。回答した950人のうち、「家族やうちのことで困ったことがあった」は59%。さらに内訳を見ると、「イライラをぶつけられる」が32%で最多。このほか「家族の暴言を吐かれる」が22%、「叩く、蹴る、引っ張られる、物を投げつけられる」が8%で続いた。

自殺衝動をごまかすためにパパ活
 大学生の美咲さん(仮名=20)は、同団体の居場所を訪ねたことがある。「話を聞いてくれた」という実感はあるものの、自殺衝動は消えなかった。

〈今までありがとう〉

 5月下旬の昼間、美咲さんはツイッターでこのようにつぶやくと、公園で市販薬の過量服薬(オーバードーズ、OD)で自殺を図った。しかし、共通の好きなアーティストがいるツイッター友達から心配するメッセージが届いた。

「急にツイッター上からいなくなったと思われないように、ツイートしました。でも、友達からのメッセージを読んで“迷惑をかけちゃいけない”“自分のせいでトラウマになってほしくない”と思って、それ以上、薬を飲むのをやめました」(美咲さん)

 この後、精神科病院に入院した。母親には「本当に死のうとしてないでしょ」と言われ、心配された実感はない。

 美咲さんは小学校低学年のころから中学2年まで、兄から性的虐待を受け続けた。これが自殺願望の源だ。

「兄から“誰にも言うな”と言われて従っていました。中1のときに母親に見つかったんですが、兄はやめず、中2のときに担任に相談でき、児童相談所に保護されました」

 その後、兄と一緒に暮らすことはなくなったが、自傷行為が今でもやめられない。

 ODのほか、腕をカッターで切るアームカット(アムカ)を繰り返す。さらには、出会いアプリで不特定の男性と会い、パパ活をする。

「8月下旬に退院したあとも死にたくなり、9月は6回、10月は4回、ODをしました。アムカやパパ活は、死にたい気持ちをまぎらわせるためにしています」(美咲さん)

 こうした状況にもかかわらず、両親は娘の心情に無関心。特に母親は「自傷をする人を馬鹿にしている」と美咲さんが感じるほどだ。

「入院時に主治医から渡された(病気に関する)資料を読んでいないと思います。家族からのサポートは一切、ありません」(美咲さん)

 コロナ禍をきっかけに、それ以前からあった、さまざまな問題があぶり出されている。家族問題も、若い女性たちの自殺リスクも同様だ。

「女の子たちはコロナの影響を受けていますね。親と過ごす時間が長く、ストレスをぶつけてくるといいます。それに普段行っていた場所に行けません。私たちができることは信頼関係を作り、きちんと聞き取りをして、できることを探すことです」(橘代表)

 感染拡大のムード、仕事や学校のストレス、ステイホームでのイライラ、良好でない家族関係のさらなる悪化……。さまざまな要因で若年女性の自殺が増加した。行政には感染予防だけでなく、自殺願望を緩和させるための対策が求められている。また個人としても、SOSを出して、“死にたい気持ち”を理解する人とつながることが大切だ。

【相談窓口】
「いのちの電話」 0120-783-556(無料・毎日16時~21時まで)
「BONDプロジェクト」070-6648-8318(10代・20代の女性専用)

取材・文/渋井哲也 フリーライター。栃木県出身。自殺やいじめ、虐待など、生きづらさをめぐる問題を中心に執筆、東日本大震災の被災地でも取材を重ねている。
『学校が子どもを殺すとき』(論創社)ほか著書多数

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精神科医が教える、コロナ禍の「しんどさ」をリセットする方法

2020年12月20日 21時58分12秒 | 医科・歯科・介護

12/15(火) 13:02配信

FRIDAY
YouTuberとしても活躍する精神科医Sidow氏が教える「自殺を決断する前にできるこれだけのこと」

Sidow氏は、YouTubeが注目する次世代のクリエイター「YouTube NextUP 2019」日本代表にも選出された

自殺する人が増えている。警察庁のデータによると、10月の時点で男性は前年同月比21.3%増、女性は82,6%増となった。「精神科をもっと身近に!」と、YouTuberとしても活動するメンタルドクターSidow氏に、コロナ禍での「しんどさ」の背景と、辛い精神状態をリセットする方法を聞いた。

【画像】25歳の男性を殺害容疑…55歳女性の「衝撃の自撮り写真」

◆緊急事態宣言で自殺者が一時的に減ったのは、来るべき今日の前触れだった!?

今年4月、緊急事態宣言で自粛が続くなか、失業者も増え始め、懸念されたのは自殺率の増加だった。けれど蓋を開けてみると4月の自殺者数は前年比19,8%減、5月は19%減。自殺率の減少に、「リモートや休校で人間関係のわずらわしさから開放されたことが一因では」との声もあがっていた。ところが、実際はそうではなかった。

「コロナに限らず、大きな災害や事件があると、起こった直後は〝なんとか乗り超えなきゃ!〟という気力があるので、そこで自殺を選ぶ人は少ないのです。

心の問題は、むしろ落ち着いてきたタイミングで出てきます。

今回のコロナでも大体の全体像がわかってきて、自分の精神と向き合う時間があったことで、自殺が増えてきたのかなと感じます」(Sidow氏 以下同)

原因のひとつに生活の困窮が挙げられる。倒産、破産、失職が増え、精神的に追い込まれる人は増えている。

「自殺を考える人は、冷静な判断ができなくなることが多いです。失業保険や生活保護などいろいろな支援制度がありますが、視野が狭窄しているとそこにも目が行きません。

生活保護は、それを受けるようになったらおしまいだと考えがちですが、いったん受けたとしても将来仕事に就いたら辞退すればいいわけです。

“ゼロか100しかない”と、極端に考えるのは避けるべきです」

◆うつ病から自殺へ。ルールを完璧に守ることで追いつめられてしまう人も

人との接触を恐れるあまり自宅に引きこもり、孤独や孤立感を深めるのも危険だ。自殺者の4割がうつ病と言われるが、どんな人がうつになりやすいのだろうか。

「うつ病になりやすい人は生真面目で、厳格にルールを守り、そのルールを破ることに罪悪感を覚えます。GoToキャンペーンをやっていても、使うのは気が引けるとか、人がたくさんいる場所は危険だからやめようと考えがちです。

感染予防の面では確かに大事ですが、それを続けるとメンタルにはよくありません。一人で散歩したり、屋外で運動をするのはかまいませんし、数名の人と時間や距離を保った上で会うことは禁止されていません。

精神科に来ていただいても、日常を変えない限り、“しんどさ”からは開放されません。自分でうまく折り合いをつけながら、やれることを増やしていくのが良いと思います」

また、意外にあやういのが主婦層だともいう。これまでは家族の留守中に気晴らしもできたのが、テレワークで家族がずっと家にいるようになって常に家事に追われ、それが負担となってしまうのだ。

「家族といえどもひとりの時間は大切です。全員が自由な時間を持てるように家族間で擦り合わせをして、ひとりの時間を作ってあげる配慮は大事です」

死にたいとまで追い込まれている人は、今の時点がいちばんマイナスだと思いこみ、なおかつその状況がずっと続くような気になっていることが多い。

産後うつや、学校でのいじめから死を選ぶ人はこのケースといえるだろう。産後はいつまでも続かないし、学校もやがて卒業する。けれど人は過去の自分に起こった変化に比べ、将来の自分に起こる変化を低く見積もりがちになってしまう。

「特にマイナスなことに関してそういう傾向が出やすいのです。例えば誰かにフラれて落ち込んでも、5年後、10年後に同じ気持ちでいる可能性は低いですよね。長期的な目で見られることは大事です」

◆ストレスを溜め込むうちに、押しつぶされてしまうケースも

とかくストレスの多いコロナ禍だが、今は大丈夫と思っていても、そのストレスを放置すると、うつ病や厭世観につながってしまう。

「ストレスを感じる空間にいるのはゴムが引き伸ばされた状態のようなもので、短時間なら元に戻りますが、長時間だと戻りきれなくなってしまいます。

不可逆的な精神の不調を引き起こさないためにも、なるべくストレスを感じない状況に身をおきましょう。

自分がストレスのない空間にいるかを判断する簡単な方法は、“無理せず笑えているか”です。無理して笑う必要のない場所を、なるべく多く見つけてください」

終わりの見えないコロナ禍では、これといった理由もないのに獏とした不安に絡めとられてしまう人もいる。

「そういう人は、進むべき方向がわからずオロオロしている状態といえます。

解決策として重要なのは、目標を定めることです。

大きな目標でなくても、例えば3日後に友だちと遊びにいこうとか、今週中に部屋を片づけようとか、 ちょっとした予定でいいんです。

そうやって小さな予定や目標を立てることに慣れてきたら、徐々に目標を大きくしていきましょう。

不安に押しつぶされそうになったら、心配ごとを書き出してみるのもよいでしょう。

書くことで不安の全体像がハッキリして、 自分が何に対して恐れを抱いているのかが明確になります。 するとそれを解決するために必要なことが見えてきて、心のモヤモヤが少しずつ軽減されていくのです」

ひとりで悶々と悩んでいる人は、誰かに話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になる。孤独感が強く、誰にもわかってもらえない、どうしようもないと感じたときに、自殺の可能性は高まってしまう。

「相手に理解してもらおうという期待はせずに、聞いてもらえる相手がいるだけよかった、と考えましょう。精神科医やカウンセラーでもよいですし、友人や恋人などプロでなくてもかまいません。カウンセラーは話を聞いて心理検査をするのがメイン、医者は診断や治療がメインです。

薬を出したり診断することはカウンセラーにはできませんので、じっくり話を聞いてもらいたいときはカウンセラー、診断を仰ぎたい場合は精神科を受診してください。カウンセラーは臨床心理士、公認心理師の資格を持っている方をおすすめします」

◆周囲の人は、励ましの言葉よりも辛さを受け入れてあげることが大事

コロナ禍の生活では、少しずつ順応していくことが大切なのだという。

今までなかったことだからこそ、困難をある程度受け入れ、慣れていくことが重要なのだ。

「しんどいのは自分だけではないということを自覚して、生活を考えていく必要があります。

ただ、それは自分が感じるべきことであり、他人から言われると、むしろマイナスに働きます。

人はそれぞれ感じ方が違うので、辛そうな人に、“あなただけが辛いわけじゃない”“なんでそんなことでショックを受けるの?”などと言うのはやめましょう。

周囲の人は本人の辛さを認め、あくまでも“サポートしているよ”というスタンスを示すのが大切です」

状況を受け入れたとして、どうすれば前向きになれるのだろうか。

「周りに依存したり、過度に期待するのをやめましょう。

大きな意味では政府もそうです。

何ごとにおいても、期待が大きいほど叶わなかった時の反動も大きいので“来年はワクチンができるから大丈夫”などと期待せず、とりあえず自分ができることに集中したほうがメンタルはコントロールしやすくなります」

◆今日から始めたい、“コロナうつ”からの脱却方法

たとえメンタルが弱くても、生き方が楽になる方法はある。今日からでもできる具体策が、実はいろいろあるのだ。

「情報収集は最低限にとどめてください。テレビをつけっぱなしにしていると、取捨選択ができない不確かな情報がどんどん入ってきて不安になります。

軽度の運動は効果的です。体を動かすとノルアドレナリンやセロトニンなどの脳内の神経伝達物質が増えますし、体力がつくことにより、できることの幅が広がります。

ネガティブに考えやすいのは脳が疲れ、精神的に落ちていることが原因。そんなときに一番いいのは寝ることなので、早く寝るためにもある程度物理的に疲れさせる運動が大事です」

自分はおかしいんじゃないか? そんな風に感じた時の見極め方は以下のとおり。

「メンタルの不調も体に症状が出ることがあります。

疲れやすくなった、やる気が出ない、眠れない、食べられないなど、漠然とした体調の悪さが見られたら、精神的なことも考えるべきだと思います」

 

メンタルドクターSidow(メンタルドクター・しどう) 精神科専門医×YouTuber。東邦大学医学部卒。現在は都内の精神科病院に常勤医として勤務。精神科医として働くなかで、世間の精神疾患に対する偏見や誤解の解消、精神科への早期受診の必要性を実感し、SNSで情報発信を始める。親しみやすい人柄が話題となり、現在、自身が運営するSNSの総フォロワーは10万人を超え、さらに人気急上昇中。著書に『メンタルドクターSidowが教える 人間関係も仕事も「しんどい」ことをリセットする方法』(大和書房)がある。

 

取材・文:井出千昌

FRIDAYデジタル

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「自殺をしない、させない」坂口恭平が〈いのっちの電話〉で2万人の声を聞く理由

2020年12月20日 21時36分41秒 | 事件・事故

12/20(日) 18:01配信

婦人公論.jp

今年8月以降、自殺者数が前年に比べて増加しているというニュースが飛び込んできた。また、有名人の自死も相次ぎ、その連鎖が心配される。自分の携帯電話番号を公開し、「いのっちの電話」という相談活動を10年続けている坂口恭平さんと、精神科医の斎藤環さんが、語り合った

】「これは仕事でも、人助けという感覚でもない」

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◆1日に100人の相談が

斎藤 8月以降、自殺者が増え続け、特に女性の増加率はこれまでにない急カーブを描いています。コロナの影響でひきこもる生活が長引き、虐待やDVの件数が増えている。家庭内の「密」な状況が女性の自殺に影響を及ぼしている可能性もあると思います。恭平さんは自殺防止の電話相談を個人で続けていますが、男女比はどうですか。

坂口 コロナ以前からですが、電話をくれる8割は女性です。そのうち3割ぐらいはDVや身内での性被害の問題がからんでいる。それぐらい「家庭」が危険な場所になっています。今も、家族から性暴力を受けながら実質的な軟禁状態にされている女性の相談を受けているところです。

斎藤 それは深刻ですね。またコロナによる閉塞感に加えて有名人が相次いで亡くなり、この連鎖が一種の空気になって死に近づいている感もある。日本のマスコミが自殺報道に関するガイドラインをなかなか守らないこともあり、報道で他者の死のストーリーにひきつけられるケースも多い。

坂口 8月に出した本のカバーに、「いのっちの電話」の番号を大きく入れたんです。そうしたら1日約100件の電話が1週間ぐらい続きました。今は少し落ち着き、日に40~50件になりましたが。

斎藤 それをすべて一人で受けられるわけですね。

坂口 でもキャパシティとしては、まだ余裕があります。そもそも、本家の「いのちの電話」とか行政の相談ダイヤルになかなか電話がつながらないのが問題なんですよ。僕の「いのっちの電話」は、その時に出られなくても後で折り返しますから、必ずつながる。実は自殺って、社会問題が原因というより、相談できる相手がいないことが大きいと思うんです。今は受け皿の質を上げなければいけない時なのに、それ自体がない。

斎藤 たしかに「いのちの電話」はスタッフの高齢化が進み、相談員不足で非常につながりにくいですね。相談員はマニュアル化した研修を受けて何とか自殺を思いとどまらせようとするけれど、それではなかなか解決しないため、相談者はリピーターが多い。それでさらにつながりにくくなっている側面もあります。もちろん恭平さんの電話にもリピーターは多いと思いますが。相談は一人当たりの時間を区切って対応なさっているのですか。

坂口 いや、必要であれば2時間でもしゃべります。ただ、だいたいわかるんですよ。「もういいよね」と聞くと、「はい」って。なぜなら、僕は一生これを続けるつもりで、それを公言しているんです。電話を切っても、必要ならまたかけてくれば必ず僕につながるわけですから。

斎藤 そこが違うのですね。毎回違う匿名の相談員が相手だと、つながった電話にしがみついてしまうこともあるでしょうし。

「自殺をしない、させない」坂口恭平が〈いのっちの電話〉で2万人の声を聞く理由
12/20(日) 18:01配信
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左から坂口恭平さん、斎藤環さん(撮影:木村直軌)

今年8月以降、自殺者数が前年に比べて増加しているというニュースが飛び込んできた。また、有名人の自死も相次ぎ、その連鎖が心配される。自分の携帯電話番号を公開し、「いのっちの電話」という相談活動を10年続けている坂口恭平さんと、精神科医の斎藤環さんが、語り合った(構成=古川美穂 撮影=木村直軌)

【写真】「これは仕事でも、人助けという感覚でもない」

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◆1日に100人の相談が

斎藤 8月以降、自殺者が増え続け、特に女性の増加率はこれまでにない急カーブを描いています。コロナの影響でひきこもる生活が長引き、虐待やDVの件数が増えている。家庭内の「密」な状況が女性の自殺に影響を及ぼしている可能性もあると思います。恭平さんは自殺防止の電話相談を個人で続けていますが、男女比はどうですか。

坂口 コロナ以前からですが、電話をくれる8割は女性です。そのうち3割ぐらいはDVや身内での性被害の問題がからんでいる。それぐらい「家庭」が危険な場所になっています。今も、家族から性暴力を受けながら実質的な軟禁状態にされている女性の相談を受けているところです。

斎藤 それは深刻ですね。またコロナによる閉塞感に加えて有名人が相次いで亡くなり、この連鎖が一種の空気になって死に近づいている感もある。日本のマスコミが自殺報道に関するガイドラインをなかなか守らないこともあり、報道で他者の死のストーリーにひきつけられるケースも多い。

坂口 8月に出した本のカバーに、「いのっちの電話」の番号を大きく入れたんです。そうしたら1日約100件の電話が1週間ぐらい続きました。今は少し落ち着き、日に40~50件になりましたが。

斎藤 それをすべて一人で受けられるわけですね。

坂口 でもキャパシティとしては、まだ余裕があります。そもそも、本家の「いのちの電話」とか行政の相談ダイヤルになかなか電話がつながらないのが問題なんですよ。僕の「いのっちの電話」は、その時に出られなくても後で折り返しますから、必ずつながる。実は自殺って、社会問題が原因というより、相談できる相手がいないことが大きいと思うんです。今は受け皿の質を上げなければいけない時なのに、それ自体がない。

斎藤 たしかに「いのちの電話」はスタッフの高齢化が進み、相談員不足で非常につながりにくいですね。相談員はマニュアル化した研修を受けて何とか自殺を思いとどまらせようとするけれど、それではなかなか解決しないため、相談者はリピーターが多い。それでさらにつながりにくくなっている側面もあります。もちろん恭平さんの電話にもリピーターは多いと思いますが。相談は一人当たりの時間を区切って対応なさっているのですか。

坂口 いや、必要であれば2時間でもしゃべります。ただ、だいたいわかるんですよ。「もういいよね」と聞くと、「はい」って。なぜなら、僕は一生これを続けるつもりで、それを公言しているんです。電話を切っても、必要ならまたかけてくれば必ず僕につながるわけですから。

斎藤 そこが違うのですね。毎回違う匿名の相談員が相手だと、つながった電話にしがみついてしまうこともあるでしょうし。

◆今すぐ文章を書きなさい。書き方は教えるよ

坂口 長い付き合いの人もいます。たとえば19歳の時、首に縄をかけた状態で電話してきた子がいた。死にたくないから電話したけど、体は死ぬ方向へ動いてしまう、と。そして突然、その子はホロコーストの生き残りの詩人、パウル・ツェランの詩を暗唱し始めたんです。

斎藤 ほう。

坂口 僕は「ちょっと待て。縄をはずせ。重要なことを教えてあげる」と。「お前はただ頭がいいだけだから、今すぐ文章を書きなさい。書き方は教えるよ」と言って。以来、彼はもう1000枚書きました。出版が目的ではなく、ただ書く。送られてくる原稿を僕が読む。今は2作目に取りかかっていて、僕は一生付き合うつもりです。

斎藤 なかなか真似できることではありませんね。最初に「いのっちの電話」を始めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけと聞きますが。

坂口 僕は福島第一原発事故の時に不安を感じて、東京から生まれ故郷の熊本に戻った人間です。避難に関する電話相談を受けようと始めたら、いつの間にか心の相談が増えてきた。そんな中で、僕自身がうつになったわけです。電話にも出られず、死にたくなってしまった。

斎藤 恭平さん自身がもともと、長年のあいだ躁うつ病(双極性障害II型)で苦しんでこられましたからね。

坂口 最初は僕も対応が下手で、相手の念みたいなものを全部もらってしまった部分もあるのかもしれません。自分が死にたい気持ちからやっと復活できた時、「死にたい人の声はちゃんと聞かなきゃいけない」と感じました。せっかく原発事故対応の相談で多くの人に電話番号が伝わったのだから、これを使って自分で「いのちの電話」をやろうと思ったんです。

斎藤 しかし「いのちの電話」を名乗って相談を始めたら、実際の「いのちの電話」から商標登録侵害で訴えると警告されたとか。

坂口 はい。それで名前を一文字替えたんです。井ノ原快彦さんとは友達なので、使っても怒られないかなと。(笑)

斎藤 自殺者をゼロにする目標で、相談者に自殺が出たらやめようと思っていたそうですね。

坂口 これまで一人だけ亡くなった方がいました。自殺すると、最後に通話記録がある人のところへ警察から確認の連絡がいくんです。もう完全に心を決めていると感じられる相談者の方がいて、こちらからも連絡を取ろうかと思ったりもしたのですが。昨年正月に警察から僕のところへ、最後の通話者ということで電話が来ました。

斎藤 そうでしたか……。では、その時にやめようと?

坂口 ところが、電話をくれた刑事さんが僕の名前や活動を知っていたんです。所轄内の自殺現場は彼がみんな見ている。そのせいで刑事さん自身もうつ気味になっていて、妻もうつ病だと。「いつか自分も坂口さんに電話するかもしれないから、いのっちの電話はやめないでください」と。じゃあ、わかりましたということで。(笑)

斎藤 警察から頼まれた(笑)。これは珍しい体験ですね。

坂口 救急隊員をしている人からも相談されたことがありますよ。自殺現場へ真っ先に入るのが彼らです。「もう砂袋を持っているのか、人間を持っているのかわからなくなった」と、ビルの上から電話してきた。彼は見事に復活して、今は緊急性の高い相談を受けた時に、彼から助言をもらったりすることもあるぐらいです。

◆土はいろいろなことを教えてくれる

斎藤 恭平さんは自ら躁うつ病であることをカミングアウトしながら、建築、写真、文章、音楽など旺盛な創作活動を続けてきました。2016年に私が日本病跡学会にゲストとしてお呼びしたのが最初の出会いでしたね。

坂口 その1年後、たまたま僕が東京にいた時、今までで一番重いうつ状態になったんです。これはたぶん死ぬかな、というぐらいひどい状態で。見かねた友達が、環先生のところに行ったほうがいいと車で連れて行ってくれて、九死に一生を得ました。あの時は本当に最悪の状態で。

斎藤 そうでしたね。

坂口 熊本ではかかりつけの医師の処方で薬を飲み、それでもだいたい3ヵ月周期ぐらいで躁とうつを繰り返していました。その後、鹿児島の神田橋先生という仙人みたいな方に出会ったのが一つの転機になったんです。

斎藤 シャーマンのようなカリスマ的精神科医ですね。普通の精神科医はだいたい、「軽躁の時には動かず我慢しましょう」と抑えるのですが、神田橋さんは「振り子のように揺れていきなさい、波に身を任せましょう」というようなことを言う方です。

坂口 僕は「窮屈が一番いけません」という神田橋先生の言葉に、すごく救われたんです。それからは窮屈になることを完全に避けているのでストレスがゼロ。そのあと市民農園を借りて畑をやったり、パステル画を描き始めたりしているうちに、コロナをきっかけに病院から足が遠のいて。以来、薬ナシでもうつになっていません。

斎藤 パステル画は毎日描いてすでに100枚以上になり、個展を何度か開いていますよね。畑にも毎日出ている。恭平さんは、「日課」を作って毎日手先や体を動かすことが「死にたくならない一番の薬」だと著書などにも書いていますが、まさにそれを実践している。

坂口 その通りです。特に畑との出会いは大きかった。結局、悩みの基本は人間関係です。人とかかわるから、躁だ、うつだと言われる。でも人を避けたら孤独になると思った時に、畑と出会ったんです。土の中には数億の微生物がいて、畑には昆虫も野良猫もやってくる。人間以外の生物とのコミュニケーションが豊かなので、人と会わなくても孤独感はありません。

今も毎日畑に行きますが、土は本当にいろいろなことを教えてくれる。「病気が治る、治らないではなく、自分なりの健康体というものをイメージしなさい」と土が言うんです。今日でうつが明けて400日目ですが、こんなことは今までの人生で初めて。

斎藤 現在の医学では、双極性障害は良くはなるけれど、寛解するのは本当に難しいとされています。きれいに終結したという論文はほとんど読んだことがありません。しかし恭平さんは治ったと感じているのですよね。

坂口 今の実感では完治です。というか、違う段階に入ったと思う。今も躁うつの波はあるんですよ。でもその時の状態によって、休憩したり、水を飲んだり、体の動きを合わせることで、普通に日常生活を送ることができる。躁のエネルギーは、やり方によっては非常に有益に使えますし。

斎藤 躁うつ病は気分障害なので、治療は気分を平坦にするしかないと普通の医者は考えます。安定剤を使い、「低め安定」にエネルギーを削ぐ方向です。恭平さんのように躁うつのエネルギーをうまく流すというか、発揮する方法を自分で開発しようとした人は前例がありません。

坂口 ある時、親友が「君は治るよ」と言ってくれたことがあって、この言葉にもすごく背中を押されました。だから「治る」という感覚を、頼むからみんな持っておこうよと言いたいんです。

斎藤 医者自身も、双極性障害や統合失調症は完治しないと思い込んでいるところがあります。初診で「一生付き合っていく病気なので頑張りましょう」と言うことが患者への親切だと。しかしそうした既成概念にとらわれすぎないことも大切ですね。恭平さんの開発した方法は、治るという方向に道を開いたかもしれません。

◆「治療はオーダーメイドだ」

坂口 実は僕、一度医者になってみたいのです。医師免許なしで医者になる方法ってないですか。

斎藤 医者は制約が多いから、つまらないですよ(笑)。今のままのほうが面白いでしょう。

坂口 そうですか。

斎藤 2万人もの相談を受けている実績があるし、結果も把握しながら進めているから、すでに通常の精神療法の活動とそんなに変わらないですよ。セルフケアで躁うつから脱却しつつある事実も強力だし。こういうケースが一例でもあれば、それはエビデンス(科学的根拠)になる。方法論としてもけっこう良いと思います。

坂口 ありがとうございます。

斎藤 しかし重い話ばかり聞いていると、二次受傷といって相手の心の傷がこちらにも移ってくる。そのケアが必要というのが臨床の常識です。一人でこれだけ多くの相談をどうやって潰れずにこなしていけるのか、本当に不思議で。

坂口 どうやってと説明するのは難しいですが、僕が「いのっちの電話」に喜びを見出しているからかもしれません。これは仕事でも、人助けという感覚でもない。その人の話し相手として存在できている喜び、ぐらいの感じですかね。とにかくその人が一番楽しいと思うことを話すようにしています。

斎藤 たとえば、どんな?

坂口 この前、末期がんのおばあちゃんから電話が来て、寂しくてしょうがないと。じゃあ今すぐ叶えてあげるから、何か願いを教えてと訊いたら、「星に願いを」を歌ってくれというのです。その歌は知らないけど、即興アカペラで「星に願いを~、夢見る虫は~、葉の上で~まどろんでいる~故郷の夢~」という感じで(笑)。おばあちゃん、泣いていました。だから単純に、最高の贅沢を味わってもらっているつもりなんですよ、僕は芸人だから。

斎藤 相談と考えると重いけれど、実は創造行為だと。

坂口 エンタテインメントですね。エンタメという言葉は軽く使われがちですが、語源はラテン語で「帰りたくなくなるほど歓待する」という意味。それを提供することを心掛けています。みんなすぐケアとかヘルプの状態を考えるけど、僕の行為はどちらかというとディズニーランド寄りなんです。

斎藤 ああ、なるほど。

◆他人の風を入れることが大事

坂口 『婦人公論』の読者で自殺したい人も、迷わず僕に電話をしてほしい。今は介護で困っている人がむっちゃ多いんですよね。

斎藤 そういう人には、どんな応対をするんですか。

坂口 たとえば化粧して、一番いい下着を着てもらう。それで電話で遠隔操作してデパートに行き、気に入った布を探してもらうんです。それから僕が見つけた可愛いコートを簡単に作れるサイトのリンクを送って、その人に似合うコートを自分で作ってもらうとか。

斎藤 それも恭平さんのいう「手首から先の運動」ですね。

坂口 はい。五感を使うのも大事だから、香水なんかもよく買いに行きますよ。デパートに行って匂いをチェックしてもらいながら、電話で「どれが好きですか」って。

斎藤 お話を聞いていると、催眠療法で知られる天才的な精神療法家のミルトン・エリクソンという人を思い出します。彼は「治療はオーダーメイドだ」と言っていました。一人一人違うことをすると。そもそも、自分の状況についてぐるぐると内省的に考える「反復」が、うつを悪化させます。いかに反復をやめるかが大事なのですが、そのために有効なのが、まさに恭平さんがやっている、「人とつながる」ことなのです。つながっている間は強制的に気が逸らされますから。

坂口 要は他人の風を入れることが大事なんです。連絡を取れる人がいれば取ったほうがいいし、いなければ僕に電話してほしい。

斎藤 お話を聞いたり、SNSでの活動を見ていると、恭平さんだからこそできるというところはたくさんある。でも同時に、自分も真似ができそうに思えてくる部分もあって、そこが面白いですね。

坂口 僕のしていることに一般性があり、環先生がそこに法則を見出してくださるなら、いつでも僕は実験台になります。

斎藤 一般性はじゅうぶんあると思いますよ。

坂口 「いのっちの電話」では、当てずっぽうをやったことは一度もないつもりです。これが何なのか、自分自身もまだわかっていない。でも僕が天才だからとか、共感性が高いからということじゃない。これは経験と技術なんです。そういう意味ではピアニストとかエンジニア、大工さんに近い。

斎藤 つながらなかった電話を折り返すとか、共感性に頼らない支援、支援を楽しむ方法論など、けっこう一般化、法則化ができる部分はあると思います。支援の現場では往々にして深刻になりすぎ、そのムードが二次受傷を生んでいる場合もある。そこに風穴を開けることには意義があります。もし恭平さんみたいな人が10人出てきたら、日本の自殺対策の状況はずいぶん違ってくるでしょう。

坂口 活動のベースはジョイ、喜びと幸福です。だから幸福とは何か、僕なりの幸福論をちゃんと書きたいと思っているところです。

斎藤環,坂口恭平

 

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急死した女性職員が不正…使途不明1億円、外車やブランド品購入

2020年12月20日 21時28分36秒 | 事件・事故

12/20(日) 14:27配信

読売新聞オンライン
 今年9月に約1億円の使途不明金が発覚した連合岩手(鈴木圭会長代行)は19日、盛岡市内で記者会見を開き、第三者委員会による検証の結果、不明金は死亡した会計担当の女性職員の不正行為によるものだったと発表した。

 調査報告書などによると、女性職員は約30年間、ほとんど1人で会計事務を担当。不明金は今年9月、内部会計監査を前に女性が急死したことを受けて発覚した。女性職員の家族に聞き取りしたところ、家族で頻繁に上京して遊んだり、外車やブランド品を買ったりしていたことがわかった。

 また、組織の危機管理意識の低さや監査の杜撰(ずさん)さについても指摘し、外部監査の導入など再発防止策も提言した。

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国内の新型コロナ感染者、20万人超える 10万人から52日間で到達

2020年12月20日 21時00分55秒 | 社会・文化・政治・経済

12/20(日) 18:42配信

毎日新聞

新型コロナ感染者数の推移

 新型コロナウイルスの感染者は20日、全国で新たに2502人確認された。クルーズ船の乗員乗客らを合わせた国内の感染者数は毎日新聞のまとめで20万68人となり、20万人を超えた。感染者数は10月29日に10万人に達したが、初めての陽性確認から287日間かかった。しかし、その後10万人増えるのにかかったのは52日間。「第1波」や「第2波」と比べ、10月下旬から始まったとされる「第3波」の感染拡大のペースの速さが際立っている。

 

 厚生労働省の12月16日時点のデータによると、感染者のうち最も多いのが20代で23・1%だった。次に多かったのは30代(15・2%)で、40代(13・8%)、50代(12・4%)と続く。

 死者は年齢が高くなるほど多くなっている。全体の死者のうち80代以上が60・1%を占め、70代(25・8%)、60代(9・2%)の順だった。

 感染者のうち亡くなった人の割合をみると、80代以上が12%、70代は4・8%と高かった。一方、40代以下の陽性者は10万9595人いるが、死亡したのは32人だった。

 毎日新聞のまとめによると、最初の感染者が出てから5万人に達するまで207日間かかったが、10万人までは80日間だった。その後、10万人から15万人は33日間とさらに短くなり、20万人まではわずか19日間だった。

 感染は大都市部から地方に広がっている。厚労省によると、確保を見込む新型コロナ患者用の病床の使用率(15日時点)は、22都府県が感染急増を示す「ステージ3」(20%)、6道府県が感染爆発を示す「ステージ4」(50%)となっている。東京都(49・7%)や兵庫県(63・6%)などの大都市部だけでなく、高知県(57%)や熊本県(38%)といった地方でも深刻な状況が続く。

 12月20日の感染者数は日曜日としては過去最多となった。東京都も556人で、日曜日としては最も多かった。全国の死者は23人増えて計2917人となった。福島県で40人、岡山県で111人の感染者が確認され、過去最多を更新した。【島田信幸、小川祐希、関谷俊介】

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看護職5割が長時間夜勤 16時間超、コロナ禍で負担増

2020年12月20日 11時20分32秒 | 事件・事故

12/19(土) 19:59配信

産経新聞

2交代病棟の長時間夜勤の実態

 新型コロナウイルスに対応する過酷な医療現場の実態が、日本医療労働組合連合会(日本医労連)が実施した看護師らの「夜勤実態調査」で明らかになった。看護師らに8時間以上の勤務が課される、2交代制の勤務シフトを敷く病棟は今年、42・7%(昨年39・3%)と過去最多に。16時間以上の長時間夜勤も病棟数の52・5%、看護職員数の51・5%にのぼった。

【イラストで見る】新型コロナウイルス感染拡大による「医療崩壊」

 全国391医療機関の病棟などで働く看護師ら約12万4千人を対象に、今年6月の勤務実績を調べた。コロナ禍で手のかかる重症患者らが増加しており、11月からの「第3波」では看護師の負担増に拍車がかかっている恐れもある。

 コロナ病棟などを設置した施設からは「対応病棟へのスタッフの異動で、他病棟で夜勤回数が9日以上に増えた」「夜勤回数が月9~12回となった」などの報告も寄せられたという。

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「赤チン」最後の1社が製造終了、最盛期は100社

2020年12月20日 11時01分02秒 | 医科・歯科・介護

12/20(日) 7:00配信

日刊スポーツ

赤チンを手に思い出を語る藤森博昭三栄製薬社長

「三丁目の夕日」や「ちびまる子ちゃん」でも描かれた昭和を代表する消毒薬「赤チン」の製造が終了する。国内唯一のメーカー三栄製薬(東京・世田谷)が24日製造、25日包装分をもって終了することを明かした。

【写真】昭和を代表する消毒薬赤チン。パッケージは懐かしい昭和時代のもの

1939年(昭14)、日本薬局方(国が定めた医薬品の規格基準書)に収載された赤チンは、最盛期の60年代、全国約100社が製造。三栄製薬でも月10万本を出荷した。ヨードチンキ(ヨーチン)に比べ染みず、痛くないことから、保健室や家庭に欠かせず、擦り傷や切り傷ができた子どもたちの膝や肘は赤く染まっているのが定番だった。

71年に無色でスプレーの「マキロン」が登場。一方、赤チンは原料のマーキュロクロムを製造する際、水銀が発生することから国内での原料製造が73年に終わり、徐々に時代に取り残され始めた。三栄製薬の藤森博昭社長(59)によると、海外から原料を調達して製造を続けるメーカーは2000年代に入ると3社になっていたという。

15年に1社が倒産。18年末にもう1社は製造を終了し、三栄製薬だけになった。「水俣条約」(水銀を使用した製品の製造、輸出入を規制する国際条約)で12月31日以降、赤チンも蛍光灯などともに規制対象となることから、三栄製薬も幕を下ろす。「知っているのは昭和の人たちだけになりましたが、全国に根強いファンがいて『母親に塗ってもらった記憶がよみがえります』『大事に使っていきます』と手紙を送って下さいます。先代が最初に作った製品で70年近く作ってきたので作れなくなるのは寂しいし、残念です。長い間、お使いいただいてありがとうございました」と藤森社長は話している。【中嶋文明】

◆赤チン マーキュロクロム水溶液。「赤いヨードチンキ」の意味だが、ヨード(ヨウ素)もチンキ(エタノール)も入っていない。ライバルとなった「マキロン」は発売当初、子どもたちの間で「白チン」と呼ばれた。

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車で男性はねる がんセンター研究所長逮捕

2020年12月20日 11時01分02秒 | 事件・事故

12/20(日) 7:04配信

日本テレビ系(NNN)
19日夜、東京・練馬区で80代くらいの男性を車ではねたとして、千葉県がんセンター研究所の所長の男が現行犯逮捕されました。男性はその後、死亡しました。

警視庁によりますと、19日午後7時半頃、練馬区東大泉で道路を横断していた80代くらいの歩行者の男性が右折してきた乗用車にはねられました。男性は病院に搬送後、死亡が確認されました。

この事故で、車を運転していた、千葉県がんセンター研究所の所長、永瀬浩喜容疑者が過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕されました。現場は、信号のないT字路で、調べに対し永瀬容疑者は「よく前を見ていなかった」と話し、容疑を認めているということです。

警視庁は、男性の身元の確認を進めるとともに今後、容疑を過失運転致死に切り替えて調べる方針です。

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菅野さんの「伸ちゃん」の話

2020年12月20日 04時37分23秒 | 日記・断片

午前11時ころ、友人の佐々田さんから電話がある。
「近くにいますが、コーヒーでも飲みませんか?」
敢闘会の文集を会員に配布した後だそうだ。
慌てて仕度をする。
何時ものように、ミスターマックス脇の道路に自動車を停めていた。
川原さんが同乗していた。
6号沿いのガソリンスタンドのコーヒー店である。
前回は、川原さんがお金を出してくれた。
今回はそれぞれ、お金を出す。
今年亡くなった伸ちゃんの話となる。
当方は、彼が中学生の時から知っているので、菅野さんではなく「伸ちゃん」と呼んでいる。
ホーキング博士と同じ病名だった。
友人4人で施設に会いに行ったのは2年前であった。
口に棒を咥えて、携帯電話で、メールをする。笑顔を絶やさない人であった。
最後は、胃ろうを断り、死を選んだようだ。

「可哀そうな伸ちゃん」と画家の母親が何時も言っていた。
娘さんは葬儀に来なかったそうだ。何か切ない気持となる。
ホーキング博士はケンブリッジ大学の大学院生の時、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されたといる。

「胃ろう」とは、身体機能の低下などにより口から食事をすることが困難になった人が、胃から直接栄養を摂取するための医療措置のことです。食べることは人間が生きていく上で大切な行為であり、おいしい食事は人生の質を高めてくれます。それだけに、できる限り自分の力で食事を続けたいと考える人が多いでしょう。
しかし、胃ろうには肺炎などのリスクを回避し、患者本人と介護者の両方にかかる負担を減らせるというメリットがあることも確かです。
今回は、高齢者の介護に携わっている人のために、胃ろうの基礎知識や、胃ろうの人を介護する方法をご紹介します。
 
 1.胃に直接栄養を入れる「胃ろう」とは
2.胃ろうのメリットとデメリット
3.胃ろうカテーテルの種類
4.胃ろうの人を介護するポイント
5.胃ろうを活用して安心できる介護生活を

胃に直接栄養を入れる「胃ろう」とは

胃ろうとは具体的にどのようなものでしょうか。胃ろうの基礎知識と目的、対象者についてお伝えします。
 
●胃ろうとは
胃ろうは、チューブで胃に直接栄養を送り込むための穴のことを指します。胃ろうを作ると、栄養補給のためのルートが増えます。
 
胃ろうを作るための手術のことをPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼びます。胃ろうの手術は内視鏡を使って行います。順調に進めば30分程度で終わり、入院期間も短くて済むため、体への負担が少ない手術といわれます。手術をした後4日前後で入浴もできるようになります。
 
胃ろうを通じて栄養補給をする場合は、必要最低限の栄養剤を胃に流し込む形になるため、体重が落ちる例もあります。喉などにチューブを入れるわけではなく、口から食べることもできるため、胃ろうにしたとしても、口から食事をとるリハビリを続けるのが望ましいでしょう。
 
●胃ろうの目的と対象者
胃ろうは、なるべく体に負担をかけずに栄養を摂取することを目的としています。
主な対象者は、重度の認知症を患っていて、自力で口から食事をとるのが難しい人や、食べ物を飲みこもうとするとむせてしまい、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高い人などです。
 
胃に穴を開ける方法ではなく、鼻からチューブを胃まで挿入する方法もあります。これを「経鼻胃管」といい、胃ろうと同様に胃に直接栄養を送り込むことができますが、人によっては呼吸がしづらかったり、鼻に異物感があったりするため、体に負担がかかることも事実です。そのため、長期的に口以外からの栄養補給が必要な患者には、体への負担が少ない胃ろうをすすめる病院もあります。
 

胃ろうのメリットとデメリット

胃に穴を開けることに抵抗がある人は少なくないでしょう。それでも胃ろうにはメリットがあります。
 
●メリット
胃ろうのメリットは、鼻からチューブを入れる経鼻経管で栄養補給するよりも利用者の痛みや体への負担が少ない点にあります。食事介助にかかる時間や手間が少なくなるため、介護者側の負担も軽くなります。
また、嚥下障害による誤嚥性肺炎のリスクを軽減できると考えられています。高齢者にとって肺炎は命にかかわる病気であるため、これは胃ろうの大きなメリットといえるでしょう。なお、洋服を着れば外からはわからないため、外出に抵抗を感じることも少ないでしょう。
 
●デメリット
何らかの理由で免疫力が低下したときに、胃ろうの周辺の皮膚がただれたり、まれに注入した栄養剤の逆流を起こしたりすることがあります。身体状況によっては在宅での介護も可能ですが、対応できるスタッフがいないとの理由で、施設への入居は難しい場合があります。胃ろう専用の栄養剤や半年に一度のカテーテルの交換など、費用がかかる点もデメリットとして挙げられるでしょう。
認知症の人などは、自分でカテーテルを抜いてしまうことがあるため、注意が必要です。一度カテーテルを抜くと、たった一晩で穴がふさがってしまうこともあり、その場合は再手術をすることになります。
また、人間の「尊厳」という観点から物議を醸していることも事実です。
 

胃ろうカテーテルの種類

胃ろう用のカテーテルには、大きく分けて、体外部に使用するものと胃内部に使用するものの2種類があり、組み合わせて使います。
 
●体外部
体外部の固定板には「ボタン型」と「チューブ型」があります。
 
・ボタン型
体外にチューブが出ていないため、目立たず、動作の邪魔になりません。また、栄養剤が通るチューブの長さが短いため、内側が汚れにくく、掃除の手間が少なくなります。ただし、いちいちボタンを開けてチューブをつなぐ必要があります。その際に片手ではボタンを開閉しにくい点もデメリットといえるでしょう。
 
・チューブ型
栄養剤を入れるときにチューブとの接続が簡単にできるというメリットがあります。しかし、体外にチューブが出ているため、邪魔になりやすく、チューブの内側が汚れやすいというデメリットがあります。
 
●胃内部
胃内部の固定板には「バンパー型」と「バルーン型」があります。
 
・バンパー型
胃の内壁にしっかりと固定されるため抜けにくく、交換までの期間が約半年と長い点がメリットです。しかし、しっかりと固定されている分、カテーテルの交換時には痛みや圧迫感を感じやすいというデメリットがあります。
 
・バルーン型
挿入後にバルーン内に蒸留水を入れて膨らませて固定します。カテーテル交換時にもバルーン内の蒸留水を抜いて小さくしてから抜くため、痛みを感じにくく、交換が容易である点がメリットです。しかし、バルーンはあまり長くもたないため、1~2カ月に1度のペースで交換しなければなりません。
 
胃ろうカテーテルは、体外部と胃内部の固定板を組み合わせたものを使用します。例えば、「ボタン・バルーン型」や「チューブ・バンパー型」などです。胃内壁の厚さは個人差があるため、組み合わせを変えることで、より自分の体に合ったカテーテルを使用することができます。

 

胃ろうの人を介護するポイント

胃ろうの人を介護する際のポイントと注意点をお伝えします。
 
●口腔ケアを徹底する
胃ろうにすると、口から物を食べる機会が減るため、唾液の分泌が減り、口の中が汚れやすくなります。食べ物を噛んだり咀嚼したりすることがないので、嚥下機能がどんどん低下していきます。口から食べ物を食べなければ、誤嚥を起こすこともなく、誤嚥性肺炎の心配はないと思われがちですが、痰などに絡んだ細菌を飲み込むことで肺炎を引き起こしてしまう可能性も考えられます。口腔ケアを徹底し、それらのトラブルを防ぐよう心掛けましょう。
 
●体を清潔に保つ
胃ろうをしていても入浴することができます。その際、ビニールなどで保護する必要もありません。胃ろう周辺は常に清潔にしておく必要があるため、入浴時には石鹸できれいに洗い、入浴後は十分に乾燥させるようにしましょう。
 
●本人の状態に合わせて栄養剤を選ぶ
胃ろうに使用する栄養剤には、大きく分けて「消化態栄養剤」と「半消化態栄養剤」の2種類があります。消化態栄養剤はタンパク質がすでに分解された形で含まれており、消化吸収能力の低い人が使用します。半消化態栄養剤はタンパク質がそのままの状態で含まれており、水分制限がある人向けの製品も存在します。
 
栄養剤には「粉末タイプ」「液状タイプ」「ゼリータイプ」があります。
粉末タイプは水に溶かして使用します。液状タイプは水に溶かす手間がなく、そのまま使用することができます。ゼリータイプは逆流を防ぐ点で効果があるとされていますが、カテーテルによっては使用できない場合もあります。
本人の状態に合わせて、適した栄養剤を選ぶことが大切です。
 
●実際に栄養を体内に入れる行為は、専門家に任せる
胃ろうを通じて体内に栄養を入れる作業は医療行為なので、素人が行うことができません。医師や介護士といった専門家に任せましょう。

 胃ろうを活用して安心できる介護生活を

胃ろうを延命治療のために使用することに疑問を唱える人がいることも事実です。しかし、胃ろうは、口から栄養を摂取できない高齢者にとって、安心して栄養補給できる措置の一つと考えられています。少しでも長く家族と一緒に過ごすためにも、後悔のない決断をすることが大切です。口から物を食べることができない高齢者を介護している人は、メリットとデメリットをよく把握した上で、胃ろうの導入を検討してみるのも良いかもしれません。


国内外のリアリティー番組で顕在化したリスク - 出演者の損害

2020年12月20日 04時37分23秒 | 事件・事故

本年5月、大手動画配信サービスのNetflixで定期的に配信され、フジテレビでも放送していた「テラスハウスTOKYO 2019-2020」(特定の場所における集団生活を追いかけたリアリティー番組)の出演者(木村花さん)が、自ら命を絶つ事件が発生してしまいました。なぜ自殺したのか、という真の理由を本人の口から聞くことはもう叶いませんが、一部報道では、番組での言動(他の出演者を非難したこと)がきっかけで、主にインターネット上で木村さんに対する猛烈な誹謗中傷が繰り返され、これが原因の1つではないかといわれています。仮にそうだとすれば、木村さんの精神的苦痛・損害は計り知れないものといえ、まさに上記したリスクが顕在化した顕著な例だということができます。

 実は、こうした背景を持つ事件は、過去に海外でも報告されています。
 イギリスで人気のリアリティー番組「Love Island(ラブ・アイランド)」(若者らが無人島で共同生活を送りながらカップル成立を目指す番組)では、2018年に、放送後インターネット上で誹謗中傷を浴びた出演者の一人が自殺し、さらに番組内で当該人物とカップルになった恋人も、その後自殺するという悲惨な事件が発生しました。この番組では他にも2019年に、番組を通して語られる自分の姿と、本来の自分とのギャップに苦しんだ出演者が、そのことについて苦しい胸の内を語ったのちに自殺するという事件も発生しています。

 また、フランスで放送された無人島でのサバイバル生活を追ったリアリティー番組「Koh-Lanta(コー・ランタ)」では、2013年に、一人の出演者の事故死をめぐって、同行していた医師(番組にも登場していました)に対する誹謗中傷が繰り返され、それを苦にこの医師が自殺するという事件が起きてしまいました。いずれの事件も近年になって発生しており、これらが現在のSNS文化の発達と無関係とはいえないでしょう。

製作者の法的責任 - 出演契約からのアプローチ

 我が国でも「テラスハウス」事件を契機として、こうしたリアリティー番組をめぐる様々な意見が飛び交い、議論を呼んでいます。その中で、当該誹謗中傷を行った人物とは別に、番組の製作者側にも何らかの法的責任が生じないのだろうか、という議論が一部で行われています。そこで、ここでは出演契約を切り口にして、リアリティー番組を制作する側の法的責任の有無や、今後こうした番組を制作するうえで、業界が全体として目指すべき一定の方向性などについて、筆者が考えるところを述べていきたいと思います。

出演契約の法的性質

 番組の出演者は、口頭であれ書面であれ、自分自身あるいはマネジメント事務所を通して、製作者と出演契約を結んでいることになります。この出演契約の法的性質については所論あるところ、土屋アンナさんが出演予定の舞台講演の出演をキャンセルしたことをめぐり紛争となった最近の事例において、裁判所は下記の判断を示しました(東京地裁平成28年1月25日判決・判タ 1427号205頁、下線筆者)。

 「主演女優の所属事務所にとって、本件契約は、主演女優を稽古に参加させ舞台公演に出演させなければならない点において請負契約の側面を有するが、ただ単に決められた舞台公演に出演させればよいというものではなく、制作会社がその主演女優に主役を委託した目的である興行収入の最大化等のために、その主演女優の顧客吸引力をもって集客させるとともに、その主演女優の演技力によって観客を魅了しなければならないことからすれば、仕事の完成度(民法632条)と捉えることのできない側面があり、準委任契約の性質をも有するものと解するのが相当である」

 特にエンターテインメント系のコンテンツへの出演者には、契約上単に当該コンテンツに出演するだけにとどまらず、たとえばプロモーションに協力することや、リハーサルや事前打合せにも参加することなど、様々な関連業務への協力を求められることがほとんどです。また実際の出演時にも、機械的に作業をこなせばよいというものではなく、自らの立ち振る舞いによって視聴者の興味を惹きつける役割が与えられています。判決が、こうした契約上求められる出演者の役割などに着目し、「出演」は準委任たる性質をも有すると評価したのは、実態に沿った適切な判断であるように思います。

委任者としての責任(民法650条3項)

 上記のような裁判所の判断がリアリティー番組の出演に関しても当てはまるとすれば、まずは受任者の損害補填を規定した民法650条3項の適用が考えられるところです。

 本条では「受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる」とされています。このような書きぶりからすると、受任者たる出演者が委任業務の履行として番組に出演し、まさに出演者として取った行動により誹謗中傷を浴びたのだとすれば、その言動に「自己の過失」がない限り、委任者たる製作者に対し、その賠償(精神的苦痛に対する慰謝料、ストレス治療や炎上対策に要した費用など)を請求することも可能なように思われます(民法650条3項)。なお、この賠償責任は無過失責任だと解されており、製作者に落ち度があることは求められていない点に特徴があります。

 ここでのポイントは「自己の過失」の有無、簡単にいえば出演者側に落ち度はなかったかということになりますが、たとえば製作者側が出演者に依頼して、誹謗中傷の対象となった出演者の言動を作出したようなケースや、当該言動の前提となったシチュエーションを製作者が作出し、当該言動を行うよう出演者を誘導していたようなケース(つまり「作り込み番組」だった場合)では、出演者に誹謗中傷を呼び込む過失があったとは評価されにくいように思います。

 さらに、仮に前提事実の作出もなく、出演者の行動自体は任意であった場合でも、製作者が、演出・編集の名のもとに、出演者の言動を切り貼りしたり、テロップ、ナレーション、そのほか当該言動の解説・批評などを番組の構成に盛り込むなどして、実際の出演者の言動を、それとは異なる形で視聴者に提供したような場合も、出演者に過失はないと考えることが十分に可能なように思います。したがって、これらのケースでは、番組での言動をきっかけとする出演者の誹謗中傷に関し、製作者は本条に基づく損害賠償責任を負う余地があると思います。

 一方でその逆、つまり現実に発生したシチュエーション下において、出演者自身が自ら判断して取った言動であり、かつ、これが編集作業などによっても特に変容などしていない場合には、これに視聴者の批判が向けられたとしても、それは出演者が予見すべき領域の出来事であり、ある程度はやむを得ない側面があります。したがって、この場合は出演者に過失があることを理由に、本条に基づく製作者の責任を問うのは難しいだろうと思います。

コンテンツ提供者としての責任

 誹謗中傷を受けたこと自体に対する製作者の責任というテーマからはやや外れますが、リアリティー番組が、生身の人物による現実の出来事であるという前提で視聴者に提供される以上、最終的な番組上の表現によって出演者の外部的名誉が棄損されたのであれば、それは別途名誉棄損による損害賠償責任を検討する余地があるだろうと思います。先に述べたとおり、製作者は編集作業によって、出演者の言動を実際とは異なる形で視聴者に印象付けることが可能であるため、特にこうした編集が加わった場合には、よりその素地があるといえるでしょう。

 過去に、報道番組で取り上げられた企業に対する名誉棄損が争われた事件で、最高裁は、次々と一方的に情報が提供される映像メディアの特殊性に着目し、番組が公に伝えた事実(摘示事実)がどのようなものであったかという点については、「全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して、判断すべきである」としました(最高裁平成15年10月16日判決・民集 57巻9号1075頁)。

 このような最高裁の判断をもとにすれば、たとえ収録時には出演者による自由な発言がされていても、製作者が後に編集作業等を加えた結果、当該出演者の言動が番組全体の印象からみて変容したように見えるのであれば、その変容後の表現が番組により摘示された当該出演者に関する事実ということになります。

 そうすると、論理必然的にそのような摘示事実は真実とは異なるはずですし、かつ、製作者自身の編集の結果である以上は、いわゆる「真実だと信ずるに足る相当な理由」もないでしょう。実際に当該編集済の事実の摘示によって出演者の名誉が著しく棄損されたような場合には、いかに契約上の処理をしていたとしても、それをも甘受する合意があるとまではいえず、名誉棄損が成立する可能性は十分にあるように思います。

その他出演者の誹謗中傷に対応する義務

 上記のほか、番組への出演という行為の性質上、製作者には番組内での言動によって出演者に対する誹謗中傷が行われないよう注意すべき義務、あるいは、誹謗中傷を受けた出演者を精神的にケアする義務があるのではないか、という意見も一部でみられます。

 しかし、筆者は、出演契約に共通する一般的な製作者の義務として、上記のような対応を位置づけることは慎重であるべきだと考えます。番組の製作体制、演出・編集等の有無・程度、出演者の役割、属性など(あるいはその組み合わせ)は番組ごとに千差万別であり、一言に出演者といっても、製作者と出演者の関係性は、個別の番組によってかなり違いがみられるところです。

 したがって、両者の関係値を固定化したうえで、上記のような義務を定型的・一般的なものとして観念することは適切ではなく、ケースによっては製作者側に過度な負担を強いることになりかねません。結局のところ、製作者に上記のような対応義務があるといえるためには、具体的な契約の定め方によるほかは、個別具体的な番組制作の態様に照らし、番組ごとに個別に判断するほかないように思います。

 この点、本稿におけるリアリティー番組の定義からは外れますが、個別の制作手法に着目し、①視聴者に対してはリアルを謳いつつ、②実は、出演者は製作者が用意した脚本や演出に従うことが求められており(冒頭述べた「作り込み番組」である場合)、かつ③当該脚本や演出が視聴者の批判を招くと予見すべきものだといえるような場合は、こういった内容含みで出演を依頼する以上、当該出演契約には、信義則上、上記のような製作者の対応義務が生じるといってもよいのではないでしょうか。この問題については過去の裁判例などもなく、まさに今回のテラスハウス事件などをきっかけにして、議論が深まることを期待したいです。

これらからの課題 - 出演契約書の作成と適切なインフォームドコンセント

 上記のような問題を製作者・出演者間でクリアにするためには、何よりもまず出演契約書に必要事項をしっかりと定めておくことが大切だろうと思います。上記の「委任者の損害賠償責任(民法650条3項)」は任意規定といわれており、契約による排除が可能ですし、また、名誉棄損の問題についても、たとえば出演者との契約において「番組の編集権は製作者にあり、製作者によって編集された内容について異議を述べない」といった条件を盛り込んでおくことで、製作者は自らの責任範囲を明確にすることができ、また、出演者側もリスクを理解したうえで出演を判断する材料にすることができるため、トラブルの大部分は回避が可能なように思います。

 しかし、一定の改善傾向がみられるものの、制作実務の世界では、契約書をきっちり作成しておく文化がまだ完全に根付いているとはいえません。あまねくすべての出演に契約書が必要だとは思いませんが、少なくともリアリティー番組のような、当事者に高いリスクが伴う類型の番組については、可能な限り、上記のような問題点の解消につながる内容を盛り込んだ契約書を作成しておくことが望ましいでしょう。

 さらに、出演契約書作成の実務に関していえば、契約書の文面が、いわゆる出演料や番組の二次利用展開の範囲など、主にビジネス面に重きを置いた内容となっていることや、こうしたビジネス面の交渉が長引くなどの事情により、その作成が出演後になってしまうことなどが少なくありません。また、製作者が事務所と契約を交わす場合では、筆者の知る範囲でも、当該契約書の内容を出演者自身がほとんど把握していないケースもみられます。

 リアリティー番組出演による誹謗中傷のリスクは、まさに出演者自身が負っているものである以上、当該リスクの存在や程度、あるいはリスクが顕在化したときに取り得る手段の有無などに関しては、本来、出演者本人が最も理解しておかなければならないはずです。しかし、こうした業界の文化が、結果として、出演するかどうかを判断するうえで必要な情報が肝心の出演者まで行き届かず、彼らの最終的なリスクテイクの判断を誤らせる一因になっていることは否定できないのではないでしょうか。

 たとえば投資や医療の世界では、当事者に対する適切なリスクの説明は当たり前のこととされており、実際にリスクが顕在化した場面では、必要な説明を欠いたことによる説明義務違反を問われることもあります。

 これまで述べたように、リアリティー番組への出演が、現代では非常に大きなリスクを伴うことを考えれば、少なくともこうした番組については、今後は投資や医療と同じように、出演によるリスクの説明が尽くされていたか(説明義務違反の有無)、という観点から、出演契約を規律する場面があってもよいように思います。

 もちろん、社会全体の課題として、誹謗中傷自体を防ぐ取り組みも重要であることは言うまでもありませんが、業界内の取り組みとしても、番組に出演するかどうか、また、番組でどういった立ち振る舞いをするかといった点について、出演者自身が必要な情報に触れたうえで、出演者の意向に従って判断する、という枠組みをできるだけ確保していく必要があるように思います。それが引いては、出演者・製作者がともに安心して番組制作に没頭できる環境を築くことに繋がるのではないでしょうか。

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リアリティー番組に潜むリスクと製作者の法的責任

2020年12月20日 04時35分45秒 | 事件・事故

「テラスハウス」事件を二度と起こさないためにできること

2020年06月23日 11:00 國松 崇弁護士 

目次

  1. はじめに - リアリティー番組とは
  2. リアリティー番組の特徴 - 出演者に対する視聴者の目線
  3. リアリティー番組出演のリスク - 現代社会特有の「炎上」現象
  4. 国内外のリアリティー番組で顕在化したリスク - 出演者の損害
  5. 製作者の法的責任 - 出演契約からのアプローチ
    1. 出演契約の法的性質
    2. 委任者としての責任(民法650条3項)
    3. コンテンツ提供者としての責任
    4. その他出演者の誹謗中傷に対応する義務
  6. これらからの課題 - 出演契約書の作成と適切なインフォームドコンセント

木村花さん母、フジテレビに「罪を償ってほしい」

2020年12月20日 04時29分21秒 | 事件・事故

[2020年12月18日12時1分]

フジテレビ系恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演したプロレスラー木村花さんがSNS上で誹謗(ひぼう)中傷を受けた後に死去した問題で、母親で元プロレスラー木村響子さん(43)が思いをつづった。

響子さんは18日、ツイッターを更新し、「ずっと言ってますがフジテレビには 7月にBPOの窓口に花の人権侵害の申し立てをしまして現在審議中です」と進捗(しんちょく)を報告。「誹謗中傷した人 フジテレビ、制作会社 どちらかだけに理由があると思ってません どちらにも罪を償ってほしい」とし、「誹謗中傷すら利用してお金儲けした点では より罪は大きいと感じています」と胸中を吐露した。

フジテレビの遠藤龍之介社長は11月27日の定例会見で、花さんが亡くなったことについて「現在、BPOが審理しているが、今後も誠心誠意対応していく」と話した。


フジ 世田谷事件発生20年で特番、犯人像を検証

2020年12月20日 04時26分14秒 | 事件・事故

12/18(金) 12:20配信

日刊スポーツ

宮澤みきおさん一家(C)フジテレビ

フジテレビは「未解決事件SP 世田谷一家殺人事件 20年目のスクープ~3つの影を持つ男~」(19日午後3時35分、関東ローカル)を放送する。

20世紀最後の日、00年12月31日に凄惨(せいさん)な事件が発覚した。東京の世田谷区上祖師谷の一軒家に暮らしていた、宮澤みきおさん(当時44歳)、妻の泰子さん(当時41歳)、長女・にいなちゃん(当時8歳)、長男・礼君(当時6歳)の一家4人が惨殺された世田谷一家殺人事件。今月で丸20年という、未解決事件としての大きな節目を迎える。

番組では、この20年の間に捜査の指揮を執った警察幹部や、捜査に関わった法医学者ら、複数のキーマンに一昨年7月から取材を重ねてきた。公にはされていない犯人のDNA鑑定の結果と20年目にして行われた新たな鑑定結果が示すのは、犯人の意外なルーツだ。凶器の包丁を包んだハンカチの、その特殊な巻き方も、犯人の出身地に関わる可能性がある。そして、今なお事件解決に執念を燃やす元捜査指揮官3人が、確信をもって描くそれぞれの犯人像を徹底検証する。

<1>元警視庁捜査幹部の20年目の証言

捜査を指揮した警視庁元捜査一課長、元理事官、元管理官、捜査本部が置かれた成城警察署の元署長らが、現場の意外な事実とともに強く思い描く犯人像を明らかにする。

犯人像A(金を狙った残忍な物取り)を念頭に置くのは、元捜査一課長や、元理事官、元成城警察署幹部ら複数で、特に元理事官はこの犯人像を強く思い描いている。最も重要なことは、犯人は、初めから家族全員を殺して金を奪う目的で侵入したということだと元理事官は話す。

犯人像B(一方的な恨みを抱く人物)を追ってきたのは、多くの関係者がこの事件を最もよく知る捜査員の1人だと話す、元捜査一課の管理官だ。彼は、侵入口が2階風呂場の窓という、最も有力とされる侵入経路に大きな疑問を抱いている。現場には物が散乱し、物色の跡が残されているが、元管理官は、それは偽装に近い感じがすると語る。元管理官は、そもそも犯人は、事前にしっかり犯行を計画していることを忘れてはいけないと話す。

犯人像C(想定外の動機を持つ想定外の人物)を思い描き、事件の深層を読み解こうとするのは、成城警察署の元署長らだ。元署長は、20世紀最後の日という、特異な犯行日時に注目する。また、犯行の残忍さが、通常の殺人事件の延長線上にはないことも、想定外の動機を持つ想定外の人物像を主張する理由だ。

<2>幻のDNA鑑定と20年目の新鑑定

事件から6年後に犯人のDNA鑑定の結果が判明する。捜査本部が依頼したものだが、その内容は公表されずに現在に至る。実際に鑑定を行ったDNA鑑定の権威が、鑑定結果の詳細とその持つ意味の重要性を今回初めてメディアに明らかにする。さらに、その後蓄積された膨大なデータとの照合によって、新たな鑑定結果が明らかになる。事件から20年、犯人の意外なルーツが浮かび上がる。

<3>知られざる、精神科医の犯人像推定

事件から数年後、捜査本部は精神科医に犯人像の推定を依頼した。精神科医は助手ら4人と同じ現場を見た上で、警察から同じ捜査情報の提供を受けた。しかし、彼ら5人の精神鑑定は、全く異なるものだった。その1人が、初めてメディアに証言。当時推定した犯人像を明らかにする。

<4>事件直後の現場の詳細をほぼ実物大で再現

過去の取材の蓄積と入手した各種資料及び今回の新たな取材を基に、番組は宮澤さん宅の事件直後の現場を実物大で再現。ほぼ同じ広さ、構造の中で、直後の現場の状況を明らかにし、どこで何がどのように起きたのか、その詳細を検証する。

<5>19年目の12月30日午後11時半の事件現場

事件現場の周辺状況を19年後の19年同日同時刻に克明に再現。合わせて、捜査本部が今なお重要視する目撃情報。午後11時半に宮澤さん宅方向から飛び出してきた、不可解な男の事件への関与の可能性を検証する。

成田一樹プロデューサーは「ご遺族の宮澤節子さん(みきおさんの母親)のご自宅に伺い、この20年間、電話の前で、犯人逮捕の連絡を待ち続けていらっしゃるという話をお聞きし、ご遺族の計り知れない悲しみを感じました。本番組をご覧になった方々には、いま一度ご記憶を呼び戻し、捜査本部に情報をお寄せいただき、一日も早く事件が解決してほしいと思います」と話している。

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