パパ活の社会学 援助交際、愛人契約と何が違う?

2020年12月28日 03時41分53秒 | 事件・事故

坂爪真吾 (著)

〇内容紹介

女性が年上の男性とデートをして、見返りに金銭的な援助を受ける「パパ活
」が広がりを見せている。何が彼女ら彼らをパパ活に駆り立てるのか?
パパ活に関わる女性・男性へのインタビューを敢行し、交わされる金額、
年齢・職種、主戦場である交際クラブについてなど、生の情報を掲載。そこ
から見えたのは、複雑化・多様化した現代の価値観を最も強く映し出す鏡と
してのパパ活の姿である。既存の制度や規範、世間体 ―― 社会の衣を
脱いだ先にある「生の人間関係」のリアルとは? 多様性が賛美されている
にもかかわらず、価値観の異なる他者に対する不寛容と排除の圧力が強まり
つつある社会は、刻々と変化していくこうした新たな人間関係の在り方を許
容できるのか? 自由恋愛の最果ての地、「父なき時代」の現在を描き出す。

〇目次

はじめに
第1章 私、パパ活でやっと普通に生きられる
第2章 パパ活は専業にできるか?
第3章 失われた愛を求めて
第4章 恋人でも、妻でも、愛人でもない関係を
第5章 男、パパ活の合理化を図る
第6章 パパ活の生まれた場所
第7章 人生をパパ活でデザインしていく
終章 パパ活は自由恋愛のユートピアか?
あとがき

〇著者プロフィ―ル

坂爪真吾(さかつめしんご)
1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。
新しい「性の公共」をつくるという理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、
風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、
社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰。
著書に『はじめての不倫学』『誰も教えてくれない 大人の性の作法』(以上、光文社新書)、
『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、
『孤独とセックス』(扶桑社新書)など多数。

内容(「BOOK」データベースより)

女性が年上の男性とデートをして、見返りに金銭的な援助を受ける「パパ活」が広がりを見せている。何が彼女ら彼らをパパ活に駆り立てるのか?パパ活に関わる女性・男性へのインタビューを敢行し、交わされる金額、年齢・職種、主戦場である交際クラブについてなど、生の情報を掲載。そこから見えたのは、複雑化・多様化した現代の価値観を最も強く映し出す鏡としてのパパ活の姿である。既存の制度や規範、世間体―社会の衣を脱いだ先にある「生の人間関係」のリアルとは?多様性が賛美されているにもかかわらず、価値観の異なる他者に対する不寛容と排除の圧力が強まりつつある社会は、刻々と変化していくこうした新たな人間関係の在り方を許容できるのか?自由恋愛の最果ての地、「父なき時代」の現在を描き出す。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

坂爪/真吾
1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。新しい「性の公共」をつくるという理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
 
体の関係を持つ、持たないという区別から援交、パパ活の違いは説明できるのだろうが、実態はさして売春行為と変わらない。(パパ活であっても身体の関係を持つ可能性もある)

筆者は結婚制度がある限りはパパ活はなくならないと論じているが、その学術的根拠もなければ実証もなく、話を展開している節がある。社会学と銘打っているが、学と言う価値はこの本にはどこにも見当たらないように感じた。

同じような内容をタイトルを変えて何冊も書いている筆者もそうだが、それを出し続けている出版社も見上げたものである。
 
 
 
ようするに金がほしくて売春したいが性行為には至りたくない、これだけの話でしかない。なぜ広がりを見せているかも極めて簡単な話で、消費行為をあおりたてる社会に住んでいるものの子供達がそれを満たすに足りる金銭が得られないからでしかない。何が違うもへったくれもない。
 
 
 
本書に登場する女性は、自分たちのしていることを出来るだけ肯定的に語っていました。また、登場する男性はおしなべてお金持ちで、職業では医者が目立ちました。日本の富裕層の一部ではあるのでしょうが、生態が見え隠れしました。

「若い女性の間に、年上の男性とデートして、その見返りに金銭的な援助を受ける(3p)」のを「パパ活」というそうです。言葉自体も聞いたことはありますが、実態を良く知らなかったので、興味本位で読みました。本書を読了した今、援助交際や愛人契約とどう違うのかが見えてこなかったという感想を持ちます。

多くの女性が登場します。パパ活をしている必然性を語っていました。そのシステムも語られています。どれも類型的で、同じような話を延々と読まされている気分になりました。そのようなものだと言えばその通りなのですが。

「パパ活は『あくまで副業』(59p)」と言っています。勿論、売春を職業だと名乗るわけにはいきませんし、本人の意識もそうではないと思いたいでしょうが、実態は一緒にしか思えません。「フィーリングが合えば初回からホテルOK」という設定そのものがいかがわしいものですから。

190pの「パパ活の法的リスク」は関心をもって読みました。1997年の「東京都デートクラブ営業等の規制に関する条例」では、「愛人バンクのような男女交際の仲介業」として、東京都公安委員会への届出が必要になっている話が示されています。

また売春防止法では「売春を『対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること』と定義しています(190p)」とあり、筆者は相手が「特定」だから、ソープランドの女性は売春だが、パパ活は売春をしていないという不思議な論理を展開していました。

相手が代わるのは、本書の例でたびたび女性本人が語っているではないですか。そんな本を書きながら、都合のよう理屈を述べているところに、筆者の品性と論理の破たんが見えてきました。
興味本位で読みましたが、読んでいる自分も恥ずかしくなりました。そんな本です。
 
 
 
坂爪真吾氏の『パパ活の社会学 援助交際、愛人契約と何が違う?』 (光文社新書) を読んだ。

(こんな内容)→ 女性が年上の男性とデートをして、見返りに金銭的な援助を受ける「パパ活」が広がりを見せている。何が彼女ら彼らをパパ活に駆り立てるのか? パパ活に関わる女性・男性へのインタビューを敢行し、交わされる金額、年齢・職種、主戦場である交際クラブについてなど、生の情報を掲載。そこから見えたのは、複雑化・多様化した現代の価値観を最も強く映し出す鏡としてのパパ活の姿である。既存の制度や規範、世間体 ―― 社会の衣を脱いだ先にある「生の人間関係」のリアルとは? 多様性が賛美されている
にもかかわらず、価値観の異なる他者に対する不寛容と排除の圧力が強まりつつある社会は、刻々と変化していくこうした新たな人間関係の在り方を許容できるのか? 自由恋愛の最果ての地、「父なき時代」の現在を描き出す。

坂爪真吾氏の本は何冊となく読んできたが、本書では、まったく経験したことのない世界を改めてかいま見た次第。若い美女相手に「パパ」になる人は、原則お金持ち。医者とか‥(過労が深刻だという医者にしては、遊べる時は遊べる医者も多々いるようですな?)。

ただ話をするだけでも、時給一万円? 食事もご馳走(僕が愛用する「やよい軒」じゃダメみたい? 帝国ホテルレベルのレストランでのディナーとかでないと。ううむ、せめてバイキングなら去年行ったけど)。

そして、食事のあとはホテルへと。ホテルもラブホじゃなくて、高級ホテルのスイート? 主催者(会社)に払う金も含めれば、一回につき10数万~20万以上が出て行く。それはかなり上級のパパ。
中級レベルのパパもあるようだ。低級パパも‥。それならば‥?

単なるソープやデリヘルみたいな「即席ラブで」はなく、キャバクラでもなく、もう少し親密な人間関係に基づく、ちょっとした一時的な愛人関係を望む男女の世界が「パパ活」に該当するとのこと。

「終活」「就活」のような「パパ活」。

若い女性からすると、学生なら学費などを補うために水商売やソープは嫌だけど、会話重視、精神性ありの「パパ活」ならと‥。これで全生活費を稼ぐわけではなく、定職を持った女性も、副収入として月、10万とか20万とか稼げれば‥美容院にも行けるし、余裕のある生活が可能になるという。そのために、お金持ちの「パパ」と「愛人ごっこ」というわけだろうか。

会社員の「副職」を容認する会社が増えてきているけど、OLがアフター5や、土日に、こういう「パパ活」をするケースもあるのかもしれない。本書には、そういう「パパ活」をしている何人かの女性が登場し、赤裸々に内実を語っている。

ともあれ、本書では、「パパ活」をする女性たち、また「パパ活」を受け入れている上級、中級、初級レベルの中年男性たちへのインタビューなどや、そういう交際クラブを運営している人への取材、かつての愛人クラブ、愛人バンク、夕ぐれ族などへの回想など、盛りだくさんの内容だった。とはいえ、そういう層に取材をしていることもあって、批判的視座はあまりない。それは別の人の本を読むしかあるまいが…。

本書にも登場する「ユニバース倶楽部」とやらのホームページを覗いたところ…。合法会社であることをまずは強調し、出会いの場を提供するとして、面談、免許証などを提示し、そのあと入会金やら払ったり…。経済的に余裕のある中年でないと入れないようだ。

読んでいて、ふと思ったのは、古本好きの女性がいれば申し込む手があるか…と。というのも……。

最近、お見かけしないが、大学の先生らしき老人(古稀は過ぎている感じ)が、若い女性(20代ぐらいの教え子かな)を二人連れて、よく古本市にきていた。そういうのはいいねと。二人もいいけど、とりあえずは一人でいい。

そういう若い女性(法学部政治学科にいる現役女子学生が理想?)と、土曜日夕方4時頃、神田の東京古書会館で待ち合わせ。一緒に古本市を小一時間ほど覗く(古書会館は午後五時閉館)。数冊買ったら彼女に持ってもらう。
そのあと、午後5時過ぎから「山の上ホテル」か、水道橋の「庭のあるホテル」で豪華ディナー(もちろん禁煙レストラン)。ここなら、帝国ホテルなんかよりは安い。それでも一人一万円弱はかかるかな。
食事しながら、古本嫌いの古女房の悪口を聞いてもらう。そして法学部出身の先輩として、勉強の上での助言をして感謝される…。ちょっとした政治学科系のレポートなら代筆してあげるよと感謝される。その分、料金割引してもらう…?)。
午後7時に食事を終えて、じゃ、さようならとなる……(こういうHなしの会話だけを楽しむコースもあるようだ。本書にも出てきた。第四章参照!)。

これならいい? いやいや、Hなしとはいえ、3時間の拘束料金としてそこそこ払い、レストラン二人分の料金を合わせれば、一回だけの「古本市(古本屋)ラブツアー」でも、数万円、十万円弱は払うことになるのではないか。それだけあれば、一年間の古本市代金に匹敵する…。

そんな無駄遣いはとてもできないね。昔、糸井重里さんがやっていた週刊文春の「萬流コピー塾」 だったかのコピーで、記憶違いかもしれないが、「本を買う」コピーとして、 「その三万円、川崎で使うな」とかいうのがあったかと。やはりそういう生き方がベター。この本を読んで、「古女房」より「古本」。「若い女性」より「古本」を愛でるという信念が大事だとあらためて認識した次第!?

古本市行脚は、やはり「孤高」「孤独」な闘いなのだ。男の戦場なのだ! 女性などに惑わされず、ひたすら古本ハンターとして古本のみをピックアップすることに専念しなくてはいけないのだ。邪念は振り払うべきだろう。

それに、家を出て就職している独身の実娘がいれば、他人の娘相手に無駄金を使うことなく、たまに実娘にあって、会社の愚痴を聞いたり、食事をしたり、お小遣いを挙げたりしてあげればそれでいいのではないか。実娘なら、「やよい軒」&「一万円」でも感謝されるだろう。

蛇足だが、本書によると「パパ活」ならぬ「ママ活」もあるとか。未亡人向け…。「需要と供給の論理」からすれば、「パパ活」に比べて「ママ活」はあまり将来性がないようだ。それはそうだろうなと。
 
 
インタビューの対象が全員、パパ活をする側なので当たり前かもしれないが、パパ活が正当化されているように感じる。女性に渡す金額や当日の過ごし方、出会いの場となる交際クラブなどについて詳しく書かれているのは非常に勉強になったが、見方を誤ればパパ活のバイブルそのものだ。
出来れば、社会からパパ活がどのように見られているのか(パパ活をしない側の話)にも触れて欲しかった。
「パパ活」という言葉の誕生と広まりについては初耳だった。交際クラブ内で生まれ、アフェリエイターによって育てられたということらしい。
また、パパ活では性行為をしなくてもよい、と定義したのもアフェリエイター。アフェリエイトで収入を得るためには、出会い系サイトなどのリンクをクリックしてもらう必要がある。そのために女性のハードルを下げようとして「パパ活では性行為をしなくてもよい」と謳ったものらしい。パパ活という言葉が生まれた時には、性行為をしなくてもよい、とは言われていなかったそうだ。
実際のパパ活では、インタビュー内容を見る限りほぼ全てのケースで性行為をしているように思われるが……。

うーん、微妙。
 
 
 
こういう世界もあるのだなぁ...自由にできるお金だけでも、そう思います。
 男性も女性も、自分のためにパパ活をうまく利用(活用)している方への
インタビューを集めてくれています。なので、"一人の自立した人間として、
相手になにができるか考える"能力があることは必要としてくれますが、いっ
たいどれだけの人がこの条件を満たせるのか...どの世界にも表と裏の顔があ
ります。裏の顔も見せてもらいたいと思います。
 
 
 
パパ活って売春です。買春です。何故貧しくない女性が売春するのか。そこに切り込んでいってれば読む価値があったと思うが、この書は読む価値なし。
 
 
読んでみて、男女関係を詐欺みたいな金関係をこの本が肯定してるし!パパ活斡旋業者の宣伝にもなってる。結果論だが!読んで気分がわるくなった。買ったことに後悔はないけど。援助交際の延長なのに、楽して稼げるアピールありやん。余程の女でないとそんなに稼げないよ。
 

「性行為なしで10万円も」マジメな女子大生ほどパパ活にのめり込む切実な事情

2020年12月28日 03時34分57秒 | 事件・事故

12/17(木) 11:16配信

プレジデントオンライン

若い女性がデートや性行為の対価として年上の男性からお金をもらう「パパ活」。なぜ女性たちはリスクを負いながらパパ活をするのか。パパ活を題材にした小説『彼女のスマホがつながらない』を執筆した小説家の志駕晃氏は「私の取材したケースでは、パパ活の動機は、生活費、学費、奨学金返済と切実でした」という――。(前編/全2回)

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■これまでの「売春」とは少し形が違う

 ――パパ活を取材し、小説を書こうとしたいきさつを教えてください。

 パパ活について調べようと思ったのは、去年の夏ごろのことでした。知人の女性が町中でスカウトマンに声をかけられたというのです。

 「パパ活、どうですか」

 キャバクラや風俗のスカウトなら聞いた経験はありましたが、パパ活のスカウトなんて初めて聞きました。2017年、フジテレビのインターネットテレビで「パパ活」というドラマがつくられたのは聞いていましたが、実態はほとんど知らなかった。

 そもそも私自身がパパ活に違和感を抱いていたのです。

 一般的に、パパ活とは、肉体関係なしで裕福な年上の男性と食事をしたり、デートをしたりして、お金をもらう活動です。父親にお金をねだる父娘の関係に似ているから、パパ活と呼ばれるようになったそうです。

 性的な関係の代償にお金をもらう。それなら昔から続いてきた売春だと理解できます。「援交(援助交際)」や「ワリキリ」……。時代とともに新たな呼び名が生まれましたが、セックスで報酬をえる売春には違いありませんから。

 けれども、パパ活について調べてみると、これまでの売春とは少し形が違うらしいと徐々に分かってきました。

■太パパ、都度パパ、月極パパ…

 実際にセックスなしの食事やデートだけで1万円、多い場合は月10万円以上も受け取る女性がいたのです。食事するだけで1万円以上もらえるのなら、普通にバイトをするよりも効率がいいと考える女子大生がいる。さらに割り切ってお金持ちの「太パパ」と肉体関係を結んで、毎月数十万円稼ぐ女の子もいました。

 同時に、金払いのいいパパに出会えず、パパ活アプリで、食事5000円、性行為2万円程度を条件に、毎日、「都度パパ」を探す子もいました。その都度に違うパパと食事をし、そのたびに性行為をするかどうか、値段はいくらか交渉して決めている。

 ――「太パパ」に「都度パパ」ですか……。

 太パパは、高級レストランや海外旅行に連れて行ってくれる裕福で金払いのいい男性のことです。都度パパは、アプリなどでその都度、その都度に見つけるパパ。ほかには、毎月決まったお小遣いをくれる「月極パパ」と呼ばれる男性もいます。

■パパ活が広まることで「パパ」の質も玉石混淆に

 ――女の子たちはどんなところで、パパと知り合うんですか? 

 いくつかのパターンがあります。

 まずパパ活業界の勝ち組と言えるのが、交際クラブを介した出会い。交際クラブを通して出会う男性は、高額の入会金や会費を支払えるだけの経済力を持っているうえ、身元もそれなりに保証されている。女性がギャラを取りっぱぐれたり、騙されたりするトラブルが少ない。

 それから、キャバクラやラウンジで、ホステスと客の関係から、パパ活に発展するケース。なかにはパパ活のカリスマ女性などに、太パパを斡旋してもらったと語る女性もいました。

 パパとの出会いで、もっとも多いのが、アプリやSNSです。

 最近、パパ活という言葉が広まったせいか、お金持ちでもない男性や若いサラリーマンが、性風俗に行く感覚でパパ活アプリを使うようになりました。そうなると、利用者は玉石混淆です。トラブルもよく耳にします。

 パパ活では、食事のギャラや、性行為の有無や値段などの条件を前もって決めます。仲介者を通さずに決めるから、女性にとっては金額を中抜きされないメリットがある。

 しかし男性が約束を守るとは限らない。プロフィール自体がデタラメという話も珍しくはありません。自称医師の男性に「実はウソでお金がない」とギャラをもらえなかった女性の体験談も聞きました。金銭トラブルだけではなく、合意のない性行為を強いられる危険性もある。茨城県や新潟県では、パパ活を発端に女性が殺害された事件も起きています。

 パパ活にも二極化が進んでいるのです。

■パパ活の背景には親世代の経済的困窮がある

 ――パパ活に、ブランドのバッグや洋服を身につけ、ぜいたくな生活をしたいがために、父親世代の男性と食事や性行為をしているというイメージを抱く人もいると思うのですが。

 私が取材した女性に限っていえば、そんな余裕はなかったですね。

 彼女たちがパパ活をはじめる動機は切実でした。私がインタビューをさせてもらったのは、主に20代前半から30代前半の女子学生やOL。彼女たちがパパ活を続ける最大の理由は、生活費と学費の支払い、あるいは奨学金の返済です。

 昔は、親が授業料や生活費の一部を支払ってくれて、子どもたちは足りない分をバイトでまかなえばよかった。ただ、この30年でかつての当たり前だった役割を親が果たせなくなってしまった。

 景気は一向に回復せず、格差が広がった。親世代も困窮している。収入が上がらず、子どもたちへの仕送りもままならない。

 そのしわ寄せで、若者たちは学費と生活費を自ら稼ぎ、奨学金に頼らなければ、大学に通えない。仮に月8万円の奨学金を借りたら、年間約100万円。大学卒業までに、借金が400万円にまで膨れ上がる。普通のアルバイトだけで、とても賄える金額ではありません。その結果、水商売や風俗の仕事をはじめる女子学生は珍しい存在ではなくなった。

 しかしキャバクラなどの水商売をはじめると、連日深夜まで働かなければならない。欠勤などには高額な罰金が科せられるから、学業よりもバイトを優先せざるをえなくなる。学生生活と水商売は両立しにくいのです。風俗は時間の都合はつきやすいのですが、会ったばかりの見知らぬ男の前で裸になるのは嫌だ。そんな状況で、時間の融通が利き、短時間に高収入をえられるパパ活が新たな選択肢として登場した。

■パパ活で「自分の商品価値」を残酷に突きつけられる

 ――やむにやまれぬ事情で、パパ活をはじめているのですね。

 私が話を聞いた女性たちは、本当にマジメで前向きな子ばかりでした。そして生活には、本当に困っている。だからこそ、パパたちは「オレが支えなければ」とお金を出すようになる。

 パパも、お金を持っているだけでなく、年齢の割にオシャレで、おいしいレストランを知っていて、遊び方も分かっている。同世代の貧乏な大学生と付き合うよりもずっといいと感じるのでしょう。

 ただしパパ活を続けるうち、手段が目的化してしまう女性も少なくないようです。ある女性は「いつやめられるか分からないから怖い」と漏らしていました。

 パパ活に足を踏み入れたばかりの女性には、デメリットは見えていません。

 毎月、おいしい料理をごちそうしてもらえて、オシャレなパパと性行為をしてお金をもらえるのなら、自尊心を保てるのかもしれない。けれど、そんな女性は一握り。現実は太パパを巡る女の争いです。

 あの子は高級レストランで食事だけして毎月10万円ももらえているのに、なんで私にはいいパパがいないのか……。なんで私はイヤな男と寝て2万円しかもらえないのか……。

 パパ活で優雅に暮らしているように見える女性に対する嫉妬もあるのでしょう。もっと美しくならなければ、と追い詰められ、せっかく稼いだお金をブランド品と美容整形につぎ込んでしまう女性もいます。

 パパ活の商品は、自分自身です。毎回、自分の商品価値を残酷に突きつけられる。それでも、生活や将来のために、パパ活を続けざるをえない女性もいるのです。(後編に続く)

 

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志駕 晃(しが・あきら)
小説家
1963年生まれ。明治大学商学部卒業。2017年、第15回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉として、『スマホを落としただけなのに』で小説家デビュー。著書に、『ちょっと一杯のはずだったのに』(宝島社文庫)、『あなたもスマホに殺される』(角川文庫)、『オレオレの巣窟』(幻冬舎文庫)、『私が結婚をしない本当の理由』(中央公論新社)など。
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小説家 志駕 晃 聞き手・構成=山川徹

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SNS暴力~なぜ人は匿名の刃をふるうのか

2020年12月28日 03時12分29秒 | 事件・事故

2020年5月、SNS上で誹謗中傷を受けた末、女子プロレスラーの木村花さんが亡くなりました。
ネット上で、SNSによる暴力が過激化。
匿名になることで、言葉が凶器へと変わり、容赦なく人の心を切りつける。
果たして加害者はどんな人物で、動機は何なのか。
背景には、社会の構造的な問題があるのだろうか。記者が徹底的な取材で掘り下げる。一方、被害の深刻化、多様化が進み、いつ誰が被害者になってもおかしくない。
被害に遭ったらどう対処すべきなのか。
そして今、何が議論されるべきなのかーー毎日新聞取材班の新刊「SNS暴力 なぜ人は匿名の刃をふるうのか」(毎日新聞出版)を期間限定で全文公開します。
12月8日から、第1章~第6章を1章ずつ連日公開します。
第1章の一部のみ無料公開、第2~6章はデジタル毎日会員限定での公開です。

はじめに)被害者は誰でもなりうるし、加害者は私たちとかけ離れた特別な人たちではない

2020年12月7日 16時00分(最終更新 12月15日 12時28分)

新緑がまぶしい時期だった。2020年5月23日未明、1人の女性が東京都内の自宅で命を絶った。プロレスラー、木村花さん、22歳。

 新型コロナウイルスの感染拡大がいったん落ち着きかけ、政府による「緊急事態宣言」は多くの府県で既に解除されていた。首都圏でも2日後に解除される見通しが出ており、人々が明るい展望を持ち始めた頃だった。

 ただ、花さんにとって、視界は真っ暗だったのかもしれない。ツイッターのアカウントにはこんなメッセージを残していた(現在は削除済み)。

 毎日100件近く率直な意見。

 傷付いたのは否定できなかったから。

 死ね、気持ち悪い、消えろ、今までずっと私が1番私に思ってました。

 お母さん産んでくれてありがとう。

 愛されたかった人生でした。

 側で支えてくれたみんなありがとう。

 大好きです。

 弱い私でごめんなさい。

 男女問わず多くのファンを抱え、女子プロレス界の未来を担う若手として期待されていた。4カ月半前の1月4日には、念願だった東京ドームの試合にタッグで出場。負けはしたが、試合後の会見では「夢のような時間だった」と語っていた。ピンク色の髪と派手なコスチュームで、果敢に相手に立ち向かう。時に余裕のある笑顔を見せる。リング上の動画や写真から伝わるのは、明るく強靱な女性というイメージだ。

 そんな現実の華やかさとは対照的に、ツイッターなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上では、花さんに対する誹謗中傷が繰り返されていた。きっかけは、花さんが出演していたフジテレビの人気テレビ番組「テラスハウス」での振る舞いだった。SNS上の攻撃的な書き込みは執拗に続き、亡くなる直前まで花さんは心を痛めていた。

 ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどの「コミュニティー型会員制サービス」はSNSと呼ばれ、日本では2000年代後半以降、急速に普及した。今では、ニュースや情報収集、友人同士での近況や話題の共有など、生活を豊かにするツールとして欠かせないものだ。

 しかし、SNSは社会的なネットワークを作るという本来の役割を離れ、悪意ある書き込みで、人々を分断するような使われ方が目立つようになった。SNSを通じた誹謗中傷、いじめ、差別……。たびたび問題となりながら、抜本的な対策は先送りされ、半ば放置されてきた。

 私たち、毎日新聞統合デジタル取材センターは、世の中の関心事にスピーディーに反応し、インターネット上で読まれる記事を発信することを目的として編成された部署だ。情報収集や発信の手段として普段からSNSを活用し、その便利さや価値も実感している。そんなSNSが、なぜ人に不幸をもたらす凶器として使われてしまうのか。どんな人が被害に遭い、加害者はどういう人なのか――。

 疑問を解くために、5月末以降、インタビューを重ね、ウェブサイトと紙面で記事を連載した。匿名になることで時に暴力性を帯びるSNSの特性をふまえ、タイトルは「匿名の刃~SNS暴力考」とした。取材で浮かんできたのは、被害者は誰でもなりうるし、加害者は私たちとかけ離れた特別な人たちではない、ということだった。

 本書は連載を出発点とし、大幅に取材を加え、全6章にまとめた。
第1章では、木村花さんやその他の事例をたどり、SNS暴力の被害の実態に迫った
。続く第2章、第3章では、加害者の人物像、動機や心理、背景にある社会構造を掘り下げた。第4章は、被害の多様さ、その深刻さに触れ、第5章は、被害回復の方法、規制のあり方を考えた。最終第6章では、SNSの功罪を検証し、未来を探った。なお、文中の年齢は20年8月末現在で表記した。

 SNS暴力という「社会の闇」を、皆さんと一緒に解き明かしていきたい。

第1章・ネット炎上と加速する私刑(2)誹謗中傷は「スープに入ってきたハエ」

2020年12月8日 10時00分(最終更新 12月15日 12時34分)

木村花さんが亡くなった5月23日、SNS上では、中傷書き込みの責任の重さを巡って、議論が渦巻いた。そんな中、ある投稿が目に留まった。

〈悪口や中傷に傷つく人はSNSは向いてない、そうじゃない。SNSに向いてないの平気で人を傷つける人。ネットにはルールとマナー、そして人権がある。言論の自由は何してもいい訳じゃない、それは言論の無法。最初に言論の責任がある。命を離すまでどれだけ悩み苦しんだか、もう悲しくてやるせない。〉

 傍観者の目線ではない、ひときわ強いメッセージ性と説得力を感じた。ネット上で「殺人関与」などのデマに長年苦しめられた経験があるお笑い芸人、スマイリーキクチさん(48)の投稿だった。すぐに連絡をとり、インタビューに応じてもらった。

 新型コロナウイルス禍のため、オンラインで対面したスマイリーさん。花さんが亡くなったことをどう受け止めたのか。改めて聞くと、言葉を選びながらこう答えた。

「ネット上の誹謗中傷への悩みがあったと聞いて、一人で抱え込んでしまったのかもしれない、と思いました。言葉が刃物のようになって心に突き刺さり、命を絶つまで彼女を追い詰めてしまったのかもしれない、と」

「言葉は刃物になる」。重い言葉だった。

「本当に誹謗中傷が原因だったとしたら、こういう事態が起きないように活動してきた者として、非常に残念で悔しいです」

 スマイリーさんはさらに、こう続けた。

「彼女のインスタグラムやツイッターには、誹謗中傷だけでなく、応援メッセージもたくさんありますよね。でも、自分も経験したから分かるのですが、『スープに入ってきたハエ』と同じなんです」

 目の前に出されたスープにハエが入ってしまったら、スープ全体の量からすればたとえ小さなハエであっても、どうしても気になってしまう。中傷から逃れられない心情を分かりやすい例えで説明した。

デマから炎上、そして殺害予告
 誹謗中傷を受けた経験者として、スマイリーさんのもとには多くの芸能人らが相談に来るという。木村さんの件についても「何か救う手立てはなかったのか、という気持ちもあります」と無念そうに語った。

 自身の体験は壮絶なものだった。

〈事実無根を証明しろ、強姦の共犯者、スマイリー鬼畜、氏ね〉

〈ネタにしたんだろ?犯罪者に人権はない、人殺しは即刻死刑せよ〉

〈生きる資格がねぇ、レイプ犯、早く死ね〉

 1999年夏。当時SNSはまだ普及しておらず、誹謗中傷の舞台は「2ちゃんねる」などネット上の匿名の掲示板だった。「10年前に東京都足立区で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人」という、いわれのないデマに基づいていた。スマイリーさんが足立区出身で、事件の犯人と同世代ということ以外、何の根拠もない。書き込んだ者のほとんどが、「少年法により名無し」という匿名のハンドルネームを使っていた。

 所属事務所のホームページで、事件への関与と「事件を(お笑いの)ネタにした」といううわさを否定したが、誹謗中傷は収まるどころかさらに広がった。

「当初は、正直ショックでもなくて、『なんとばかばかしい』ぐらいに思っていました。ネットをほとんど使っていなかったので、見なければ知らない問題でもあった」

 スマイリーさんは、当時をそう振り返る。

 だが、「実害」が出始めた。仕事先にも嫌がらせが入るようになったのだ。出演していた番組やCMスポンサーに「殺人犯は出すな」との抗議が寄せられ、お笑いのライブでも客がヒソヒソうわさするようになった。

 さらに、家族や恋人にまで、被害が広がった。

〈家族の情報を知っていたら教えて〉

〈家族も見つけ次第殺す〉

 ネット上の投稿は、個人情報を探り出す動きになり、殺害予告もあった。〈彼女がいたら乱暴しよう〉という内容もあった。そして、ある書き込みに戦慄した。

〈近所でスマイリーキクチをみた〉

〈おんなといた。多分あれ彼女だぜ〉

〈この店 ○○○〉

 実際、恋人と当時よく行っていた店だった。

「身近にいる。家族も恋人も、町を歩いていたら確実に何かされる。時間の問題だ」

 そう考えると、怖くなった

 姿の見えない相手が、自分を殺人犯だと思い込み、無数の嫌がらせを送っている。誰が、何の目的で? 

「疑問で頭がいっぱいになり、自分が言葉で人を殺すゲームのキャラクターにされたようにも感じました」

 さらなる「炎上」要因もあった。ネット上の検索エンジン「Yahoo!」で、質問を送ったり回答したりできる「Yahoo!知恵袋」。2008年3月、ある質問が載った。

〈「○○」という本を読みましたら、「○○(スマイリーさんのデマが流れた事件名)」の主犯格のひとりがお笑いコンビを結成し、芸能界デビューをしているという事実が書いてありました。そのお笑い芸人とは誰なのでしょう?〉

 質問に対する回答の「ベストアンサー」にはこんな回答が選ばれた。

〈スマイリー菊地という芸人ですがピン芸人ではなかったかな。本人の事件関与については謎です。〉

 この○○という本は実在する。「元警視庁刑事」を名乗り、ワイドショーでコメンテーターとして活動していた男性の著書だった。質問に書かれた記述もあった。

 この書き込みをきっかけに、スマイリーさんの名前とデマはさらに拡散された。

警察は血では動くが字では動かない
 炎上が続き、スマイリーさんは警察に相談したが、何十人もの警察官に笑われたり、ばかにされたりした。「殺されたら捜査してあげるよ」とも言われた。

「殴られたら血が出るという実害が見えるけれど、誹謗中傷による『心のけが』は第三者から見えないんですよね。警察は血では動くけれど、字では動いてもらえない、と思いました」と振り返る。

 そのうち、警察を含め相談した人たちから「あなた頭おかしいよ」「ネット上の言葉を一番信じているのは、あなただよ」と言われるように。味方と考えていた警察まで敵に見えてきた。「俺がおかしいのか?」。自問自答の日々が続いた。

 弁護士にも相談すると、「必要な経費は200万円」と言われた。当時のスマイリーさんには、簡単には出せない大金だった。「プロバイダが発信者の情報を開示しなければ、最高裁までいく可能性がある」とも言われた。

 解決の糸口が見つからず、袋小路に入ったが、諦めるわけにはいかない。

 スマイリーさんには「二つの許せないこと」があった。一つは、スマイリーさんや家族、周囲の人たちにも殺害予告が届いていたこと。「死んだら許してやる」という書き込みが山ほどあった。だからこそ、「生きて身の潔白を晴らす」という思いが強く心の中にあった。

「『死ね、死ね』とたくさん書き込まれて本当に傷ついたけれど、逆に生きることが仕返しだと思った。思いっきり幸せに生きてやる、と」

 もう一つは、勝手に犯人だとされた殺人事件の被害者を、冒瀆する書き込みもたくさんあったことだ。「『死人に口なし』とばかりに書き込んでいて、心から許せなかった」

 諦めずに警察への相談を繰り返した結果、信頼できる刑事と出会う。2008年夏から捜査が本格化。翌年3月までに、中傷を書き込んだとされる男女19人が名誉毀損容疑などで摘発され、うち7人が書類送検(いずれも後日不起訴処分)された。「ブログ炎上 初の摘発」「ネット暴力に警鐘」といった見出しが新聞各紙に載った。

「ガラケー女」に間違えられて
 誹謗中傷の被害者となるのは、著名人だけではない。多くの人がインターネットで広くつながっている時代。誰であっても突然、匿名による卑劣な攻撃にさらされる危険性はある。

 
「ガラケー女」に間違えられた女性に攻撃的な言葉を投げつけてきた人から、容疑者逮捕の直後には一転、謝罪のメッセージが届いた=東京都内で、五味香織撮影
「ガラケー女」という言葉が盛んに飛び交う事件があった。

 2019年8月、茨城県の常磐自動車道で、後方からあおり運転をした男が、相手の車を停車させ、運転席の男性を殴ってけがをさせた事件だ。男が暴行を加えた際、「ガラパゴス携帯」と呼ばれる折りたたみ式の携帯電話を持つサングラス姿の女性が、笑いながら暴行の様子を撮影していたのだ。「ガラケー女」と名付けられたこの女性の姿を収めた動画がSNSで拡散され、テレビのニュースでも繰り返し報じられた。男の粗暴ぶりもさることながら、男と同乗していた非情な「ガラケー女」にも世間の関心が集まった。

 事件から1週間後、お盆の終わりの週末だった。東京都内に住む30代女性は午前6時ごろ、枕元に置いたスマートフォンの着信音で目が覚めた。早朝にもかかわらず、電話とメールが鳴り止まない。寝ぼけ眼で手に取ると、知らない電話番号や番号非通知の着信が大量に表示されていた。その中にあった友人からのメッセージを見ると、「ネットに情報がさらされている」という知らせだった。

 添えられていたアドレスをクリックして、飛び起きた。

 あるウェブサイトに自分の名前や顔写真が掲載されていた。〈犯人だ〉という言葉も目に飛び込んできた。女性があおり運転事件の「ガラケー女」だという指摘だった。

 全く身に覚えがない。サイトは、事件などに関する情報を集積した「まとめサイト」と呼ばれるブログで、〈捕まえろ〉〈自首しろ〉と責め立てる言葉が並んでいた。

 知らせてくれた友人からは、SNSで否定するよう勧められたものの、焦りと混乱で何を書けばいいのか分からない。女性は当時、事件についてあまり関心がなく、サイトで自分の写真と一緒に並べられた加害者の男が誰なのかも分からなかった。

 女性が個人経営する会社のウェブサイトが画像として出回っていたため、会社に電話やメールが殺到し、転送先のスマートフォンに届いたのだった。女性のインスタグラムにも「早く自首しろ」などという書き込みが相次いだ。匿名で利用していたにもかかわらず、なぜか女性のアカウントだと特定されていた。人違いだということを発信しても、〈そんなことを投稿する暇があるなら、早く警察に行け〉というコメントがつき、さらに炎上した。やがて〈詐欺師〉〈ブス〉などと、事件とは無関係の中傷も交じるようになった。

 幸い、翌日に、あおり運転の加害者の男と「ガラケー女」は傷害や犯人隠避などの疑いで逮捕され、SNS上の攻撃は一気に収束した。しかし、約2日間で、不審な電話の着信は約300件に上り、インスタグラムに届いたダイレクトメッセージは1000件を超えた。ツイッターの中傷投稿は、代理人の小沢一仁弁護士(東京弁護士会)が確認しただけでも100件以上のアカウントから届いていた。リツイートを含めると、その何倍もの人が誤った情報を拡散したとみられる。

 誤認された理由はこう推測される。女性は匿名でインスタグラムを利用していたが、趣味の旅行や食事のほか商品紹介などで注目され、フォロワーが約1万人もいた。加害者の男もその一人で、そのつながりから男の交際相手と一方的に決めつけられたとみられる。インスタグラムは一方的にフォローが可能で、女性はフォローされていることも知らなかった。

 まとめサイトに載せられた女性の写真は、一緒に写っている友人がフェイスブックに掲載した写真を切り取ったものだった。事件当時の「ガラケー女」の服装と似た、帽子とサングラスを着けた写真も出回った。匿名のインスタグラムのアカウントから、どうやって実名のフェイスブックにたどり着いたのかは、その後も謎だ。ちなみに女性は、「ガラケー」は使っていない。

 あおり運転関与の男女が逮捕されたと伝わると、インスタグラムやツイッターには、謝罪の言葉が届くようになった。目立ったのは「デマを信じて暴言を吐きました」と釈明する内容のもの。しかし、女性は「デマを信じることと、暴言を発信することは全然違う。許されないでしょう」と憤る。「すみませんでした」という言葉の後に絵文字を付けてくる人もいた。自身の痛みに比べ、あまりの「軽さ」に驚いた。お詫びのメッセージを送ってきた後、アカウントを消して逃げる人もいた。

 約1週間後、女性と小沢弁護士は東京都内で記者会見した。中傷投稿した人物に対し、損害賠償請求や刑事告訴をすると明らかにした。損害賠償請求の準備のため、ツイッター社やSNS事業者に対し、発信者情報の開示請求を始め、小沢弁護士は「請求対象は百件単位の規模になる」と話す。

 自ら名乗り出て来た人とは和解に応じているが、「普通の人」が多かったという。未成年から年配者まで年齢層は幅広く、住んでいる地域も全国各地に及んだ。子どもに代わって平謝りする保護者、「家族に知られて肩身が狭い」と連絡してくる男性……。幼い子どもを持ち、普段は「良いママ」として暮らしていそうな人もいた。

 一方で、女性が訴え、判決が出たケースもある。愛知県豊田市議(当時)の50代の男性は、自身のフェイスブックに、女性の写真を転載し、「早く逮捕されるよう拡散お願いします」などと投稿。2020年8月17日、東京地裁は、男性の投稿が「原告(女性)の社会的評価を低下させる」として、男性に33万円の支払いを命じる判決を言い渡した。ネット中傷に振り回された「激動の日」から、ちょうど1年を迎える日だった。

 木村花さんが亡くなったことが報じられた後、女性はある友人に「同じようなことをされたんだよね。生きていてくれてありがとう」と言われた。改めて、自身の被害の大きさを実感した。その一方で、ネット上には、引き続き匿名による悪意が渦巻く。事件や裁判に関連する報道が出る度、SNS上には〈謝っているんだから許してやれよ〉〈しつこい女〉〈金の亡者〉などの心ない中傷が相次ぐ。

 ネット中傷問題では、被害者本人だけでなく、代理人になる弁護士に火の粉が降りかかることも少なくない。小沢弁護士も一連の事件対応に関連し、SNS上で身の危険を感じるような中傷を受けたり、画像を面白おかしく加工されたりしたという。

「被害を受けるリスクを考え、ネットトラブルの訴訟を引き受けたがらない弁護士もいると思います」

 小沢弁護士はそんな被害の「象徴的な事例」として、次に登場する弁護士の名前を挙げた。

100万回の殺害予告を受けた「炎上弁護士」
「何だ、これ」。2012年3月、東京都内の沖縄料理の居酒屋。知人らと和やかに食事をしていた唐澤貴洋弁護士(第一東京弁護士会)は、携帯電話の画面を見て衝撃を受けた。匿名掲示板「2ちゃんねる」に、自分を中傷する投稿があふれていたのだ。そこから100万回に及ぶ殺害予告など5年にわたる壮絶な被害が始まった。ネット中傷の問題に取り組む弁護士ら関係者の間で、唐澤弁護士を知らない人はいない。

 発端は、2ちゃんねるに成績表をさらされるなどした少年から依頼を受け、掲示板に唐澤弁護士の実名入りで削除要請の書き込みをしたことだった。当時は削除要請や発信者情報開示の依頼は掲示板上で行うことになっており、内容がすべて公開された状態だった。唐澤弁護士は名前を出していたため、標的になったとみられる。

 削除要請をして数時間後に掲示板を確認すると、既に「炎上」が始まっていた。今後の仕事のためにとツイッターでフォローしていた著名人の中にアイドルの女性が含まれていたことから、〈ドルオタ(アイドルオタク)だ〉と揶揄するようなコメントが相次いでいた。「荒れている」ことに唐澤さんは危機感を覚え、とりあえずツイッターを鍵つきにして見えないようにした。すると、掲示板では〈本人が見てるぞ〉とさらに盛り上がり、投稿が止まらなくなった。

 内容は数週間の間にどんどんエスカレートした。そのうち、唐澤弁護士の名前や事務所名を検索エンジンに入力すると、検索予測に「犯罪者」「詐欺師」などの言葉が出てくるようになった。掲示板上では、唐澤弁護士の名前とネガティブな言葉を組み合わせて繰り返し投稿することで、検索エンジンのサジェスト(予測変換)ワードを作りだそうとする動きがあったという。いわゆる「サジェスト汚染」だ。この状態が続けば、弁護士としての信用を失い、仕事にも影響する。そう考えた唐澤弁護士が法的手段を講じようと発信者情報開示の依頼をすると、さらにそれがネタになり、収拾がつかなくなった。

やがて被害は現実世界へ
 連日の誹謗中傷は、唐澤弁護士を精神的に追い込んだ。インターネットを見ないようにしようとしても、掲示板などで何が書かれているか気になり、どうしても確認してしまう。見ていない時でも何か悪いことが起きているのではないかと不安で、夜もよく眠れなくなった。頻繁に悪夢にうなされ、感情の起伏もなくなった。少しでもその苦しさから逃れようと、強くもない酒を毎晩あおった。

 最初の投稿から4カ月ほどたった頃、ついに殺害予告が書き込まれた。

〈8月16日、五反田で唐澤貴洋を殺す〉〈ナイフでめった刺しにする〉

 具体的な日時や事務所を構えている場所、手段まで指定する内容で、今までの誹謗中傷とは明らかに次元が違う。唐澤弁護士は振り返る。

「ぞっとしました。『殺す』という言葉はすごく重い。その上、匿名なので誰が言っているかも分からない。それは恐怖でしかありません」

 身の危険を感じて警察に相談したが、当時は警察もネット上の脅迫に対し、犯罪という認識が薄く、捜査には時間がかかった。

 その間もさらに追い詰められ、生活は一変した。

「いつどこで危害を加えられるか分からない」とおびえ、行動パターンを把握されないよう自宅に帰るルートを毎日変え、背後に人がいないか常に気にするように。密室を恐れ、エレベーターではなるべく見知らぬ人と同乗しないようにした。疑心暗鬼が深まり、人の多いところに出かけることも、仕事で人と会うことも負担に感じ、避けるようになったという。

 被害はさらに広がり、家族や、現実世界にも及ぶようになった。両親の名前や実家の住所が特定されてネット上にさらされ、それをきっかけに実家周辺の写真や実家の登記簿までアップされた。実家近くの唐澤家の墓に白いペンキがかけられ、墓石に唐澤弁護士の名前「貴洋」が書かれたこともあった。そしてその写真も投稿された。

 実は唐澤弁護士には一つ年下の弟がいたが、高校生の時に不良グループから恐喝まがいのことをされて集団リンチに遭い、それを苦に自殺している。弟を救えなかったという無力感が、「法を武器に悪と闘いたい」と弁護士を目指すきっかけになったという。弟が眠る大切な場所が汚されるのは、耐えがたいことだった。寺に迷惑をかけたとお詫びに行った帰り道、涙がこぼれ落ちた。

 さらに弁護士事務所にも「実動部隊」が嫌がらせに来るようになった。郵便受けに生ゴミを入れたり、鍵穴に接着剤を詰められたり、唐澤弁護士の後ろ姿が盗撮されてネットに投稿されたりと、ありとあらゆる実害を受けた。このため、事務所は3回も移転を余儀なくされた。さらにグーグル・マップを改ざんして、皇居や警察庁を唐澤弁護士の事務所名に書き換えたり、唐澤弁護士になりすまし、ある自治体に爆破予告したりする者まで現れた。

「当初は実害の矛先は私やその周辺に向いていたのに、だんだん私というネタを利用して『社会を巻き込んで面白いことをしよう』という方向にエスカレートしていきました。完全に愉快犯です」

被害が落ち着いても消えない恐怖心
 警察が集計したところ、殺害予告の投稿は約100万回に及んだ。唐澤弁護士によると、海外のネットメディアが出所と思われる「殺害予告をされた件数の世界ランキング」では、1位が世界的人気を誇るカナダの歌手のジャスティン・ビーバー、2位が唐澤弁護士、3位がジョージ・W・ブッシュ元米国大統領──となっているといい、件数の異様さがうかがえる。

 2014年5月以降、唐澤弁護士に殺害予告や爆破予告をした人物など10人以上が脅迫容疑などで逮捕または書類送検(一部が不起訴処分)された。しかし、その後も同様のネット中傷や悪質な嫌がらせは続いた。17年夏には、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんの妻・小林麻央さんが亡くなった時、唐澤弁護士になりすました人物がツイッターに〈姪が亡くなりました〉などとデマを投稿し、大炎上。ツイッター上で〈親族でもない人間が勝手なことを言うな〉などといわれのない非難を受けた。

 唐澤弁護士は18年に、長年にわたる壮絶な経験を綴り、『炎上弁護士』とのタイトルで書籍を出版。「100万回の殺害予告に立ち向かった弁護士」としてテレビ番組にも出演し、頼まれれば学校などで体験を話すこともある。

 被害はここ2~3年は落ち着き、表向きは立ち直ったように見えるが、唐澤弁護士は「今も恐怖心から逃れられない」と明かす。しつこく後をつけられた経験から常に人の視線が気になる。自宅などが特定されないよう、近距離移動でもタクシーを使う。仕事上、人に会わざるを得ないが、初対面の時はとても緊張するようになった。

 ちょっとした相手への否定的な感情や遊び感覚で「着火」され、ネット特有の拡散力によって燃え上がる「炎上」。行為に関わる人たちの軽さとは裏腹に、命を絶つほど精神的に追い込まれたり、長年にわたり身の危険を感じておびえたり、被害者が受ける被害はあまりに重大だ。法律的根拠もなく個人に制裁を加える「私刑」とも言える。炎上という現象の周辺にはどんな人たちがいるのか、どんな心理で関わるのだろうか……。(第2章につづく)


新型コロナで「何らかの不安」63.9% 厚労省調査 運動量減りゲーム時間増

2020年12月28日 02時57分16秒 | 社会・文化・政治・経済

毎日新聞2020年12月26日 05時00分(最終更新 12月26日 18時27分)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、緊急事態宣言中の4~5月に「何らかの不安を感じた」とした人は63・9%に達していたことが25日、厚生労働省の調査で分かった。感染拡大前後での日常生活の変化について尋ねたところ、運動量が減る一方、ゲームをする時間が増えた、との傾向も明らかになった。

 調査は9月に、15歳以上を対象にインターネットを通じて実施。約1万1000人から回答を得た。

 感染拡大に伴い何らかの不安を感じた人は、2~3月で55・1%▽4~5月=63・9%▽6~7月=55・9%▽8月~9月中旬=45%。不安を抱いた対象については、「自分や家族の感染」「自粛等による生活の変化」「自分や家族の仕事や収入」などだった。

 日常生活の変化を尋ねたところ、「運動量」(減少=39・1%、増加=7・1%)と「ゲーム時間」(増加=18・6%、減少=2・7%)の項目で増減が目立った。厚労省は自宅で過ごす時間が増えたことが原因とみている。食事の量や睡眠時間は、「変わらない」がいずれも8割程度で大きな変動はなかった。

 不安やストレスの解消方法は「手洗いやマスク着用などの予防行動」が73・5%で最も多かった。生活スタイルの変化に伴う良い影響は「家族と過ごす時間が増えた」が29・2%で、「特にない」は50・7%だった。【村田拓也】

テレワークも心身の不調に影響
 埼玉県の会社員女性(39)は、治療中だったパニック障害を悪化させた。新型コロナの流行期に不安感が高まったためだ。


テレワークで人がまばらになった大手電機メーカーのオフィス=東京都港区で2020年11月4日午後1時5分、喜屋武真之介撮影
 女性は、電車内や美容院で髪を切る間など、自由に身動きができない場面で動悸(どうき)が激しくなる症状に悩まされ、2012年にパニック障害と診断。投薬などの治療を続け、昨年にはほとんど症状がなくなるまで改善した。

 しかし、今年に入り新型コロナが流行すると、再び症状が悪化。「感染するかもしれない」という恐怖感に加え、長期化する自粛生活で友人らと外食すらできないストレスで、気分が落ち込みがちになった。

 5月の緊急事態宣言の解除後に出社する機会が増えると、マスクを着用しない同僚への陰口が聞こえるなど社内の雰囲気が悪化。通勤ラッシュを避けるための早起きによる睡眠不足も重なり、「会社にたどり着くのがやっと」となった。服用する薬の種類を増やし、治療を続けている。

 コロナ対応に伴う働き方の変化は精神面にどう影響したのか。代表的なのがテレワークだが、毎日新聞が国内の主要企業126社を対象にアンケートしたところ、回答した114社のうち11%にあたる13社が「メンタル面での不調を訴える社員が増えた」と答えた。

 心療内科医の姫野友美医師によると、感染への不安だけでなく、テレワークで好きな時間に食事ができることによる食生活の乱れなど生活習慣の悪化も、心身の不調に影響するという。姫野医師は「何事も完璧にこなそうとすると新型コロナによる環境の変化に耐えられない。先のことを考えすぎると不安が募るので、『今日1日を無事に過ごそう』という気楽な心構えが重要だ」と助言する。【小川祐希、石田奈津子、矢澤秀範】

 


摂食障害の女性受刑者、5年で1.5倍に 法務省特別調査 治療で再犯防止も

2020年12月28日 02時52分20秒 | 事件・事故

毎日新聞 / 2020年12月26日 19時18分

 全国の刑務所に収容されている女性受刑者のうち、食べ吐きを繰り返すなどの摂食障害がある受刑者が2018年で181人いたことが、法務省の特別調査で判明した。13年調査と比べて1・5倍に増加。13年は窃盗罪が約7割で、18年もほぼ同じ傾向だという。法務省は、19年度から症状が重い受刑者を医療刑務所に収容する運用に変え、集中的な治療で再犯防止に乗り出している。

 すべての女性受刑者のうち窃盗罪は約4割で、摂食障害がある受刑者の7割は突出している。窃盗事件の背景に摂食障害が指摘されることがあり、18年にスーパーで食べ物を万引きしたとして有罪判決を受けた女子マラソン元日本代表選手も摂食障害で悩んでいたと明かした。法務省などによると、症状の一つである過食症の影響でストレスなどから食べ物などの万引きを繰り返し、服役するケースがあるという。

 刑務所内で摂食障害がある受刑者への処遇が課題となっており、法務省は実態を把握するために13~18年に全国の医療刑務所と女子刑務所の女性受刑者を対象に特別調査を実施。食べ吐きを繰り返すなど異常な食行動があり、摂食障害が疑われる受刑者は、13年9月時点で124人▽14年は130人▽15年は139人▽16年は180人▽17年は199人――で、18年6月時点は181人と5年間で1・5倍に増えていた。

 一方、女性受刑者の総数は4159人(13年)から3512人(18年)と減少しており、摂食障害がある受刑者の割合が2・9%から5・1%と増加していた。

 法務省によると、摂食障害の女性受刑者の傾向として、高学歴で就労経験がある人が多い一方、アルコール依存などの精神疾患を併発しているケースが少なくないという。また、被害が低額な万引きで再犯を繰り返して実刑判決を受けているため、症状が重症化している場合も多いとみられる。

 法務省は、全国にある医療刑務所のうち3カ所に摂食障害の専門医を置き、食事療法やカウンセリングなどの専門的な治療を進める他、各地の女子刑務所の医師や刑務官らへの研修を実施している。同省矯正局の担当者は「摂食障害がある受刑者の症状は慢性化しており、社会のセーフティーネットからこぼれ落ちた存在と言える。再犯防止のためには、出所後も本人の治す意思と医療につながる仕組みづくりが欠かせない」と話している。【飯田憲】

摂食障害

 体重増加を極度に恐れて食事を制限する「拒食症」、衝動的に大量の食べ物を食べる「過食症」が代表的な症状の精神疾患。患者の9割以上が女性と言われ、10~20代の発症率が高い。自覚がない潜在的な患者も一定数いるとみられる。栄養不足や低カリウム血症などの合併症や自殺によって患者の約1割が死亡するとの推計もある。一部の患者は自傷行為や万引きなど衝動的な問題行動を伴うことがある。


「どうせ死刑なら謝る意味ない」座間9人殺人犯の身勝手な言い分

2020年12月28日 02時50分00秒 | 事件・事故

12/27(日) 14:02配信

FRIDAY

9人の男女を殺害し、死刑判決を受けた白石隆浩被告。12月21日付で控訴を取り下げた。

12月15日、東京地裁立川支部は白石隆浩被告(30)に死刑判決を言い渡した。

白石隆浩被告は`17年、神奈川県座間市内の自宅アパートで、15歳から26歳の男女9人を殺害したうえ、現金を奪ったなどとして強盗・強制性交等殺人などの罪に問われている。殺害後、遺体を風呂場でバラバラに解体し、クーラーボックスに入れて保管していたというその猟奇性が、当時世間を震撼させた。

【画像】座間殺害・白石被告の住んでいたマンションと送検写真

裁判長は判決理由を先に述べ、最後に主文を読み上げた。

「主文 被告人を死刑に処する」

主文が読み上げられている間、取り乱すことなく静かに前を見つめる白石被告。死刑を告げられたあと、裁判長から「主文は聞こえましたか」と問われると、彼は「はい、聞こえました」と答えた。

これまで3度、白石被告に接見し、判決が出た日も裁判を傍聴していたジャーナリストの渋井哲也氏はこう語る。

「検察の質問に対し、記憶が食い違っている部分以外は素直に答えていました。もうここで罪を隠したり嘘をついたりしても意味がない、という諦観を感じましたね。

死刑が宣告されたときも、『どうせ死刑でしょ』といった感じで、判決を淡々と受け入れているように見えました。被害者遺族に対しても謝罪の言葉はなく、裁判官に『本心からではなくとも謝罪する気はないのか』と聞かれ、『どうせ死刑なんだから、演技をする甲斐がない』と述べていました」

9人を殺害し、裁判で遺族と向き合ってもなお、行動の基準は“自分にとって得になるかどうか”。以前、本誌記者が白石被告に接見した際も、彼はこんな信じられない発言をしていた。

「最初に殺した女性だけは可哀想だった。彼女は食事を奢(おご)ってくれたり、ホテル代を出してくれていたから。どうせなら殺さずに利用し続ければ良かった」

「また接見に来てくれたら新しい情報を渡します。その代わり、事前に3万円を差し入れてください」

弁護人は判決を不服として東京高裁に控訴したものの、12月21日付で控訴を取り下げた白石被告。死刑執行までに彼が反省の言葉を述べる日は来るのか。

FRIDAYデジタル

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