【コロナと弱者(3)】月収60万円から無職に...東京で仕事無く大阪へ NPOの助けで再出発「普通に生活できるまで頑張る」

2020年12月30日 02時54分06秒 | 社会・文化・政治・経済

12/26(土) 14:43配信

MBSニュース

佐々木和也さん(仮名・24)

新型コロナウイルスによって、解雇や雇い止めにあった人が7万7000人を超えるなど、経済的に困窮する人々が増えています。仕事や住む場所を失った人、支援が受けられない人…。影響は若い世代にも暗い影を落としていました。

【映像】新宿・歌舞伎町の居酒屋で店長をしていた男性が無職に


佐々木さんの持ち物は財布とカバンのみ

佐々木和也さん(仮名・24)。2020年11月に東京から大阪にやって来ました。

(佐々木さん)
「財布とカバンと、自分の洋服だけで来たという感じです。」

荷物はポシェットだけです。

(Qまさか大阪に来ると思っていましたか?)
(佐々木さん)「思ってもなかったですよ。」


佐々木和也さん(仮名・24)

佐々木さんは、新宿・歌舞伎町の居酒屋で店長として働き、月収は60万円ほどありましたが、2020年7月に新型コロナウイルスによって閉店し、職を失いました。

(佐々木さん)
「東京だと全部、新型コロナウイルスで、派遣会社とかも受け入れができないとかで。関西に行くしかないかなと思って。」

関西に来て、寮付きで日払いの仕事をしましたが、想像以上に過酷で長くは続きませんでした。その後はインターネットカフェを転々とする生活を送ったといいます。

(佐々木さん)
「あんまり寝られなかったし、不安は不安。どうしようかなっていう。」


認定NPO法人「Homedoor」 川口加奈理事長(29)

貯金は底をつき、支援団体に助けを求めました。それが、大阪市北区にある認定NPO法人「Homedoor」です。ここでは、ホームレスの人に仕事を提供し、路上生活から抜け出す手助けをしています。

(認定NPO法人「Homedoor」 川口加奈理事長(29))
「相談者数が圧倒的に増えているので。相談を受けるこちら側にも感染のリスクはある中で、でも目の前の方が困っていらっしゃる以上、なんとか活動を続けていかないといけないなと思います。」

佐々木さんは、「Homedoor」の事務所の上にある施設に泊まりながら、新たな仕事を探すことになりました。

(佐々木さん)
「もし同じような人がいたら、頼ってもいい場所なのかなと思います。」


佐々木和也さん(仮名・24)

その後、12月7日、佐々木さんが部屋を出る準備をしていました。「Homedoor」から紹介してもらった建設会社で働くことになったのです。

(佐々木さん)
「今日行く会社の人が迎えに来てくれるので、それを待つ感じです。もう1回、ちゃんとひとり暮らしができて、普通に生活できるまでは、とりあえず頑張りたいなと思います。」

24歳の再出発です。

(12月25日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

 

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年越し支援、新宿で「コロナ村」 「所持金ない」と相談次々

2020年12月30日 02時54分06秒 | 社会・文化・政治・経済

12/29(火) 20:40配信

共同通信

東京都新宿区の大久保公園に設けられた「年越し支援・コロナ被害相談村(コロナ村)」=29日

 新型コロナの影響で仕事や住まいをなくした人の年越しを支援しようと、労働組合や弁護士らが29日、東京都新宿区の大久保公園で「年越し支援・コロナ被害相談村(コロナ村)」を開いた。生活に困った人たちが次々と訪れ、弁護士らに「所持金がもうない」などと相談したり、弁当を受け取ったりしていた。コロナ村は30日と来年1月2日にも同公園で、午前10時~午後5時に開催する。

 会場を訪れた中野区の40代男性は、今年6月に体調を崩し休職を願い出たところ自主退職を迫られた。両親と妻、息子2人と暮らす。仕事を探しているが募集は少なく「どんどん貯金がなくなる」と話した。

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全国で3605人の感染確認 死者は59人

2020年12月30日 02時50分13秒 | 社会・文化・政治・経済

12/30(水) 0:07配信

東京都内で、新たに856人の感染が確認され、重症者の数は緊急事態宣言の解除後、過去最多を更新しました。

都内の新たな感染者は、10歳未満から90代までの856人で、感染経路がわかっている中では、家庭内感染が121人と最も多く、次いで施設内が70人でした。

クラスターが発生している練馬区の「練馬光が丘病院」では、患者と職員あわせて19人の感染が確認されました。

また、24日に友人とクリスマス会をして感染した例もありました。

重症者は、28日より3人多い84人で、緊急事態宣言の解除後、最も多くなりました。また亡くなった方は5人でした。

感染者数が火曜日としては最も多くなったことについて、都の担当者は、「自費で受ける民間検査の医療機関1か所から陽性者が100人近く出るなど、帰省を前にしてか、年末年始の駆け込みで検査数が増えたのも要因」と分析しています。

一方、NNNのまとめによりますと、29日はこれまでに全国で3605人の感染者が新たに確認されました。特に栃木県では、83人と、これまでで最も多かった人数のおよそ2倍の感染者が確認されたほか、埼玉、岐阜、山口の各県で一日としては過去最多の感染者が確認されました。

また、亡くなった方は、兵庫県で10人、神奈川県で8人など、あわせて59人です。

厚生労働省によりますと、国内の重症患者数は28日時点で、675人で、前日よりも14人増え、過去最多を更新しています。

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羽田雄一郎議員のコロナ急死で、政治家の“過信”の空気が「間違いなく変わりました」……週刊文春記者が分析

2020年12月30日 02時42分39秒 | 社会・文化・政治・経済

12/29(火) 22:30配信

ニッポン放送
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月29日放送)に週刊文春記者の和田泰明が出演。立憲民主党の羽田雄一郎参院幹事長が新型コロナの感染により亡くなったことの政界への影響について解説した。

「自分が、自分が」という人が多い立憲民主党のなかで羽田氏は「紛れもなく人格者」

陳謝する菅首相 首相「静かな年末年始を」~記者会見で、自身が14日夜に行った計8人でのステーキ会食について陳謝する菅首相(代表撮影) 撮影:2020年12月 25日午後6時3分、首相官邸 写真提供:共同通信社

12月27日(日)に亡くなった立憲民主党の羽田雄一郎参院幹事長の死因が、新型コロナの感染によるものだったことがわかった。現職の国会議員が新型コロナの感染症で亡くなったのは初めてだ。

飯田)旧民主党政権では国土交通大臣を務めていた方でもあります。羽田孜さんの息子さん。どういう方だったのですか。

和田)僕は1度も取材したことがないので、28日に立憲民主党の方に取材したのですが、親分肌ですね。古き良き政治家ということで、まさに若い人に飯を食わせていると。高級中華が行きつけだったようで、そこに若手を集めて、当然ご馳走するのだということですが、あまりお酒を飲まれないと。取材した方は、下戸なのではないかと言っていましたが、高級中華なので美味しい時間帯にその人たちに出してもらうように気を使ったり、お酒を飲まないので自分で車を運転してきて、後輩を宿舎に送り届けたりしていたと。そのくらい悪く言う人がいないような。立憲は「自分が、自分が」という人が多いのですが、そのなかで紛れもなく人格者だったということを言っていましたね。

飯田)なるほど。持病がおありだったということも言われていて、糖尿病、高脂血症、高血圧だったと。基礎疾患があるとどうしてもリスクが高まるという話もありますが。

多くの政治家が「パーティ」「会食」を悪気なくやっている

参院予算委で質問する羽田雄一郎氏(民主※当時)2015年03月16日 写真提供:共同通信社

和田)政治家って過信があって、まさに菅総理と二階幹事長が会食していたと批判されましたが、自分たちは大丈夫だと、丈夫であることが政治生命を伸ばすことにもなるので、過信はあったのですが、今回の件で、流石にこれはいけないという風になっていると思いますね。

飯田)やはりこれで空気は変わりますか。

和田)間違いなく変わりました。

飯田)コロナが流行っているなかでも、感染防止対策をしていますよ、という形で政治資金パーティーをやったり、会合が行われたり、けっこういつもと変わらないことをやっているという感じで。

和田)やっていますね。それは私たちが(文春で)書いたのですが、厚生労働委員会の委員長だった渡嘉敷奈緒美さんという方が、コロナにかかったので不在のまま政治資金パーティーをやっていたということを書いたら、けっこうヤフー(ニュース)のトピックスに上がったりしたのです。僕の感覚からしたら「やるのかな」くらいだったのですが、一般の方からしたら「許さない」ということになっていて。田村厚労大臣も朝パーティーをやっていたり、加藤官房長官も昼食会をやったり、報じられないだけでけっこうやっているのです。

飯田)そうなのですね。

和田)はい。だから、感染防止をやっていると言っても、こういうときにお金集めかと。田村さんも当然医師会とかも呼んでいるのですよ。私の知り合いがたまたま参加していたのですが、やはり断れないと。そういう会を悪気なくやっているのですよ。

飯田)ルーティーンとして、という感じですか。

和田)はい。けっこうホテルのキャンセルも大変ですし、みんなに中止になったと連絡をするのも大変なわけで、そう考えたらやってしまおうということになるのでしょうね。しかし、それは普通の人の感覚からしたらおかしいというのは当然ですよね。

飯田)確かに、この冬も忘年会はもうやれないという感じで、みんな粛々と家で1人でお酒を飲むというような人が多いなかで。

和田)そうですね。渡嘉敷さんなどは、ホテルニューオータニの鶴の間という、いちばん大きい会食をやっているのですね。私も取材に行ったのですが、マスコミの人は入ってはいけないという張り紙があって、おそらくやましいと思ってやっているのだと思うのですけれども。

飯田)表向きは感染対策など理由をつけていても。

和田)その辺りナーバスになりながらも無理やりやっているというあたりですよね。だから、流石に来年はそういうのはできなくなりますよね。

飯田)経団連など、経済三団体の祝賀会も来年の頭は中止だということも報じられております。

 

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女児に性的暴行、撮影し販売 被害者は10人以上…許されざる男の卑劣な手口

2020年12月30日 02時25分46秒 | 事件・事故

12/27(日) 20:00配信

産経新聞

神奈川県警本部=横浜市中区

 小学生の女児に性的暴行をし、その様子を撮影したとして、神奈川県警少年捜査課は9月23日、強制性交と児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで33歳の男を逮捕した。だが、この事件はあくまで序章に過ぎなかった。同課は今月2日までに男を計4回逮捕。いずれも用意周到な方法で女児に接触していた。被害者は10人以上になるともみられており、最初の逮捕から3カ月を経ても、事件の全容はまだ見えてきていない。

【写真】送検時の近藤善広被告

 ■対象は4歳から

 逮捕のたび、同課から東京都杉並区堀ノ内の無職、近藤善広被告(33)=強制性交罪などで公判中=について説明がなされること4回。その犯行内容に、報道各社が集まる県警本部の一室は重い空気に包まれるのが常だった。逮捕順に沿って、その手口を振り返る(被害者の年齢、学年は当時)。

 【ケース1】昨年2月、会員制交流サイト(SNS)で知り合った宮城県の小学6年の女児に性的暴行。女児に会うため、東京から仙台を訪問しての犯行だった。

 【ケース2】平成30年4月、このとき勤務していた不動産会社のマンションのモデルルームで、小学4年の女児にわいせつ行為。事件前に知り合った男児に命じて、この女児を呼び出していた。

 【ケース3】昨年6月、交際相手を探すインターネットの「マッチングアプリ」で知り合った40代シングルマザーの娘である4歳児にわいせつ行為。今年3月ごろには自宅で、8歳の姉の体を触るなどした。

 【ケース4】平成29年の9月から12月までの間に千葉県内の公園で、4歳か5歳の女児に性的暴行。一緒に遊んでいた女児の兄を言葉巧みに引き離しての犯行だった。

 ■「生活の足しに」

 行為の多くは撮影され、「生活の足しにしたかった」という理由でインターネットで客を募り、複数人に販売までしていた。なかには数十万円単位のカネが被告の手に渡った映像もあったという。

 4つの犯行はいずれも決して許されないものだが、とりわけ耳を疑ったのが「ケース3」だった。同課によると、シングルマザーの女性は、近藤被告から「以前、塾で働いていた」などと説明されてすっかり心を許し、お互いの家を行き来しながら、子供たちの世話を任せるようになる。

 その結果、何が起きたか。近藤被告は女性が日中、働きに出ている間に女性宅で妹にわいせつ行為に及び、あるときは勉強を教える名目で、都内の自宅アパートに姉を呼び寄せて体を触ったうえ、その様子をカメラに収めていた。

 ■母親に付け入り…

 「子供目当てで女性に近づいたのかという問いかけには、今のところ『違う』と説明している」(捜査関係者)という被告だが、果たして本当なのだろうか。同課に指摘を受けるまで、女性は娘2人が被害に遭っていることに全く気付いていなかったというから、被告を信じてしまった自責の念はいかばかりか。

 一連の事件の捜査は、同課が別件で6月、被告の住む都内のアパートを家宅捜索したところ、おびただしい量の児童ポルノが発見されたことが端緒となった。被告は取り調べに、平成29年3月から今年3月まで、10人以上の女児にわいせつな行為をしたなどと供述。同課は、さらに余罪を追及するとともに、現在児童ポルノの購入者の立件も視野に捜査を進めている。

【神奈川県警少年捜査課】 平成16年9月、神奈川県警は少年に関する事件、事案に対する専門性の向上を目的に、それまでの少年課を分課し、少年育成課と少年捜査課が誕生した。少年育成課が、不良行為少年の街頭補導や被害少年の保護などを主に担当するのに対し、少年捜査課は(1)非行少年に係る事件の捜査と事案の調査に関すること(2)少年の福祉を害する犯罪の取り締まりなどに関することを主に担当する。

【記者の独り言】 女児に対する自らの性的欲求を満たすため、あるときは東京から東北の街へとはるばる遠征までしていた被告。少年捜査課から逮捕の経緯について4回にわたって説明を受けるたびに、驚かされたのは犯行に至るまでの執念深さだった。うつろな表情で送検のためのバスに乗り込む姿をファインダー越しに見ながら、「取り返しのつかないことをした自覚はあるのだろうか」と強く感じた。(宇都木渉)

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《独自》世田谷一家殺害 最新DNA型鑑定で容姿推定へ

2020年12月30日 02時25分46秒 | 事件・事故

12/30(水) 0:28配信

産経新聞

平成12年12月、一家4人が殺害された宮沢さん宅は老朽化が進んでいた=29日午後、東京都世田谷区上祖師谷(酒巻俊介撮影)

 平成12年12月、東京都世田谷区で会社員の宮沢みきおさん=当時(44)=一家4人が殺害された事件で、警視庁成城署捜査本部が現場に残された犯人のDNA型をもとに、顔や容姿などを推定する最新の科学技術を活用した鑑定に着手したことが、捜査関係者への取材で分かった。犯人の当時の年代なども明らかになり、有力な手掛かりになる可能性がある。事件は30日で発生から20年。事件の風化が懸念されるなか、捜査本部は最新技術を駆使して解明に乗り出す方針だ。

【写真】公開された宮沢みきおさん宅内部

 捜査関係者によると、鑑定は外部の専門機関の協力で実施し、負傷した犯人が現場に残したA型の血液などのDNA型を解析する。顔の特徴や皮膚の色などの容貌を推定できる可能性があり、既に作業が進められているとみられる。関係者は「(犯人のおおよその)年齢については(比較的早期に)特定されるだろう」と期待を寄せる。

 捜査本部は、現場で手を負傷したとみられる犯人の血痕や指紋、足跡を採取。犯人は凶器の包丁や、脱ぎ捨てたシャツ、マフラー、ヒップバッグなど多くの物を残したまま逃走した。捜査本部は遺留品から「身長170センチ前後でやせ形の若い男」との人物像を描いているが、詳しい容姿や年齢などは特定されていない。

 捜査本部はこれまでも、犯人のDNA型の鑑定から「父系が日本を含むアジア系、母系は南欧系民族に多い特徴を持つ」などとする分析結果を得ていた。民族交流の歴史的経緯から、犯人は「ハーフかクオーター」(元捜査幹部)との意見もでていたが、捜査本部は分析結果を公表していない。

 鑑定で犯人の年齢や容姿などが浮かび上がれば、事件関係者らの記憶の呼び起こしにつながり、有力な情報提供も期待される。

     ◆

 世田谷一家殺害事件 平成12年12月31日、東京都世田谷区上祖師谷の会社員、宮沢みきおさん方で一家4人の遺体が見つかった。犯行は30日夜とみられ、みきおさんと妻の泰子さん=同(41)、長女のにいなちゃん=同(8)=が首や顔などを刺され、長男の礼君=同(6)=は首を絞められていた。警視庁は延べ約28万2800人の捜査員を投入、1万3600件超の情報が寄せられたが犯人に直結する手掛かりは得られていない。情報提供は警視庁成城署捜査本部(03・3482・3829)。

 

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最新免疫学から分かってきた新型コロナウイルスの正体―宮坂昌之・大阪大学名誉教授

2020年12月30日 02時25分46秒 | 医科・歯科・介護

12/25(金) 13:33配信

Science Portal
 「サイエンスアゴラ2020」のシンポジウム「研究者と語ろう~新型コロナウイルス(COVID-19)免疫学的視点×ウイルス学的視点~」(2020年11月21日開催)から―

宮坂昌之・大阪大学名誉教授

 新型コロナウイルスが私たちの体にどういう反応を起こすか、特に免疫反応についてまず説明します。

 この病気の一番大きな特徴は、感染してもあまり症状がないので気づかないことです。従って知らずに人にうつしてしまいます。約9割の人が軽症で済むけれども、約1割が重症化して1~3%ぐらいが亡くなります。急激に患者さんが増えると、病院のベッドが一杯になって重症者も普通の病気も治療できなくなり、医療崩壊といわれる現象が起きかねません。子供も大人も感染しますが、年齢が高くなるほど病気が重くなる傾向があるので、高齢者施設で集団感染が起こると、多数のお年寄りが亡くなります。

 この新型コロナウイルスは、直径が0.1マイクロメートルと非常に小さく、ウイルス粒子の内部には遺伝子であるRNAが折りたたまれたように入っています。ウイルスの表面にはSタンパク質あるいはスパイクタンパク質と呼ばれる釘のような構造が、1つのウイルスから100本ぐらい突き出ています。このスパイクタンパク質が人の細胞の上にあるACE2というタンパク質と結合します。

新型コロナウイルス上のスパイクタンパク質が細胞上のACE2タンパク質に結合する仕組み(宮坂昌之氏提供)

 このACE2は肺の上皮細胞に多量に存在します。個人差はありますが、口の中、鼻の中の粘膜にも上皮細胞にも存在しますし、血管の内側を包む細胞や脂肪細胞にも存在します。肺の上皮細胞にこのウイルスが取り付くことが一番多いため、主に肺炎を起こすことが分かっています。ウイルスが細胞の中に入るための時間はわずか10分ぐらいで、細胞内でウイルスが増殖するには10時間ほどかかります。1個のウイルスが細胞の中に入ると1000個ほどに増えるので、もし1000個の細胞が感染したとすると、1000×1000で100万個のウイルスが10時間後に出てくることになります。

私たちの体は自然免疫と獲得免疫の2段構えで守られている
 私たちの体は2段構えの防御システムを持っています。それが自然免疫と獲得免疫です。病原体が体の外から中に侵入しようとすると、少なくとも大きな3つの障壁、バリアがあります。最初の2つの障壁は自然免疫と呼ばれるもので、まず皮膚や粘膜に存在する殺菌物質が病原体の体内への侵入を防ごうとします。物理的、科学的バリアと呼ばれるものです。


ウイルスなどの病原体を防ぐメカニズム(宮坂昌之氏提供)

 しかしそのバリアに穴が開いていますと、ウイルスはさらにその内側の層に入ってきます。そこでは白血球の一部である食細胞が病原体を待っていて、病原体を食べる、あるいは殺菌物質を作って殺す――これが自然免疫です。反応は早いのですが、免疫記憶は持っていません。もし、この自然免疫だけでウイルスを防げないと、ウイルスはさらに中に入ってきます。そうすると、自然免疫を突破した病原体に対して、白血球の中の2種類のリンパ球、B細胞とT細胞が主体となって抗体などを作る。そしてウイルスを排除する――これが獲得免疫です。

 自然免疫は反応が早くても、一度出会ったものを覚えていません。獲得免疫は反応が遅いものの、一度出会ったものを覚えているので、再び同じウイルスが入ってくると強く働いて排除します。自然免疫は生まれた時から誰もが持っている機構、獲得免疫は生後発達する機構で、我々はこの2つのメカニズムを持っているためにウイルスと出会っても容易には感染しません。恐らくウイルスは100個、200個ぐらい来ても、私たちはこのような免疫の仕組みを使って、撃退することができるのです。

 ワクチンについて話します。ウイルス感染を模した形でワクチンを接種します。そうすると、最初に刺激を受けるのが自然免疫。これが活性化すると、次に獲得免疫が働きます。必ずこういう順番です。自然免疫が活性化されると、食細胞がウイルスを殺します。獲得免疫が働くと、少なくとも3種類のリンパ球が働きます。一番大事なのがヘルパーT細胞という獲得免疫の司令塔で、この細胞が例えばB細胞に指令を出すと、B細胞がコロナウイルスに対する抗体を作ってウイルスを殺します。あるいはヘルパーT細胞が自分の兄弟であるキラーT細胞に指令を出すと、キラーT細胞がコロナに感染した細胞を殺します。これらの4つの細胞が、順番に働くとウイルスが完全に体から排除されます。

 

 


世界で広がる新型コロナ後遺症被害 急がれる原因究明 治療法開発

2020年12月30日 02時25分46秒 | 医科・歯科・介護

12/29(火) 20:05配信

産経新聞

新型コロナ後遺症の主な症状

 【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルスの感染後、何カ月も疲労感や体の痛みなどの後遺症に苦しむ患者が各国で報告されている。世界保健機関(WHO)は後遺症の研究を進めるよう各国政府に呼びかけているが、原因は不明で治療法も確立されていない。感染後、長期間、職場に復帰できないケースが増加する恐れがあり、来年以降、コロナ問題の新たな焦点となりそうだ。

【イラスト解説】英国のコロナウイルス変異種のしくみ

 「後遺症は7カ月間の私の時間を無慈悲に奪った」

 英リバプール熱帯医学校で疫学を研究するポール・ガーナー教授(65)はそう打ち明けた。

 ガーナー氏は3月に新型コロナに感染。約4カ月間は体の痛み、頭痛、倦怠(けんたい)感などに苦しんだ。感染後の免疫反応によって体内にできる抗体の検査では陽性反応が出たため、症状の回復が期待された。しかし、その後も約3カ月間、疲労感や吐き気、意識がもうろうとする症状に悩まされた。

 ガーナー氏は「快方に向かったかと思うと、また体調が悪くなる意地悪な攻撃を受けているようだった」と話す。10月から症状が改善したが、今でも体調が悪化しないか気を抜けない。

 感染後、PCR検査で陰性と診断されても後遺症が続く例もある。英メディアによると、4月に感染した英イングランドに住む女性のカースティ・マッキントッシュさん(42)は、6月にPCR検査で陰性と診断された後も疲労や息切れ、せきが数カ月続いた。

 WHOは10月30日、後遺症について、疲労、せき、息切れ、肺や心臓を含む主要臓器の炎症や損傷のほか心理的な影響などを挙げ、年齢や性別を問わず各国で発生していると公表した。

 WHOの発表を受け、英保健省傘下の公共機関などは今月18日、ガイドラインを作成。大半のコロナ患者の症状は12週間以内に解消すると分析し、12週間が経過しても症状が改善しない場合、後遺症を意味する「ポストコロナ症候群」の疑いがあるとした。

 英国家統計局が16日に発表した調査結果では、イングランドの約8200人の新型コロナ患者のうち約10%が12週間を過ぎても症状が続いた。英メディアによると、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのアルトマン教授(免疫学)は統計などから、後遺症に苦しむ患者は世界で500万人以上いると推定している。

 一方、後遺症が起こるメカニズムは不明だ。体内の免疫反応がウイルスの一部を分解しきれず、残ったウイルスが後から活発化することで後遺症が生じる仮説などが指摘されているが、確固たる証拠はない。

 そのため、後遺症の治療法や特効薬はなく、対症療法が中心となっている。

 英国では、政府がイングランドで約70の後遺症を専門にしたクリニックを開設。米国でも大学が後遺症の研究や診察を専門にする施設を立ち上げた。

 ガーナー氏は「多種多様な症状がある後遺症の治療や研究を進めるためには、世界の医療関係者が専門の垣根を越えた情報共有を今まで以上に進める必要がある」と連携を訴えた。

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