中高年男性の方にお勧めの小説がある。
それは、「大江戸定年組」シリーズである。
初めに読んだのが、「初秋の剣」この本を読んで、「面白い!」と思った方ならば、続きも読みたくなるのではないだろうか。
舞台は、タイトルにある通り江戸の町である。
「定年」とあるように、主人公の 藤村新三郎は、町方同心を引退して仕事を息子に譲っている。
「定年組」とあるのは、主人公に加えて、幼なじみがあと2人出てくる。三千五百石の大身旗本である夏樹権之助、そして商人の七福仁左衛門である。
3人それぞれ家族がおり、子供もいて、定年はしたが、まだまだ元気である。
さてこれからどう生きるかと思案し、江戸市中の厄介ごと解決を始めた。
三人の願いは、いい景色の中で暮らすこと。手頃な隠れ家「初秋亭」を根城に、それぞれの特技を活かして江戸市中の厄介事解決に乗り出した。
この3人のキャラクターも良い。
主人公の藤村は、剣の達人である。
旗本の夏樹は弓の達人である。
商人の七福は、人当たりが良く商売がうまい。
主人公たちと自分が同じ歳(55歳)であるというところが個人的に気に入っている。
この年齢ならではの悩みや喜び、気分が実によくわかるのである。
妻や息子との関わり方、
体が衰えつつもそれに抗ってなんとか過ごすところとか、
景色のいいところで穏やかに過ごしたいとか、
でも、まだ気力も体力も時間もあるから何かしたい・・・などなど、この年齢ならではの気分がよくわかる。
なんだかんだ言っても、これまでに鍛えた仕事のスキルを活かして、難事件を解決するところが面白い。
3人の湿っぽくない、それでいてしっかり互いを思いやる友情もいい。
作者は、風野真智雄氏。
おそらくこの本を書いた頃に、55歳くらいだったのではないか。この年ならではの悲哀や楽しみがよくわかっているからである。
今、シリーズの3冊目、「起死の矢」を読み終えそうである。
まだまだシリーズの残りはある。
お酒を飲みながら読む時間が至福の時である。