今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「NHKの朝のテレビ小説『おしん』の視聴率はいよいよ高いという。あれは美談佳話の連続である。艱難なんじを玉にすというが、彼女はどんな貧乏にも災難にも屈しない。ばかりか災いを転じて福にしてしまう。」
「どうしてこんな話が受けるかというと、おしんは修身のかたまりだからである。社会主義国にせよ資本主義国にせよ修身のない国はないのに、ひとりわが国にはない。修身を復活させようとすると新聞が必ず邪魔をする。
実を言うと新聞の『天声人語』『余録』のたぐいは現代の修身なのである。あれには書いた当人が決して実行しない、またするつもりもない立派なことばかり書いてある。だから新聞は修身科復活と聞くと、自分のお株を奪われやしまいかと反対するのである。
いくら反対しても人は修身を欲することをやめない。おしんは久々で天下晴れて見られる修身の権化である。いよいよ見られるだろう。」
(山本夏彦著「美しければすべてよし」-夏彦の写真コラム-新潮文庫 所収)
「NHKの朝のテレビ小説『おしん』の視聴率はいよいよ高いという。あれは美談佳話の連続である。艱難なんじを玉にすというが、彼女はどんな貧乏にも災難にも屈しない。ばかりか災いを転じて福にしてしまう。」
「どうしてこんな話が受けるかというと、おしんは修身のかたまりだからである。社会主義国にせよ資本主義国にせよ修身のない国はないのに、ひとりわが国にはない。修身を復活させようとすると新聞が必ず邪魔をする。
実を言うと新聞の『天声人語』『余録』のたぐいは現代の修身なのである。あれには書いた当人が決して実行しない、またするつもりもない立派なことばかり書いてある。だから新聞は修身科復活と聞くと、自分のお株を奪われやしまいかと反対するのである。
いくら反対しても人は修身を欲することをやめない。おしんは久々で天下晴れて見られる修身の権化である。いよいよ見られるだろう。」
(山本夏彦著「美しければすべてよし」-夏彦の写真コラム-新潮文庫 所収)