今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「俗に『役者子供』といって役者は人並でないところがある。それでいて嫉妬心だけは人一倍旺盛である。新国劇はもと沢田正二郎の一座で、昭和四年沢正が急死したおかげで、まだ二十代の辰巳と島田は花形になれたのである。
それを忘れて二人は五十年座長に居すわって後継者を育てなかった。緒方拳が頭角をあらわしたら自分たちを凌ぎはしないかと緒方を居られなくした。大山勝巳なら安心だから邪魔にしなかったが、大山では客は呼べない。それに気がついたときはすでに遅かった。客は辰巳島田と共に老いて新国劇そのものがつぶれてしまった。」
(山本夏彦著「良心的」-夏彦の写真コラム-新潮文庫 所収)
「俗に『役者子供』といって役者は人並でないところがある。それでいて嫉妬心だけは人一倍旺盛である。新国劇はもと沢田正二郎の一座で、昭和四年沢正が急死したおかげで、まだ二十代の辰巳と島田は花形になれたのである。
それを忘れて二人は五十年座長に居すわって後継者を育てなかった。緒方拳が頭角をあらわしたら自分たちを凌ぎはしないかと緒方を居られなくした。大山勝巳なら安心だから邪魔にしなかったが、大山では客は呼べない。それに気がついたときはすでに遅かった。客は辰巳島田と共に老いて新国劇そのものがつぶれてしまった。」
(山本夏彦著「良心的」-夏彦の写真コラム-新潮文庫 所収)