「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

ダメ派とマクリ派 2007・09・21

2007-09-21 08:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

  「人はダメ派とマクリ派のふた派に分れる。マクリ派というのは、ひたすら女の尻をまくって、

  きっとそのなかに何かあると信じて、生涯まくり続けてやまないもののことで、ダメ派というのは『いくらまくって

  もダメ也』とそれらを観ずるもののことである。

   私は少年のころからダメ派の自覚があって、かくてはならじとマクリ派のふりをして、しばらくまくってみたが、

  いくら末流でもダメはやっぱりダメで、マクリ派に転じられるものではない。」


  「ダメ派というのはこの世の中はダメだと観ずるもののことで、なぜそう観ずるか、ひと口に言えば生れつきである。

  したがってマクリ派もまた生れつきで、この派は婦人の尻または前をまくって生涯を終える。

   人はこの二た派のどちらかに属す。」


  「ダメの人は、自分がダメであることを自慢しない。それは我にもあらずダメなので、どう考えてもダメなのである。

  まくり人間のまねをすればダメの境涯から脱しられるかと、ずいぶんまねしてみるが、ダメの人がまくり人間になれる

  道理がない。」


           (山本夏彦著「ダメの人」中公文庫 所収)
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