今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「 戦争には勝敗はあるが、正邪はない。戦勝国と敗戦国はあるが、その間に正義が
わりこむ余地はない。
古往今来勝者は敗者を存分にした。殺すか奴隷にした。敗けた国は臥薪嘗胆(がしんしょうたん)
して今度は反対に勝つと、同じ復讎(ふくしゅう)を復讎した。こうして何千年来戦争はある。これ
からもある。
清盛は頼朝を助けたばっかりに、あとで殺しておけばよかったとくやしがったが及ばなかった。
頼朝は義仲を殺した、義経を殺した。
戦さに始めて正義をもちこんだのはアメリカ人である。アメリカ人は報復を報復でないように
見せたがった。東京裁判なんて前代未聞の偽善である。
[Ⅷ『昔は喧嘩は両成敗だった』平7・5・4/11]」
( 山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集-」新潮社刊 所収 )