今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)と山本七平さん(1921-1991)の対談集から、山本夏彦さんの発言の一節。
「鴫沢宮(しぎさわみや)は富山唯継(とみやまただつぐ)をその目で見て、間寛一(はざまかんいち)を捨てました。『金色夜叉』の発端カルタ会の場です。
お宮はあとで後悔しますがあれは小説で、実際は後悔しません。人生婦人に生まれるなかれ、百年の禍福(かふく)良人によるといいますから、女は老若を問わずただちに看破します。
一生の生活がかかっているからでしょう。ですから昔は絶対に大会社にはいれないひとが、文士だの詩人だのになりました。
銀行員にもなれるし新聞記者にもなれるというひとはいませんでした。間違っても詩人は銀行員になろうとしなかったから、その点銀行員の試験官はらくでした。
それが戦後は一変しました。銀行員にもなれるし、新聞記者にもなれるひとがいっぱいいます。」
(山本夏彦・山本七平著「意地悪は死なず」中公文庫 所収)
「鴫沢宮(しぎさわみや)は富山唯継(とみやまただつぐ)をその目で見て、間寛一(はざまかんいち)を捨てました。『金色夜叉』の発端カルタ会の場です。
お宮はあとで後悔しますがあれは小説で、実際は後悔しません。人生婦人に生まれるなかれ、百年の禍福(かふく)良人によるといいますから、女は老若を問わずただちに看破します。
一生の生活がかかっているからでしょう。ですから昔は絶対に大会社にはいれないひとが、文士だの詩人だのになりました。
銀行員にもなれるし新聞記者にもなれるというひとはいませんでした。間違っても詩人は銀行員になろうとしなかったから、その点銀行員の試験官はらくでした。
それが戦後は一変しました。銀行員にもなれるし、新聞記者にもなれるひとがいっぱいいます。」
(山本夏彦・山本七平著「意地悪は死なず」中公文庫 所収)